2022年2月4日金曜日

ワクチンでは収束しないオミクロン株 分科会を開かない岸田首相

 2日の衆院予算委で立民の長妻昭議員によって、岸田首相が昨年の11月16日を最後に、コロナの分科会を一度も開いていないことが明らかにされました。専門家は「早く開いてほしい」と訴えていたのにもかかわらず、オミクロン株の対策などの本格的な議論は一切行われていないということです。分科会の尾身会長と首相の折り合いの悪さを指摘する声もあるようですが、それが理由とはまさに「絶句モノ」です。
 もしも岸田氏が第5波のときのように、いずれ波が引くように収まると考えているのだとしたらトンデモナイ間違いです。ワクチンのブースター接種で収まるという考えもそうです。
 ワクチン接種の最先端国であるイスラエルは1月から既に第4回の接種をスタートさせていますが、それにもかかわらず1月末以降感染爆発を起こしていることを岸田氏はどう認識しているのでしょうか。
 そもそも仮にブースター接種に賭けているのであれば、何故ワクチンの手配が遅れているのでしょうか。感染者の治療薬が出回りつつある中で、その手当も大いに遅れています。いずれにしてもオミクロン株を甘く見るべきではありません。
 日刊ゲンダイの記事、イスラエルの感染爆発に関する記事、コロナ特効薬「モルヌピラビル」に関する記事、以上3つの記事を紹介します。
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「コロナ分科会」昨年11月以降“開催ゼロ”の仰天!岸田首相は尾身会長をうざがっている
                          日刊ゲンダイ 2022/02/03
 衝撃の事実、である。専門家らが政府の新型コロナ対策を議論する「新型コロナウイルス感染症対策分科会」が、昨年11月16日(第11回)を最後に一度も開かれていないというのだ。
 同分科会は、法律にのっとったコロナ対策唯一の会議で、「新型インフルエンザ等対策特措法」の付則として昨年4月1日付で設置された。同じ分科会でも、「基本的対処方針分科会」は今年に入って4回開催されているが、いずれも「まん延防止等重点措置」の適用や追加適用に合わせて開かれたもので、具体的なコロナ対策についての議論は“セレモニー”の付け足し程度しか行われていない。

■オミクロン株対策 本格議論はナントこれから
 つまり、年明け以降に感染者が激増した、オミクロン株の特性に合わせた対策変更などの本格的な議論は、公式には一切行われていないということだ。専門家は「早く開いてほしい」と訴えていたのに、岸田首相は“聞く耳”を持たなかったのである。
 この事実は、2日の衆院予算委員会での長妻昭議員(立憲民主党)の質問で取り上げられ、岸田首相は「分科会(基本的対処方針の方)は開かれている。対策を変えていないわけではない」と言い訳に終始だった。しかし、山際大志郎コロナ担当相は事実を認めざるを得ず、「専門家と相談しながら、速やかに開く方向」「オミクロン株対策が中心になるので、何を論点にして、何を変えるのか、整理しなければならない。そうお待たせしないで必ず開く」と答弁せざるを得なかった。

尾身会長との折り合いの悪さ
 なぜ分科会は開かれなかったのか。官邸や厚労省などの内情を知る関係者はこう話す。
「菅前首相以上に岸田首相は分科会の存在を煙たく思っているようです。オミクロン株については、重症化しにくいとされてきたので、大騒ぎする必要はない、このまま自然にピークアウトするのを待てばいい、と岸田首相は考えている。分科会を開いて専門家にうるさく言われるのが嫌なのですよ」
 分科会の尾身会長との折り合いの悪さを指摘する声もある。
「だから、岸田・尾身両氏揃っての記者会見が一度も開かれていない」(自民党関係者)
 2日はとうとう新規感染者が9万人を超えた。オミクロン株の感染爆発真っただ中なのに、これからオミクロン株の特性に合わせた対策を検討するなんて、あまりに遅すぎる。そんなに尾身会長が嫌なら、他に代えるなどしてでも科学的な知見を得て、スピード対応すべきだろう。ウスノロ岸田首相じゃ、やっぱりヤバイ。


終わりは来ない:イスラエルの1日の新たなコロナ死者数がパンデミック開始以来最大を記録    https://earthreview.net/israeli-death-chain/ 
                          地球の記録 2022年2月3日
世界で最も迅速にブースターショットを展開し、世界で初めて「4回目のコロナワクチン接種」の実施に踏み切ったイスラエルについては、その感染状況や重症化数の動向をわりと日々見てきました。
イスラエルは、ワクチンあるいはブースター接種の「効果」を示す指標となる国だからです。
最近では、イスラエルは、ついに人口あたりの感染数で「世界ナンバー1」となったことを以下の記事で取りあげています。
イスラエルの人口あたりの感染数が「世界一」に。あまりの急増にイスラエル保健省のシステムがクラッシュし、感染数カウントを停止 投稿日:2022年1月25日

そして、イスラエルは今になり、再び新たな記録を打ち立てています。
「 1日の新たな死者数が過去最大」となったのでした。
以下は、2月1日までのイスラエルのコロナ死者数の推移グラフ です。過去約 2年の全期間です。
   (グラフ省略 参照 ⇒ ourworldindata.org 

イスラエルでは、現在、第5波というようなことになっていますが、ちょうど1年ほど前の第3波に記録された 1日 101人の死者数を超えた、1日 121人の死者が、2月1日に記録されました。
デルタ株の流行期から現在までの新たな死者数の推移を見ますと、オミクロン株では、デルタを大幅に更新してきており、死亡事例の増加のスピードもデルタ株よりはるかに高いことがわかります。

