オリバー・ストーンの『ウクライナ・オン・ファイヤー』は2004年と2014年に実行されたウクライナでのクーデターにおける被害者や識者の証言を集めたもので、クーデターの背後に何があったのかを明らかにしています。それはまた自ずから、カラー革命(フラワー革命とも)と呼ばれてきたもののを本質を明らかにしました。
『ウクライナ・オン・ファイヤー』では、ロバート・パリーが登場してカラー革命を前史から簡潔に説明しています。
しかしそうした認識や理解が広まると、米国は現下のウクライナ戦争での立場を正当化できなくなるだけでなく、今後起こされるかも知れないカラー革命が警戒される可能性が生れるので、何としても多くの人々が『ウクライナ・オン・ファイヤー』を視聴することを防ぎたいのでした。
それがいまも同映画のネット掲載が頻繁に削除される動きにつながり、再掲載する動きとのせめぎ合いが続いている所以です。
世に倦む日々氏が「カラー革命と現代左翼 ー CIAの謀略は21世紀の正義の市民革命 !?」とする記事を出しました。
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カラー革命と現代左翼 ー CIAの謀略は21世紀の正義の市民革命 !?
世に倦む日々 2022-03-14
『ウクライナ・オン・ファイヤー』では、カラー革命についての真実が語られている。カラー革命。現在、日本は事実上戦時体制下に入っていて、NATO陣営に属して後方から参戦支援する一国である。したがって、この言葉は政治的に禁止語となる。カラー革命の語には問答無用で親ロシア・陰謀論のレッテルが貼られ、無前提に否定され排斥されるのであり、当局は、市民がこの言葉に関心を持ったり、興味を感じて接近しないように封殺する。西側の「情報戦」において、カラー革命の禁忌処理と意味剥奪は必須のマターだ。
なぜなら、カラー革命の認識や理解が一般に広まると、アメリカはこの戦争での立場を正当化できなくなるからである。『ウクライナ・オン・ファイヤー』の動画を、当局が削除のモグラ叩きに血道を上げるように、西側当局は、御用論者にカラー革命を誹謗し嘲笑するミッションを指示するだろう。サンデーモーニングに出演するような、親米左翼系の商売論者を動員して、カラー革命など都市伝説だ、陰謀論者の戯言だと叩く思想工作を差配するはずだ。
オリバー・ストーンの作品では、ロバート・パリーが登場してカラー革命を前史から簡潔に説明している。80年代にイラン・コントラ事件の疑惑を暴露したジャーナリストで、この作品に出演した後、2018年、68歳の若さで脳卒中で死去していた。咄嗟に、暗殺ではないのかという疑念が浮かぶ。無論、証拠はない。だが、証拠を残さず暗殺できるのが現代の全能の神(CIA)だ。私は、エドワード・サイードの死も暗殺だったと確信している。陰謀論者の誹りと中傷は慣れているので、どうぞ好きにやってくれていい。
CIAの戦略と性格は1980年代から大きく変わった。それ以前の冷戦期の、古典的な謀略と諜報を担う軍事機関から進化し、もっと幅広いシビリアンの領域に作戦行動を拡大し、資源を展開し、すなわちソフトパワーでの調略を重視する方向性を強化した。具体的には、NGOに資金を出し、表向きは正当で平和的な目的の活動を装わせ、実際には狙いを定めた敵国を足下から崩し、政権と体制を転覆に追い込むメディア工作と民衆暴動をキャリーする(⇒誘導する)のである。1983年に設立されたNED(全米民主主義基金)が、その任務の組織主体となった。
このNEDが、標的国と周辺国に入り込み、活動家を養成し、ジャーナリストを金で飼育し、アメリカの外交戦略が正義であるとする「公論」を醸成し布教する。エバンジェリズム(⇒福音伝道)の情報作戦を遂行する。言論と報道で大衆を感化させ、リベラルデモクラシーの価値観に改造し、世論操作し、敵政権を倒す「市民革命」へと誘導する。CIA(NED)の工作拠点はマスコミとアカデミーとビジネスと官僚機構で、そこで工作員をオルグし、マスコミとネットでプロパガンダ活動に精勤させる。市民は、背後にCIAの謀計と指導があるとは気づかない。
ロバート・パリーは、CIA(NED)が洗脳メッセージを効果的に浸透させるため、コミュニケーションのノウハウを徹底的に磨き、情報技術の活用を高度に熟練させている点を強調している。この点は、オレンジ革命後にフランスの放送局が制作し、NHKの海外ドキュメンタリーで放送された番組が、さらに詳細に掘り下げて暴露し、証拠と証言を添えて説明していた。映像がネットに残っていないのが残念だが、CIA(NED)はマニュアルを作って工作員を教育していた。そのノウハウの内容は、DAPPI事件からも想像ができる。
