2022年3月2日水曜日

自公協力に亀裂、公明党は自民に長年の不満/岸田政権にダブルパンチ

 自公両党は政治上の理念が異なりながら、国政選挙等ではこれまで実に見事な選挙協力をして来ました。相互協力が建前なのですが、それによって圧倒的な利益に浴することが出来たのは自民党の議員たちでした。というのは各選挙区には固定票といわれる創価学会員票が相当数あるので、それが自民候補に流れることで接戦区でも勝ち抜くことができたからで、その結果 今日の自民党の国会議員の大勢力を築くことができたのでした。

 しかしそれが安倍政権下での極端な右傾化につながったことを思うと、決して日本のためにはなっていませんでした。その点は公明党によくよく考えて欲しいところです。

 岸田政権になってその自公協力に亀裂が入ったようで、「自公の熟年離婚騒動」などと注目されています。詳細はNEWSポストセブンAERA dotの記事に書かれています。
 もしもそれが決定的になって自民党議員が減るような事態になれば日本にとっては喜ばしいことです。
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自公協力に亀裂、公明党は自民に長年の不満「我々は使い走りではない」の思いも
                       NEWSポストセブン 2022/02/28
                       ※週刊ポスト2022年3月11日号
 感染第6波の出口が未だ見えない中、国政では自民党と公明党の連立が大きく揺らぎ始めた。公明党の山口那津男・代表が2月6日放送のBSテレ東の報道番組で、夏の参院選での自公選挙協力について、「(自民党に)相互推薦をお願いしたが、現にない以上、自力で勝てるようにやらざるを得ない」と岸田自民に“最後通牒”を突きつけたのだ。
 支持母体の創価学会も足並みを揃えている。創価学会は1月27日に国政選挙や地方選挙の方針を決める中央社会協議会を開催し、選挙の支援方針は「人物本位」で選び、「今後より一層、党派を問わず見極める」ことを申し合わせたことが報じられた。自公両党は小渕恵三内閣の1999年に連立を組んで以来、野党時代を含めてこれまで23年間、国政選挙で選挙協力をしてきたが、これからは自民党以外の候補者を支援することもあり得るという大きな方針転換だ。
 そうなると、自民党の政権基盤が揺らぐ。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「公明党・創価学会が選挙で自民党に票を出して当選を支援し、代わりに自民党は公明党に大臣や副大臣、政務官ポストを与えて国政に参加させる。それが自公連立の根幹をなしている構造です。選挙協力が白紙になれば連立の基盤そのものが危うくなるのは間違いない」

 まさに自公の“熟年離婚危機”と言っていい。発端は今夏の参院選をめぐる自公協議が“破談”になったことだ。前々回の2013年参院選以来、公明党が候補者を立てない1人区(32県)で自民党候補を支援する見返りに、自公の候補がぶつかる埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区では互いの候補を推薦し合う「相互推薦」という仕組みをとってきた。
 しかし、前回参院選は相互推薦の結果、兵庫では自民候補の票が公明党に食われて最下位当選となったことから、自民党の地方組織が抵抗して協議が難航し、茂木敏充・自民党幹事長は「上(党本部)から言うことを聞けという形は取りにくい」と協定を結ばない可能性に言及した。これに公明・学会サイドが怒った
 公明党の強硬姿勢に驚いた岸田文雄・首相は事態収拾のため2月8日に官邸で山口氏と会談したが、山口氏は会談後、相互推薦見送りの方針は「繰り返し述べてきた通り、変わらない」と断言
 元公明党副委員長の二見伸明・元運輸相は「公明党や創価学会には長年の不満がある」と語る。
「自民党の中には、公明党を低く見る議員がいる。特に、安倍政権の高支持率を追い風に当選してきた4回生以下は公明党・創価学会の支援は当たり前と思っているんでしょう。それに対して公明党には『我々は使い走りではない』という思いがあるはずです。
 また、ここに来て政界では自民党が日本維新の会や予算案に賛成した国民民主党と連立に動くのではないかという観測が強まっている。そんな動きを公明党は『どうぞ』とは言えない。維新や国民民主には創価学会のような票はありません。自民党がそのつもりなら、公明党・創価学会はこれまでどれだけ自民党に票を与えてきたか、この機会に力を示して思い知らせようということでしょう


