2022年2月27日日曜日

ゼレンスキーとバイデンの戦争責任/ミンスク合意の誠実履行必要

 いま西側の世界に流されている情報は全て米国の意向に沿ったもので、米国の一挙手一投足を全て是認しないことには周囲から袋叩きに遭うというのが実態です。取り分け米国の意図に反して、いわゆる旧共産圏の中国やロシアを擁護する意見を発表することは困難になっていて、現状はロシアのウクライナ侵攻に対し「プーチン非難」の一色に染まっています。
 他国への軍事侵攻は批判されるべきことですが、世界を敵に回すことを承知の上で敢えてそれに踏み切ったのですからそれなりの理由がある筈です。その説明もしにくいような雰囲気に包まれている現状は、やはりおかしいというしかありません。
 世に倦む日々氏と植草一秀氏が、今回のウクライナの事態についてゼレンスキー・ウクライナ大統領とバイデン・米大統領に責任があるとする記事を出しました。
 プーチンを「悪の権化」と見做すのはバイデンの望むところですが、それはしばらく抑えて、プーチンを擁護する論調にも耳を傾けるべきです。
 2つの記事を紹介します。
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ゼレンスキーとバイデンの戦争責任 – 異端の少数意見ながら
                          世に倦む日々 2022-02-25
イラク戦争のときのことを思い出す。国連憲章違反の一方的な侵略戦争だった。侵攻する側が時間をかけ大量に兵力を集め、無茶苦茶な大義名分(口実)を言い立て、最後通牒を突きつけて空爆に踏み切った。巡航ミサイルで地上の防空システムを破壊し、制空権を握り、地上軍を首都に侵攻させた。あのときと絵は一緒だが、今回は侵略される側に世界の同情と支持の全てが集まっている。国連事務総長がロシアを非難糾弾しまくっている。あのときは、正義の戦争だとして美化し、侵略者のアメリカを支持する声がずいぶん多かった。

あのとき、19年前、戦争の原因を作った張本人として指弾され、責任を押しつけられたのは、侵略を受けた側のサダム・フセインだった。今回、ゼレンスキーに責任があると批判する声を聞かない。今度の戦争にバイデンに責任があると断罪する者はいない。けれども、本当にそうだろうか。私は少数派として異論を唱えたい。ゼレンスキーの責任は小さくないと思う。大統領にはその国の国民の命と安全を守る責任がある。自国を戦争に導かない義務があり、戦争に巻き込ませない政治をする使命がある。

ゼレンスキーが、ウクライナも署名したミンスク合意を履行していれば、今回の戦争には至らなかったメルケルが汗をかき骨を折り、徹夜の協議を重ねて成立させたミンスク和平。その合意事項を守っていれば、ウクライナ共和国を戦争の危機に導くことはなかった。そもそも、2019年の大統領選でゼレンスキーが勝ったとき、ゼレンスキーは対ロ協調派の候補だったのだ。争ったポロシェンコの方が対ロ強硬派であり、東部親ロ勢力との対話を訴え、穏健派のイメージで票を集めて当選したのが新人のゼレンスキーだった。

大統領選の結果とゼレンスキーの政見を見て、プーチンは、ミンスク合意の履行、すなわち東部2州の自治権の法制化に期待を持ったはずで、それゆえ、その後のゼレンスキーの豹変には裏切りを感じたに違いない。ウクライナという国の置かれた客観的な立場と状況を鑑みて、国際環境を冷静に判断して、もっとリアルで賢明な外交行動に出ることはできなかったのか。何より平和を第一に考える慎重で堅実な政策の舵取りができなかったのか。隣国の大国の指導者であるプーチンと、最低限の信頼関係を保つ努力はできなかったのか

指導者として無能だったゼレンスキーの責任は小さくない。これと同じ認識と感想は、24日のNHKニュース7で下斗米伸夫も述べていた。大きな戦争になってしまったが、元々はウクライナの国内問題であり、親欧米派と親ロ派の対立紛争がベースにある。双方がマイルドに混在共存し、穏和に一体性を保持していたはずのウクライナに、分断と混乱をもたらしたのは、2004年のオレンジ革命からの動きとそれに続く2014年のマイダン革命であり、親ロ派を追い落としたクーデターである。背後にNED(CIA)の画策と謀略があったとされている。

