2022年3月31日木曜日

インフレ 円安にデタラメばかりの岸田・黒田コンビ(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが「インフレ、円安にデタラメばかり 岸田・黒田コンビは庶民を見殺しにするつもりなのか」とする記事を出しました。

 28日の円相場は1ドル=125円台まで急落しまし。円安になれば輸入品の価格が上がるので、食料品や燃料をはじめとして多くを輸入に依存している日本では物価が軒並み上がります。そうなれば給料が実質減少し年金も減額されるなか悪性インフレ(スタグフレーション)に苦しめられることになります。
 そもそも「円安誘導」はアベノミクスの基本政策で、それによって大企業が輸出をしやすくするとともに、年金積立金を使った「株高誘導」で富裕層と大企業を大儲けさせたのでした。政府は当面、原油元売り会社へ補助金を出すのを4月まで延長し、穀物価格の上昇分も同様に補助金などで企業に補填することを考えているようですが、それらは弥縫策に過ぎず、べノミクスが目指してきた円安を改善しないことには解決しません。
 また米国はインフレ抑制のために利上げに動いていますが、異次元緩和で国債を大量に買い入れてきた日銀は利上げすることはできません。利上げをすれば日銀が利払いで債務超過に陥り破綻するからです。
 要するに当初から指摘されていたとおり、アベノミクスは最終的に二進も三進もいかなくなるという事態に立ち至ったのです。
   * (14.11.30)「異次元」から「正次元」に帰れるのか
      (14.12.01) アベノミクスは富裕層と大企業を大儲けさせるだけ
          (14.12.07) 日銀が国債買取を止めれば日本経済はメタメタに
 アベノミクスという大ミステーク自体は岸田内閣の責任ではありませんが、政権を担っているのですから早急に脱却するためのグランドデザインを示すべきです。
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インフレ、円安にデタラメばかり 
岸田・黒田コンビは庶民を見殺しにするつもりなのか
                       日刊ゲンダイ 2022年3月30日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 29日、トルコで行われたロシアとウクライナの停戦交渉に進展があったと伝えられ、マーケットにも安堵感が広がった。
 28日に1ドル=125円台まで急落した円安も一服。29日のニューヨーク外国為替市場で円相場は1ドル=122円台後半に上昇した。もっとも、これは一時的な現象にすぎず、今後も一層の円安が進む可能性が高い。なにしろ、日本の金融政策当局が円安を促進しているのだ。
 金融緩和で低金利政策を続けている日銀は、10年物国債の利回り上限を「025%程度」に定めている。28日の債券市場で上限ギリギリの0245%まで利回りが上昇すると、すかさず「指し値オペ」を発動。指定した利回りで国債を無制限に買い入れるという通知だ。
 ところが、28日に2度の指し値オペを実施しても長期金利は下がらず、すると日銀は「連続指し値オペ」という奥の手を繰り出してきた。複数日にまたがって、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる連続指し値オペは、昨年から実施可能になったが、実際に使われたのは初めてだ。28日に発表し、29日から31日までの3日間、実施されている。
 29日午前の金融機関からの応札は2426億円、午後は2860億円。これを日銀がすべて落札した。なんとしても金利上昇だけは避けたいという意思は感じられるが、その結果、円安が加速し、一時125円台まで急落したのだ。
 カネは基本、金利が高い方に向かう。緩和から引き締めに転じた米国の長期金利はいま25%前後まで上がっている。欧州の長期金利も上昇基調だ。そんな中、日本だけは必死で金利を据え置こうとしている。日銀が025%の利回りで国債を無制限に買うのは、絶対に金利は上げないという強いメッセージだ。投資家は安心して円を売り、ドルやユーロを買うことができる。ヘッジファンドは巨額の利益を上げたはずだ。

低金利を優先して円安に誘導
「ただでさえ、ウクライナ危機で国際的に原油価格や穀物価格が上がっているのに、円安が進めば調達コストが上昇し、二重三重に物価高の要因になってしまう。エネルギー資源や食糧の大半を輸入に頼っている日本は大打撃です。賃金が上がらない中、物価上昇は庶民生活を直撃する。それなのに、低金利政策を優先して円安に誘導するなんて、日銀のやっていることは支離滅裂です。低金利さえ守られれば国民生活がどうなってもいいのか。政策意図がまったく分かりません」(経済アナリスト・菊池英博氏)
 ここ3週間で対ドル円安は10円も進んだ。異常なペースだ。ユーロやポンドなど他の主要通貨に対しても、円は独歩安の様相になっている。
 ウクライナに侵攻して経済制裁を受けているロシアでは、砂糖が約13%、テレビが125%など物価上昇が国民生活を圧迫しているというが、日本は4月から輸入小麦の価格が平均173%、家庭用蛍光灯は約30%も引き上げられる。侵略国への制裁よりも、この円安は苛酷なのだ。
 さすがに、グズな岸田首相も対策に動き出した。29日の閣僚懇談会で物価上昇に対応する総合緊急対策の策定を指示。首相の下に関係閣僚会議を設置して具体策の検討を進め、4月末をメドに対策を取りまとめるという。
 だが、岸田政権が物価高対策に乗り出したのと同じタイミングで、裏では日銀が連続指し値オペをやっているわけで、方向性がバラバラだ。これでは対策の実効性に疑問符がつく。

