2016年5月12日木曜日

12- 「パナマ文書」21万法人公開 

 タックスヘイブンの全容が公開された「パナマ文書」が、世界中から注目されています公開されるやトップの進退問題に発展した国もありました。
 タックスヘイブンを使った課税逃れによって貧困国は毎年1700億ドル(約18兆円)の税収を失っていて、その金額があれば約15000万人の子どもの命を救える医療制度を整備できると言われています
 
 日本人400を超える個人や企業名が明らかにされました。その中には、政府関係者も含まれています関係者は一様に「合法的に対応している」と口にしていますが、この問題は「合法的に行われている」こと自体が「問題」なのです。
 ところが読売新聞などの大手紙は「パナマ文書」に登場している日本企業をすべて匿名」で報道するという有様です。例によって広告主である大企業に媚びる御用体質です。
 そして政府や国税庁にもその脱税の実態を調査する意思は見られません。
 
 日刊ゲンダイとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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「パナマ文書」徹底調査 安倍官邸も国税庁も“ヤル気ゼロ”
日刊ゲンダイ 2016年5月11日
 全容が公開された「パナマ文書」。名前が挙がった日本人230人や企業20社の中には、政府関係者も含まれている。本来、租税回避をやめさせる立場にある人物が、逆にタックスヘイブンを使っていた“疑惑”があるなら、政府として調査するのは当たり前。だが、安倍政権はやる気ゼロだ。
 
  11日行われた衆院財務金融委員会。加藤勝信1億総活躍相の義姉で、内閣官房参与の加藤康子氏が代表を務める会社名が、パナマ文書に記載されていたことについて、内閣府の牧島かれん政務官は「報道については承知しているが、文書の具体的な中身は承知していない」とスットボけた。
  さらに、今後調査するかについて問われると、「『租税回避に関与している事実はない』と聞いている」「ご本人の方で調査して報告があると思う」と答弁したから、ア然だ。仮に関与の事実があったとしても、本人が素直に認めるものか。そこを徹底的に調べ上げるのが国の役割だろう。
 
 また、政府の産業競争力会議で委員を務める楽天の三木谷浩史会長についても、内閣府の高鳥修一副大臣は「報道で名前があっただけ。現時点では特別の調査は考えていない」と言い切った。
  委員会で質問した民進党の宮崎岳志衆院議員はこう言う。
 「調査をすれば、政治家本人が関わっているケースが見つかるかもしれません。不適切な租税回避をしている企業から多額の献金をもらっている政治家が出てくる可能性もあります。安倍政権としては、戦々恐々でしょう。何も調べずに済ますことは絶対に許されません」
  パナマ文書は4月に公表されて以降、世界の政治家を“直撃”している。アイスランドではグンロイグソン首相が資産隠し疑惑で辞任。名前が挙がったロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席らは“火消し”に躍起だ。ノンビリ構えているのは日本ぐらいだ
 
■国税庁は「問題あったら対応する」
  10日開かれた民進党の「パナマ文書調査チーム」によるヒアリングでも、国税庁は「問題があったならば対応する」と腰の引けた答えだった。
 「国税庁からは全くやる気を感じられなかった。もし調査しないのであれば、パナマ文書を公開した人たちの意に反することになります。怪しいからこそ、全世界でニュースになっているわけですから。このままでは諸外国から笑われますよ」(民進党の山井和則国対委員長代理)
  安倍政権は5月末の伊勢志摩サミットで、課税逃れ対策などの行動計画を発表する方針だというが、自国の暗部にはメスを入れないパフォーマンス。こんな政府に怒りもせず黙っていたら、損をして、笑いものになるのは日本国民だ。 
 
 
「パナマ文書」21万法人公開 
伊藤忠・丸紅・三木谷氏など 日本は400超の個人・企業名 
租税回避地を利用
しんぶん赤旗 2016年5月11日
 タックスヘイブン(租税回避地)に関する「パナマ文書」を分析している国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ、本部ワシントン)は10日、英領バージン諸島やパナマなど21の国・地域に設立された約21万4000法人に関する情報をホームページで公開しました。タックスヘイブンを利用している世界の大企業や富裕層の実名が明らかにされました。日本からは伊藤忠商事丸紅三木谷浩史楽天会長兼社長を含め400以上の個人・企業の名が挙がりました。 (関連記事次の記事)
以下省略
 
「パナマ文書」法人情報公開
規制を逃れ 闇世界 まだ氷山の一角 蓄財の実態 解明さらに
しんぶん赤旗 2016年5月11日
 「パナマ文書」を分析してきた国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は21万社を超えるペーパーカンパニーに関する情報を10日に公開しました。富裕層や犯罪集団、政治家などによるタックスヘイブン(租税回避地)での蓄財の実態のさらなる解明が求められます。 (金子豊弘、佐久間亮、杉本恒如、山田俊英)
 