旧ソ連圏諸国でのカラー革命はこれまで幾度起こったことか。2000年のユーゴスラヴィアでのブルドーザー革命、2003年のグルジアでのバラ革命、2004年のウクライナでのオレンジ革命、2005年のキルギスでのチューリップ革命。どれもCIAが裏で糸を引いており、ソロス財団やシンクタンクが関与していて、フランスのテレビ局が真相をよくジャーナリズムしていた。結局、総括的に本質論を言えば、アメリカはソ連崩壊では満足しておらず、さらに欲深く執念深く、ロシア連邦そのもののを標的にし、旧ソ連・旧共産圏の悉くを自らの意のままになる親米国家群に塗り替える野望を戦略化している

主権国家であるウクライナが、どのような方向性を目指そうが、それはウクライナの自由であり、他国が口を差し挟むことではない。だが、傍から見て、ウクライナの地政学的条件や民族歴史的所与を考えれば、ロシアとEUの間に立ち、双方と友好的な外交通商関係を組み、その独自の立ち位置を生かして、双方から利益を享受し平和裡に自国を発展させるのが最もベストな選択だと思われる。琉球王国の「万国津梁」的な理想を掲げて国家運営することが、ウクライナの平和と繁栄に繋がる道なのではないかと私は思う。森安達也が生きていたらそう言うだろう。

ウクライナとバルト3国・ポーランドとは違う。事情と背景が異なる。ロシアに屈服したり抵抗したりの歴史でアイデンティティが形成されている国ではない。敢えて言えば、ウクライナには、ロシアに対して無理に歴史的な憎悪や怨恨の感情を抱くべき必然性はない。2国は同じ東スラブ人の東方正教会の国であり、キエフ・ルーシを祖先とする兄弟国である。最近、ホロムドールの過去が強調され、そこに拒絶と反発の根源があるのだという歴史認識を聞くけれど、それは、欧米がウクライナを唆(そそのか)してロシアと離間させるための政治言説ではないかという作為性を私は嗅ぎ取る。

なぜなら、ホロムドールの悲劇への遺恨をネーション形成の精神的基礎に据えるのなら、その憎悪対象はボリシェヴィキ・ソ連共産主義に向けられるべきで、ロシアとロシア人に直接被せるのは筋違いだからである。ロシアとボリシェヴィキはイコールの思想的存在ではない。フルシチョフはウクライナ人だった。ウクライナはソ連邦を構成する15の共和国の2番手であり、その地位と序列は常に不動で、いわばソ連邦の建設と運営において陽の当たる位置で参画してきた国だ。スターリンに強制併合された気の毒な冷や飯組のバルト3国とは境遇が違う。まして西スラブ系のポーランドとは根本的に違う。

ウクライナ人は素朴で純粋な人々に私には見える。第一印象で好感の持てる人々だ。現在の西側のウクライナに対する思想工作は、ウクライナ人の純朴さを逆手にとった陰湿で狡猾なもののように見え、嘗てナチスがウクライナ人を慰撫し洗脳して、反ソ連の協力者に扇動・利用した邪悪な歴史を想起させる。同じことが繰り返されている。それが2004年から2014年の事実だった。隣の芝生が青く見えるのは誰も同じで、ウクライナの人々の目にはEUやNATOが過剰に美田に見え、その心理を操縦され、自らの本来のアイデンティティを忘れさせられているのではないか

アメリカとバイデンの責任について言わなくてはいけない。なぜ、ロシア軍の侵攻を阻止できなかったのか。プーチンとの外交バトルに負けたのか。現在の結果はアメリカの敗北と失態としか言いようがないではないか。米軍を派遣投入すればよかったと言いたいのではない。NATOに入れてやる、NATOに入れと口では言いながら、結局、ウクライナはアメリカに騙されたのと同じだ。その気もないのに、責任がとれないことをウクライナに言い、ウクライナをその気にさせて誑(たぶら)かした。アメリカはウクライナを道具にして玩びながら、ウクライナを戦争と破滅の淵に追いやったのと同じだ。

アメリカは、CIAの諜報能力で全てを分析し予測できていると自惚れ、ロシアを打ち負かす戦略の遂行をしていると思い込みながら、実際にはプーチンに裏をかかれ、プーチンの胆力に圧倒された。自慢のインテリジェンス作戦は何の役にも立たず、松原耕二に「アメリカの諜報戦略は単に実況中継やってただけ」と揶揄される始末に終わっている。ブリンケンやサリバンではプーチンとは格が違いすぎて喧嘩にならない。白帯と黒帯の差だ。小僧臭が鼻につくサリバンは、単なる間諜謀略オタクで、ゲームアプリの趣味者のようにCIAに謀略させることだけが生きがいの小物に見える。アメリカが唯一の超大国になってからの世界しか知らない。

