2022年2月1日火曜日

“戦狼”中国総領事・薛剣氏を直撃(日刊ゲンダイ)

 トランプ以降、米国は「中国叩き」と「ロシア叩き」に集中しています。米国のメディアがCIAに牛耳られているのは言うまでもないことですが、それは西側主要国のメディアについても同様であって、「一犬吠えれば万犬が従う」かのように一斉に論調を合わせます。日本もそうでありそれ以上です。
 日本が何故近隣国である中国や韓国を毛嫌いし、その反対に横暴な米国を何故「崇め奉ろう」とするのか不思議なことです。
 日刊ゲンダイが、駐大阪中国総領事の薛剣氏を「注目の人」として直撃インタビューしました。
 同氏は〝戦う狼”として 日本の中国報道、アメリカの対中政策に過激なツイッターを連発し、その一方で民間交流を積極的に展開しているということです。
 根拠のはっきりしない情報を真に受けて中国を毛嫌いするのは間違いです。新疆ウイグル自治区での人権侵害問題は、根も葉もないことではないと思いますが、全てが米国など西側の情報網を経由したものである点は間違いありません。
 逆に、5年前の一時期、新疆では数千件ものテロ破壊事件があり、ウイグル族を含めた無辜の中国人が多数犠牲になった事実は殆ど報道されませんでした。
 薛剣氏は、日本に氏のような狼はいるのかと問われ、「日本のメディア、政界での中国言論、書店の中国関連書籍を見てみれば、中国の“戦狼”外交官など微々たる存在」と答えています (^○^) 中国の言い分も聞くべきです。
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注目の人 直撃インタビュー
米国の対中政策に過激なツイッターを連発し注目! 
          駐大阪中国総領事・薛剣氏を直撃
                          日刊ゲンダイ 2022/01/31
 戦狼か? パンダか? 日本の中国報道、アメリカの対中政策に過激なツイッターを連発し、その一方で民間交流を積極的に展開する駐大阪中国総領事に注目が集まっている。“戦狼”に駆り立てたものは何なのか? 来週開幕する北京冬季五輪への西側の外交的ボイコットをどう断じるのか? 総領事を直撃した。
                ◇  ◇  ◇
 ― 北京冬季五輪が来週2月4日に迫りました。
 北京五輪は東京五輪に続くコロナ禍の下で行われる特別なスポーツ大会です。主催国として簡素かつ安全な開催に自信を持っています。各国の選手は最高の演技が期待でき、世界に大きな希望と勇気を与えられると確信しています。

 ― 新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に西側主要国は外交的ボイコットを打ち出しました。
 五輪精神に反するアメリカなどの行為を残念に思わざるを得ません。国際社会の大多数はこれを受け入れることはできません。北京五輪がこうしたことに邪魔されることはありません。コロナ禍が続いているにもかかわらずロシア、パキスタン、ポーランド、南米など多くの国の指導者が参加してくれます。国際社会が一丸となった明るいメッセージを発信できるでしょう。

 ― 日本は同調していませんが、曖昧な姿勢です。
 中日両国は隣国として協力することを約束しています。約束を守って支援してもらいたいです。羽生結弦選手、大阪総領事館管内の三浦璃来選手、坂本花織選手(いずれもフィギュアスケート)らは中国にも多くのファンがいます。日本からも温かい声援をいただけると信じます。

■日本人の9割が中国に好感なし、に危機感
 ― 昨年6月の着任以来、過激なツイッターが注目を集めています。
 着任して半年がたちました。総領事として率先して民間交流を積極的に進めなくてはとの思いが強くあります。去年の世論調査では日本人の9割が中国に好感を持っていません。これに危機感を持って交流を推し進めています。私は農村育ちなので援農ボランティアをやり、牡蠣の収穫も手伝い、大工仕事も体験しました。海外で最も多いパンダが大阪総領事館管内(神戸市立王子動物園、南紀白浜アドベンチャーワールド)にいます。私はパンダ外交を積極的にやって、パンダ総領事とも言われています(笑い)。パンダを生きたおもちゃとしてではなく、パンダ愛から人間愛へと交流を深めてもらいたいです。

 ― 日本人の9割が中国に好感を持っていないと指摘されました。
 一番の原因は、中国のことを知らないからだと思います。相互理解の前提は相手を知ることがスタートです。中国が変化しているなかで実際の中国の状況が伝わってこない、真実が伝わらないのです。客観的な情報が遮断され、変えられています。非常に残念に思います。

 ― 日本のマスコミがということですか?
 当然、マスコミの皆さんとも関係があります。また、中国のことを本当の意味で理解する人材が極端に少なくなっています。いわゆる中国専門家がマスコミに登場しますが、おっしゃっていることが偏りすぎています。冷戦終結後の30年、日本のなかで中国専門家が育ちませんでした。アメリカ経由で、アメリカの眼鏡をかけて中国を見るようになってしまったのです。現代中国を理解する意識と能力がチャレンジを受けています。日本の皆さんには、この状況を意識してもらいたいのです。さもなければ、中日関係がさらに複雑な状況になってしまいかねません。

