2016年4月21日木曜日

参院選前にTPPを終わらせておきたいというのが首相の本心 

 衆院TPP特別委員会の質疑で19日日本がTPP交渉で「聖域」と位置付けたコメ、牛・豚肉など農産品重要5項目すべてで関税引き下げなどの譲歩をしたことが明らかになりました(森山農水相の答弁)
 そんな中、参院議院運営委は20日午前の理事会で、審議の見通しが立たないとして、同日の参院本会議で予定されていたTPP承認案と関連法案を審議する特別委員会の設置を延期する=今国会中の批准はない=ことが決まりました。当然のことです。
 
 そもそも米国でも批准の見通しが立っていないTPP協定を、日本だけがそんなに急いで審議する必要は全くありませんでした。しかも熊本大震災の真っ最中に。
 その対策もロクに進んでいないなかで安倍首相がTPPを最優先で審議して、今国会中(~6月1日)に批准を成立させようとしたのは、7月の参院選でTPPを争点にされたくない・・・その前に「片付け」て置きたいという意図からでした。
 そのために自民党内の一部良識派の意向を押し切って、首相が党利党略でTPP協定を通してしまおうと構想したものです。まさしく売国の所業・売国の徒です。
 
 それにしてもTPP審議に集中するとなれば、安倍首相はじめ関係大臣が国会に出席するのはもちろん、官僚も答弁準備などで追われることになるので、その分熊本大震災への対応がなおざりになることは確実です。口先では大震災対応が最優先だと言いながら、本心は全く別のところにあったわけです。
 良くそれほどまでに被災者たちに冷酷になれるものです。そういえば、15日から出されている熊本県の蒲島知事からの『激甚災害指定』の要請を官邸はいまだにOKしていないということですが、一体どういう考えからなのでしょうか。熊本県はある程度豊かな県なので予算を回すのが嫌だからとも言われています。
 それなら20日に報じられてパナマへの3000億円の借款はどういうことなのでしょうか。
 
 安倍首相の言行不一致はもとから知られていたところですが、諸々あきれるばかりのデタラメさ・身勝手さです。
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参院、TPP特別委の設置を延期
日経新聞 2016年4月20日
 参院議院運営委員会は20日午前の理事会で、同日の参院本会議で予定されていた環太平洋経済連携協定(TPP)承認案と関連法案を審議する特別委員会の設置を延期することを決めた。政府・与党がTPP承認と関連法案の成立を見送る方針を固めたことを受けたもの。審議の見通しがたたないことから、自民党が設置提案を取り下げた。
 
 これに先立ち、自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久両幹事長は20日午前、都内のホテルで会談し、今後の国会運営について、熊本地震への対応を最優先して進めることで一致した。衆院で審議中のTPP承認案・関連法案に関し、今国会での承認・成立を先送りする方針を25日にも正式に決める日程を確認した。
 一方、衆院選挙制度改革を巡っては、22日の衆院本会議で審議入りし、月内の衆院通過をめざすとした。会談に同席した自民党の佐藤勉国会対策委員長は記者団に「会期内にできるだけ多くの法案を通すことが使命だ」と語った。
 
 
安倍首相が震災対応よりTPPを優先せよ、と国会審議を強行!
「被災者支援」は口だけ、露呈する冷たい対応
LITERA 2016年4月18日
 4月16日深夜に発生した最大震度6強の地震によって、さらに被害が拡大している熊本大地震。しかし、被災地から窮状を訴える声が次々にあがっている一方で、政府の対策は後手後手にまわっている。
 こうした対応について、本サイトでは16日の記事で、安倍政権の初動対応の遅れを指摘。14日の地震発生後から蒲島郁夫熊本県知事が「激甚災害の早期指定」を求めていたにもかかわらず政府が今なお指定していないことや、自衛隊についても政府は当初、2000人の派遣しか行なわず、16日になってようやく増派を決定したこと、「官邸での地震対応に集中したい」と視察を取りやめながら、実際は週明けTPP審議を最優先していることなどを取り上げた。
 
 しかし、大手マスコミからそうした当然の批判が上がることはなく、他方でネトウヨたちは「リテラはまたデマ記事書いてんのか」「拒否するわけねえだろ、ほんとクズメディアだな」「災害に乗じて流言蜚語流してるリテラは犯罪組織認定で良いんじゃない?」と同記事を“デマ認定”、「これは訴えてもいいレベル」などと騒ぎ立てている。
 だが、デマを流しているのはもちろん彼らのほうであり、安倍首相の「被災者救助、支援に万全を期す」という言葉が大ウソであることは、本日18日午前の国会で証明された。
 今日、国会では朝から衆議院TPP特別委員会が開催されていたのだが、この委員会は、安倍首相が地震対策よりも優先し、強引に開催したものだったのだ。
 この事実は、まさに同委員会での民進党・緒方林太郎議員らの質問によっても明らかになっている。緒方議員らによれば、民進党は今日午前、いまはTPP審議を行うよりも、安倍首相や河野太郎・防災担当相などの関係大臣による震災への陣頭指揮を優先すべきだ、と主張。今日午前の国会対策委員長会談でも、委員会の延期を申しれたという。
 
