札幌地裁の広瀬孝裁判長は25日、19年7月の参院選で街頭演説中の安倍元首相にヤジを飛ばし道警の警察官に排除された男女2人が北海道を相手取り損害賠償を求めた裁判で、原告の訴えを認め道に賠償金の88万円の賠償の支払いを命じました。
この判決自体は正当で喜ばしいものですが、植草一秀氏はこれに関連して
「日本の刑事司法は歪み、腐敗しており、ロシアと大差がない。日本の刑事司法制度には三つの重大な欠陥がある」として次の3点を挙げました。
第一は、警察、検察に不当に巨大な裁量権が付与されていること。
第二は、警察、検察が基本的人権を侵害していること。
第三は、裁判所が法の番人ではなく、政治権力の番人に成り下がってしまっていること。
「日本の刑事司法制度には依然として重大な欠陥がある」という指摘で、これは植草氏が従来から一貫して主張しているところです。
以下に紹介します。
同じ25日、性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さんが、自身を誹謗中傷するツイッター上の投稿に「いいね」を押されて名誉を傷つけられたとして、自民党の杉田水脈衆院議員に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、「『いいね』は抽象的、多義的な表現行為で、特段の事情がなければ違法ではない」として伊藤さんの請求を棄却しました。
判決は、杉田氏の「いいね」についてツイートのどの部分を対象にしているか特定できない上、どの程度の感情で押されたのか特定できないため違法性はない、という極めて分かりにくいもので伊藤さんは控訴する方針です。
この記事を書いた東京新聞の望月衣塑子氏は、ツイッターで「詩織さん側弁護士は杉田議員への尋問を求めたが、裁判長は却下」したと明らかにしました。
最初から結論があったかのような不明朗な判決です。
東京新聞とくろねこの短語の記事を併せて紹介します(くろねこの短語の前半は札幌地裁の判決に関するものなので割愛しました)。
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ロシア並み道警言論封殺に賠償命令
植草一秀の「知られざる真実」 2022年3月25日
ロシアで戦争反対のデモを行う市民が当局によって摘発されることを日本のメディアが大きく報道するが、同様の政府対応が日本国内で見られることを日本のメディアは大きく報道しない。
2019年7月の参院選の期間中、安倍晋三首相(当時)が札幌で街頭演説した際、ヤジを飛ばした市民を警察官が力尽くで排除した。排除された市民の男女2名が、表現の自由を侵害されたとして警察が所属する北海道に対して損害賠償を求めた裁判の判決が3月25日に示された。
札幌地方裁判所の広瀬孝裁判長は、「生命や身体に危害を加えるものや事件性があったとは確認できない」「表現の自由を侵害し違法と言わざるを得ない」として原告の訴えを認め、北海道に88万円の賠償を命じた。https://bit.ly/3IxVn9G
この事件が発生したのは2019年7月。第一審の判決が示されるまでに3年弱の時間が経過している。
違法行為を働いた警察官の刑事責任が問われるべきだが、日本の司法機関は警察の刑事責任を追及していない。日本とロシアの差は極めて小さいと言える。
警察は市民の安全を守る存在ではなく、権力のために市民に刃を向ける存在である。
日本の刑事司法は歪み、腐敗しており、ロシアと大差がない。日本の刑事司法制度には三つの重大な欠陥がある。
第一は、警察、検察に不当に巨大な裁量権が付与されていること。
第二は、警察、検察が基本的人権を侵害していること。
第三は、裁判所が法の番人ではなく、政治権力の番人に成り下がってしまっていること。
いずれも重大な問題だ。
第一の不当な裁量権とは、
犯罪が存在するのに、犯人を無罪放免にする裁量権と、
犯罪が存在しないのに、無辜の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権
である。
警察は密室で犯罪を創作する。取り調べ過程が可視化されておらず、密室で関係者の証言がねつ造され、無実の市民が犯罪者に仕立て上げられる。
他方、政治権力の事情で、犯罪が明白に存在するのに、犯罪者を無罪放免にする裁量権も付与されている。
検察審査会という制度が存在するが、検察審査会の委員と補助弁護士の選出が不透明であり、この人選によって、検察審査会の結論は人為的に誘導されてしまっている。
