安倍首相はようやく消費税増税を2019年10月まで2年半延期する考えを示しました。
まだ与党内の最終調整が残っていますが、増税などできる状況にないことは余りにも明らかです。それをわざわざ海外の経済学の権威の意見を聴いたり、そこで完全な意見の一致がなかったからとG7サミットに「リーマンショック前夜の状況」などという無理な同意を求めたりしたのは、滑稽なことでした。
米国の経済学者の意見を聞くまでもなく、御用学者やマスメディア以外は、この時期に消費増税をすべきではないと考えています。本来は逆に5%に引き下げるべきです。
GDPの半分近くを占める個人消費を消費増税で冷やせば景気が悪化するのはわかりきった話で、それを少しばかり明かりがさし始めた恢復期に8%に増税したのがそもそもの大間違いでした。
企業にだけ利益をもたらす政策を推進し、国民のことには目が向かない国内政策を続けていれば、仮に消費増税を2年半延ばしたところで景気は回復などしません。増税したら再び三度失速するのは目に見えています。
そうなっても一向にかまわないというのが消費増税至上主義の財務省です。彼らはゆくゆくは消費税を30%近くまで上げることを考えているので、当面の税収が減ろうがそんなことは全く斟酌しません。
他の増税支持勢力も同じ考えです。これまで自分たちの新聞への適用は困ると言う一方で、国民に対しては一貫して消費税増税の必要性を説いてきたマスメディアも勿論そうです。
それにしてもなぜ本来の所得税中心の税体系に回帰しようとしないのでしょうか。
昨年、ピケティの分析・考察が一世を風靡したときに、オバマ大統領でさえも累進課税の強化を行いました。
食品課税率が8%というような世界一高額な消費税を維持したままでは、税の再分配によって経済格差が是正されないことは、「貧困率が全く改善しない」ことからも明らかです。
日本の財界人、官僚、マスコミ人などの高給取りが消費税に固執しているのは、その方が自分たちの懐が痛まないからに他なりません。消費税中心主義というのは正に強者の論理です。
紙面には早速「社会保障に影響」とか「遠のく財政再建」などの十年一日の言葉が躍っていますが、なぜ消費税以外に目が向かないのか、欺瞞的視野狭窄とでもいうしかありません。
紙面には早速「社会保障に影響」とか「遠のく財政再建」などの十年一日の言葉が躍っていますが、なぜ消費税以外に目が向かないのか、欺瞞的視野狭窄とでもいうしかありません。
ブログ「日々雑感」は、『この国をダメにしているのは間違いなく官僚と馬鹿な政治家と、その政治家を取り巻く御用学者たちだ。そして政権への批判を忘れた取り巻きのマスメディアだ。なぜマスメディアはしっかりと三年半に亙るアベノミクスの検証をしないのだろうか。ほとほと腐りきったマスメディアにはウンザリだ。』 と述べています。
以下に紹介します。
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財務官僚丸投げのアベノミクスの失政を問う
日々雑感 2016年5月29日
< 国際金融経済分析会合はサミットに向け、安倍首相が内外の有識者から意見を聴く勉強会という名目で開かれている。4月4日現在で合計3回開かれ、7日に第4回、13日に第5回が開かれる予定になっている。6回目以降も順次、開かれる見通しだ。
ただ、首相が14年11月に消費税率10%への引き上げ見送りを決断した際、有識者を招いた「点検会合」を相次ぎ開いた経緯と酷似しており、市場からは「『増税先送り』に向けた地ならしが始まった」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)との声も上がっている。
実際、初回に登場したスティグリッツ氏は、来年4月の消費税増税は「タイミングではない」として、見送りを提言。3月22日の第3回に出たノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授も「日本を含め、世界経済は弱さが蔓延している」と述べ、消費税増税を先送りすべきだとの考えを示した。
