TTIPは西欧版TPPのことですが、13日の「マスコミにのらない海外記事」の紹介する記事は、「TTIPを支持するような人が、まだいるのだろうか?」という刺激的な言葉で始まっています。
内容は西欧版なので具体的なイメージは湧きにくいのですが、日本で問題視されているのとまったく同じことがTTIP=西欧版TPPでも強行されようとしているという点はよく理解できます。要するにアメリカの意図は、TPPによって環太平洋国家を蹂躙するのとまったく同様に、西欧国家に対しても蹂躙しようとしているということです。アメリカにとって友好国というのは存在せずに、あらゆる国が徹底的な搾取の対象であるということです。まことに恐ろしい国です。・・・正確には「国」ではなく「多国籍大企業家群」というべきなのですが。
日本と西欧で決定的に違っているのは、西欧ではTTIPの害悪は広く知れ渡っていて、「TTIPを支持するような人が、まだいるのだろうか?」と言われるほどであるのに対して、日本ではまだそれほど危険視はされていないという点です。優秀な民族の筈なのにどうして真剣に考えないのか、「人の良さ」で片づけられる問題なのか。「政治のことは政治家に任せればいい」というのは、TPPに関しては全く成り立ちません。
それにしてもTPPの害悪を良く知っている筈の自民党議員たちがいま何故沈黙しているのか、自分たちの地位が安定なら国家がどうなってもいいというのか? そこまで腐ってしまっているのか、本当に不可解です。
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TTIP内部情報? グリーンピースの漏洩で、抗議行動参加者がつまらないことで大騒ぎをしていたわけではなかったことが確認された
マスコミにのらない海外記事 2016年5月13日
ダニエル・ライアン Russia Today 2016年5月3日
TTIPを支持するような人が、まだいるのだろうか? 月曜日のグリーンピースによる、協定を巡るアメリカの要求のひどさを暴露する交渉文書漏洩の後では、それは疑わしい。
提案されているアメリカ-EU貿易協定のうさんくささを巡る何らかの疑いが、もし何か残っていたとすれば、248ページの漏洩が、それをなくしてくれたのだ。TTIPは既にして、論争の的だったが、すぐに誰も触れたがらない政治的難題になりそうだ。
底辺への競争
漏洩で、ヨーロッパの規制法規に対し、アメリカ大企業が、大変な影響力を行使することを可能にし、公衆衛生基準や、安全基準を弱体化させて、アメリカのそうした基準に沿って、下落させられる可能性がある条項が、協定にあることが明らかになった。And kicker? アメリカには、EUの法律や標準に対する、こうした全ての影響力を与えられるのに、“互恵主義の保証は皆無”だということだ。
実際、協定は、もし現状の状態のまま調印されれば、EUの規制に対して、ヨーロッパ企業が持っているのとほとんど同様の水準の影響力や提案力を、アメリカ大企業に与えることになる。もしEUの国々が基準を強化する法律を制定すれば、アメリカの大企業は、それに異議申し立てすることが可能になるのだ。もしこれが、片方より、別の一方がより恩恵を受ける仕組みのように見えるとしたら、それは、TTIPがまさにそういうものだからだ。イギリス国民の一部が、そのような協定を検討するような経済圏の一部として残るという見通しにさほど狂喜していないのも不思議ではない。
グリーンピースが公開した文章が暴露しているのは、新たな要求のみならず、“ヨーロッパの遺伝子組み換え食品禁止を終わらせる計画”のような“特定の脅威の詳細”を含む、ヨーロッパの基本的な安全基準の様相を根本的に変えようという取り組みだ。グリーンピースEUの理事によれば、これは公衆衛生や、安全基準の底辺への競争だ。
別のとりわけ興味深い暴露として、ドイツ新聞スーデントィチェ・ツアイトゥング(南ドイツ新聞)は、EUに、環境的により危険の高いアメリカ農産物を更に買わせるよう強いる取り組みとして、アメリカ政府は、ヨーロッパ自動車の対アメリカ輸出緩和を阻止すると脅していると報じている。
もし、読者が、先に合意された気候変動と戦う取り組みに対するTTIPの影響について懸念しておられる人々の一員であれば、グリーンピース漏洩には、皆様の懸念を和らげるようなことは何もない。248ページの漏洩は、欧州委員会が、それは最優先事項だと再三請け負っているにもかかわらず、温暖化ガス排出削減のための世界的な取り組みとされるものには全く言及していない。
協定は成立しない?
