高野 孟氏の「永田町の裏を読む」(日刊ゲンダイ)のコーナーに「『政府最高レベルの無恥』安倍晋三元首相が核共有を言い出す茶番」という記事が載りました。
安倍元首相は2月末に唐突に「核共有」問題を持ち出しましたが、元国家安全保障局次長の兼原信克氏によれば、「日本の総理が核の傘の信頼性について米大統領に質したことは、ついに一度もなかった」ということで、ドイツが「あらゆる角度から核の傘の信頼性を疑って米国を悩ませ続け」のと対照的だということです。
高野氏は、安倍氏は核のことをロクに考えたこともなく、米国に議論を挑む勇気と識見があるわけでもないのに、ドイツ並みに核共有を認めてもらわないと同盟国としては二流扱いだというコンプレックスでこれを言っているだけなのだと述べています。
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永田町の裏を読む
「政府最高レベルの無恥」安倍晋三元首相が核共有を言い出す茶番
高野 孟 日刊ゲンダイ 2022/03/24
2月末に安倍晋三元首相が唐突に持ち出した「核共有」問題がまだ尾を引いて、先週の国会でも議論が続いた。
13日のBSテレ東「日曜サロン」では石破茂元自民党幹事長が「米国の核の傘に穴が開いていないのか、常に点検し米国と議論していなくてはならない」と正論を吐いていたが、日本が米国の核の傘に頼ろうとするなら当然だろう。
ところが、国家安全保障局次長を務めた兼原信克現同志社大学特別客員教授の新著「日本の対中大戦略」(PHP新書)によると「日本の総理が核の傘の信頼性について米大統領に質したことは、ついに一度もなかった」というから驚きである。
ということは、この「政府最高レベルの核の無知」(同上)は安倍においても同じで、にもかかわらず彼が知ったかぶりで「核共有」を言い出しているのは茶番にすぎない。
ドイツは「あらゆる角度から核の傘の信頼性を疑って米国を悩ませ続け」、米国の核を自国領土に持ち込ませその配備・運用に一枚噛むほうが抑止力が上がるのではと、専門的な議論まで吹きかけて米国の核をいわば人質にとっている。結局、安倍は核のことをロクに考えたこともなく、米国に議論を挑む勇気と識見があるわけでもないのに、ドイツ並みに核共有を認めてもらわないと同盟国としては二流扱いだというつまらぬ拝米コンプレックスでこれを言っているだけなのだ。
さらに、この「政府最高レベルの無知」は核政策だけではない。兼原によると、首相官邸の洪水・地震など自然災害への機敏な対応力は世界一流だが、尖閣や台湾の有事を含めて安保上の危機管理は「全くやっていない」。これでは核共有など高級すぎるおもちゃである。
高野 孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。