2022年3月23日水曜日

23- ウクライナ危機をどう見るか? 一緒に考えよう(レイバーネット)

 レイバーネット日本に、「歴史的視点から問題のありかを探る」<特集: ウクライナ危機をどう見るか? 一緒に考えよう>とする、16日放送レイバーネットTV第167号の要約版が載りました

 ジャーナリスト土田修(元東京新聞記者)の解説が中心になっていますが、約1時間にわたっているので、要約するにはかなりの労力を要したと思われます(全容は添付の動画でご覧になれます)。
 以下に紹介します。(もう一つのテーマはザ争議学校法人鶴川高校の人権無視の錬金術」ですが、そちらは割愛します)
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歴史的視点から問題のありかを探る〜レイバーネットTV詳細報告
                       レイバーネット日本 2022-03-22
 167号のレイバーネットTVは、今や世界の関心を集めているロシアとウクライナの戦争です。私にとって、多分日本人にとっても、突然湧いたようなこの戦争、どうも根が深そうです。報道による洗脳合戦もあるようで、フェイクに踊らされている感のする私たち。そこで、この戦争は何なのか、しっかり解説していただきました。とはいえ私は、まだまだ「分かった」と胸は張れませんが、少しずつこんがらがった糸がほぐれてきたようです。まず、バイデン(米国)とウクライナ、ロシアの関係から糸をほぐします。動画と合わせて読んでください。(報告:笠原眞弓)

●レイバーネットTV 第167号(2022年3月16日放送)
  <特集: ウクライナ危機をどう見るか? 一緒に考えよう
  アーカイブ録画: https://youtu.be/Cv_y0N72kJ4 
   進行:北健一・北穂さゆり
◆「ザ争議」学校法人鶴川高校の人権無視の錬金術
   —三木ひろこさん(鶴川高校教職員組合委員長)は訴える 割愛します

◆特集 ウクライナ危機をどう見るか? 一緒に考えよう!
       特集部分の動画ココカラ
    司会:根岸恵子
ゲスト:土田修(ジャーナリスト・元東京新聞記者ル・モンド・ディプロマティーク
        日本語版理事)
     オンライン参加 オクサーナ・ピスクノーワ(日本ウクライナ友好協会員)
     オンライン参加 柴田武男(レイバーネット日本会員)
     *オクサーナさん(一度はつながったが電波不良で中継を断念した)
 2月24日のロシアのウクライナ侵攻で、ミャンマーやアフガニスタンなど世界の紛争は、どこかにすっ飛んだように言われなくなり、ウクライナとプーチンに、世界の注目が集まっている。街宣でも、ウクライナ国旗とプーチンへの批判が蔓延していて、本当はどうなの?と不安になる。
 そこで昨年まで『モンド・ディプロマティーク』の日本語版代表だった土田修さん(現理事)に解説をお願いした。在日ウクライナ人主催の抗議行動の動画も挟む)

◇歴史的視点は外せない
 土田氏は、ウクライナとロシアについての日本の報道を見る限り、あまりにも「ロシアは悪、ウクライナは善」とう決めつけ的な物言いはおかしいという。確かに旧ソ連型の覇権主義のロシアのやり方は容認しないが、日本の報道も火焔瓶作ったり市民を盾にしたりするのは、太平洋戦争の国防婦人会や、沖縄県民を盾にする有様を想起させるし、反戦集会では、必ずウクライナの国旗が出る。国旗の裏にあるナショナリズムが喚起されるさまが、自分としては耐えられないと語りだす。
 1991年にソ連が崩壊しワルシャワ条約機構がなくなった時、NATOも解体するべきだったのにヨーロッパに対する影響力を持とうと米国主導でそのまま残り、その後じわじわと東に勢力を拡大しバルト3国+ポーランドまでNATOに組み入れてしまった

◇2月のNATO、ウクライナの合同軍事訓練
 バイデンは、オバマの副大統領時代から、ロシアを敵視していて、ウクライナにかなり介入していた。2019年にゼレンスキーが大統領になり、米国が親ロ的なトランプから反ロのバイデンになると、今年2月の初めにNATOとウクライナが共同の過去最大の軍事訓練をした。当然ロシアは10万の兵を国境に出してきた
 NATOはウクライナをパートナーシップ国として共同の大軍事訓練をするなど戦争への道を煽っていた。ところが、今、戦争になったら米軍もNATO軍も出さない。つまりウクライナは米国とNATOに裏切られた形になっている。