こうした交渉を巡る秘密性の理由は、今や極めて明白だ。欧州委員会が、一体なぜ、主要交渉文章を一般人が読めるようになるのを30年間禁止したのかを読み解くのは困難ではない。もしヨーロッパ人が、一体何が安く手放されつつあるのか正確に知っていれば、もっとひどい大騒ぎになっていたはずだ。今や、ヨーロッパの人々は知っている。これは、欧米の“透明性”と、民主主義にとっての汚点であり、それで、グリーンピースが、この貿易協定が一体どのように交渉されているのかを、初めて本当に洞察するできるようにしてくれたのだ。
漏洩が更に暴露しているのは、この協定がまとまる状態と程遠いことだ。セシリア・マルムストローム貿易担当欧州委員が、月曜日にブログに書いた通り、文書は、完成した文書というわけではない。文書は、双方の交渉の立場を表している。マルムストロームは、これは“人騒がせな見出し”で、“空騒ぎ”以上のものではないと主張している。
この点で、彼女は間違っている。大きな相違や、行き詰まりの原因はあるかも知れないが、ヨーロッパが、アメリカ大企業に恩恵を与えるような、安全基準を巡る“交渉”を検討すること自体が理解を越えており、確かに報道の価値がある。マルムストロームは、いかなる貿易協定も、ヨーロッパの消費者保護水準を引き下げることはないと頑固に拒否しているが、主義を曲げないための拒否に過ぎない。
彼女の次のブログ記事で、彼女が、ウソだったことを認めるか、あるいは協定はごみ箱行きしかないと言うかも知れないが、我々が知っているアメリカの交渉戦術からして、そのどちらかだ。例外的な国と交渉をして、こちらが有利な結果になるはずがない。
ここ数週間、EU指導者連中の協定に対する熱は既に衰えており、おそらく、ヨーロッパが、いいなりにならずに拒否できるものがまだ何かあるという明るい兆しだ。かつて、フランスのマニュエル・ヴァルス首相は、もしTTIPが、フランスの生活の質を維持できなければ、協定の可能性は低くなると警告した。ドイツの経済大臣は、アメリカ政府が、譲歩を拒否していると公的に非難した。こうした漏洩の影響を見れば、この話題が続いても何ら驚くべきことではない。
悪い子どもをさらう鬼、再登場
残念なことに、ここで私はウラジーミル・プーチンに触れなければならない。お門違いに見えるのを申し訳なく思う。だが権力者連中は、あらゆることで、プーチンを放っておくことを認めないのだ。ともあれ、彼はどうやら、TTIPを嫌がっているらしく- それが明らかに、皆様がTTIPを愛すべき理由なのだ。2014年、元NATO軍最高司令官のジェームス・スタヴリディスは、論文まるごと、これにあてている。何事に関しても、プーチンを勝者や敗者にして、恐怖を利用しようという企ての一つなのだが、TTIPを巡って、ここ数カ月、抗議行動で街頭に繰り出した何十万人もの誰一人、プーチンがこれを一体どう考えているのかなど、実際とやかく言うはずはないのだから、明らかに不発に終わっている。だからといって、それで協定のわずかなファンが、論争にプーチンを巻き込もうと全力を尽くすのが停まるわけではない。今年4月、カーネギー・ヨーロッパの、ストラテジック・ヨーロッパ・ブログの編集者ジュディ・デンプシーは、自分でもやってみることに決めた。
北大西洋の連携が弱体化すれば“ロシアが恩恵を受ける”と彼女は言い、TTIPは、そうした連携を強化するそうだ。北大西洋の連携は、TTIP無しでも、かなりうまくやってきているのだから、これはむしろ奇妙な話だ。ところが今や、議論が“反アメリカ主義”色を帯びた“高度に組織された”反TTIP活動によって“乗っ取られた”とデンプシーは警告しているのだ。自分たちの民主主義を損なうと信じている協定に反対して行進する、高度に組織された抗議行動参加者の衝撃を想像願いたい。実に言語道断だ。だがそれも、ロシアが“ポピュリストや、[EU懐疑派] 運動や、反米感情を宣伝するためなら、あらゆることをする精巧なプロパガンダ活動”を行っているのだから、全てプーチンが悪いのだ。
ドイツ人のわずか17パーセントと、アメリカ人の18パーセントしか、TTIPが良いものだと考えていない。それはヨーロッパ人や、アメリカ人にとって、悪いニュースを意味する、大企業による権力奪取とは全く無関係なのだ。そうではない。すべて、プーチンによるプロパガンダのせいなのだ。
TTIPを巡る論争に不案内な友人が、昨日は一体何事がおきたのかと聞いてきた。グリーンピースによる漏洩が明らかにしたものを簡潔に説明したところ、彼女の反応は単純だった。“それなら一体どうして、我々はそんなものに調印するの?” 良い質問だ。
ダニエル・ライアンは、アイルランド人フリーランス・ジャーナリストで、マスコミ評論家。彼女は、アメリカと、ドイツで暮らしたことがあり、現在は、モスクワを本拠にしている。彼女はかつて、ダブリンのサンデー・ビジネス・ポストのデジタル記者として働いたことかある。ワシントンDCの、ワシントン・政治・ジャーナリズム・センターで、政治報道を学んでおり、経営とドイツ語の学位を持っている。彼女は、アメリカ外交政策、アメリカ-ロシア関係と、マスコミの偏向を中心に扱っている。
本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。