2022年3月12日土曜日

12- 最大ゆ党 維新“躍進”のカラクリ(8)(9)

 冨田宏治教授によるシリーズ「最大ゆ党 維新“躍進”のカラクリ」の(8)(9)は、維新が大阪地方での選挙に強い理由が語られています。

 15年20年の「大阪都構想」をめぐる2度の住民投票と、15年の府知事・大阪ダブル選、19年の府市クロス選(府知事・市長入れ替わりの選挙)の4つの選挙によって、維新は「大阪市内」において「ほぼ67万票前後の固定票」を持っていることが明らかにされました。
 そして16年参院選では、浅田均氏が約73万票、高木かおり氏が約67万票を獲得して2位と4位で当選を果たし、つづく19年参院選でも同様に、梅村みずほ氏が約73万票、東徹氏が約66万票を獲得して1位と2位で当選するという、見事な票割りを実現させています。
 何故維新にはこのような芸当ができるのか。冨田氏は、それは維新の地方議員たちが展開する凄まじい組織選挙によっているのであって、決して「風頼み」の選挙を展開しているのではないと述べています。
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最大ゆ党 維新“躍進”のカラクリ(8)
低投票率には強い組織化されたポピュリスト 大阪市内の得票は67万票で固定化
                     冨田宏治 日刊ゲンダイ 2022/03/10
 維新の支持層は、大阪の街において深刻化する貧困と格差の拡大を背景に、「年寄り」「病人」「貧乏人」への敵意や憎悪をあおられ、「勝ち組」意識を抱いた中堅サラリーマン層や自営上層の人々である。そして維新が大阪における選挙で圧倒的な強さを見せるのは、こうしたコアな支持層を組織化し、固定化することに成功し、モンスター的集票マシンともいうべき存在へと変貌したからなのである。
 分断の固定化を示す数字をいくつか挙げてみよう。まずは2015年と20年の「大阪都構想」をめぐる2度の住民投票と、15年の府市ダブル選、19年の府市クロス選という4つの選挙における維新の大阪市内での得票状況である。

【15年住民投票】投票率約67%、投票総数約140万票、維新(賛成)得票約69万票
【15年ダブル選】投票率約51%、投票総数約100万票、維新得票約60万票
【19年クロス選】投票率約53%、投票総数約114万票、維新得票約66万票
【20年住民投票】投票率約62%、投票総数約137万票、維新(賛成)得票約68万票

 これらの数字から読み取れることは、投票率は67%、51%、53%、62%と大きく変動しているにもかかわらず、維新の得票が67万票前後と固定化していることだ。つまり維新は低投票率では強いが、高投票率になると弱いのである。現に2度の住民投票で維新は敗北を喫し、「大阪都構想」は2度とも否決されたのだ。
 低投票率では強いが、高投票率では弱いというのは、固い組織票を誇る組織政党の特徴だ。大阪における維新は、もはや「風」頼みのポピュリストなどでは決してない。自らがあおった分断を固定化・組織化することに成功した組織勢力なのである
 そしてこのことは維新自身もしっかりと自覚している。「週刊新潮」(20年10月9日号)によれば、15年の住民投票の敗因を投票率が上がり過ぎたことに求めた維新は、20年の住民投票では投票率を上げないように、目立つ街宣などは必要最低限に抑え、戸別訪問などで地道に支持を訴えるという“戦略”を採ったという。維新ではこの“戦略”を「もぐる」と呼んでいるらしい。
 創業者・橋下徹氏の時代、維新は確かに「風」頼みのポピュリストだったかも知れない。しかし少なくとも本拠地・大阪においては、いまや「組織化されたポピュリスト」ともいうべき存在なのである。(つづく)


最大ゆ党 維新“躍進”のカラクリ(9)
「ブラック政党ですわ」モンスター的集票マシンを支える239人の地方議員
                     冨田宏治 日刊ゲンダイ 2022/03/11
 維新がモンスター的集票マシンへと変貌したことを示す数字をもう一つ挙げておこう。それは参院大阪選挙区での維新の得票状況だ。定数4の選挙区で、維新は2016年、19年の選挙でそれぞれ2議席を確保した。
 16年参院選で維新は菅官房長官(当時)の要請により初めて2議席に挑戦した。その結果、浅田均72万7495票、高木かおり66万9719票、計139万7214票を得票し、2位と4位で当選。浅田氏は維新の草分けのひとりだが、高木氏は直前まで自民党の堺市議だった人物である。この2人に対し73万と67万に見事に票を割ってみせた。つづく19年参院選の結果は、16年の票割りが決して偶然ではなかったことを証明する。梅村みずほ72万9818票、東徹66万128票、計138万9946票を得票し、1位と2位で当選。維新の総得票がいずれも判で押したように139万票前後だったことも驚きだが、再び73万票と66万票へと票割りを成功させたことには、ただただ脱帽するほかない。維新にはどうしてこのような芸当ができるのか。

■比例得票数に符合する「投票依頼」
 維新の見事な票割りの謎を解き明かす手掛かりは、産経新聞(15年11月30日付)で報じられていた。産経が報じたのは、維新の地方議員たちが展開する凄まじい組織選挙の姿だった。大阪府下と近辺選出の国会議員、府会議員、市会議員、町村会議員、総勢百数十人(当時)が、1人1日600電話、300握手、10辻立ちのノルマを課せられ、幹部による抜き打ちの巡回点検などを通じて、ノルマ達成を日々強いられていたというのだ。それは、ある所属議員が「ブラック政党ですわ」と自嘲気味にボヤくほどのものだった。
 いまや維新の地方議員は、大阪府下だけで239人にのぼる。239人の議員が1人あたり600本の電話をかければ、毎日14万本以上、衆院選の12日で総計で170万本を超える。この数字は昨年の総選挙での維新の比例得票数に、くしくも符合する。
 問題は、これだけの電話が飛び交っているのに、反維新の活動家からは維新からの電話がかかってきたという話をほとんど聞かないことだ。無差別電話などかけてはいないのだ。しっかりとした支持者名簿が整備されていることがうかがわれよう。この名簿による電話で、どの候補に投票するかの指示が出ていると考えれば、あの見事な票割りにも説明がつく。これこそモンスター的集票マシンの実態なのだ。  =つづく

冨田宏治 関西学院大学法学部教授
1959年、名古屋市生まれ。名古屋大法学部卒。名古屋大法学部助手、関西学院大法学部専任講師、助教授を経て99年から現職。専門は日本政治思想史。原水爆禁止世界大会起草委員長も務める。「核兵器禁止条約の意義と課題」など著書多数。共著「今よみがえる丸山眞男」を2021年12月に上梓。