2022年2月22日火曜日

22- 大阪維新が招いた未曾有の医療崩壊 死者も重症者も全国最多に(長周新聞)

 岸田首相は17日の会見で新型コロナ感染がピークアウトしたと強調しましたが、実態は高止まりの状態であり、20日時点の実効再生産数は、全国と東京都が0.98、大阪府が0.99で緩やかな再上昇の過程にあります。
 厚労省の統計(8日発表)では、陽性者の自宅療養者数は54万人にのぼっています。予想されたことですがコロナの重症者と死者の数は増加中です。
 長周新聞が「  大阪維新が招いた未曾有の医療崩壊 死者も重症者も全国最多に」という記事を出しました。第6波でも大阪府が最も悲惨な状況に陥っています。
 医療崩壊の悲惨さを端的に示す100万人当りの死者数(14日時点の累計)は、大阪府は381・9人で全国平均の23倍、東京都の15倍です。
 100万人当りの重症者数(前同)も大阪府は81・2人と群を抜いて多く、全国平均の7・3倍、東京都の15・3倍です。確保病床使用率も大阪府は81・4%とほぼ満床です。
 長周新聞は、保健所の麻痺にはじまり、医療機関の入院や外来、手術の制限、さらに救急医療も崩壊するというドミノ現象となり、高齢者施設が実質の軽症・中等症病床となっているのが現状で、大阪府の住民保護切り捨て政策は、府単独による対応に見切りを付けた降伏宣言にほかならず、国を挙げた支援体制なしには重症者や死者の増加を止められない事態となっていると述べています
 そんな中で新型コロナを五類に格下げすべきとする議論があることについて、そうなれば行政による入院勧告や感染者の追跡が不要になり、療養者への電話や入院調整業務などの負担が減る一方、自宅待機要請や入院要請もできなくなるため市中感染は放置され、必然的に中等症患者や重症者も増えるので、深刻な医療逼迫は解決されないとして、感染しても誰もが安心して治療が受けられる体制が担保されていない状態での五類格下げは、命の切り捨てでしかなく、それが過去最多の死者を出している最中に論議の俎上にのぼること自体、異常極まりないものといえるとしています
 そして、「身を切る改革」「小さな政府」といいながら行政機能を縮小してきた大阪が直面している惨憺たる事態は、弱肉強食を基本とした新自由主義のなれの果てというほかなく、切り刻まれてきたものの大きさを物語っていると述べています。
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政治の無責任で切り捨てられる生命 大阪維新が招いた未曾有の医療崩壊 死者も重症者も全国最多に
                          長周新聞 2022年2月19日
 年末年始から始まった新型コロナウイルス感染症の第六波は、年明けからまたたく間に全国を席巻し、これまでのどの段階よりも大規模な数に膨れあがっている。全国の1日当りの新規感染者数は5日に過去最多の10万5620人を記録し、1週間平均では8万6000人をこえ、最初に国が緊急事態宣言を出した第1波のピーク(2020年4月11日・491人)の175倍となっている。全国では感染症対策の入り口である保健所機能が麻痺し、陽性率が8割をこえた神奈川県では検査数や陽性率の公表を停止したり、死者数が全国最多となった大阪府では2万人以上の陽性者の集計漏れが明らかになるなど、検査・隔離・治療に至る感染症対策の根幹がドミノ倒しのように崩壊している。「オミクロン株は軽症」という評価だけが為政者の責任逃れの方便として都合よく使われ、災害級の疫病対策を自助努力に丸投げする無政府状態を見せつけている。

