2022年3月4日金曜日

04- バイデンに一石五鳥のウクライナ紛争/バイデンが犯した一番の間違い

 イラクのフセイン大統領がクエートに侵攻したのは、当時イラク駐在の米国大使(女性)から、「クエートに侵攻しても米国は静観する」とそそのかされたからでした。

 しかしフセインが実際にクエート侵攻を始めると、彼女はすぐさまイラク空港から米本国に帰国しました。勿論その後の展開をよく承知していたからです。
 イラクはその後米国などの連合軍によって完膚なきまでに破壊され、アラビアンナイトの国「ペルシャ」は「石器時代に戻」されました。
 そうした経緯は、今回バイデンがロシアを「ウクライナ戦争」に誘導するに当たり、「米国は派兵しない」と繰り返し強調したことと符合します。
 植草一秀氏が、「バイデンに一石五鳥のウクライナ紛争」とする記事を出しました。バイデンにとってウクライナ戦争は起きて欲しいものでした。そしてウクライナがどんなに悲惨なことになるのかなども意に介さないのでした。
 以下に紹介します。
 併せて、グローバル・マクロリサーチの記事「ロシアのウクライナ侵攻でバイデン大統領が犯した一番の間違い」を紹介します。
 14年の米国が関与したクーデターで親米化したウクライナ政権は19年、NATOへの加入に努力することを憲法に明記しました。NATOへの加入は直ちに「武力をもってロシアに敵対する」ことを意味するもので、まさに「親米化は即反露化」であることを絵に画いたようなものでした、プーチンが繰り返しウクライナに「中立化」を求めている所以です。
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バイデンに一石五鳥のウクライナ紛争
                  植草一秀の『知られざる真実』 2022年3月 3日
平和はすべてのことに対して優先されるべき価値。日本国憲法の価値もここにある。
日本国憲法は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と明記した。
紛争を解決する手段として武力による威嚇と武力の行使を永久に放棄した。
正しい選択である。したがって、紛争の解決に武力を用いないこと。この大原則を守らねばならない。
この意味で、ウクライナで生じている現実は悲しむべきこと。ロシアは武力の行使を実行するべきでなかった。

しかし、この問題はロシアだけの問題でない。
つい最近も、極めて重大な問題が発生している。その問題を主導したのは米国である。
米国はアフガニスタンやイラクに軍事侵攻した。
2003年に勃発したイラク戦争は米国による軍事侵攻である。
米国はイラクが大量破壊兵器を保持していると主張し、これを大義名分にしてイラクに軍事侵攻した。国連決議違反の行為でもあった。
しかし、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。この戦争で大量のイラク市民が犠牲になっている。
確定した数値は存在しないが少ない推計で10万人、多い推計では60万人の市民が犠牲になっている。

英「BBC」の番組で、ウクライナの元検事が、「青い目と金髪のヨーロッパ人が、子供たちが殺されているのです」と語ったという記事を紹介した。
イギリス人の元欧州議会議員がウクライナ人について、
「彼らは私たちにそっくりだ。ゆえに、いま起きていることがたまらなく衝撃的だ。
戦争とはもはや貧困にあえぐ遠く離れた場所に暮らす人々の身に降りかかるものではなく、どこにでも起こり得るのだ。」と述べたことも同じ記事で紹介されている。
「「私たちみたいな青い瞳の金髪の人々が攻撃されるなんて」ウクライナ報道に見える“人種差別”」https://bit.ly/3sBgIdM 
イラクで民間人が犠牲になるのは構わないが、青い目と金髪の白色人種が犠牲になることは許せないということなのか。

ロシアがイラク戦争の事例を引くのは順当である。
こう表現する意味は、ロシアの行為が正しいということではなく、ロシアも間違っているが、米国も間違っていたということ。
米国がイラク戦争を棚に上げてロシアを悪魔のように表現することに正当性はない。

現在に至る経緯のなかで重要なものを羅列しておこう。
1990年 ドイツ統一問題での協議で米国がソ連に対してNATO東方不拡大の方針を明示
1994年 ブタペスト覚書 ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナが核不拡散条約に加盟したことに関連し、米、ロ、英の核保有3ヵ国が3国に安全保障を提供するというもの
2004年 オレンジ革命 ヤヌコヴィッチ大統領を選出した選挙に不正があるとして再選挙を行い、親西欧のユシチェンコを大統領に選出した政権転覆革命
2010年 大統領選でヤヌコヴィッチを大統領に選出
2014年 ヤヌコヴィッチ大統領を国外追放する暴力的革命が勃発し、大統領がポロシェンコに交代
この政変に連動してロシアがクリミアを併合
ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランス4ヵ国により「ミンスク合意」調印。ウクライナ東部地区に自治権を付与することが定められた。
2019年 ゼレンスキー大統領選出 ミンスク合意履行を約束
2021年3月 ゼレンスキー大統領が軍事安全保障戦略に署名 内容は「ロシア連邦との地政学的対決において、国際社会がウクライナを政治的、経済的、軍事的に支援すること」を求めるというもの。背景にバイデン政権の発足があった。