◇米国の事情が分かる報道
 『ル・モンド・ディプロマティーク』の10年の記事を読むと、それなりに報道されてきている。ユーロマイダン革命のあった2014年に、オリビエ・ザリックがウクライナ問題で「反ロシアに凝り固まるEU」、2019年には「欧州はNATOから脱却するしかない」。2020年のバイデンの大統領就任時に「次の敵は誰か」とロシアをさしている。2022年にウクライナ問題の背景を書いていて、欧米の一極主義に対してロシアは多極主義であると分析している。
 今回のことは、NATOの東方拡大であると同時に、バイデンにとっては次期大統領選で親ロシアのトランプに返り咲かせないための布石とも見る

◇柴田武男さん この戦争の原因が日本国内に伝えられていない驚き
 柴田武男さんは、プーチンがなぜウクライナを攻めたか推測する。悪い結果になった場合、期大統領選に大きな影響があるのに開戦に踏み切ったのは、追い詰められていたのではという。それはゼレンスキーの「ミンスク合意」の破棄である。ミンスク合意は一旦2014年9月に合意したものの守られず、新たに2015年2月に第2次ミンスク合意(2014年2月に始まったユーロマイダン革命の収拾)として修正されたもので、プーチンの言い分はこれを守れということだ
 日本にこの合意についてきちんとした文書が見当たらず、原因も経緯も一般に知られていない。日本に関係ないかというと、57か国が参加する欧州安全保障・協力機構(CSCE)で、日本も発言権がある。ところが日本国内で、このことはほとんど知られていない。

◇土田さんの解説 ウクライナ国内のNATO参加への圧力
・2014年2月の「ユーロマイダン革命」から「ミンスク合意」
 ウクライナでは当時の大統領ヤヌコヴィッチに対し、EU・NATOに加盟するよう圧力をかけていたグループがあったが、それを受け入れなかったことで2013年11月に国内で銃撃戦が始まり、大統領はロシアに逃亡する。その後やっと「ミンスク合意」がなされる。しかし、ウクライナもこの会議に参加していながら協定を拒否したため、ロシアも独・仏も手を引き、米国と直接交渉を始める。ところが、バイデンが副大統領の時代に、反ロシア化が進み、どんどん泥沼化していった

・NATOの東方拡大こそが今度の紛争の原因
 ソ連が崩壊後、それまでのNATO各国と国境を接していた国々がNATOに参加していき、西側と国境を接するのはベラルーシとウクライナになる。ロシアにとってはこの2か国がNATOに入れば、直接西側と国境を接することになるので、それを阻止しようとしてきた。

◇ロシア側は「NATOは東方拡大しない」と信じているが……
 柴田さんは、長年戦争状態が続いていたが、これまでと決定的に違うのは、ロシアの軍服を着た正規軍が戦闘に加わったということ。もう一つは、NATOの問題。ゴルバチョフの改革を西側が応援したかったので秘密会談をして、これ以上の東方拡大はしないとした。そして、ウクライナが独立するときも、NATOに加盟しないとした。ところがその文書が見つからないと。
 土田さんは、それに対し1990年2月、ブッシュの時代のベーカー国務長官が「1インチたりとも東方へ拡大しない」と発言しているが、NATOも米国も「口約束に過ぎない」という。1997年のエリチンの時代には、そのあたりがあいまいで、ハッキリしているのは、NATOは新規加盟国に核配備はしないということだという。

◇ロシアを刺激し続ける米国 ロシアはパイプライン・原発には手を付けない
 土田さんは、バイデンは息子がウクライナに対する利権を持っている。そのため、ユーロマイダン革命も米国が主導したと言われても仕方ないと。オバマは若干腰が引けていたが、バイデンやネオコンたちが戦争したがっていて、今回はバイデンが、NATOを炊きつけて2月の初めの「共同軍事訓練」をして戦争状態にした責任があるのではないかという。
 柴田さんは、停戦の可能性を探ってもらいたいと発言。EUは天然資源の40%をロシアに依存している。これはウクライナのパイプラインを通っている。これが止まると、世界の経済など大きな混乱が起きる。それに対し土田さんは、ロシアはパイプラインも原発も絶対に狙わない。その後のことを考えているからという。プーチンは2014年から冷徹に計画してきたとも。
 今、ゼレンスキーは米国にもEUにも捨てられたので、NATO加盟を白紙に戻すということで、ロシアとの停戦交渉を始めている
 冷戦が終わって30年。それを見直す時ではないか。米国のやり方は、一極主義で、EUには○○させないとか。それに比べてロシアは、アジアでありヨーロッパで、多元的な価値観を持っている。そこに可能性を持ちたい。欧州安全保障体制の見直しまで行ければ、あかるい将来もあるかもしれない。
 柴田さんは最後に、平和への道筋はいくつもあるので、是非それを見つけてほしいと希望を述べた。