自宅療養者は全国54万人超え
 日本でも年明けからまたたく間に全国に広がったオミクロン株は、これまでのどの変異株よりも感染力が強く、世界各国でも欧米を中心に感染者数は過去最多にのぼった。その一方、重症化リスクが低いというデータが広く共有されているのも事実で、デルタ株と比較して、イギリスでは入院リスクが約3分の1、アメリカではICU入室リスクが0・26倍、死亡リスクは0.09倍、南アフリカでは入院リスクが0.2倍、重症化リスクは0・3倍と報告されている。
 だが1月半ばに1日当りの感染者数が130万人をこえて世界最多となった米国では、新型コロナ感染による死者が毎月数万人規模で増し、4日には90万人に到達。米疾病対策センター(CDC)の統計では75%近くが65歳以上となっている。重症化リスクが低くても、分母となる感染者数が多ければ、比例して死者も増える。とくに基礎疾患を持つ患者やワクチン未接種者の死亡率が高いことも報告されている。
 日本国内も例外ではない。米軍基地経由で広がった沖縄や岩国、広島などを皮切りに全国で爆発的感染となり、検査や調査、入院調整などをおこなう保健所機能の麻痺が深刻化。市中感染が広がることで医療従事者の感染や濃厚接触者が増え、医療機関では確保病床が逼迫し、入院や手術の制限をしても患者を受け入れられず、厚労省の統計(8日発表)では、陽性者の自宅療養者数は54万3045人にのぼっている。前週よりも10万8000人増加し、3週連続で過去最多を更新中だ。
 自宅療養者数を都道府県別にみると、最多の東京都が8万1368人、次いで神奈川県が6万3105人、大阪府が4万4686人、福岡県が4万4335人、兵庫県が4万2403人となっている。1日の死者数も連日200人をこえているが、一ケタ台で緊急事態宣言を連発していたころと比べても政府の熱量は低い。

 各地の保健所では、業務逼迫を理由に濃厚接触者の追跡調査をやらなくなり、無料PCR検査も混雑して受けられない。陽性者への健康調査も中止(申告に切り換え)しており、統計上の数字自体も実態を反映しているとはいえないものとなっている。
 陽性率(検査数に対する陽性者の割合)が8割をこえた神奈川県は1月28日、「重症化リスクの低い人」には「自主療養」を認める制度を導入し、食料や日用品の配布を中止。「近所や知人、近所での助け合いも検討してほしい」などとしている。自宅療養者に対する食料支援が滞っている自治体は少なくなく、10日間の自主隔離を求めながら、食料や日用品の調達のためには陽性でも外出せざるを得ないという矛盾した政策となっている。

死者も重症者も全国最多  維新の大阪・惨憺たる状況
 ①人口100万人当りの死者数(上位順)              2月14日現在

順 位

1

2

3

4

5

6

 

 

大阪府

北海道

兵庫県

沖縄県

東京都

千葉県

全国

 

死者数

381・9

308・5

287・8

286・9

256・1

179・5

162・4

 

 なかでも深刻度を極めているのが、大阪維新による府市統合(バーチャル都構想)などの「小さな政府」を実行中の大阪府だ。新規感染者数は連日1万人前後となり、累計死者数は14日現在で3375人で、東京都の3317人を抜いて全国最多にのぼっている。人口100万人当りの死者数【①参照】を見ると、全国平均の23倍、東京都の15倍だ。
 人口100万人当りの重症者数【②参照】も81・2人と群を抜いて多く、全国平均の7・3倍におよぶ確保病床使用率も81・4%とほぼ満床で、重症病床も50%をこえている。軽症中等症病床に至っては使用率が100%をこえており、新たな中等症患者は入院先がない状態に陥った。そのため自宅療養・療養等調整中の人数【③参照】も増え、人口10万人当り1440人と全国最多にのぼっている。大阪府での市中感染の拡大が近隣他府県にも波及し、関西圏全体で感染状況が悪化している要因の一つと見られる。
 -1 人口100万人当りの重症者数(上位順)           2月14日現在

順 位

1

2

3

4

5

6

 

 

大阪府

京都府

沖縄県

奈良県

高知県

神奈川県

全国

 

死者数

81・2

42・3

21・1

16・6

15・6

10・4

11・1

 

 -2 確保病床の使用率コロナ病床使用率の上位順) 単位:%   2月14日現在

順 位

1

2

3

4

5

6

7

 

 

大阪府

奈良県

兵庫県

福岡県

神奈川県

石川県

熊本県

 

コロナ病床

81・4

77・0

73・5

70・8

68・4

68・4

63・2

 

重症病床

50・5

61・8

34・5

7・3

39・5

21・6

13・2

 

 ③人口10万人当りの自宅療養者・療養先調整中の人数(上位順)   2月8日現在

順 位

1

2

3

4

5

6

7

 

 

大阪府

東京都

兵庫県

福岡県

京都府

奈良県

神奈川県

 

死者数

1440

1145

998

950

892

841

714

 