失敗を糊塗するため国民生活を犠牲にしている
「だいたい、4月末に物価高対策をまとめるなんて遅すぎます。今は緊急事態なのだから、財務省の権限でドル売り円買いの為替介入をする手もある。なぜ、何もしないのか。自国民の生活が危機に瀕しているのに、ウクライナ問題で点数稼ぎすることばかり考えている場合ではないでしょう。円安政策に邁進する日銀の黒田総裁もおかしいですが、岸田首相も無能すぎる。これまでも有効な経済対策を何ひとつ打っていないし、経済無策にも程があります」(菊池英博氏=前出)
 そういえば、岸田の看板政策である「新しい資本主義」も、春までにグランドデザインを示すとか言っていたのに、一向にデザインが上がってこない。岸田・黒田コンビに任せていたら、日本経済はどうなってしまうのか
 日銀の黒田総裁は18日、金融政策決定会合後の会見で、円安が「全体として日本経済にプラスという基本的構図に変わりはない」との立場を表明。しかし、黒田が言う「全体」とは大企業のことだ。
 自動車などの輸出企業は、円安になれば海外でモノが売れやすくなるし、為替差益でも潤う。それで株価が上がれば好景気を演出できるというのが、アベノミクスの基本路線でもあった。
賃金が上がって内需を高めるような努力をしないで、一部の大企業が外需で儲けることを優先してきた円安政策がアベノミクスです。異次元緩和でジャブジャブにし、株価を吊り上げて政権維持に利用してきた。そういうアベノミクスが根本にあり、そこにウクライナ危機が起きて、円安の悪影響が大きくなっています。それでも日銀は意固地になって円安政策を続けている。失策を認めたくないのでしょうが、くだらないメンツのために国民生活を犠牲にするのは勘弁してもらいたい。賃金が増えないから、連動して4月からの年金支給額も減るというのに、物価だけが上がる金融政策は国民にとって大迷惑です。政府と日銀は庶民を見殺しにするつもりなのでしょうか」(経済評論家・斎藤満氏)

金利を上げれば財政破綻の恐怖
 物価高は日本だけの話ではない。とはいえ、米国や他の先進国では賃金も上がっている。日本は消費者総合物価指数は上昇を続けているが、賃金指標はコロナの影響もあってマイナスになっている。収入が増えないのに物価だけが上がるスタグフレーションだ。
 年金受給者への5000円給付案は、世論の批判を受けて白紙撤回らしいが、政府は原油高対策の元売り会社への補助金を4月末まで継続するという。穀物価格の上昇分も、補助金などで企業に補填する案が出ている。いつまで、そんな弥縫策で国民を欺くつもりなのか。
 足元の物価高で国民は年間4万~5万円の負担増になるという試算もある。低所得層にとっては、消費税3%アップくらいの影響があるのだ。それでも消費税減税を断行する気もなく、小手先の対策に終始する自民党政権は国民を愚弄している。
 米国はインフレ抑制のために利上げに動いた。それを日銀の低金利政策がアシストしているのが現状だ。異次元緩和で国債を大量に買い入れてきた日銀には利上げができない金融を引き締めた途端に国の財政が破綻するからだ。日銀も債務超過に陥り、円は紙クズになってしまう。ハイパーインフレが現実味を帯びてくる。
 利上げしても、低金利を死守しても円安加速のインフレ地獄。やはり、アベノミクスの異次元緩和をダラダラ続けたことは間違いだった。「今さら引き返せない」と軌道修正を拒んで取り返しのつかない地点に行ってしまうのは、旧陸軍の失敗みたいだ。それを糊塗するために、長期金利0.25%を死守しようと円安容認に突き進む中央銀行。そこには展望も戦略もない。国民生活と財政のどちらが先に破綻するか、無責任な運任せに見える。
 ロシアとウクライナの戦争が長期化すれば、日本経済もきわどい局面を迎えることになる。岸田と黒田の無能コンビのせいで、奈落の底に向かいつつあるのかもしれない。