岸田首相は「官僚依存の政治」を選択したようなのですが、当面の課題である新型コロナ感染対策では、この2年間厚労省は何の役にも立たないどころか、PCR検査の拡大に一貫して反対するという世界に例のない主張をしてきた部署なので、的確な対策など出せる筈がありません。
それに加えて岸田首相自身も、心中では「コロナはもうすぐ収まる」と見ている節があるので、なお更岸田政権に何かを期待するのは無理です。岸田氏は、口先では「検査と隔離」を唱えていますが、実行が伴っていないので国民の側も諦めているという感じです。
ではオミクロン株はもうすぐ収まるのかと言えばそんな兆候はありません。確実なのはこの先重症者や死者数が増えて行くことで、2月以降、1日当たりの死者数は126人(5日)~162人(9日)と急激に増えています。感染してから重症化して死亡するまでの期間は大体2週間ほどと言われているので、もまだ感染のピークが見えない以上、少なくとも死者は2週間以上は増え続け医療崩壊がますます深刻になります。それでなくとも実質賃金はマイナスが続き、資源高と円安によるインフレで庶民の生活は悪化する一方なので、政権が安泰で推移する筈がありません。
元経産省官僚の古賀茂明氏によると岸田氏の敗因は3つあり、第1は衆院の解散総選挙を急いだため、ワクチンの確保や接種体制の拡充整備が遅れたこと、第2は、官僚に寄り添う姿勢を見せたことで官僚が首相を甘く見るようになったこと、第3は閣僚人事で、自分の地位を脅かすような実力者をワクチン担当にしなかったことであるとして、菅前首相を反面教師としてやってきたことがことごとく裏目に出たと指摘しています。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
併せて同紙の記事「オミクロン株を『軽症』と侮るな! 後遺症続々、治っても続く謎の咳と喉の痛み症状は軽症でも、予想以上に後遺症は重いと」を紹介します。
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もう感染者数も分からない 岸田政権のコロナ対応は「完全お手上げ」
日刊ゲンダイ 2022年2月8日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「2月のできるだけ早期に、1日100万回までペースアップすることを目指して取り組みを強化する」
新型コロナウイルス対策などに関する集中審議が開かれた7日の衆院予算委員会。これまでワクチン接種について数値目標を口にしたがらなかった岸田首相が、ついに追い詰められ、2月後半の「100万回接種」実現を表明した。3回目接種率5.9%(7日時点)はOECD38カ国中、依然最下位だ。
しかし、今さら感は否めない。「100万回」は菅前首相が掲げた1、2回目接種時の目標設定と同じ。当時は最大で1日170万回が実現している。もっとスピードアップできないものなのか。
当初のワクチン供給量不足や「2回目接種から8カ月後」に固執した政府の後手対応が、いまだ足を引っ張る。
自衛隊が再開させた大規模接種センターの能力は、東京会場が現在1日2160回。前週の3倍となり、今月10日以降は5040回まで増えるが、昨年の1日1万回接種にはほど遠い。大阪会場も同様で、現在の1日960回を、14日をめどに2500回まで増強するが、やはり昨年の半分だ。つくづく、準備の遅れが悔やまれる。
オミクロン株の蔓延で、感染者が1日10万人規模で増えているのは、3回目のブースター接種が遅れていることと無関係ではないだろう。
全国の自宅療養者は43万人(2日時点)を超えた。症状が出た濃厚接触者を医師が検査することなく陽性と診断する「みなし陽性」を導入した自治体は少なくとも21都道府県に上る。医療資源を重症化リスクの高い人に振り向けるという説明は、体のいい言い訳でしかない。岸田政権がやっていることは、感染者抑制でもなんでもなく、保健所や医療機関をパンクさせないための“業務放棄”と“患者選別”なのである。
「検査と隔離」の大原則はどこへ
中でも、1万2700人分の感染者の計上漏れがあった大阪市は酷かった。政府の情報共有システム「ハーシス」への入力作業が遅れたことが原因。
維新の代表でもある松井一郎市長は「マンパワー不足」と説明し、「100%対応せえと言われても、人材も含め持ってる資源の中では非常に厳しい」と開き直る始末だった。
大阪市では「ファーストタッチ」と呼ばれる保健所から患者への最初の連絡も1週間遅れている。感染者は完全に“放置”なのだ。
神奈川県の「みなし陽性」の対応にもア然だ。重症化リスクの低い人で、抗原検査キットや無料のPCR検査で陽性となった場合は、医師の診断ナシで勝手に自宅療養する「自主療養」を導入した。健康観察は自分で行い、体調が悪化したら医療機関を受診となっているが、この医療逼迫で緊急時に受け入れてもらえるのか?
