2022年3月17日木曜日

17- ウクライナ難民危機の誇張(田中宇氏)

 国際情勢解説者の田中宇氏が、報道されているウクライナからの避難民の数が過大なのではないかという疑問を呈しました。少し前ウクライナ政府はロシアの侵攻で2千人以上の市民が殺されたと発表しましたが、それに対して国連が発表した死者数は249人でその差に驚いたことがありました。それに似た誇張があるのではということです。

 ウクライナとしては悲劇をより深刻に訴えたいという欲求があるわけですが、事実は事実として知っておきたいものです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウクライナ難民危機の誇張
                          田中  2022年3月15日
ウクライナ戦争で250万人のウクライナ市民が難民としてポーランドなど近隣諸国に流入していると喧伝されている。私は、250万という人数などウクライナ難民危機の全体像が、かなり誇張されているのでないかと思っている。250万人のうち170万人がポーランドに流入したことになっているが、ポーランドはロシア敵視の国だ。露軍侵攻で発生した難民数が多いほどロシアに汚名を着せられて好都合だ。スロバキア、ルーマニアなど、他の難民流入諸国もロシアと敵対している。敵の極悪さを誇張するプロパガンダは、戦争の当然の特徴の一つだ。ポーランドなどが難民数を誇張するのは当然だ。誇張されていないと思う方が間抜けだ。国連は各国が出してきた数字を合計しているだけだ。

開戦前からの1か月ほどの間に、ポーランドに170万人の難民が流入したとなると、大きな難民キャンプをいくつか作らねばならないが、そういったものは作られていない。代わりに難民たちは、ポーランド人の家に民泊したり、町の体育館を開放してもらっているそうだ。「ロシアの極悪と対照的なポーランド人の隣人愛」を、米欧マスコミが称賛している。だが、民泊や体育館だけでは170万人のごく一部しか収容できない。実際は、民泊や体育館で事足りるぐらいの難民数なのでないか。ポーランドの対ウクライナ国境の町プシェミシルは人口が6万人だ。

ウクライナから難民の多くは鉄道で近隣諸国に越境していると報じられている。時刻表によると、ウクライナの首都キエフからポーランド国境近くのリヴィウまでは毎日2030本の列車がある。これらのすべてに難民が満員に乗って逃げているとして、1日の総数は23万人だ。1か月で170万人になるには少なすぎる。後述するように、実際の列車は満員でもない。鉄道の話でいうと、ポーランド政府はドイツ行きの列車にウクライナ難民を乗せて送り出しており、ドイツ政府がポーランド政府に、やめてくれと要請した。ドイツのマスコミによると毎日15万人の難民がポーランドから押し寄せているという。この人数も、ドイツとポーランドの間の鉄道の旅客容量の多くを占めていると思われ、誇張が感じられる。

少し前、ウクライナ政府は露軍侵攻で2千人以上の市民が殺されたと発表したが、国連が発表した死者数はその8分の1の249人だった。ウクライナ政府は被害を8倍にするプロパガンダを発していた。ポーランドなどウクライナ周辺のロシア敵視諸国が発表している難民総数も8倍の誇張だとすると、難民総数は170万人でなく22万人になる。雑駁だが。 

ロシアはウクライナで難民の発生をできるだけ抑える策をとっており、それはおおむね成功している。そのため、ウクライナの難民危機の話の方がロシア敵視の誇張だと思える。ロシアは、ウクライナを親露国(傀儡国家)に戻したい。2014年に米国がマイダン革命を起こしてウクライナを政権転覆してロシア敵視・米英傀儡の国に変えるまで、ウクライナはおおむね親露的だった。ロシアは開戦時にウクライナの空軍力をほぼ全滅させ、制空権を握っている。制空権を奪われているので米欧はウクライナに軍事支援できない。ウクライナ側は戦闘手段の多くを失ったので露軍と戦えない(極右の民兵団が住民を人間の盾にして露軍を攻撃してくるだけ)。ゼレンスキー大統領(米傀儡)のウクライナ政府はロシアに対して降参するしかないが、ゼレンスキーの親分である米国は降参を許さず、事態が膠着している。 