支持率下落で焦る岸田首相にダブルパンチ「自公23年目の離婚騒動」を渦中の幹部語る
                           AERA dot. 2022/02/28
 新型コロナウイルスの第6波以降、岸田内閣の支持率下落が目立ち始めた。
 朝日新聞が2月22日に発表した世論調査では岸田内閣の支持率は45%(1月の調査は49%)に下がり、不支持率は30%(同21%)に上がり、内閣発足後初めて3割台になった。
 また岸田文雄首相が新型コロナウイルス対策で指導力を発揮していると思うかとの質問に対し、「発揮している」は34%(同37%)、「発揮していない」は53%(同41%)まで伸びた。
 テレビ朝日の世論調査(21日発表)も同様に岸田内閣の支持率は先月から5ポイント下落し、46.5%時事通信(2月11日~14日調査)で内閣支持率は8.3ポイント減の43.4%まで下がり、軒並み低下傾向にある。

「コロナ拡大の最中にロシアのウクライナ侵攻で株価が下がり、支持率低下が顕著です。岸田首相はかなり焦っています。ただし、感染を抑え込むために強い対策を取る方針でいくべきか、制限緩和のベクトルで行くべきか、各種世論調査の数字をにらみながら、どちらにも決めきれずにいることから、内閣官房も厚労省も右往左往してしまっています。首相自身が明確なスタンスやリーダーシップを示せず、世論の顔色を見ながら政策を決める、というのが岸田内閣の本質なんですよね」(官邸関係者)

 その上、今夏に控える、参院選を前に自民党と公明党の連立与党が「23年目の離婚」騒動と揺れている。
 これまで参院選の選挙区でお互いの候補を自公で相互推薦という形で戦ってきた。それが連立与党の政権維持につながってきた
 しかし、夏の参院選では、公明党の相互推薦の申し入れに自民党がなかなか回答をせず、公明党の山口那津男代表は「自民党から、期限までに答えがこない。もう自力でやるしかない」と相互推薦をしないことを示唆。そして、公明党の支援母体、創価学会も自民党候補への推薦については「人物本位だ」と打ち出した
 安倍政権時代は当時の官房長官、菅義偉前首相が創価学会、公明党とのパイプが太く相互推薦が続いてきた。しかし、岸田首相となり、菅前首相の影響力が薄くなると、自民党と公明党との関係がギクシャクしはじめた。
 岸田首相の中には安倍政権の政調会長時代、国民へのコロナ支援策として自らが取りまとめた『所得制限付の30万円現金給付』案を、公明党に『所得制限なし10万円一律給付』へと瞬時にひっくり返されて顔を潰され、恥をかかされた苦い経験がある。
「岸田首相はもともと菅前首相とも関係がよくないので、茂木敏充幹事長、遠藤利明選対委員長に公明党との交渉を一任。菅前首相が公明党とのつながりが強いので、自ら出ないほうが得策という判断だった。党幹部は『公明党に離縁をちらつかせることで、これまで以上に有利な条件を引き出す狙い』と言い、岸田首相も『公明党だって台所事情は良くないんだろ』と容認していた。だが、逆効果となりすきま風が強くなっている」(自民党の閣僚経験者)
 互いに牽制しあっていた関係に「決定的なヒビ」が入ったきっかけは、遠藤選対委員長が自民党兵庫県連との面会後に放った「(公明党との相互推薦について)地元としてはかなり『不本意』だが党本部の考えに従う」との発言だという。
「相互推薦を『不本意』と表現したことを公明党本部及び創価学会は重大視。一気に主戦論に舵を切ることとなった」(公明党関係者)
 自民党と公明党の相互推薦のトラブルが顕著に現れたのは、兵庫の選挙区だった。2019年の参院選、兵庫県選挙区で当初、下馬評が高かった、自民党の加田裕之氏が立憲民主党候補に3万票差まで追い上げられ終盤、大苦戦。連立与党で過半数を狙い同じ選挙区から公明党の高橋光男氏も立候補した結果、兵庫県選挙区(定数3)で、公明の高橋氏は早々に2位で当選した。
 自民党の加田氏は最後までやきもきする展開となった。その時以来、自民党の兵庫県連は、公明党との相互推薦に対して見直すべきではないのかとの意見が相次いでいた。兵庫県の自民党県議はそう話す。
「公明党と相互推薦をすると、実際に自民党支持者がどちらに投じればいいのかと困惑している。前回の参院選もそうでした。昨年の衆院選でも自民党が公明党に譲っている小選挙区が兵庫県内には2つある。そこでは『なんで公明党ばかりに入れなきゃいけないのだ』と不満の声を何度も聞いた。相互推薦は選挙区の都合を勘案して、やればいい。今年の参院選では兵庫県選挙区は必要ない」
 自民党の遠藤選対委員長はこうした声を抑えるため、神戸市に自民党兵庫県連を1月19日に訪ね、藤田孝夫幹事長と会談をもった。
 遠藤選対委員長の「公明との相互推薦を」との呼びかけに兵庫県連が「不本意ながら」と了承したと一部メディアで報じられ、今回の騒動になったが、真相はどうなのか? 藤田幹事長を直撃した。
「前回の参院選では、相互推薦が影響して、自民党の加田氏が危うい戦いになったことは兵庫県連の共通認識です。そこで、遠藤氏が地元の意見、思いを聞かせてほしいとお越しになった。自民党の選対委員長というのはフットワークが軽いので、珍しいことではない。そこで、こちらも思いを遠藤氏にぶつけました。正確には記憶していないが、けっこう長い時間、話し合いました。最終的に、党本部の決定に従うという趣旨の話にはなりました。『不本意ながら同意した』という内容の報道があり、内紛でもあるのかと受け取られた方もいたようですが、そうではない。不本意という言葉は、私か遠藤氏か、どちらが言ったのかはっきり覚えはない。ただ、党本部の決定には従いますが、自民党と公明党の間で課題があることも忘れないでほしい、という主旨は伝えました」
 遠藤氏と藤田氏の会談後、兵庫県選出の国会議員の会合でも「党本部の決定に従う」との方向性が確認されたという。