さらに神奈川では、低リスクの自宅療養者への食料と日用品の配送も中止。だからと言って、「感染者が物資の買い出しのために最小限の外出をするのはやむを得ない」と認めたのには驚愕だ。「検査と隔離」という感染症対策の大原則はどこへやら、である。
こんなデタラメばかりでは、毎日の感染者数発表に何の意味があるのか。実際の感染者は数倍、数十倍いるのではないのか。
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「医療は科学ですよ。『みなし陽性』は統計上、どうカウントするのでしょう? インフルエンザと風邪の区別がつかなかった20年ほど前は、医者は勘と経験で判断していた。その時代に戻ってしまいました。なぜそんなことになるのかと言えば、検査キットが足りないから。バカみたいな話です。政府がまともに機能していない。昨年9~12月の余裕のあった時期に油断して何の対策もしてこなかったツケです」
菅前首相を「反面教師」にしたことが裏目
週末の世論調査で、岸田内閣の支持率は大幅ダウンだった。読売新聞は58%で先月から8ポイント下落、JNNは60.2%で同6.5ポイント下落した。ズルズル低下するコロナ対策への評価が響いているのは間違いない。ワクチン接種のスピードが「遅い」は59%で半数を超えた。
岸田政権のワクチン接種遅れの原因について、元経産官僚の古賀茂明氏が、自身が主宰するインターネットサロン「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」で、<菅さんを反面教師とした岸田首相の誤算>と題した興味深い分析をしている。
それによると、岸田の敗因は3つある。
第1に衆院の解散総選挙を急いだこと。菅は政権発足当初、支持率が非常に高く、早期解散論が巻き起こったものの、「コロナ対策最優先」として解散しなかった。しかしその後、支持率が下落、自民党内から「不人気首相では衆院選を戦えない」と政権から引きずり降ろされた。
これを反面教師にした岸田は、総理就任直後に解散、最短で選挙をし、自民党は予想外の大勝。政権基盤は強化された。しかし当時は、解散よりもワクチン確保や接種体制整備を最優先すべき時期だった。選挙を遅らせてでも、官僚に具体的指示を出しておけば、接種が前倒しできていた可能性がある。
第2の問題は、菅の強権的官僚支配のスタイルを改め、官僚に寄り添う姿勢を見せたこと。岸田は官僚たちの評判はいいが、逆に言うと、全く恐れられていない。接種時期を8カ月後から6カ月後に前倒しするのにドタバタが繰り広げられたのも、官僚が岸田を甘く見たからだ。
第3の失敗は閣僚人事。菅は「仕事師内閣」を自称し、重要なポストに実力のある議員を就けた。特に、河野太郎ワクチン担当相はEUとの交渉でワクチン確保に成果を上げ、1日100万回接種を実現し、第5波収束の原動力となった。
一方の岸田政権の堀内詔子ワクチン担当相は実力ゼロ。岸田は、菅が自分より目立つ河野を活躍させ、総裁候補に押し上げてしまったことを反面教師として、自分の地位を脅かすような実力者をワクチン担当にしなかった。その結果、ワクチン接種の加速化の見通しが立たない状況になっている。
つまり、岸田が菅を反面教師としてやってきたことが、ことごとく裏目に出ているということだ。
危機意識の欠如と感覚のズレ
改めて古賀茂明氏が言う。
「結局、岸田首相は危機意識が非常に低いのだと思います。ワクチン接種がコロナ対策のカギだというのは、本人も分かっていたはずです。ところが、岸田首相は官僚の話を聞くだけ。これだけワクチン接種が遅れていたら、官僚が1人や2人飛ばされてもおかしくないのに、そうした雰囲気はまったくありません。この危機的状況下で、安倍元首相のご機嫌を取って、自民党は全国で憲法集会をやろうというのですから、感覚がズレています」
ワクチン接種遅れに慌てるそぶりを見せながらも、「そのうちピークアウトするだろう」が岸田のホンネではないか。だが、そう簡単ではない。感染が若者から高齢者や子どもに移り、感染者数は高止まりしている。ピークはいつになるか分からない。
