2022年3月21日月曜日

ウクライナ戦乱:三つの留意点(植草一秀氏)

 ロシアのウクライナ侵攻は、国連憲章にも国際法にも反するもので容認される余地は皆無です。植草一秀氏はそのことを認めた上で 「だが、西側メディアによる、ロシアが悪魔でウクライナと米国が正義との報道を鵜呑みにすることも適切でない」として、次の3
  1 イラク戦争とウクライナ戦乱における報道の相違。
  2 今回の戦乱に至る経過。
  3 ゼレンスキー大統領と支援者であるロコモイスキー氏の関係。
を挙げ、それぞれについて簡潔明瞭に説明しています。
 プーチンを非難するだけでなく、この悲劇をもたらした「ウクライナ問題」の背景を知るとともに、何もかも米国べったりの西側メディアの現状をこの際再認識?するのは大事なことに思われます。
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ウクライナ戦乱:三つの留意点
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年3月20日
ウクライナでいま最も大切なことは即時停戦を実現すること。人命を守ることを最優先するべきだ。ウクライナに軍事支援して戦乱を長期膠着状態に移行させることは戦乱による被害を拡大させる。
ロシアが軍事行動に踏み切ったことは非難されねばならない。紛争の解決は武力によらず、話し合いによるべきであるからだ。
だが、西側メディアによる、ロシアが悪魔でウクライナと米国が正義との報道を鵜呑みにすることも適切でない。
次の三点に留意が必要だ。
 第一は、イラク戦争とウクライナ戦乱における報道の相違。
 第二は、今回の戦乱に至る経過。
 第三は、ゼレンスキー大統領と支援者であるロコモイスキー氏の関係。
「力による一方的な現状変更」は認められない。紛争を武力によらずに解決することを基本に置くべきだ。しかし、この基本を逸脱して武力行使が行われてきたのは今回に限らない

代表事例として比較しなければならないのは2003年のイラク戦争
イラクは国連による査察を受け入れていた。国連はイラクに対する査察を進めることを求めていた。ところが、米国が国際法に違反するかたちでイラクに軍事侵攻した
イラクが大量破壊兵器を保持し、テロを支援しているとした。
しかし、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。テロを支援した証拠も発見されなかった。イラク戦争は米国による侵略戦争だった。

このイラク戦争で多数の罪なきイラク市民が犠牲になった。イラク市民の死亡数推定値は10万人から60万人以上までの幅がある。数十万人単位で一般市民が犠牲になった。
このイラク戦争の際、西側メディアはイラクの各地に対する米軍等によるミサイル攻撃などを報道し続けた。イラクの側から、市民が犠牲になっているとの報道は皆無に近かった
ところが、今回のウクライナ戦乱ではウクライナの側からの被害報道だけが流布されている。
報道の立脚点が真逆。報道の立脚点が米国側という点では共通している。

第二の問題は、今回の戦乱が発生するまでの経緯。
ウクライナでは2004年と2014年に二度、政権が転覆されている。
このことについての事実経過を知るには、オリバー・ストーン監督のドクメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』を視聴することが必須だ。ウェブ上で閲覧できるから、ぜひご高覧されたい。
2004年の政権転覆で親ロ政権が破壊され、反ロ政権=親欧米政権が樹立された。
大統領に就任したユシチェンコ氏の妻は米国国務省勤務経験者である。
米国と直結する工作員と言えるサハシヴィリ氏とも極めて関係が近い人物。
米国が背後で糸を引いた政権転覆であったと考えられる。
ところが、2010年の大統領選で親ロ派のヤヌコヴィッチ氏が大統領に選出される。
このヤヌコヴィッチ政権を破壊したのが2014年政変である。
米国国務省はウクライナの極右勢力と結託して暴力革命を主導し、政権転覆を図ったと考えられる。
これに対してウクライナの親ロシア勢力が行動を起こし、東部に共和国を創設、クリミアではロシアへの編入を決めた。
これに対してウクライナ政府は軍隊を出動し、東部ドネツク、ルガンスク州で内戦が勃発した。

その内戦を収束するために締結されたのが「ミンスク合意」である。合意形成にはドイツ、フランスも関与した。ミンスク合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した
2019年に大統領に就任したゼレンスキー氏は東部の平和確立を公約に掲げたが、大統領就任後にミンスク合意を踏みにじる方向に転向した。
ミンスク合意を踏みにじり、ロシアと軍事対決する方向を鮮明にした。
その結果として今回のウクライナ戦乱が発生している。
そのゼレンスキーの最大の支援者がウクライナ・オリガルヒのイホル・コロモイスキー氏。
このコロモイスキー氏がウクライナ極右勢力最有力支援者の一人。
すなわち、ネオナチと呼ばれるウクライナ極右勢力とゼレンスキー大統領が表裏一体の側面を有しているのである。
これらの事実を認識した上でゼレンスキー氏に対応することが求められる。

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