2022年2月3日木曜日

佐渡金山の世界遺産推薦 「歴史戦」は根本的な誤り/日本が支払わされる代償

 共産党の志位委員長は1日、記者会見し、政府が「佐渡島の金山」の世界文化遺産への推薦を決定したことへの受け止めを問われ、「世界遺産に推薦登録する以上は、戦時の朝鮮人労働者の強制労働の事実を認めるべきだ」と述べました。また、安倍晋三氏らが「歴史戦をたたかえ」などと叫んでいることに「根本的に間違った議論だ」と批判しました。

 実証主義の学問である「歴史」において「歴史戦」などという言葉はこれまでなく、それは「歴史」に新たな概念を持ち込みたい側(極右)が作った造語です。
 彼らが過去の歴史の内から都合の良い部分だけをピックアップしようとする動きに対して、小池氏は、「佐渡金山の文化遺産としての価値は、負の歴史も含めて、歴史全体の文脈の中で位置付けられるべきだ」と指摘しました。
 そして「戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたのは歴史的事実である」として、新潟県が編さんした『新潟県史』や旧相川町が編さんした『相川の歴史』という二つの公文書に強制労働の実態が克明に記されていることを挙げ、「強制動員、強制労働の事実は動かせない」と述べました。
 そしてNHKが「歴史戦チーム 政権の歴史認識に基づき 事実集めて検証進め 国際社会の理解得る目的」などと報じたことについて、「根本的に間違っている。『政権の歴史認識』が先にあり、それにあう事実だけを集めるということは、歴史の改ざん、偽造をしていくことになる」として、「公共放送のあり方として大きな問題がある」と指摘しました。  しんぶん赤旗が報じました。
 日刊ゲンダイも、政府世界文化遺産登録を目指し、「佐渡島の金山」の推薦書をユネスコに提出したことに関連して、日本には「先に解決すべき〝宿題” が残ったままである」と指摘し、15年に「明治日本の産業革命遺産」世界遺産に登録された際、そのひとつである「軍艦島」(長崎県)について、日本政府は朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と明言していたのですが、20年に、逆に「徴用工への差別について聞いたことがないとの証言を紹介」するなどしたため、昨年ユネスコの世界遺産委員会は徴用工に関する説明が不十分だとして、全会一致で「強い遺憾を示す」決議を突き付けたことを紹介しました。
 そして問題の本質は日本が国際社会との約束を履行できていないことだとして、佐渡金山の登録を巡っても軍艦島と同様の問題にぶつかり、日本は「国際社会の冷たい視線」を浴びるという代償を支払うことになると警告しました。
 二つの記事を紹介します。
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1月31日)佐渡金山の世界文化遺産申請 政府は戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべき
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佐渡金山の世界遺産推薦を閣議決定 歴史の事実に向き合い誤り認めよ
志位委員長が会見
                        しんぶん赤旗 2022年2月2日
 日本共産党の志位和夫委員長は1日、国会内での記者会見で、政府が同日の閣議で「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産への推薦を決定したことへの受け止めを問われ、「世界遺産に推薦登録する以上は、戦時の朝鮮人労働者の強制労働の事実を認めるべきだ」と述べました。また、この問題に関わって「歴史戦をたたかえ」などと叫ぶ動きがあるとして「根本的に間違った議論だ」と批判しました。
 志位氏は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)や国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の原則に照らして、「世界遺産の推薦登録にあたっては、過去の歴史の一部分だけでなく、負の歴史も含めて、歴史全体の文脈の中で位置付けられるべきだ」と指摘しました。
 「戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたのは歴史的事実であり、しっかり認めることが大事だ」と述べ、新潟県が編さんした『新潟県史』(1988年)や旧相川町が編さんした『相川の歴史』(95年)という二つの公文書に強制労働の実態が克明に記されていることを強調しました。
 『新潟県史』では「昭和十四(一九三九)年に始まった労務動員計画は、名称こそ『募集』『官斡旋(あっせん)』『徴用』と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」と強制連行を認め、労働条件について「賃金は『内地人同様』とうたわれているが、両者を職種別に見るなら、その悪平等が判然とする」と明記されていると指摘。朝鮮人が「圧倒的に多数配属されていたのは、削岩と運搬部門であった」との記述を示し、「坑内労働という非常に危険で劣悪な条件下で働かせていたことが書かれている」と語りました。
 また、『相川の歴史』でも朝鮮人の作業職種が、削岩、支柱、運搬などの「主として坑内労働に多くみられる」「労働条件の劣る坑内の採掘はより多く朝鮮人が受け持っていた」と詳細に記述されていると指摘しました。
 志位氏は「この二つの公文書から、強制動員、強制労働の事実は動かせない」として、「この機会に歴史に正面から向き合い、誤りを認めていく必要がある」と述べました。