 保健所機能が統合集約された大阪府では、2年前の第一波から保健所の人員不足が指摘され、現場からは業務逼迫で過労死ラインをこえる勤務を強いられている現状とともに、人員拡充などの体制強化を求める声があいついできた。日常業務に新型コロナ対応が加わった保健所では、医療機関からの届出を受けて感染者からの症状を聞きとり、入院、宿泊療養、自宅療養を判断したり、感染者の病院搬送や自宅療養者の健康観察、生活支援に至るまで幅広い業務に職員が忙殺されている。
 大阪府では、職員組合からの度重なる要請を受けて、21年度に「コロナ対策」として保健所やワクチン担当部局などで約100人を増員したが、感染者の急増によって濃厚接触者の追跡は不可能になり、自宅療養者への連絡も滞り、保健所から一度も連絡がないまま自宅で亡くなる高齢者が後を絶たない。入院や療養先の調整中(連絡待ち)感染者は、府全体で6万8000人(4日現在)にのぼっている。
 大阪府管轄の保健所は1990年度には53カ所あったが、この20年で18カ所へと約3分の1に減少人口270万人の大阪市では全24区にあった保健所が1カ所に集約され、24区は保健所機能のない「保健センター」に格下げとなった。人口10万人当りの保健師数(2020年・厚労省統計)は、全国平均の44・1人に対して、大阪府は約半分の22・7人と極めて少ない。
 大阪維新の会代表の吉村洋文知事はSNSで「保健所の削減は太田府政時代」「橋下時代に保健所削減はデマ」と開き直っていたが、橋下府政から始まる維新行政でも保健所の業務改革がおこなわれ、正規職員を非正規化し、検査で重要な役割を担う「臨床・衛生検査技師」も大幅に削減していた。いずれにしても現在のコロナ危機に対応できるだけの体制強化には至っておらず、過去の責任者を追及する前に現状にどう向き合うかが問われている。
 大阪市では、保健所での入力作業が逼迫し、1月末に1万2700人分、2月上旬には9200人分の感染者が統計から漏れていることが判明。もはや実態把握すら不可能になっていることを露呈している。大阪府は、陽性者への保健所からの連絡を重症化リスクの高い65歳以上に限定し、それ以外については取りやめる方針を示すなど、公的保護の足切りに拍車が掛かっている。

入院対象も線引き 救急要請も制限
 感染症対策の「入り口」である保健所体制の崩壊は、必然的にその後の治療や療養体制を逼迫させる。検査が遅れることが感染者捕捉の遅れにつながり、感染者を捕捉できなければ市中感染を招く。無症状や軽症段階での治療が遅れることによって症状が悪化してから医療機関に運ばれる人が増え、重症患者が増加する。とくに人手や設備が必要となる重症者の増加は、医療機関を逼迫させ、ますます患者を受け入れることが困難になる。このような悪循環が2年間も解決されぬまま、死者が全国最多となる事態を招いているのが大阪といえる。
 この事態を受けて大阪府は8日、コロナ患者の入院基準を「中等症Ⅱ」(酸素飽和度が93%以下で酸素療法を要するケース)以上に絞ることを発表。医療機関に対して「不急の手術や入院」を延期するよう要請した。中等症Ⅱとは人工呼吸器を装着する「重症」の一つ手前で、生命の危険が迫っている状態だ。入院対象外となる中等症Ⅰは酸素投与の必要はなくても「呼吸困難、肺炎所見」がある状態で、厚労省のマニュアルでも入院治療の対象になっている。
 オミクロン株では、発症から中等症Ⅱ以上に悪化するまでの期間が、デルタ株の7日間よりも短く、3日が最多(広島県健康福祉局調べ)といわれ、入院調整が長引いて軽症段階での治療が遅れると、重症患者が急速に増えることが以前から指摘されてきた。いくら抗ウイルス薬や中和抗体薬があっても、早期治療をおこなわなければ意味をなさない。
 現に大阪府内では、発熱などコロナ疑いの症状が出ても検査もできず、自前の抗原検査キットで陽性反応が出ても、入院先がないため医師から「自主療養」を指示され、自宅で容体が急変したときには手遅れとなって死亡するという例があいついでいる
 医療崩壊によって死者が急増するなかでも、第三波のときのように自衛隊の派遣要請をおこなう気配もなく、医療体制の拡充よりも、入院・保護の線引きを無症状者から軽症者、そして中等症患者にまで引き上げるという、命の切り捨て路線へと舵を切っている。
 さらに大阪市消防局は4日、「高齢者施設で療養している新型コロナ陽性者の症状が悪化した場合、すぐに119番通報するのは控えてほしい」と通達。本来窓口となって入院調整などをおこなうべき保健所が業務逼迫で連絡がとれないため、高齢者施設から消防に直接救急車を要請するケースが増え、本来の救急出動ができなくなっていることがその理由だ。大阪市消防局によると、1月31日~2月6日の「救急搬送困難事案」は552件にのぼり、うち22件は待機時間が6時間以上。搬送までに丸2日(48時間)を要したケースもある。
 保健所の麻痺にはじまり、医療機関の入院や外来、手術の制限、さらに救急医療も崩壊するというドミノ現象となり、高齢者施設が実質の軽症・中等症病床となっているのが現状だ。大阪府の住民保護切り捨て政策は、府単独による対応に見切りを付けた降伏宣言にほかならず、国を挙げた支援体制なしには重症者や死者の増加を止められない事態となっている。