犯罪を立件するかどうか、起訴するかどうかは、警察と検察の裁量権に委ねられているため、犯罪者が無罪放免される事例が後を絶たない。
第二の人権侵害は極めて深刻である。
憲法は刑事手続きの適法性を要請しているが、適法性のない刑事手続きが放置されている。
裁判で適法手続き違反が明らかになるのに、裁判所が適法手続き違反を認定しない。
無罪推定の原則、罪刑法定主義、適法手続きなどの基本的人権を守るための制度が形骸化している。
現行犯逮捕していないのに、事後的に「現行犯人逮捕手続き書」を偽造して任意取り調べが現行犯逮捕に切り換えられても裁判所がこれを問題にしない。
裁判所裁判官の人事権を最高裁が持つ。最高裁長官、最高裁判事の人事権は政府にある
このため、最高裁は常に政治権力の顔色を窺う。
裁判所人事権を最高裁が保持するため、裁判所の判断は政治権力の意向に支配される。
法と正義に基づく裁判所判断が示されないことが多い。地方裁判所においては裁判官が正しい判断を示す場合があるが、上級裁判所では、その正しい司法判断が覆される。
公道上で選挙演説に対して意見を表明することは憲法が保障する基本的人権である。
警察が力尽くで意見を表明する市民を排除することは憲法違反、法令違反の行為である。
今回判決では裁判所が市民の民事上の主張を認めたが、警察官の違法行為を問う刑事責任追及においては、警察、検察、裁判所、検察審査会のすべてが、刑事責任を否定した。
日本の現状がロシアと大差のないことをすべての日本国民が知っておく必要がある。
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(以下は有料ブログのため非公開)
中傷ツイートへの「いいね」に名誉侵害は認めず 伊藤詩織さんが杉田水脈衆院議員に敗訴、東京地裁
東京新聞 2022年3月25日
性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さん(32)が、自身を誹謗ひぼう中傷するツイッター上の投稿に「いいね」を押されて名誉を傷つけられたとして、自民党の杉田水脈みお衆院議員に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(武藤貴明裁判長)は25日、「『いいね』は抽象的、多義的な表現行為で、特段の事情がなければ違法ではない」として伊藤さんの請求を棄却した。
判決で武藤裁判長は、杉田氏の「いいね」について「伊藤さんを中傷するツイートに好意的・肯定的な感情を示したと一般に受け止められる」と指摘。ただし、「いいね」は、ツイートのどの部分を対象にしているか特定できない上、どの程度の感情で押されたのか特定できないため、違法性はないとした。伊藤さんは控訴する方針。
伊藤さんは、ツイッター上の「相手をレイプ魔呼ばわりしたひきょう者」「ハニートラップを仕掛けた」「カネをつかまされた工作員」などと伊藤さんを中傷する25個の書き込みに対し、杉田議員が「いいね」を押し、伊藤さんを傷つけたと主張していた。(望月衣塑子)
安倍晋三への野次を強制排除した北海道警に「違法判決」の快挙!!&伊藤詩織さんの杉田水脈への賠償請求を東京地裁が却下の愚挙!!
くろねこの短語 2022年3月26日
(前 略)
ところで、札幌地裁の判決とは違って、なんともや切れない判決を東京地裁が出しやがりました。インターネットにおける誹謗中傷の投稿に自民党の杉田汚水脈が頻繁に「いいね」を押したことに対して伊藤詩織さんが起こした損害賠償裁判で、東京地裁が請求棄却しましたとさ。
「『いいね』は抽象的、多義的な表現行為で、特段の事情がなければ違法ではない」と裁判所は言ってるんだが、そんなことはありませんよ。実際、くろねこもfacebook上でそんな目にあってますからね。「いいね」ってのは文字通り「いいね」なんであって、それ以下でも以上でもない。つまり、その意見を支持してるってことだ。
確かに、「いいね」をすること自体は違法とは言えない。でも、国会議員が誹謗中傷の投稿に「いいね」したとすれば、それはちょいと意味が違ってくる。杉田汚水脈本人を裁判に呼んで、理由を糺すべきだと思うんだが、裁判所は杉田汚水脈の尋問を却下してるんだね。
こんなのが罷り通ると、第三者に不埒な投稿させて、それに「いいね」をすることで自らの意志表明という姑息な手段をとる輩がどんどん増殖していきますよ。
(↓ツイッター)
望月衣塑子@ISOKO_MOCHIZUKI 6:36 PM Mar 25, 2022 |