第2回に出席したデール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授は「税負担を求める対象を投資から消費へ移すべきだ」として、消費税増税を主張。来年4月に増税すべきかについては、会合後、記者団に対し「判断は時期尚早」と述べ、明言を避けている。
記者の間で疑念が高まっているのは、有識者の発言の公表のあり方が、財務省に“操作”されているのではないか、ということだ。
とくに顕著だったのは第3回。講師として出席したクルーグマン氏は、かつて安倍首相に増税見送りを進言したことがあり、かねてから「8%の税率を5%に一時的に引き下げるべきだ」との主張してきたことでも知られていた。
クルーグマン氏のツイッターによると、同氏は会合で「財政的な下支えよりも長期的な財政問題を優先するという考え方は、大きな間違いだ。もちろん、ここでは私は、消費税のことを言っている」と発言し、消費税増税を急ぐべきではないとの考えを示した。会合後の囲み取材で記者団から「消費増税はやるべきでないと言ったのか」と聞かれ、「そうだ」と答えている。
ところがその後の政府のレクでは、担当者は「クルーグマン氏から消費税の問題があるとの指摘があった」と説明するのみ。記者が「クルーグマン氏は、会合後に記者団に対し『増税を見送るべきだと言った』と明らかにしているが」と念を押しても、「先ほどの説明以上のものは出なかった」と述べるだけだった >
(以上「産経新聞」より引用)
米国の経済学者の意見を聞くまでもないだろう、日本の経済学者でも御用学者以外はこの時期に消費増税すべきではないと考えている。そして少なからずの人が5%へ引き下げるべきだと主張している。
GDPの半分近くを占める経済のメインエンジン・個人消費を消費増税で冷やせば景気が悪化するのはわかりきった話だ。それを少しばかり明かりがさし始めた恢復期に5%から8%に増税したのがそもそもの誤りで、アベノミクスは消費増税以外には派遣業法の破壊しかしていないのだから、当然勤労者個人所得が実質減少するのも判り切った話だった。
それを失業率が下がっただの、就労人口が増加しただのと、事ある毎に勤労者の待遇に言及しないまま安倍氏は得意顔でまくし立てている。この国はプワー・ワーカーになっている現実を安倍氏は知らないようだ。
働いても働いてもその日暮らしでしかなく、家庭を営むどころか明日の未来設計すらできない若者が増えている。「恒産なくして恒心なし」とは社会秩序のことだが、それは安定した家庭を営めないことに通じる。この国の未来を明るくするには正社員を増加させることしかない、というのも判り切った話だ。
企業にばかり都合の良い政策を推進して国民が忘れ去られているのが安倍自公政権の国内政策だ。外交政策では隷米政策を本筋としながら、ロシアにも尻尾を振って見せ、ウクライナにも支援をするという支離滅裂なバラマキに終始している。
ただ日本に巨額な債務があるとしたら、それは財務官僚が主張する1000兆円を超える国債発行残高ではない。それは日本全国に建設された原発だ。原発の再稼働に安倍政権は闇雲に突っ走って不良固定資産化するのを防いでいるが、間違いなく時間の問題で寿命を終えて稼働を停止し、廃炉処分するしかない。その場合の廃炉手順や原子炉の解体手順や最終処分なども何も決まっていないし、廃炉技術も確立されていない。
それらにどれほどの費用と時間がかかるのか、財務官僚が「大変だ」と騒いでいる国債残高の比ではない。しかも、国家会計を複式簿記にして連結決算を実施すれば国債残は250から350兆円に圧縮されるのは自明の理だ。
消費増税を2年半延ばしたところで景気が回復するとは思えない。が、増税したら失速するのは目に見えていた。この国をダメにしているのは間違いなく官僚と馬鹿な政治家と、その政治家を取り巻く御用学者たちだ。そして政権への批判を忘れた取り巻きのマスメディアだ。なぜマスメディアはしっかりと三年半に亙るアベノミクスの検証をしないのだろうか。ほとほと腐りきったマスメディアにはウンザリだ。