2016年5月3日火曜日

03- 災害時名目の「緊急事態条項」 22弁護士会が異議

 自民党によって東日本大震災の後に強調されるようになった緊急事態条項は、いま熊本地方を襲っている大地震においても、「同条項があれば非常に有効であった」として櫻井よしこ氏らが必要性を強調しました。
 しかし「緊急事態条項の何によってどんな混乱が防げたのか」と記者から問われると、櫻井氏はそれに答えることが出来ませんでした
 4月28日 大震災に緊急事態条項が必要? 誰も納得しない
 もともと震災に関しては「災害対策基本法」などで完璧に対処できるというのが識者が既に指摘しているところであって、櫻井氏は災害をこの際脅迫的に活用しようという意識だけが旺盛で、そうした基礎知識がなかったのでした。
 
 神戸新聞が、全国22の弁護士会が「緊急事態条項(国家緊急権)」の新設に対して反対の声明を出していることを報じました
 その中には、東日本や阪神・淡路、新潟県中越地震を経験した、兵庫など被災5県の弁護士会も含まれていて、「災害対応を理由にした改憲論議は災害法制の無理解に基づいていると批判していると述べています
 以下に紹介します。      
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災害時名目の「緊急事態条項」 22弁護士会が異議
神戸新聞 2016年5月2日
 東日本大震災の後、憲法改正の焦点の一つに浮上した「緊急事態条項(国家緊急権)」の新設について、全国の22弁護士会が反対の声明を出している。東日本や阪神・淡路、新潟県中越地震を経験した兵庫など被災5県の弁護士会も含まれ、「災害対応を理由にした改憲論議は災害法制の無理解に基づいており、国民の不安をあおっている」と批判している。(木村信行)
 
 緊急事態条項は、地震などの巨大災害やテロ、武力衝突が発生した場合に憲法秩序を一時的に停止して首相の権限を強化し、国民の権利を制限する内容。
 自民党は東日本大震災後の2012年、「非常事態に対応する条項がいる」として改憲草案に盛り込んだ。津波被災地でがれきが救助を阻んだ事例があり、「私有財産が障害となり救助が遅れた」との主張が必要論の根拠の一つだ。安倍晋三首相は今年1月の参院予算委員会で「大切な課題」と指摘。菅義偉官房長官も熊本地震後、必要性に言及した。
 
 日本弁護士連合会などによると、15年以降、全国の22弁護士会(連合会を含む)が反対の声明を提出。福島第1原発事故で被災した福島県弁護士会は「政府の初動対応が不十分だったのは、『安全神話』の下、大規模な事故の発生を想定してこなかった対策の怠り」と指摘し、「被災者の救援と被災地の復興に必要なのは、政府への権力集中ではなく、既存の法制度を最大限活用すること」とする会長声明を出している。
 兵庫県弁護士会も「災害対策を理由にした緊急事態条項は不要」と表明。今年3月に声明を出した京都弁護士会は「権力分立、立憲主義といった憲法の基本原理を破壊する大きな危険がある」としている。
 
 同条項に詳しい永井幸寿弁護士(兵庫県弁護士会)は「日弁連が東北の自治体に実施したアンケートでは、ほぼ全ての自治体が災害対応で憲法が障害になった事例はないと回答している。災害の現実を踏まえた冷静な議論が必要だ」と指摘。菅官房長官の発言を踏まえ、「熊本地震を経験した九州の弁護士会でも今後、反対声明が増えるだろう」と話す。
 
【緊急事態条項】 国家緊急権と呼ばれ、フランスやロシア、韓国などが憲法に定める。米国、英国は「マーシャル・ロー」という不文の制度で国家緊急権を認める。日本の明治憲法は、緊急勅令や天皇の非常大権といった緊急権を定めていた。