2022年2月17日木曜日

第6波で「自宅療養中の死亡」地方に拡大 都市部の入院率は2%台

 「入院すべきが入院できない状況が起きているのではないか」との質問(14日衆院予算委)に後藤厚労相は「数字として、今すぐ起きているわけではない」と答弁しましたが、全く実態から離れています。
 入院率は、兵庫、京都、大阪、東京、神奈川、福岡県などで軒並み2%台になっています。いまやコロナ陽性率(陽性者数/検査者数)が50%近くにもなるという具合で、検査が全く追いついていないので、実際の陽性者数は公表値の数倍と見られています。
 日本の人口当たりの検査数が諸外国に比べると桁外れに少ないことは良く知られていますが、コロナ患者の自宅死者数も警察庁の定期的な発表を待たないと分からないというのが実態です。要するにコロナ感染の実態が誰にも分からないという状態になっていて、政府もそれを良いことに平静を装っています。
 そんな中で厚労省専門家会合の脇田座長は16日、現在の流行の“第6波”について
「全国の感染状況のデータから傾向をみると、地域によってかなりばらつきはあるが、平均すると全国では大体2月上旬にピークを越えたと考えている」
と述べました(実行再生産数は12日1.00、15日0.97)
 しかし仮にそうだとしても沖縄の例があるように、第5波とは違って感染者数が急速に減少するとは考えにくく、これからも基礎疾患のある高齢者を中心に死亡する人たちがどこまで増加するか分かりません(感染してから重症化し死亡に至る期間はほぼ15日)。
 日刊ゲンダイの2つの記事:「コロナ第6波で『自宅療養中の死亡』地方に拡大…~ 」と「一体、自宅で何人死んでいるのか この国が出す数字は全てマユツバ」を紹介します。
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コロナ第6波で「自宅療養中の死亡」地方に拡大…
        100人中3人しか入院できない衝撃
                         日刊ゲンダイ 2022/02/17
独自調査では5県で初確認
「入院すべき方が入院できない状況が起きているのではないか」との質問(14日の衆院予算委員会)に後藤厚労相は「数字として、今すぐ起きているわけではない」と答弁した。数字上、病床は逼迫していないという立場だ。しかし、入院のハードルはかつてなく高く、自宅療養中の死亡が地方にも広がりつつある。
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 14日の厚労省の発表によると、9日時点のコロナ療養者は83万9580人。このうち入院しているのは、たったの2万6734人で入院率は32%だ。陽性者100人に3人しか入院できない。
 第5波のピークだった8月25日時点の入院率は115%(2万4126人/20万9703人)。第6波の入院率の低さが際立っている。
 ワーストは兵庫の19%。以下、京都(23%)、大阪(23%)、東京(24%)、神奈川(25%)、福岡(27%)と都市部の入院率が低い。
 高い順では島根(14.8%)、岩手(12.7%)、鳥取(96%)、和歌山(94%)。患者に手厚い地方でも1割程度の入院率にとどまっている。第6波では、ケタ違いの感染者が発生しているが、軽症も多く、入院するケースが少なくなっているのだろう。
 入院が必要な患者は病院に入れているのだろうか。気になるのが自宅療養中の死亡例が地方で確認されていることだ。
 日刊ゲンダイは自治体の発表や報道をもとに第6波の自宅療養中の死亡例を調べた。すると、5県で県内初の自宅療養中の死が確認されていた。宮崎(4日)、青森(5日)、滋賀(7日)、鹿児島(12日)、茨城(14日)の5県だ(日付は発表日)。

 茨城の70代男性は8日に発熱し、10日に陽性が判明。基礎疾患があったが軽症だったため、医師がすぐの入院は必要ないと判断した。保健所が症状などを聞き取る予定だった12日早朝、家族が異変に気づいた。救急隊が来た時は死亡していたという。茨城県の病床使用率は37.6%(14日時点)だ。県に聞いた。
「県内の病床は逼迫しておらず、必要な患者には入院いただけています。70代の男性は、医師が入院不要と判断し、自宅療養となりました。今回のケースを踏まえ、今後は軽症でも容体が急変することを考慮し対応したい」(感染症対策課)

軽症の高齢者をどう守るのかという難問
 第4波や第5波の時は、大阪や東京の病床がパンク。重症者も入院できず自宅療養者の死が相次いだ。第6波では病床は空いているが、軽症のため入院不要と判断された高齢者が自宅で亡くなるケースがほとんどだ。
 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が言う。
「軽症の高齢者をどう扱うのかは難しい問題です。どんどん入院させればいいわけではない。同居家族がいる場合、自宅で療養する方が快方に向かうことも少なくありません。ただし、自宅療養とする場合、急変時にすぐに医療にアクセスできる体制を充実させることが必要です。1人暮らしの場合は自宅療養は危険です。東京都が軽症~中等症1の高齢者を受け入れる臨時施設やリハビリを含め治療ができる拠点を整備するようです。評価できる試みだと思います」

 15日発表された死者数は過去最多の236人。とうとう200人を超えてしまった。オミクロン株の怖さは、たとえ軽症でも高齢者の場合、死につながるケースがあることだ。軽症者の死をどう防ぐのか──。やれることはいくらでもあるはずだ。