歴史を“戦場”にしてはいけない
 その上で志位氏は、この問題にかかわって韓国側の主張などに対して「歴史戦をたたかえ」と叫ぶ動きがあると指摘。安倍晋三元首相がタブロイド紙のインタビューで、韓国政府が強制労働の被害などを主張していることに対して「いまこそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いてほしい」と主張していることを、「これは根本的に間違った議論だ。歴史は戦争ではなく、事実が何より大切であり、事実に正面から向き合うことが必要だ。歴史を“戦場”にしてはいけない」と批判しました。
 さらに、世界遺産への登録のために、岸田文雄首相が官邸内に省庁横断型の作業部会を設置する動きが報じられていること、この動きを、NHKが「歴史戦チーム 政権の歴史認識に基づき 事実集めて検証進め 国際社会の理解得る目的」などと報じたことに言及。「『政権の歴史認識に基づき事実を集め』などということは、根本的に間違っている。『政権の歴史認識』が先にあり、それにあう事実だけを集めるということは、歴史の改ざん、偽造をしていくことになる。歴史の事実に向き合い、誤りを認めていくことが大事だ」と述べました。
 「こういうことを安倍元首相が号令をかけ、岸田政権が従うのは恥ずかしいことであり、NHKがこうやって報じることは、公共放送のあり方として大きな問題があると強い危惧を覚える」と表明しました。


安倍氏&高市氏に屈し「佐渡金山」世界遺産推薦 日本が払わされる“代償”を元外交官が危惧
                         日刊ゲンダイ 2022/02/02
 何が「冷静かつ丁寧な議論」だ。政府は1日、世界文化遺産登録を目指す「佐渡島の金山」(新潟県)の推薦書を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出。反発を強める韓国を念頭に、新たに設置した省庁横断のタスクフォースを通じて国際的な理解を得るつもりだが、実は先に解決すべき“宿題”が残ったままである。
 佐渡金山を巡っては昨年12月、国の文化審議会が推薦候補に選定。当初は、外務省を中心に韓国の反発が強い中での申請に消極的だったが、自民党内の保守派が「論戦を避けるという形で登録を申請しないのは間違っている」(安倍元首相)、「日本国の名誉にかかわる問題」(高市政調会長)などと猛反発。申請に慎重だった岸田首相は方針を一転させた。
 政府・与党は「国際社会に対し、丁寧で説得力のある説明を行っていきたい」(茂木幹事長)と意気込んでいるが、まるでアテにならない。そもそも、国際社会との「約束」を守っていないからだ。

2015年軍艦島登録時の「約束」不履行
 2015年に「軍艦島」(長崎県)が「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして世界遺産に登録された際、日本政府は朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と明言し、20年に産業遺産情報センターを設置。徴用工への差別について「聞いたことがない」との証言を紹介したため、昨年ユネスコの世界遺産委員会は徴用工に関する説明が不十分だとして、全会一致で「強い遺憾を示す」決議を突き付けた。
 ところが、政府は「誠実に履行している」と決議に反論。ずっと突っぱねているのだ。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏がこう言う。
「佐渡金山が国際的な議論の俎上に載る上で、軍艦島の例は避けて通れません。『韓国が反対している』との報道が目に付きますが、問題の本質は日本が国際社会との約束を履行できていないことなのです。要するに、世界遺産委の期待にこたえられていない。従って、佐渡金山の登録を巡っても、軍艦島と同様の問題にぶつかるでしょう。国際社会の意思を無視し続ける姿勢は、日本の汚点になりかねません」
 世界遺産委による登録審査は来年夏ごろ。約束反故の一方で岸田政権は「冷静かつ丁寧な議論」を訴える。このチグハグ対応のせいで、国益どころか「国際社会の冷たい視線」という代償を支払うことになるんじゃないか。