 ― アメリカなどが外交的ボイコットの理由に新疆ウイグル自治区での人権侵害を挙げるなか、大阪総領事館は新疆への訪問を呼びかけました。
 アメリカはここ数年、中国の発展を牽制、阻止するため、あまりにも多いデマを流してきました。新疆も香港もそうです。5年前の一時期、新疆では数千件ものテロ破壊事件があり、ウイグル族を含めた無辜の中国人が多数犠牲になりましたが、アメリカなどからテロ反対の声はひとつもありませんでした。中国政府が大変な努力を払って安定を取り戻した途端に、盛んに人権問題を言いだしました。日本のメディア、一部知識人、政治家もあおっています。
 ぜひ日本の皆さんに新疆に行ってもらって、この目で見て、身をもって体験して、正しく理解していただかなくてはいけません。コロナ禍でいつ行けるか分かりませんが、昨年12月2日から呼びかけて1カ月足らずで1028人が応募してくださいました。職業技能教育訓練センター、モスク、一般家庭、強制労働といわれる綿花畑など100%オープンな形で見てもらいます。一般の参加者が現場から発信していただければ、と考えています。

中国外交官が狼なのではなくて、狼と戦う外交官という理解が正しい
 ― “戦狼”外交官と呼ばれていることには?
 自分が戦狼外交官だとは思いません。あえてそういう言い方をするのなら、私たち中国外交官が狼なのではなくて、むしろ逆、狼と戦う外交官という理解が正しいと思います。

 ― では狼はどこに?
 ここ10年、20年の間に中国が急速に発展するなかでアメリカなど一部の先進国が焦り始めて、理不尽な中国扱いをし、公然と嘘をついて中国批判のデマを垂れ流している。国家と民族の尊厳を傷つける行為に対して中国は強く反応せざるを得ません。中国は近代以来、日本を含む列強に侵略され、植民地支配される屈辱の歴史がありました。中国共産党の指導の下、中華人民共和国が建国されて、ようやくその屈辱の歴史から抜け出しました。特に四十数年前から改革開放がスタートして世界第2の経済大国になった今、中国人が理不尽な対応を受け入れる時代はとっくに終わりました。そこをアメリカなど少数の自称先進国、偽装民主主義国には認識してもらわないと困ります。ツイッターの表現は強いかもしれないが、言うべきことを言わないと相互理解が進みません
 私のツイッターは日本よりもアメリカ関連が圧倒的に多いのです。それはアメリカが中日関係において絶大な存在であるからです。日本の皆さんはアメリカのことをあまりにも知りません。良い一面だけを見て信じ込んで、いざ中米間に何かあったら、分別なくアメリカ側についていきます。中日関係の発展のためには、アメリカを正確に理解し扱ってもらわないといけません。私のツイッターを見て感情的にならず、意図を理解してもらいたいと思います。

 ― 日本に狼は?
 日本のメディア、政界での中国言論、書店の中国関連書籍を見てみれば、中国の“戦狼”外交官など微々たる存在と言えます。それ以上、私は……(笑い)。

 ― 日本では「台湾有事は日本有事」と勇ましい声が大きくなっています。
 中日国交正常化から今年で50年、台湾問題は歴史問題と同じく正常化の核心的な問題でした。一つの中国、台湾は中国の一部であることを日本は明確に認めているわけで(日中共同声明で台湾に関して日本は「十分理解し、尊重」)、50年後にこれをほごにすると、両国関係は非常に大きなチャレンジに直面せざるを得ません。内政不干渉も共同声明に盛り込まれた基本原則です。台湾問題も、香港や新疆に関わる問題も中国の内政事項です。人権うんぬんを喧伝して言いがかりをつけて中国を非難する人がいますが、ルールを守ってもらわないといけません。国交正常化の原点に立ち戻って冷静に双方が何を約束したのか、これをしっかり認識した上でこれからを考えないといけません。

 ― 最後に日本の草の根に向けて一言。
 コロナ禍の前には中国から年間1000万人近い観光客が訪日し、中国人の対日観の改善につながりました。残念ながら日本人の中国理解はあまりにも進んでいません。できるだけ多くの方が中国にいらして、自分の目で中国を見て理解を深めてもらいたいと思います。
                          (聞き手 = 売文家・甘粕代三)
*インタビューは【動画】でもご覧いただけます。

薛剣(せつ・けん Xuē Jiàn)1968年、中国・江蘇省淮安市漣水県生まれ。北京外国語学院で日本語を学び、92年に卒業後、外交部入部。3度にわたる駐日本中国大使館勤務を経て、アジア局副局長。昨年6月から現職。