 当然だろう。TPP審議となれば、安倍首相はじめ関係大臣が国会に出席しなければならないのはもちろん、官僚も答弁準備などで追われることになり、そのぶん、震災対応の判断や準備が遅れるのは確実だからだ。
 ところが、自民党はこの民進党の提案をはねつけ、どうしてもTPP審議を行うと強硬に主張。開催を押し切ってしまったという。
「なぜ、この状況で委員会を開かねばならなかったのか」
 緒方議員ら民進党サイドは委員会の質問でまず、安倍首相に対して、このことをぶつけていたが、安倍首相は「委員会(の開催)は議会に任せている」「どのような案件について議論していくかは国会が決めること」と他人事のように語るのみだった。
 しかし、この答弁は大ウソだ。委員会開催は国会が決めたことではなく、安倍首相が決めたことだった。自民党は一旦、民進党からの委員会延期の申し入れを受け入れる姿勢を示していたが、安倍首相がそれをひっくり返し、審議に入ると言い張ったため、自民党も委員会を開く方針に転換したのだという。
 実際、国対委員長会談で、自民党の佐藤勉委員長が「安倍首相からTPPの議論を一歩でも先に進めたいと“強い意向”があった」と明言している。
 
 ようするに、安倍首相は「救命救助活動に全力を挙げたい」「住環境の改善に努力する」と言っておきながら、野党や自民党からの「いまは災害対策を」という訴えには耳も貸さず、TPP審議を優先させたのだ。
 安倍首相がここまでTPP審議にこだわるのは、参院選でTPPが争点になることを避けるべく、一刻も早く国会での承認を取り付けたいがためだろう。あるいは、まさかとは思うが、この期に及んでも、まだ衆院選とのダブル選挙をあきらめていないのかもしれない。
 いずれにしても、この言動不一致にもあきらかなように、安倍首相は政権の利害しか考えていないことは間違いない。
 
 事実、今日の国会ではほかにも、被災地の現状を顧みない姿勢が次々と明らかになった。
 そのひとつが、本サイトも指摘していた激甚災害指定の遅れだ。この問題について緒方議員から指摘され、野党側から野次が飛ぶと、安倍首相は都合が悪くなったときのパターンである逆ギレ状態になって、「野次はやめてくださいよ!」と怒鳴り始めた。
 そのうえで「事務的に数字を積み上げていかないと法律的にできない。それをいま一生懸命やっている」と弁解したのだが、激甚災害指定の作業がそんな時間のかかるものでないことは過去の例が示している。
 たとえば、当サイトでも指摘したように、東日本大震災では当時の民主党政権が災害発生翌日に激甚災害指定の閣議決定まで取り付けている。しかも今回は、前述したように熊本県知事が早期指定を求めていたのだ。これは明らかに、安倍官邸がずっと官僚的対応に終始していたことの証明だろう。
 
 被災地を顧みない言動は、ほかでも見て取れる。たとえば昨日17日、安倍首相は「店頭に今日中に70万食を届ける」と記者団に語ったが、河野防災担当相は同日、〈コンビニ70万食、本日中に搬入完了の見込み。避難所には明日、県の要請に基づく38万食が搬入されます〉とツイートしている。もちろん、食料の物流確保も重要な問題だが、それよりもまず避難所への食料の提供を優先させるか、あるいは同時並行で行うべきだろう。
 そもそも、被害が広範囲に渡り、くわえて原発事故まで起こった東日本大震災と比べれば、避難者がとくに熊本市内に集中している今回の大地震はもっと迅速に救援が行えるはず。それなのにここまで支援物資の不足が問題になっているのは、政府の初動の甘さ、そして対応の遅れが影響していると言っていい。
 
 しかし、相変わらずメディアは、安倍首相のこうした災害対策の遅れは一向に報道しようとしない。本日国会であきらかになった「災害対策よりTPP優先」という問題も、昼のニュースで伝えたのは、テレビ朝日の『ANNニュース』とTBSの『JNNニュース』のみ。NHK『NHKニュース』やフジテレビ『FNNスピーク』、日本テレビ『NNNストレイトニュース』では、逆に「安倍首相が激甚災害の早期指定を明言」と打ち出して、同時に米軍オスプレイの投入を大宣伝していた。
 被災地支援の動きの鈍さを指摘し、早急な対策を政府に求める。これはメディアの仕事のはずだが、このまま政府の責任は隠されつづけていくのか。もしそうなったら、そのしわ寄せは被災者に向かうということを、忘れてはいけない。(野尻民夫)