オリバー・ストーンは、「カラー革命を注意深く見ると、微妙にパターンの類似性があり、その本質が見えてくる」と喝破している。その証示の例として、諸地域のカラー革命で用いられた拳骨のシンボル・ロゴを挙げている。このアイコンは、もともと、戦前ドイツの赤色戦線戦士同盟を表徴する反ファシズムの戦闘的左翼のマークであり、90年代後半から欧州で、最近は米国でも、さらに世界中の左翼系の集会でよく見かけるようになったものだ。革命(的行動)を暗喩する意匠らしい。現代左翼(プログレッシブ)が標榜する新しいシンボル。そういう認識で、私はこれまで安心した気分で眺めていた。
鎌とハンマーだとイメージが悪いから、こちらに取り替えたんだろうかと、そう推測していた。ドイツの反ファシズムを歴史的起源とするのだから、より西欧民主主義的な属性を訴求し、印象としてポジティブな効果を期待できる。20世紀の共産主義とは絶縁した新しい左の民主主義の運動だという意味の主張になる。が、こうして、オリバー・ストーンに、これがカラー革命の象徴として使用されていた事実を指摘されると、俄に不審な気分になり、猜疑を抑えられない。カラー革命を設計して首謀したのはソロス(⇒大財閥の策謀家)本人だという噂がある。
策謀家のソロスならあり得る話だ。現代左翼の新ロゴを、ソロスが狡猾に剽窃し偽装して、現地の民衆を欺くべくカラー革命に援用したのかもしれない。それなら話は分かりやすい。2014年のマイダン革命の現象と経過にはそういう要素が看取される。広場に集まった反政府デモの民衆は、それを市民革命だと純粋に信じていただろう。だが、もし、そもそも現代左翼が拳骨マークを新看板に設定する初発から、その裏にソロスとCIAが介在していたとするなら、そこには容易ならざる不穏な政治の闇が疑われる。
実は、東アジアのカラー革命でも拳骨マークの散見があった。先般の香港の民主化運動とその前の雨傘運動、台湾のひまわり運動である。香港の民主化運動にCIAが深く関与していた事実は、現在は疑う者はいないだろう。周庭が堂々とDCでロビー活動している写真には驚いた。日本で絶賛された台湾のひまわり運動も、どうやら同系列であることは間違いない。今でも日本の左翼リベラルは雨傘運動とひまわり運動を美化し、連帯と共鳴を言い、日下部正樹の偏向言説に影響されたままだ。日本共産党自身がその立場である。
カラー革命をめぐる問題というのは、現代左翼において、どうやら、それがCIAの謀略だから批判し否定されるという地平から離れている。そうしたイデオロギー状況の変化と反動に気づく。つまり、それがCIAの謀略で何で悪いのという見方の次元に変わっている。CIAが善玉になっていて、左翼自身がCIAを容認、正当化し、CIAを正義の味方にしている。CIAは、世界の市民を専制主義の悪から守り、強権抑圧体制から解放し、自由と民主主義の普遍的価値を実現してくれる守護神様の如く。
筆が先に滑りすぎたようだ。中野晃一と奥田愛基(SEALDs)について考察を加えるのは次回以降の課題としよう。カラー革命は一見して正しい市民革命の姿を帯びている。左翼リベラルの正義の血が騒いで、自由と民主主義のために敵・アンシャンレジーム(⇒旧制度)と闘争する革命運動の現場であることは間違いない。現在の世界で、カラー革命は市民革命と渾然一体で見分けがつかない。そして、そこにはSNSがある。マスコミだけでなくインターネットがあり、ネットでの洗脳と扇動がある。ネットのテクノロジーが「市民革命」を容易にした。
アジテーションと集会案内は簡単にできる。匿名でデマとフェイクを吐きまくれる。拡散できる。コピペできる。無能なハリボテでも「優秀なリーダー」に祭り上げることができる。排除すべき「革命」の敵をデマと誹謗中傷で叩き潰せる。宣伝と扇動が簡単にでき、烏合の衆を集めてデモの頭数を作ることができる。カラー革命は、ソ連崩壊後の、アメリカがアメリカにとって邪魔な敵を倒すための「市民革命」で、インターネット技術を応用した「自由」と「民主主義」のための「革命」である。ネットが普及したからできるようになった。
さらに言えば(言い過ぎると地雷を踏むが)、そこにはジェンダーの配置と役割がある点を見逃せない。SNSは常に正しいと盲信し、SNSは民主主義の武器だと錯覚し、SNSが正しい判断の根拠だと自信を持って言い張る若者の割合を見ると、私の直観だが、男性よりも女性の方が多いのではないか。CIA(とその手下)はそこを巧妙に利用し、Twitter や Facebook を信頼性の源泉のように価値づけさせ、あなたが主役ですよと誑かし(たぶらかし)、誘り(おこつり)、唆し(そそのかし)、教育する。ジェンダーを市民革命(カラー革命)に誘惑する。周庭さんやマララさんのように立ち上がって声を上げなさいと。
CIAが自在に操る21世紀の「市民革命」。それは正義なのか、反動なのか。カラー革命をどう定義するのか。現代左翼(親米脱構築系)に問いたい。