 しかし、一枚岩ではない。昨年夏の兵庫県知事選挙では地元の自民党県議の大半が副知事だった金沢和夫氏を支援で一本化したが、一部の県議と兵庫県選出の国会議員がそれをひっくり返して、日本維新の会が推薦した齋藤元彦知事の支援を打ち出し、保守分裂選挙となった。前述の兵庫県議はこう不満そうに話す。
地元の意向を国会議員が上から目線でひっくり返した遺恨が今もある。遠藤氏が頭を下げたからと言って、はいそうですかとはならない
 19年の参院選、大阪選挙区(定数4)でも公明党の杉久武氏は3位で当選し、自民党の太田房江氏は最後の議席だった。大阪府議はこう相互推薦を疑問視する。
「公明党は自民党の支援者の挨拶に同行させろ、名簿を出してと要求ばかりだ。本当に、自民党に票が来ているのか疑問に思うことがよくある」
 前出の閣僚経験者は、自民党が国政選挙で勝ち続けている要因の一つは、公明党の固い支持基盤であると認めた上でこう語る。
「公明党だって参院選の選挙区で自民党の支援がないと危うい。自民党も激戦の1人区では公明党の票が不可欠。茂木氏や遠藤氏は公明党が過去、選挙になると揺さぶりかけてくると、今回の相互推薦の問題をほったらかしにしていた。いずれは公明党が折れてくる、と踏んでいたが、公明党が強気なので今になって、慌てている。岸田首相まで菅前首相にアドバイスを求めるほどだ。一度、こじれると修復はなかなかむつかしい」
 公明党の山口代表は、2月6日に出演した民放テレビ番組でこう語った。
「(自民党に)相互推薦やろうとお願いしているが、返答をいただけない。あてにするわけにはいかないので、自力で選挙に勝てるようにやる。タイムリミット? もう過ぎたのでやるしかない」
 野党共闘がまとまらない中で、参院選は与党である自民党、公明党有利とみられていたが、五里霧中となってきた。
               (今西憲之 AERAdot.取材班)