参院予算委は2日、ウクライナ情勢等に関する集中審議を行い、日本共産党から山添拓、井上哲士両議員が質問に立ち、ロシアのウクライナ侵略を利用した「国連・憲法9条無力論」や核武装=「核共有」を求める議論を厳しく批判しました。
山添氏は「戦争の違法化は二つの大戦を経た重要な教訓だ。力の論理を否定し、紛争の平和的解決を求めたのが国連憲章であり憲法9条だ」として、政府が敵基地攻撃能力の保有を検討しているのは「危険な逆行」で、「相手をせん滅するような打撃力を持つ」とする安倍元首相の主張について、憲法や国際法に反しないのかとただしたのに対して。岸田首相は「国際法の観点からも憲法の観点からもそうした範囲内に収まるものでない」と述べ、憲法と相いれないとの認識を示しました。
井上氏は、自民党の安倍元首相や福田達夫総務会長らが、日米が核兵器を共同運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)を求めていることについて、「非核三原則は、本会議決議をへて国是とされているものだ」として「与党内で議論・検討すること自体あり得ない」と指摘したのについて、岸田首相は「(核共有は)非核三原則を堅持する立場からも、原子力基本法をはじめとする法体系からも、認められない」と答え、明確に否定しました。
そもそも「核共有」はNPT(核不拡散条約)にも反するものですが、NATOではNPT以前に取り決められていたので例外的に認められていたのでした。
いずれにしても「議論すること自体あり得ない」ものです。
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敵基地攻撃検討「危険な逆行」山添氏、「核共有」議論自体ありえない 井上氏
参院予算委 ウクライナ問題集中審議 共産党追及
しんぶん赤旗 2022年3月3日
参院予算委員会は2日、ウクライナ情勢等に関する集中審議を行いました。日本共産党から山添拓、井上哲士両議員が質問に立ち、ロシアのウクライナ侵略を利用した「国連・憲法9条無力論」や核武装=「核共有」を求める議論を厳しく批判し、政府を追い詰めました。(下掲の記事参照)
山添氏は、「国連は無力」「9条で国は守れるか」などとした一部の議論をあげ「力には力で対抗が必要と言わんばかりだ」と批判。「戦争の違法化は二つの大戦を経た重要な教訓だ。力の論理を否定し、紛争の平和的解決を求めたのが国連憲章であり憲法9条だ」として、岸田文雄首相の認識をただしました。
岸田首相は「日本国憲法の掲げる平和主義の理念は国際の平和と安全の維持を目的とした国連憲章の考え方と理念的に軌を一にするもの」と答弁。山添氏は「いま求められるのは侵略やめよの世論でプーチン政権を包囲し、平和秩序を回復、再構築することだ」と主張しました。
一方で政府が敵基地攻撃能力の保有を検討しているのは「危険な逆行だ」と指摘。「相手をせん滅するような打撃力を持つ」とする安倍晋三元首相の主張についてただしました。岸田首相は「国際法の観点からも憲法の観点からもそうした範囲内に収まるものでない」と述べ、安倍氏の議論は憲法と相いれないとの認識を示しました。
山添氏は、紛争の平和的手段による解決などに努力する東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みをあげ、「これが21世紀の世界が進む道だ。平和秩序が脅かされる中だからこそ、平和のルールを実効的にすることが問われている」と訴えました。
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井上氏は、ロシアのプーチン大統領が核兵器の先制使用も辞さないと威嚇しウクライナ侵略を進めている問題で、「第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない」との広島・長崎市長の連名の抗議文を示し、核兵器の使用も威嚇も許されないと世界に呼びかけるよう岸田文雄首相に求めました。
その上で、自民党の安倍晋三元首相や福田達夫総務会長らが、米軍の核を日本に配備し、日米が共同運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)を求めていることを厳しく批判。「非核三原則は、時の政権の政策にとどまるものではない。本会議決議をへて国是とされているものだ」として「与党内で議論・検討すること自体あり得ない」と指摘しました。
岸田首相は「(核共有は)非核三原則を堅持する立場からも、原子力の平和利用を前提とする原子力基本法をはじめとする法体系からも、認められない」と答え、明確に否定しました。
井上氏は、米科学者団体の2013年の報告書に、秋葉剛男国家安全保障局長が外務省北米局審議官だった当時、「効果的な核抑止のオプション」として、「核共有」をあげ、中国と北朝鮮を念頭に、「日本が核使用を決定する」と述べたことが記されていることを指摘。「危機に乗じて核兵器を保有・配備する議論は許されない。日本は、核兵器のない世界をつくる先頭に立つべきだ」と主張しました。
論戦ハイライト 参院予算委 山添議員の追及
しんぶん赤旗 2022年3月3日
