内閣官房機密費「政策推進費」は、領収書も不要で内閣官房長官が自由に使えるものですが、しんぶん赤旗の調査によると、菅前政権が発足した2020年9月から退陣までの約1年に支出された「政策推進費」は12億4000万円にのぼりました。
雨の日も、風の日も、盆も正月も休まずに毎日313万円を使うとその額になります。そんな膨大な額が秘密裡に自由に使えるとは夢のような話ですが、その財源はいうまでもなく税金です。
一昨年度は年収200万円以下の国民が1200万人もいました。その後コロナ禍で低所得者はさらに増えたことでしょう。国民はこの低所得の中から所得税、消費税、各種保険料等を支払うので、可処分所得はもっと大幅に下がるわけで、正に「天国」と「地獄」の差です。
名目上は「内政・外交を円滑かつ効果的に遂行するため」の経費ですが、そんな風に思っている人は殆どいない筈です。「悪しき慣習」以外のものではありません。
しんぶん赤旗が、「闇の官房機密費 使途隠した税の支出にメスを」とする主張を掲げました。
併せて3日付の同紙の記事「官房機密費『政策推進費』“領収書不要金”菅前内閣12・4億円 ~ 】を紹介します。
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(主張) 闇の官房機密費 使途隠した税の支出にメスを
しんぶん赤旗 2022年2月7日
菅義偉前政権が発足した2020年9月から退陣までの約1年に支出された内閣官房機密費(報償費)13億円超のうち、官房長官が自由勝手に使える「政策推進費」は12億4000万円にのぼることが本紙調査(3日付)で分かりました。政策推進費は、領収書が不要の“つかみ金”です。菅政権時代の支出先は当時の加藤勝信官房長官しか知りません。政策推進費をはじめとする官房機密費は過去に国会対策やマスメディア対策などに使われたことが判明し、問題になってきました。使途を隠した税金の使い方に批判は絶えません。メスを入れることが必要です。
1日平均313万円使う
官房機密費は国庫から支出されています。政策推進費の他に「活動関係費」「調査情報対策費」があります。ほとんどを占める政策推進費は、官房長官の管理する金庫に入金された時点で支出完了とされます。使い道は官房長官の裁量次第です。
加藤官房長官は菅首相退陣直前の21年10月1日の会見で、同政権下で9月末までに支出した官房機密費は13億3000万円、うち政策推進費は11億5500万円だと明らかにしました。しかし本紙が情報公開請求で入手した資料では、会見当日に8500万円が政策推進費に支出されていました。合わせて加藤氏は12億4000万円の政策推進費を手にしました。
官房長官の金庫の出入金記録によれば12億200万円が使われていました。月9000万円前後の支出です。384日間官房長官をつとめた加藤氏は1日平均313万円を使った計算になります。
21年3月には、1億8630万円の政策推進費が使われていました。年度末に多額の政策推進費が支出される手法は、安倍晋三政権の菅義偉官房長官時代と同じです。いつも年度末に残金がほとんどなくなります。
加藤氏は機密費について「その都度の判断で機動的に使用する経費」と強調します。しかし、年度末に使い切るやり方を「機動的」と説明するには、あまりに無理があります。税金や政治資金の問題に詳しい識者は「私的流用の疑い」を指摘しています。
菅官房長官時代の7年8カ月の政策推進費は86億8000万円でした。菅氏は長官在任中の20年秋、自民党総裁選に立候補しました。同氏は出馬表明前日の9月1日に9020万円の政策推進費を受け取り、首相就任の9月16日までに4820万円を支出しました。国会で「総裁選のために使ったといわれても仕方ない」と追及され、菅氏は否定しましたが、裏付ける証拠は示しません。
“つかみ金”許されない
官房長官経験者が官房機密費を党利党略的に使った実態を生々しく証言した例は少なくありません。菅氏や加藤氏は使途を明らかにすべきです。
最高裁は18年、政策推進費に関する資料の一部開示を命じました。学者や弁護士でつくる市民団体は、政策推進費の目的外支出を明文で禁止し一定期間後に使途を公表するよう政府に申し入れています。「税金の私物化」を許す仕組みをこのままにしておくことはできません。公開のルールづくりはもちろん、国民の不信を招く官房機密費のあり方を根本から問い直すことが不可欠です。
官房機密費「政策推進費」“領収書不要金”菅前内閣12・4億円
加藤官房長官 退任直前 会見日も8500万円支出
しんぶん赤旗 2022年2月3日
菅義偉前内閣が支出した官房機密費(報償費)のうち当時の加藤勝信官房長官しか使途を知らない領収書不要の“つかみ金”である「政策推進費」が12億4000万円にのぼることが2日、本紙が情報公開請求で入手した資料で分かりました。加藤氏は退任直前の会見で、2021年9月末時点の支出額を約11億6000万円と説明していましたが、会見当日に新たに多額の政策推進費を支出していました。(矢野昌弘)
←(写真)政策推進費の出入りを記録した「政策推進費受払簿」。昨年10月1日に加藤氏が8500万円の政策推進費を金庫に移したことが記録されています(右)
加藤氏は、菅内閣が総辞職する3日前の昨年10月1日に記者会見をしました。
会見では菅内閣が発足した2020年9月16日から21年9月末までに加藤氏の裁量で自由に使える政策推進費の支出額を明らかにしていました。
政策推進費は、官房機密費の金庫から、官房長官自身が管理する金庫にお金が移された時点で“支出完了”となるお金です。
本紙が入手した資料によると、加藤氏は昨年9月末までに11億5500万円の政策推進費を支出していました。
資料によれば、会見した当日に加藤氏は、8500万円を政策推進費として、自身が管理する金庫にお金を移していました。
これを加えると、菅内閣は合計12億4000万円の政策推進費を1年余りの在任期間中に支出したことになります。
また、官房長官が管理する金庫からのお金の出入りを記録した「政策推進費受払簿」によると、加藤氏が政策推進費を納めた金庫から計12億200万円を引き出しています。
加藤氏は、会見で明らかにした11億5500万円に加え、前任の菅官房長官(当時)が金庫に残していった4200万円を引き出した他、昨年10月1日に政策推進費を納めた金庫から500万円を退任するまでの4日間に引き出していました。
この計12億200万円が何に誰に使われたのかは、加藤氏しか知らない“使途秘匿金”です。384日間の官房長官在任中、毎日313万円が加藤氏の手から消えていった計算になります。
加藤氏が退任した際、政策推進費の金庫に残された資金は後任の松野博一官房長官に引き継がれたかっこうです。
菅内閣は発足早々、日本学術会議が推薦する委員6人を任命拒否し、今も取り消されていません。
菅首相は「(学術会議は)年間約10億円を使っている。国民に理解される存在でなければ」といいながら、自身の内閣ではそれを超える多額の使途秘匿金を使ったことになります。