 デルタ株とオミクロン株の死者数の推移の比較グラフ 
   (グラフ省略  参照 ⇒ ourworldindata.org )

日本では、「オミクロン株は重症率、致死率が低い」というように言われていますが、イスラエルでも同様の報道が見られます。
以下は、イスラエル国内の報道です。
Omicron subvariant more transmissible, but may not cause worse illness - expert 

オミクロン株はより感染しやすいが、重症化を引き起こさないかもしれないと専門家たちは述べる
「致死率」などの観点からはそうなのかもしれないですが、しかし、イスラエルでも、あるいは欧米のいくつかの国でも、「死者数そのものはすでにデルタ株を大きく超えている」という現実があります。
病気というのは「感染率と致死率を総合的に考えるべき」ものであり、重症率、致死率が低いとしても、感染力がそれを上回るパワーを持っていれば、結果として「多数が亡くなる」
ということが、イスラエル、あるは現在の多くのヨーロッパの国のデータからわかります。おそらく今後の日本や韓国もある程度はそれに倣うと思われます。
(参考記事)  オミクロンが軽い病気? 欧州各国のデルタを超える死亡数、そしてすでに出現しているオミクロンの新変異種による「永遠の再感染のループ」が導くもの
 In Deep 2022年1月22日

致死率が 10分の1の病気でも、感染率が 20倍なら、結果的に、死に至る事例は 2倍となるというようなことです。

イスラエルの死者数の増加と「ワクチン接種の歴史」を、改めて見てみますと、以下のようになっていました。印が、ワクチン接種開始の時期です。

















これを見ますと、接種あるいはブースター接種が開始されるたびに、死者数が増加していることがわかります。
イスラエルの感染拡大のほうは、そのピークに達したとみられ、感染数は今後、短期間の間、減少していくと見られますが、オミクロンに見られる「死亡の遅延」が出てくるとした場合、死者数の増加はまだしばらく続くと思います。

昨年 11月に最初にオミクロンが検出された国のひとつである南アフリカでは、1月には感染数は大きく減少しましたが、いまだに「緩慢な死亡事例の増加」が続いていることがデータでわかります。
どうもオミクロンは、時間の経過と共にじわじわと死亡事例が増える場合もあるのかもしれませんが、イスラエルでも同じようなことになった場合、今後も死者数はゆっくりと増え続けていく可能性があります。
そして、その後、すぐに次の再感染の嵐がやってくると見られます。ブースターを進めている国に終わりはないのです。


コロナ特効薬「モルヌピラビル」入手困難のナゼ…専門家も呆れる厚労省の“不手際”ぶり
                        日刊ゲンダイ 2022年2月2日
 すぐに使えるはずのコロナ特効薬「モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)」が使えず医療現場に不満と動揺が広がっている。
 米メルクが開発し大手製薬会社MSD(本社・東京)が、昨年末に新型コロナウイルス感染症の治療薬として国から特例承認を受け製造販売している初の飲み薬だ。
 本来ならとっくに一般流通し、重症患者の減少に寄与しているはずなのだが、実は厚生労働省が設けた流通の縛りで、医療機関も製剤薬局も入荷困難な状態が続いているのである。
 現状、安定供給が難しいため一般流通は行わず、厚労省が所有し配分するとし、①薬剤の配分を受ける医療機関、製剤薬局は、都道府県と厚労省が薬剤の供給を委託したMSDの登録センターへの登録の義務②本剤は薬局が責任を持って患者宅に届ける③薬の発注は1回につき3人分まで──とする通達を医療機関、薬局に出しているのだ。

異常な薬局への条件
 事前に都道府県に登録しリストに掲載されていることが薬剤発注の必須条件になっているのだが、薬局への条件は異常だ。わだ内科クリニック(東京・練馬区)の和田眞紀夫院長が疑問を投げかける。
「薬局の登録は夜間、休日、時間外、緊急時の対応が可能とする要件を満たすことを条件にしています。つまり24時間対応できなければ登録申請はできないということです。診療所内で薬剤を管理する院内処方の施設や24時間対応している大手調剤グループは登録できても、院外処方しているほとんどの調剤薬局では登録申請できない状態です。そのため多くの診療所がラゲブリオの処方ができずにいるんです」
 さらにこう続ける。
「24時間対応の条件でも薬局に負担なのに、薬剤は責任を持って直接患者の元に届けるとされています。これでは感染者が急増したら医療従事者だけではなく、薬剤師も含め医療システムは破綻します」

現実離れした発注“縛り”
 これだけではない。薬の発注は1回につき3人分までとする現実離れした縛りは、1日に患者が5~6人来たら処方箋は回らなくなる。しかも、発注は必要な患者が発生してから行うと指示され、さらに本剤が届くまで発注から2日程度かかるため、当日の患者に薬を出すことは不可能といえる。
 ラゲブリオの処方は、18歳以上で重症化リスクの高い軽症・中等症の患者が対象で、入院や死亡リスクを30%下げる効果が確認されている。医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が厚労省の指導に呆れてこういう。
ラゲブリオはものすごい特効薬で世界中で確保の動きが加速しています。それにしても一般流通する薬を発注するのに二重の登録をさせるとか、薬局に配達させるとか、本来まったく必要のないことです。厚労省が薬剤の確保に遅れ、少ない契約しかできなかったことの責任追及を逃れるための縛りです」
 ワクチン供給で世界から後れを取った日本、今回の治療薬でも不手際が繰り返されている。