2022年2月22日火曜日

岸田政権が都道府県に「PCR検査を抑えろ」の大号令

 岸田政権が初めて無料の新型コロナPCR検査を打ち出したのは快挙だった筈で、各自治体の無料検査会場は長蛇の列が出来たのですが、とても手放しで喜べるようなものではありませんでした。何の準備もしていなかったので直ぐに検査試薬や抗原検査キットの需給逼迫が起きました。杜撰というしかありません。
 それに加えて1月27日、内閣府地方創生推進室と内閣官房コロナ対策推進室が、連名で次のような事務連絡を出していました。
〈1日当たりの検査件数を1月第二週における1日当たり平均検査実績の2倍以内として頂くようお願いします  1日当たりの検査件数の計画値を提出して頂くとともに、2倍超とすることが必要となる特別な事情がある場合については、事前に協議を行うようお願いします〉
 地方創生推進室は、新型コロナ対策のために各自治体に配る「地方創生臨時交付金」を所管する部署で予算3200億円を握っています。そこから上記のような制限を課されれば、地方としては逆らえません。実際に、事務連絡の送付時期をピークに、全国の行政検査数も一向に増えず、完全に頭打ちに陥っているということです
 かくして、検査の充実・感染者の隔離によるコロナ対策の本筋はまたしても実現することなく、陽性率が40%台(中には50%超も)という異常な事態が各地で起きました。
 日本はいまオミクロン株の感染爆発の渦中で、コロナ感染者数が全くつかめていないという、先進国にはあるまじき事態に陥っています。
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岸田政権が都道府県に「PCR検査を抑えろ」の大号令 
交付金差配の内閣府を通じた圧力か
                          日刊ゲンダイ 2022/02/20
1日当たりの検査件数を1月第二週における1日当たり平均検査実績の2倍以内として頂くようお願いします〉──。先月27日、内閣府地方創生推進室と内閣官房コロナ対策推進室が、連名で各都道府県に送付した事務連絡の一文である。意図は自治体の無料PCR検査を「抑えろ」だ。
 当時はオミクロン株が猛烈な勢いで全国に広がり、感染者数はネズミ算式に上昇。寒空の下、各自治体の無料PCR検査会場は長蛇の列で、検査試薬や抗原検査キットの需給逼迫が問題となっていた。そこで同日、厚労省は検査の優先順位を決定。症状がある人を診断する「行政検査」が最優先で、各自治体が行う「無料検査」は下位に位置付けた。それとワンセットで発したのが、前出の事務連絡だ。
 地方創生推進室は、新型コロナ対策のために各自治体に配る「地方創生臨時交付金」を所管する。岸田政権は今年度補正予算で、自治体の無料検査を支援する「検査促進枠」を交付金に創設。予算3200億円を計上した。自治体にすれば、財源を牛耳られた政権サイドの圧力に等しい事務連絡は、こう続く。
1日当たりの検査件数の計画値を提出して頂くとともに、2倍超とすることが必要となる特別な事情がある場合については、事前に協議を行うようお願いします
 皆、今後の感染拡大に不安を感じていた頃、交付金差配の権限を背景に無料検査が指定を超えそうなら“事前に協議せよ”と迫るとは随分と高圧的だ。実際に通達を受け取った首都圏自治体の担当者は「無料検査を後押ししてきたのに突然ブレーキを踏めなんて、無理難題を押しつけるな」と感じたという。

異常に高い「陽性率」の元凶なのか
 それでも地方の役人にとって“お上”の命令は絶対だ。貴重な財源を握られていれば、なおさらである。結局、各自治体とも指定の枠内で無料検査を継続しているようだが、解せないのは奇妙な符合があること。事務連絡の送付時期をピークに、全国の行政検査数も一向に増えず、完全に頭打ちに陥っているのだ。
 東京都の「検査人数」(7日間平均)は1月29日の2万9698.7人以降はジリジリと減少。大阪の「検査件数」も1月26日の3万9380件を超えていない。おかげで全国の検査件数に占める陽性者の割合を示す「陽性率」は今月6日までの1週間で57.7%に達した。今週は東京と大阪の陽性率も40%台が続く。検査を受ければ、およそ2人に1人が陽性となる異常な高水準だ。
 ひょっとして、お上の「検査を抑えろ」の大号令に萎縮し、試薬確保のため、感染の可能性の高い人しか回さず、行政検査まで抑えているのか。事務連絡を作成した内閣官房コロナ対策推進室は「担当者不在」を理由に無回答。通達を受けた側に影響を聞くと──。
 東京都は「特に萎縮したことはない。陽性者のデータは即座に国のシステムに入力するが、検査件数の報告は業務逼迫で遅れがち。陽性率の高さはそのせいでは」(感染症対策部・検査体制整備担当)とのこと。大阪府は「そもそも需給逼迫を受けた通達。必要な試薬不足は検査頭打ちの要因のひとつ。また、検査省略の『みなし陽性』の導入で、従来より検査数は減少してしまいます」(感染症・検査グループ)と答えた。
 いつになれば「徹底した検査と隔離」という感染対策の基本は実現するのか。