その後、2022年まで、ロシアはウクライナにミンスク合意履行を求めたが、ゼレンスキー大統領はこの要請を無視するだけでなく、ロシアに対する軍事的敵対姿勢を鮮明にした。
この結果としてウクライナ紛争が勃発した
バイデン大統領にとっては、
1.ロシアを悪者に仕立てる
2.米国産天然ガスを高値売却できる
3.軍産複合体に販売促進機会を与える
4.大統領支持率を引き上げる
5.子息のウクライナ疑惑を封殺する
という一石五鳥の成果を得られるのが、今回のウクライナ紛争である

米国は派兵を早期に否定し、ロシアの軍事侵攻を扇動した側面を有する。
冷静に経緯を見極め、早期に停戦を実現するために、すべての国家が力を注ぐべきである。
米国、NATOが停戦を追求せずにウクライナへの軍事支援を優先することは、紛争の長期化、深刻化を招くことになる。

鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」)
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             (以下は有料ブログのため非公開)

ロシアのウクライナ侵攻でバイデン大統領が犯した一番の間違い
                 グローバル・マクロリサーチ 2022年2月25日
ロシアのウクライナ侵攻が行われた。大手メディアでは最近の出来事しか報じられていないが、ロシアとウクライナ(そしてアメリカ)のこれまでの因縁をここで一度復習するとともに、この件でバイデン大統領が犯した決定的な間違いについて論じたい。

2014年ウクライナ騒乱
一連の問題の始まりは2014年のウクライナ騒乱である。2013年11月21日に首都キエフの欧州広場で始まった親EU派のデモが次第に暴徒化し、最終的には親ロシア派だったヤヌコビッチ大統領を追放したことからすべてが始まる
ロシアはこれを違法なクーデターだと呼んだが、アメリカとEUはヤヌコビッチ大統領は暴徒化したデモとの交渉に応じるべきだとして、そうしない場合はウクライナ政府関係者に制裁を課すとして脅している
奇妙なことだが西洋人は暴力的なデモに甘い。それが自国の利益になる場合にはなおさらで、そうした歪んだ政治観が例えばシリアの反政府武装勢力を「穏健な民主派」と呼ぶ精神を生んでいるのだろう。
一方で2020年のアメリカ大統領選挙に抗議したデモ隊がアメリカ議会を占領した時にはそれを非難するのだから、彼らの善悪の基準はよく分からない。他国での暴力は良いが、自国では嫌だということだろうか。
ともかく、欧米諸国はこうしてウクライナに新たに成立したポロシェンコ大統領率いる親EU派の新政権とともにウクライナを西洋化してゆく
一方でロシアはこの騒乱に紛れてクリミア半島を併合し、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国としてウクライナからの独立を宣言したウクライナ東部を支援することで、ロシアと国境を接し、しかも首都モスクワにかなり近いウクライナが完全に反露勢力となってしまうことを防いだ。ここまでが第1ラウンドである。

ウクライナのEU・NATO化
その後親EU派のポロシェンコ大統領率いるウクライナはEUとNATOに傾斜してゆく
最終的には2019年にEUとNATOへの加入努力をウクライナ憲法にまで明記しており、モスクワにミサイルを打ちやすい位置にあるウクライナがロシアをいまだに仮想敵国とするNATOに急速に近づいてゆくのを見て、プーチン氏は危機感を感じていただろう
日本やアメリカのメディアを見ているとロシアがいきなりウクライナを攻めたように見えるが、そういう背景があるのである。今回のウクライナの一件については中国の王毅外相の以下のコメントが一番理性的であるように思う。

各国の主権、独立及び領土的一体性は尊重され、維持されてしかるべきであり、ウクライナも例外ではない。
だがウクライナ問題は複雑な歴史的経緯があり、ロシアの安全保障上の合理的な懸念を理解する。

大手メディアにやられた日本人の大半は、中国人の政治的発言を理性的だと思える理性を持たないだろうが。

関係の深いウクライナとバイデン氏
さて話をポロシェンコ大統領率いる新政権が元々の親ロシア政権に取って代わったところに話を戻すが、そのポロシェンコ氏を良いように使っていたのが当時オバマ大統領の副大統領だったバイデン氏である。
大半の人が思っているよりもバイデン氏とウクライナの因縁は深い。例えば2016年に解任されたウクライナの元検事総長ビクトル・ショーキン氏は、自分の解雇はバイデン氏の介入によるものだと主張し次のように述べている。