「死者数が増えているのが気になります。現在1日100人程度ですが、まだピークが見えない。感染者数の増加から2週間程度遅れて重症者や死者が増えるとされるため、まだ増える可能性が高く、医療崩壊がますます可視化されます。加えて、懸念されるのは経済です。岸田首相はコロナ禍からの回復を甘く見ていますが、実質賃金はマイナスが続き、資源高と円安によるインフレで庶民の生活は悪化必至です。春闘も岸田首相の要請だけで3%の賃上げなんてありえません。景気が悪化し支持率急落もありえます」(古賀茂明氏=前出)
もはやコロナ対策に「完全お手上げ」の岸田政権。国民の多くが、その無能に気づいてきた。安倍・菅に続く“コロナ退陣”があるかもしれない。
オミクロン株を「軽症」と侮るな! 後遺症続々、治っても続く謎の咳と喉の痛み
日刊ゲンダイ 2022/02/10
オミクロン株が猛威を振るい、感染のピークが見えてこない。8日の全国の新規感染者は10万770人に上り、死者は1日当たりでは今年最多となる155人が確認された。大阪府では新規感染者が2万人の大台を突破してしまった。いま、懸念されているのが、オミクロン株の“後遺症”だ。症状は軽症でも、予想以上に後遺症は重いという。
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「咳がなかなか治まらないですね」
都内在住の60代男性は、後遺症についてこう語る。先月25日、喉の痛みを感じ、咳が出はじめたという。喉の痛みと咳以外に症状はなかったが、今月2日に陽性が判明し、それ以降、ずっと自宅療養中だ。
「2日夜から抗ウイルス薬のモルヌピラビルを5日分処方してもらい、全て飲み切ると、喉の痛みはなくなりました。でも、咳が止まらず、外に出ていいものか迷っているところです」
別の50代男性は、先月19日に倦怠感、咽頭痛といった症状が表れ、39度弱の発熱。1週間ほどで症状が落ち着き、食欲も回復したが、喉の痛みと軽い咳の症状が今も残っているという。
「いまだに喉のイガイガが残っており、ときおり咳き込むような状態です。乾燥するとより咳が出やすいので、のど飴やトローチでゴマカしています」
どうやら、オミクロン感染から回復した人の多くが“咳”に悩まされているようだ。ここ数日、ツイッターでも〈コロナのあと、咳が続いてて、いったん出始めると止まらない〉〈咳と痰が治りません〉といった声が続々と上がっている。味覚障害や脱毛といった後遺症はあまりないようだが、咳と喉の痛みが続くケースが多いようだ。
後遺症が重いと「寝たきり」状態に
オミクロン株は喉や鼻でウイルスが増殖するといわれる。上気道での増殖速度は、デルタ株の70倍だ。喉の痛みや咳症状が残り続けるのは、オミクロン株特有の後遺症なのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏(内科医)はこう言う。
「オミクロン株にかかわらず、典型的な風邪の後遺症だと考えられます。『感冒後咳嗽』といって、熱や倦怠感が引いた後も咳が続くことがあるのです。ウイルスを排出することはないので、発熱などの症状がなければ心配はいりません。ただ、1~2カ月続くこともある。また、一度咳が出始めるとアレルギーのように連続して止まらなくなるケースもあります。高齢者の場合、咳で胸に負担がかかり、肋骨を骨折してしまうこともある。そうなる前に受診することをお勧めします」
昨年3月からコロナ後遺症の専門外来を開いている「ヒラハタクリニック」(東京・渋谷)の平畑光一院長はこう言う。
「オミクロン感染由来と思われる後遺症を患う方を、今年1月以降21人診てきましたが、うち5人が週の半分は自宅で横になっている『準寝たきり』状態です。年齢は10~40代と若い方ばかり。酷い症状だと、指一本動かせません。ドライヤーや歯ブラシですら重くて持てない方がいます。『倦怠感』と言うと軽く思われるかもしれませんが、実態は全く違う。オミクロン自体の症状が軽いからといって、後遺症も軽いとは限りません」
やはりオミクロン株をなめていると、後悔することになりそうだ。