米欧は対露制裁として、ロシアから石油ガス穀物鉱物などを輸入するのをやめることにした。事態が膠着したままあと12か月経つと、米欧でエネルギー危機や穀物不足がひどくなり、米欧経済が立ち行かなくなる。英国は4月から軽油は配給制にせざるを得ないそうだ。ドイツはロシアからの天然ガス輸入をやめられないと表明しているが、ドイツがロシアと縁を切らないと米国から敵視されNATOの内部崩壊になる。事態が膠着したままだと、困るのはロシアよりも米欧とくに欧州諸国だ。ウクライナでは現在、極右の人間の盾作戦以外の戦闘は起きていない。それも露軍に封じ込められつつある。あとはエネルギーや穀物の不足に困窮した米欧が、ゼレンスキーにロシアへの降参を許すまで、露軍がウクライナの領空を封鎖し続けるだけだ。

ロシアはゼレンスキー大統領を留任させたまま、ウクライナを反露から親露(露傀儡)に転換させて、ウクライナ戦争を終わりにしたいロシアは、ウクライナをできるだけ手付かずのまま親露に転換させたいので、ウクライナの市民が死んだり難民になるのを望んでいない。ロシアはウクライナの諸都市を破壊して廃墟にしたいんだという見方は大間違いである。だが今後、米欧が不利になるほど、米欧日の報道は現実からの乖離がひどくなる。 

ウクライナで現在、露軍を攻撃しているのは正規軍でなく、ウクライナ政府内務省(諜報機関)配下の極右民兵団だけだ。ウクライナ内務省は米諜報界の傀儡であり、極右民兵団は2014年のマイダン革命以後に強化された、ロシアとロシア系住民を敵視するための米傀儡組織だ。極右民兵団は、ウクライナ諸都市の住宅街に兵器を持ち込み、住民を「人間の盾」にする国際法違反・人道犯罪の戦法でロシア軍を攻撃してくる。また、ウクライナ東部や北部の対露国境近くの諸都市にはロシア系住民が多く住み、極右民兵団はロシア系住民を狙って攻撃してくる。露軍は、これらの極右からの攻撃に対処せねばならない。

露軍はウクライナ政府と交渉し、極右民兵団が入り込んで「人間の盾」にされている住宅街の住民を住宅街の外に強制的に避難させるための「人道回廊」を作っている。ウクライナ政府が住民を避難させた後、さらに極右が攻撃してきた場合は露軍が反撃する。市民は死なないが街区は破壊される。しかし、ウクライナ内務省傘下の極右が撃ってきたのだから露軍としては正当防衛だ。この手の展開の一つが、マリウポリで露軍が破壊した無人の(極右だけが立てこもっていた)小児科病院だった。この件で非難されるべきはロシアでなく極右民兵団を擁するウクライナ政府だ。マリウポリは、すでにウクライナから分離独立したドネツク州にあるが、ウクライナ側が掌握してきた。

米欧日の報道では、露軍がウクライナ諸都市に作った人道回廊を通って強制的に避難民にさせられたウクライナ市民が、ポーランドなどに難民として逃げているかのような図式が描かれている。だが、人道回廊が設けられる諸都市の合計で避難民はおそらく10万人以下だ。キエフ郊外のホストメル国際空港を占拠した露軍を目がけて極右が攻撃してくるイルピン以外の人道回廊の指定地は、ウクライナの東部と北部にあり、東部や北部に多く住むロシア系住民が難民として移動するなら、行き先はポーランドでなくロシアだ。ウクライナのロシア系市民は、ロシア国籍をもらえるので難民にならない。人道回廊の指定地以外のウクライナでは激しい戦闘が起きていない。首都キエフで戦闘になっているのは空港近くのイルピンだけだ。後述する動画も示しているように、他の市街地は無傷だ。ウクライナの極右民兵が人道犯罪の人間の盾戦法をとるので人道回廊が必要になっていることを、米欧日のマスコミは報じない。マスコミこそ人道犯罪組織だ。

ウクライナ戦争の余波として欧州がこうむる人的な災難は、人数が誇張されている難民の流入よりも、ウクライナを加勢する名目でこれからシリア北部などから連れてこられるISアルカイダの民兵団(テロリスト集団)の方だ。シリア北部には、シリア内戦でシリア政府軍に負け、トルコ軍に守られて避難生活をしているISアルカイダの勢力が1万人ぐらいいる。トルコ当局にとってお荷物なので厄介払いしたい。ウクライナに義勇軍として行かせて厄介払いできるとトルコにとって好都合だ。もともとISカイダを育てたのは米国であり、トルコは米国に頼まれて動いてきた。これから米トルコの取り計らいでISカイダの軍団がポーランドに送り込まれてくるかもしれない。