アメリカが、「ウクライナはNATOに入れない」と一言言えば、この戦争は起きなかった。たった一言コミットすればよかった。東アジア人の一人として率直に言わせてもらえれば、ロシアにすら勝てないアメリカが中国と「競争」して勝てるなどど、その自信過剰はどこから来るのかヨーロッパですら仕切れないアメリカが、どうやってアジア太平洋を制して指導することができるのか


ミンスク合意の誠実履行必要
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年2月26日
国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。これが国際連合の考え方。
その前提に 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおくことがある。
内政干渉しないこと。自決の原則を尊重し、平和的手段によって紛争を解決する。
武力の行使または武力による威嚇をしないことが世界平和実現のカギを握る。
この原則が重視されなければならない。この意味でロシアによる軍事作戦実施は許されるものでない。しかし、同様の武力行使は他の事例でも実行されてきたという歴史がある。
米軍によるアフガニスタンへの侵攻。米軍によるイラクへの侵攻。これらもまた、紛争を武力の行使によって解決しようとしたものである。
米国がロシアを非難するが、基本的にどっちもどっち。
ウクライナの政権は2014年の政変で転覆された。暴力的革命による政権転覆である。
暴力的革命によって親ロ政権が反ロ政権に転覆させられた。

ウクライナにはウクライナ系住民とロシア系住民が併存している。ウクライナ系住民が多数派である。両者の対立は根深い。したがって、単純多数決で決定するとロシア系住民の意向が踏みにじられる。
ロシア系住民は東部、南部に偏在している。
2014年政変に伴いウクライナ内戦が勃発した。ドネツク州、ルガンスク州では親ロシア系勢力が優勢で、この勢力が同州主要部分を実効支配した。
これに対してウクライナ軍が攻撃し、内戦状態が生じてきた。この内戦を停止するために2014年から2015年に「ミンスク合意」が締結された。
合意にはドネツク州、ルガンスク州に対する自治権付与の方針が定められた。

両地域に自治権が付与されれば、ウクライナのNATO加盟は実現しない。
ロシアはウクライナがNATOに加盟して対ロシア敵対姿勢を強めることを警戒している。
また、ロシア系住民がウクライナ政府から圧迫を受けることを警戒してきた。
ロシアはウクライナ政府にミンスク合意の履行を求めてきたが、合意が履行される気配さえなかった。
逆にウクライナのゼレンスキー大統領はロシアに対する対決姿勢を鮮明に示してきた。

この状況から、ロシアはドネツク、ルガンスク両地域が共和国として独立を宣言したことを受けて、これを承認し、両共和国の要請にしたがって、ロシア軍のウクライナ国内への特殊軍事作戦を始動させた。
ゼレンスキー大統領はコメディアン出身の大統領。ゼレンスキー氏が出演してきた政治ドラマが大統領就任の布石になった。
この政治ドラマを放映した放送局”1+1”はCMEの放送網に属する企業。
CMEから放送局を買収したのはイスラエルに近いウクライナの財閥である。
世論をコントロールするメディアを活用して新しい大統領を創出したのである。
その大統領がミンスク合意を履行しようとせず、ウクライナのNATOへの加盟を求め、対ロシア対決姿勢を強めるためにウクライナへのNATOおよび米国の軍事支援拡大を求めてきた。実際に、米国およびNATOはウクライナに対する軍事支援を実施してきた。
こうした経緯があっての今回のロシアの行動。

中国はロシアに対して、これまでの経緯に関する理解を示した。
平和を維持するためには、価値観や立場の異なる者が対話を継続し、互いに譲歩し、着地点を見出すことが必要。
ロシアの動向を察知した米国には二つの道があった。
米国が仲介者として行動し、戦乱を未然に防ぐ対応。
もうひとつは、ロシアの動向を大々的に喧伝して、軍事衝突を放置あるいは誘導すること。
結局、取られた対応は後者である。
戦乱がこれ以上拡大するのを防ぐため、早期に停戦協議を始動させることが重要だ。
米国はその先頭に立つ責務を負っている。

ワクチン接種にはくれぐれも慎重に対応することが求められる。

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