日本共産党の山添拓議員は2日の参院予算委員会で、岸田文雄首相が保有を検討するとしている「敵基地攻撃能力」について、憲法や国際法に反する問題を追及しました。
山添 相手国せん滅の打撃力 憲法に反しないか
首相 憲法の範囲内に収まらない
「力の論理を否定し、紛争の平和的解決を求めたのが国連憲章であり、憲法9条だ」―。山添氏は、ロシアによるウクライナ侵略のもとで、一部のメディアや政治家から「国連は無力」「憲法9条で国は守れるのか」などの言説があることにふれ、岸田文雄首相の認識をただしました。
その上で、「軍事による対抗に頼ろうとするのは安直な戦前回帰だ」と指摘し、岸田首相が「敵基地攻撃能力の保有検討」と表明したのは「危険な逆行だ」と批判。安倍晋三元首相が昨年11月の講演で「敵基地だけに限定せず、『抑止力』として攻撃力を持つ」と述べたとして、岸田首相が検討しているのも「敵基地だけに限定しない打撃力か」と迫りました。
山添 安倍元首相の「相手国をせん滅するような打撃力」の考えは、憲法や国際法に反しないか。
首相 相手国をせん滅する軍事力を持つことは、憲法の観点からも範囲内に収まるものではない。
山添氏は、歴代政府が「専守防衛」を憲法9条と自衛隊の関係を説明する基本としてきたと指摘。『防衛白書』でも「武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使」「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略」などとしているとして、「専守防衛は、維持するのか」と質問しました。
岸信夫防衛相 防御するのに他に手段がないと認められる場合に限り、基地をたたくことは法的に自衛の範囲内だ。
山添 敵基地攻撃能力は、攻撃を受ける前に打撃する。専守防衛を超えるのでは。
防衛相 わが国に対する武力攻撃は、相手が着手したときに発生と見ている。何をもって「着手」と見るのかは具体的には言えない。
岸氏はこう答弁し、国際法違反の先制攻撃との区別を明確に示すことができませんでした。山添氏は「抑止力は、脅しであり行使することが前提。専守防衛とは相いれない」と批判しました。
山添氏は、2月16日の衆院予算委で岸防衛相が相手国の領空に入り、軍事拠点を爆撃する「海外での空爆」を認めたと厳しく批判。2020年11月13日の衆院安保委で、岸氏自身も「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領空、領海に派遣する、いわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超える」と述べ、憲法違反との認識を示していたと指摘し、「いつ変わったのか」と追及しました。
防衛相 考え方は変わっていない。
山添 戦闘機で爆撃を可能にするという。これでは憲法の範囲内で議論をすると言ってもその範囲がどんどん拡大している。
追及に対し岸氏は事実上、答弁不能に陥りました。山添氏は「他国の領域に入って爆撃などすれば全面戦争につながる。だから、歴代政権ですら憲法に反するとしてきた」と強調しました。
さらに、日本が敵基地攻撃能力を持てば、日米の役割分担を変えることになるのではないかと追及。「憲法、国際法、日米の基本的な役割分担、いずれも政府の従来の見解すら踏み越え、戦争する自衛隊に変えようとするものにほかならない」と厳しく批判しました。
山添 外交努力尽くすことが政治の役割
首相 外交交渉で緊張緩和が基本
山添氏は、政府が安倍・菅内閣のもとで安保戦略の策定や改変に関わった人たちと意見交換を重ね、折木良一元統合幕僚長らが昨年11月に発表した政策提言は、「専守防衛」の見直しと「非核三原則」の是非を問う議論まで呼びかけているとして、次のようにただしました。
山添 憲法から積極的に逸脱しようという人を有識者として招いている。議事録も資料も公表されていない。秘密裏に進めるのか。
加野幸司内閣官房内閣審議官 議事概要は行政文書として作成し保存している。
山添 国民的に検証可能にするべきだ。開示を求める。
さらに山添氏は、シンクタンク「日本戦略研究フォーラム」が昨年8月に行った台湾周辺で軍事緊張が高まった場合のシミュレーションにふれ、次のようにただしました。
山添 元外務省国際法局長が「こんなシナリオに入ったら勝者は誰もいないということは、非常にはっきりしている」と述べたのはその通りだ。こんなシナリオに入らないために、外交努力を尽くすことが政治の役割だ。
首相 いかなる事態においても、外交交渉を使って緊張を緩和するべく努力する。これが基本だ。
山添氏は、日本が敵基地攻撃能力を持てば、北朝鮮であれ中国であれ、それを上回る軍拡を進め、際限のない軍拡競争になると指摘。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では友好協力条約(TAC)を結び、対話と協力の地域をつくる努力を重ねていることを紹介したうえで、ASEANが中心となってつくられた東アジアサミット(EAS)について、首相は重要な会議だと述べたとして、21世紀の国際社会が進むべき道だと強調。ロシアのウクライナ侵略を利用し、力に力で応える道に進んではならないと訴えました。