「五類」への引下げ要求  行政の責任放棄
 だが、大阪府の吉村知事は14日、「新規感染者数は、大阪も含め全国的に減っている傾向」「意味がない」との理由で「緊急事態宣言」の要請を見送っている。一方で、大阪維新の会や日本維新の会が主張しているのは、新型コロナの感染症法上の扱いを現在の「二類相当」から、季節性のインフルエンザと同じ「五類」に引き下げることや、現在14日間となっている濃厚接触者の宿泊施設などでの待機期間を短縮することだ。
 五類への格下げは、コロナ対策に行き詰まって辞任した安倍元首相などが主張しているもので、水際対策や感染症対策の緩和に舵を切ろうとしている岸田政府のなかでも主流になりつつある論調だ。それは政治によって崩壊を招いた公的な防疫・医療体制を抜本的に立て直すのではなく、患者を切り捨て、自助努力に丸投げすることを法的に認めることを意味している。維新がそのお先棒を担いでおり、さながら大阪は実験場にされているようにもみえる。
 新型コロナを五類に格下げすると、行政による入院勧告や感染者の追跡が不要になり、療養者への電話や入院調整業務などの負担が減る一方、自宅待機要請や入院要請もできなくなるため市中感染は放置され、必然的に中等症患者や重症者も増える。深刻な医療逼迫は解決されない
 さらに、現在は医療費や検査費用も公費負担と定められているため、PCR検査、コロナ病棟への入院、高額治療も無料で受けられるが、五類感染症になると検査費用(PCR検査、画像検査、血液検査など)、治療(レムデシビルは5日治療で約38万円の薬価)、酸素投与、人工呼吸管理などもすべて自己負担(3割)となり、高額医療費制度の適用を申請しなければならなくなる。
 医師への報告義務もなくなるが、入院施設や隔離施設も自分で探さなければならなくなるなど、公衆衛生や公的医療を管理する行政の責任を放棄し、「後は野となれ、山となれ」を合法化することを意味している
 これに対して大阪府内の医療関係者は「オミクロン株はデルタ株よりも重症化率は低いが、単一ウイルスの感染症で大阪府内の集中治療ベッドが3桁台で埋まるというのは、季節性インフルエンザでは見られなかった現象」であり、「オミクロン株は軽症という考えは捨てる必要がある」と警鐘を鳴らしている。たとえ感染しても誰もが安心して治療が受けられる体制が担保されていない状態での五類格下げは、命の切り捨てでしかなく、それが過去最多の死者を出している最中に論議の俎上にのぼること自体、異常極まりないものといえる。
 感染者が過去最多となり、救える命が救えない医療崩壊を招いても、国としての抜本的な対策はなく、事実上の放置が続いている。そればかりかコロナ以前に立てた「地域医療構想」に沿って急性期病床の大幅削減を進めているのが自民党政府であり、医療界からの見直し要求にも応じる気配はない。「身を切る改革」「小さな政府」といいながら行政機能を縮小してきた大阪が直面している惨憺たる事態は、弱肉強食を基本とした新自由主義のなれの果てというほかなく、切り刻まれてきたものの大きさを物語っている