しかし、ロシア軍はISカイダがウクライナに入ってくるのを阻止する。ISカイダより先に欧州人の義勇兵たちがポーランド国境近くのウクライナ側に入って訓練施設を作ったが、ロシア軍が3月13日にこの施設を空爆して35人の義勇兵らを殺した。今後ISカイダがウクライナに入っても、露軍に空爆されて殺される。ISカイダはウクライナに入れず、ポーランドにとどまることになる。ウクライナ政府は義勇兵たちに国籍を付与すると言っており、ポーランドに来たISカイダはウクライナの旅券をもらう。彼らはウクライナ人として、一般市民の難民に混じってポーランドから独仏など他のEU諸国に行ける。これから数百人、数千人のISカイダがポーランドに来ると、EUは大量のテロリストを自由行動させることになる。911直後の、欧州各地で爆弾テロが発生した事態が繰り返される。欧州は、ロシアからの石油ガス穀物の輸入が止まってエネルギーや食糧が危機になるだけでなく、ISカイダのテロリストたちの来訪も受け、ますます無茶苦茶になっていく

今回の記事はもともと、英国のブロガーであるレズ・ルーサー(Lez Luthor)が3月4日から9日まで開戦後のウクライナに入って旅行してみたところ、難民が大量に移動している感じがなく、キエフ市街地では意外に平穏な市民生活が続けていることを確認した、という動画集の旅行記「ウクライナへの道」(The Road to Ukraine)について紹介し、自分なりの解説を試みるために書き始めたものだ。Lez Luthorという名前は、スーパーマンの宿敵Lex Luthorのxをzに替えた筆名のようだ。彼はコロナワクチン非接種だが、問題なく英国からポーランドに飛行機で行って24時間の通過ビザをもらい、ウクライナにもふつうに入国できた。

ルーサーは3月3日、ポーランドの国境の町プシェミシルからウクライナのリヴィウに鉄道で入国したが、プシェミシルとリヴィウの両方の駅で、何社かのテレビ局のクルーたちが、混雑した駅舎に難民が押し寄せているかのような光景を撮影・実況している光景に出くわした。実のところ、駅全体は大して混雑しておらず、駅前や街頭も閑散としており、マスコミが難民危機が起きているかのような演出をして事実と異なるニュース映像を作っていることをルーサーは発見した。ボランティアが人々に食料などを配っていたが、そのホールに入るドアを一箇所だけにして人々が殺到している感じを醸成してテレビ局のカメラが撮影し、難民危機が起きているかのような映像を作っていた。

ウクライナの鉄道は通常運行しており、切符も簡単にネット予約して買えた。ウクライナからポーランドに向けて大量の人々が移動している事実はなかった。キエフでは自家用車が通常どおりに走り、スーパーマーケットには商品がたくさんあった。ただ銀行のATMはすべて止まっていた。クレジットカードは使えた。長距離の鉄道は自由に乗れたが、キエフの地下鉄は駅に当局の保安要員がいて乗る人の身分証明書を確認していた。ルーサーは逮捕されることを恐れ、地下鉄に乗れなかった。人道回廊があるキエフ郊外のイルピンに行こうとしたが、タクシーが警戒して外国人を乗せてくれず、地下鉄もダメなので行けなかった。キエフでは一度戦車の通行を見たのと、空襲警報を一度聞いたが、それだけで、空爆や戦闘機の上空飛行などは全くなかった

ルーサーはスマホで町などの光景を隠し撮りした動画をいくつも載せている。これらは本物なのか?。違う場所、違う日にちの撮影でないのか。それを考察するために今回の記事を書いてみた。そして、すでに書いたように、ルーサーの動画と関係ない全体像から考えて、ウクライナの難民危機は誇張されている。マスコミは、意図的に誇張・歪曲した報道を続けている。だからマスコミ報道でなく、ルーサーの動画の方が本物である可能性が高い。コロナワクチン接種拒否者を信用できるのか、などといまだに思う人がいるかもしれない。しかし、政府の言いなりでワクチンを何度も接種している人の方がマスコミ権威筋のプロパガンダを鵜呑みにしているわけで、話が逆である。