一体、自宅で何人死んでいるのか この国が出す数字は全てマユツバ
                         日刊ゲンダイ 2022/2/16
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 岸田政権のコロナ無策ぶりを見ていると、オミクロン株は感染しても軽症だとタカをくくっているとしか思えない。だが、死者数の増加傾向にも何の手も打たないつもりなのか。今月に入って新型コロナによる死者が急増し、15日発表された全国の死者は236人と、1日あたりの過去最多を更新した。
 気になるのは、自宅で亡くなるケースが増えていることだ。菅前首相が“後手後手”と批判されて退陣に追い込まれたのは、第5波の感染拡大で入院できずに亡くなる人が増えたことが大きな原因だった。現状は、当時をしのぐレベルで悪くなっているのに、岸田首相からはまったく切迫感が感じられない。今ごろになって「ワクチン1日100万回」の目標を達成しドヤ顔している場合ではないのではないか。
 警察庁の発表によれば、今年1月、新型コロナに感染し、医療機関以外の自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は151人に上ったという。昨年12月の3人から激増だ。
 死因はコロナ感染症と肺炎などによる病死が115人、事故などが30人で、6人は未確定。年代別では80代が51人と最も多いが、決して高齢者ばかりではない。40代(11人)、50代(13人)、60代(16人)も亡くなっている
「感染拡大で自宅療養者が増え、治療が間に合わずに亡くなる人がこれだけ多くいるとすれば、これが医療崩壊でなくて何なのでしょう。医療に適切にアクセスできれば救えた命があるのです。この国の政治は何度、同じ過ちを繰り返せば気が済むのか。オミクロン株は重症化率が低いからと、楽観論にのっとって対策を怠ってきた政府の責任は重大です」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

「救急搬送困難事案」も増加
 総務省消防庁は15日、患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が13日までの1週間に全国52の消防で計5740件あったと発表。前週から271件増え、5週連続で過去最多を更新している。
 コロナ新規感染者数はピークアウトの兆しがあるが、遅行指標の重症者数や死者数はこれからさらに増えるとみられる。自宅療養者はコロナの症状だけでなく、体調が急変しても、すぐに治療を受けられないかもしれないという不安と恐怖も背負わされるのである。
「国民の命や健康を軽視する姿勢は、岸田政権になっても変わらないことがハッキリしました。首相の自慢は『聞く力』だと言いますが、話を聞くだけで、自助を強いるのです。政府が何をしていいのか分からず、投げやりになっているようにも見える。なるべく入院させないようにする政府方針の危うさは、自宅死の急増に表れているのに、大マスコミの反応は鈍い。国民の命を守らない不真面目な政治に対し、もっと怒りをぶつけて追及するべきです」(五十嵐仁氏=前出)
 運よく入院できても、政府は入院して4日目の時点で酸素投与が必要な「中等症2」以上の状態でない患者は、自宅や宿泊施設での療養に切り替えることを強く推奨。重症化率が低いオミクロン株の特性を踏まえた方針だというが、「中等症1」だって呼吸困難や肺炎の症状があり、かなりつらい状態だ。
 国民の健康や安全よりも、病床が逼迫して緊急事態宣言を発令せざるを得なくなることは避けたいという政府の思惑が透けて見える。

正確なデータがなければ適切な政策も打ち出せない
 医療体制の見せかけの余裕を保つため、多くの患者が自宅に追いやられた結果、全国の自宅療養者数は50万人を突破。第5波のピーク時をはるかに超える。
「とにかく予測も対策も甘すぎた。岸田首相は記者会見もろくに開かず、危機感を表明しないから国民も油断してオミクロン株は感染拡大の一途です。それで第5波を超える惨状を招いたのですが、政府はその失策を糊塗するために、できるだけ患者を入院させないようにしている。医療は逼迫していないという体面を保つ数値を出すために、重症化率が低いというデータを恣意的に使い、オミクロン株の感染力の強さを無視した対策を打ち出しているように感じます。検査が追いつかず、無症状者も多いことから、正確な新規感染者数も把握できていないでしょう。それで、どうやって対策を講じるのでしょうか。厚労省や国交省の統計改ざんが問題になりましたが、とうとうデータを作れない国になってしまった。正確なデータがなければ、適切な政策を打ち出すこともできません。経済政策についても同じことが言えます」(政治評論家・本澤二郎氏)
 厚労省の毎月勤労統計の不正が発覚したのは2018年。再発防止策として、政府は21年度から各府省に専門家を派遣して統計作成過程を監督すると閣議決定したが、実はコレ、実施されていない。昨年12月には、GDP推計にも使われる国交省の「建設工事受注動態統計」でデータを改ざんしていたことも明らかになった。

GDP速報値もまったく信用できない
 内閣府が15日に発表した実質国内総生産(GDP)1次速報によると、21年10~12月期の成長率は前期比1.3%増、年率換算で5.4%のプラス成長となり、2四半期ぶりの前期比プラスだというが、これもどこまで信じていいのか。
 国交省は不正が発覚した当初、データ書き換えは21年3月までと説明していたが、その後の調査で4月以降も一部の都道府県で続いていたことが分かっている。元データが実態と違えば、GDP推計にも少なからず影響を与えていると考えるのが普通だ。
「厚労省も国交省も、アベノミクスがうまくいっていると見せるために統計データをせっせと改ざんしていたとみられています。発覚していないだけで、他の省庁もやっていないとは言い切れない。2012年に第2次安倍政権が発足してから、この国は完全に壊れてしまいました。与党も霞が関も時の権力者に忖度して、数字をゴマカすことに躊躇がない。国民や国際社会までも欺いて恥じないのだから、とても先進国とは言えません。こんな野蛮な国で、毎日発表されるコロナ新規感染者数も信用できないし、日本の現状がどうなっているかも分からない。岸田首相も、菅派結成の臆測など自民党内の政局に気を取られてコロナ対策がおざなりになっているのではないか。これだけ死者数が増えているのに、何の問題もないように振る舞っている。政府の発表は何から何まで怪しく、どのデータもマユツバに感じられてしまいます」(本澤二郎氏=前出)

 政府が出す数字が信じられない。国民にとって、こんな不幸なことはない。