わたしの解任はポロシェンコ大統領の要求に従い辞表を提出した形で行われた。ポロシェンコがわたしに辞任を頼んだのは、アメリカ政府の特にジョー・バイデンによる圧力のためだった。
当時バイデンは副大統領で、わたしを解任するまでウクライナへの10億ドルの補助金は渡さないと脅していた。
わたしが解任された本当の理由は、わたしがジョー・バイデンの息子であるハンター・バイデンが取締役を勤めていた天然ガス企業であるブリスマ社に対する広範囲な汚職捜査を行なっていたからだ。

ちなみにこのバイデン氏の息子問題はトランプ氏が大統領時代にウクライナに対して中止された捜査を再開するよう圧力をかけ、その後アメリカ民主党に自分の政治的利益のためにウクライナに圧力をかけたと批判されている。民主党はバイデン氏のやったことは良いというのだろうか?

バイデン政権とウクライナ
さて、バイデン氏はその後大統領となり、アフガニスタンから米軍を引き上げる際に民間人と米軍の武器より先に米軍を引き上げてしまい、すべてタリバンに奪われるという失態で支持率を大きく急落させた。
バイデン氏はもうご老体なのだから、民間人と武器を忘れてくることぐらいアメリカ国民は想定しておかなければならなかったに違いない。ジェフリー・ガンドラック氏はこの件を「あなたの税金がタリバンの武器に生きている」と皮肉っている。
 ・ガンドラック氏: あなたの税金がタリバンの兵器に

こうして支持率を減らし、窮地に陥ったバイデン氏が思い浮かべたのが、何処までもアメリカに翻弄された哀れなウクライナだったに違いない。
バイデン氏は恐らくウクライナ問題を大きく喧伝した後に自分が華麗に解決することで支持率を回復させる算段だったのだろう。
「明日にもロシアが来る」「プーチン大統領はもう決心した」とどうやって行なったのか分からない読心術(誰も突っ込まなかった)を用いてロシアの脅威を煽るバイデン氏に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領自身が煽るのを止めてくれと遠回しにお願いしている。
一方でプーチン大統領は軍を展開しながら何処までやれるのか見極めていただろう。バイデン氏はプーチン氏の心を読んでいたが、交渉は通常相手の出方を見ながらやるものである。
ロシアとしては当然ながらアメリカと戦争をやる気はない。韓国と同じ経済規模のロシアがアメリカに勝てるはずがない。
だからプーチン氏はアメリカの出方を伺っていたはずだ。そこでバイデン氏が口を開いて次のように言った。

 米軍をウクライナ国内に派兵することはない。

間違いなくプーチン氏は「え? いいの?」と思ったはずである。筆者も心底びっくりした。それはウクライナに侵攻してもアメリカは攻めてこないというアメリカ大統領からの意思表示である。
バイデン氏はその少し前にプーチン氏の心を読んでいたが、プーチン氏が本当に決心したのはこのタイミングだと筆者は確信している。

 
仮にウクライナ派兵がアメリカにとって間違った決断だとしても、派兵をしないなどとは絶対に言ってはいけない。交渉とはそういうものである。
バイデン氏に何かを期待するのが無理というものなのだが、プーチン氏にとってはあまりに簡単なゲームだっただろう。
一方でウクライナは欧米の圧力によって親EU・親NATOにされた挙げ句、実際に戦争になったらウクライナに加勢をする国は1つも無かった。ウクライナは最後まで遊ばれたということである。上記のガンドラック氏は現在の状況についてこうツイートしている。
ジョー・バイデンはアメリカの納税者に対し、そもそもウクライナでどうなればアメリカの成功になるのか直ちに説明する必要がある。
あるいはその前に何故アメリカの納税者がウクライナの国境を守るために金を払わなければならないのか説得力ある説明をしなければならない。
ここから日本が得られる教訓が1つある。日本が戦争になったらアメリカが助けに来てくれると思っている日本人に言っておくが、少なくない数のアメリカ人は日本が何処にあるかさえ知らず、世界地図を見せられたらインドを指差す人も少なくないだろう。アメリカに行ったことさえない大半の日本人には信じられないかもしれないが、本当の話である。
大体日本はアメリカに攻められたのであり、何故戦時中に自分が侵攻した中国から、自分を攻めてきたアメリカに守ってもらうという意味不明な発想になるのだろう? 何が起こってもアメリカ人は日本に来ないか、あるいは滅びゆく日本を偲んでインド旅行ぐらいはしてくれるかもしれない