 「パナマ文書」に名前が挙がっている伊藤忠商事丸紅の広報は本紙の問い合わせに対し、英領バージン諸島に台湾企業が設立した「レナウンド・インターナショナル」という会社に出資していると認めました。
 現在、伊藤忠は約6%、丸紅は約8%出資。「ビジネスのためで、租税回避が目的ではない」(伊藤忠)、「目的はお金もうけ。法制に準拠して納税している」(丸紅)と説明しています。
 台湾企業が設立した会社について丸紅は次のように説明します。
 「銅製品の中国事業と聞いている。バージン諸島に会社をつくった理由を台湾企業に聞くことはできないので推測だが、中国で製造するためにバージン諸島に投資子会社をつくったのではないか。中国では会社をたたむのが難しい、労働者に配慮しなければならないなど制約が厳しいので、そういうやり方をすることはよくある」
 事業の実体は中国にあるのに、地域経済や労働者を守る中国の規制が及ばないよう、バージン諸島につくったペーパーカンパニーから中国に投資する形をとったという推測です。事実であれば、規制のゆるいタックスヘイブンを利用した典型的な規制逃れです。税逃れも台湾企業の目的に含まれる可能性は否定できません。
 UCCホールディングスは「事実関係へのコメントは差し控える。社長も会社も合法的に納税している」と回答しました。
 パナマ文書の解明作業に参加している共同通信は、同社の上島豪太(ごうた)社長が2010年時点でバージン諸島にある2法人の唯一の株主で役員とする書類やメールがあったと報じています。
 ソフトバンクグループは「中国企業がバージン諸島につくった会社にグループ企業が出資し、株の35%を持っていたが、撤退した。租税回避のためではない」。警備大手セコムは「日本の税務当局に必要な情報を開示し、合法的に処理されていると聞いている」と答えました。
 共同通信によれば、セコムの飯田亮最高顧問と元最高顧問の故戸田寿一氏につながる複数の法人が1990年代にバージン諸島や英王室領ガーンジー島につくられ、当時の取引価格で計700億円を超すセコム株が管理されていました。
 楽天は、三木谷浩史(ひろし)社長が出資者に名を連ねる企業が同文書に登場したことについて「楽天の起業前に外国人が設立した英領バージン諸島の企業への投資を持ちかけられ、(個人として)80万円程度を投資した」と説明。「脱税などの意図はまったくない」としています。
 
「合法的」そこが問題 貧困と格差増幅装置
 世界の人口の1%にすぎない富裕層が世界の資産の50%を保有し、世界の富の偏在は極限状態です。各国の課税を逃れ、規制を逃れるタックスヘイブンの闇の世界こそ、格差と貧困の増幅装置です。
 「税逃れ」について世界の大富豪、多国籍企業は「合法的な手段を使っている。犯罪行為ではない」と合理化します。しかし、「合法的」だからこそ大問題です。
 オバマ米大統領も「多くが合法的だ。しかし、それがまさに問題」と強調しています。普通の人々が従わなければならない法的責任を富裕層は、法律家や会計士を利用することで逃れているといいます。
 
 大手金融機関は、富裕層がタックスヘイブンを利用する推進役を果たしています。
 本紙の調べでは、日本のメガバンクも、みずほフィナンシャルグループ(FG)が45、三井住友FGが27、三菱UFJFGは12の子会社をタックスヘイブンに保有しています。(2013年3月期)
 
国際援助団体 取り締まりルール要求
 【ワシントン=島田峰隆】多国籍企業や一握りの富裕層によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いた「パナマ文書」に含まれる約21万社のペーパー会社が公表されたことについて、国際援助団体オックスファムは9日、課税逃れを取り締まる国際的なルールづくりを各国政府に改めて求めました。
 同団体で格差解消キャンペーンの責任者を務めるマックス・ローソン氏は同日の発表文で「オフショア(非居住者向け)金融取引の暗黒の世界を各国国民が精査できるようにしたことは極めて重要だ」と歓迎しました。
 同氏は、「パナマ文書」発表を受けて各国政府が対応を始めているものの、「まだ不十分で、課税逃れを止められない」とし、今回発表された会社も「氷山の一角だ」と指摘。金融取引の機密扱いが課税逃れに悪用されているとして、今月12日にキャメロン英首相が主宰してロンドンで開く「汚職防止サミット」でこの問題に取り組むよう訴えました。
 オックスファムは、各国が協力して「新しい国際的なルール」をつくることが必要だと強調。▽すべての企業の実質的な所有者や経営者を公開、登録する制度をつくる▽すべての企業に対し、活動しているすべての国ごとに報告を公表させる▽すべての国が税金の情報を共有できる多国間システムをつくる―ことを提案しています。
 オックスファムの試算では、課税逃れによって貧困国は毎年1700億ドル(約18兆円)の税収を失っています。この金額があれば約1億5000万人の子どもの命を救える医療制度を整備できると指摘しています。
 
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