2022年3月24日木曜日

ウクライナの国際法違反行為(植草一秀氏)

 ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、日本の国会でオンライン形式の演説を行い、 ウクライナではすでに数千人(うち121人は子供)が犠牲になっていると述べ、多くの市民が命を落としているウクライナの惨状を理解してほしいと訴えました。

 そしてロシアがサリンなどの化学兵器を用いた攻撃をするという警告を受けているとして、大量破壊兵器を使用することに強い危機感を示しました。
 そのうえで「日本はアジアで初めて平和を取り戻すためロシアに圧力をかけてくれた」と述べ、日本の対応を評価したうえで、ロシアに対する制裁の継続を呼びかけました。

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻を支持する意見がほぼ皆無なのは当然ですが、ロシアが侵攻に踏み切った背景に一定の理解を示す人たちも極めて少数派であるだけでなく、仮にそれを表明すれば異端の考えとして驚愕の眼差しで見られるという実態があります。

 植草一秀氏が、「ウクライナの国際法違反行為」とする記事を出しました。
 15年に締結されたミンスク合意2国連安保理で決議されており、国際法の地位を獲得しているのに対して、ゼレンスキーが選挙公約にも反して「ミンスク2を履行しない」方針を明示したのが、国際法違反に当たるという指摘です。
 ロシアが紛争の解決のために武力を行使したことは非難されなければなりませんが、問題発生の根本原因にゼレンスキー大統領の行動があったことを見落とすことはできないとして、21年に入って彼が「ミンスク2を履行しない」方針を明示すると共にNATOへの完全加盟を謳い、軍事力によってロシアと対抗する路線を明確に示したことを挙げました
 そしてゼレンスキーの最大支援者はウクライナのオリガルヒであるコロモイスキーで、彼の所有するテレビ局が1510月にゼレンスキー主役の政治ドラマ「国民のしもべ」の放送を開始したことで、ゼレンスキー大統領選出する計画が始動したとしています
 コロモイスキーネオナチ勢力の主要支援者り、14年のクーデター後に極右組織(ネオナチ)のアゾフ大隊を「特殊作戦分遣隊」として正規軍に組み入れました。それが停戦協定を無視して東部地区で軍事行動をした際に、ゼレンスキーが指揮した主力部隊になったのでした。

 植草氏は、ミンスク合意履行による和平実現という国際法の規定を踏みにじり、対ロシア軍事行動を強めてきたのがゼレンスキー大統領であると述べて、ロシアのプーチン大統領が悪魔でウクライナのゼレンスキー大統領が正義のヒーローというのは、西側メディアが流布するプロパガンダであることに注意が必要だとしています
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ウクライナの国際法違反行為
               植草一秀の「知られざる真実」 2022年3月23日
ウクライナ紛争で最優先されるべき課題は停戦の即時実現。停戦を実現する際に基準とするべきはミンスク合意である。
ミンスク合意2は2015年2月に締結されている。ミンスク合意2は国連安保理で決議されており、国際法の地位を獲得している

2014年の政権転覆騒乱に際してウクライナ内部で内戦が発生した。
ウクライナ政府とドネツク・ルガンスク両地域との間で戦乱が勃発した。
ミンスク合意は停戦を実現するために調印されたもので、2015年2月のミンスク2は調印各国が広く認めた、拘束力のある、ウクライナ問題解決のための基礎的な政治文書である。
同時に、ミンスク2は国連安保理決議第2202号によって承認されており、関係各国が全面的かつ実効性ある履行をするべきもの。
合意は、停戦の実現、人質の解放、捕虜の交換などとともに、ドネツク、ルガンスク両州の親ロシア勢力支配地域への強い自治権付与を定めた。

このミンスク合意2が履行されていれば、今回のウクライナ戦乱は発生していない。
2019年に大統領に就任したゼレンスキー氏は東部の紛争解決を公約に掲げた。東部問題を解決することはミンスク合意の履行と同義である。
ゼレンスキー大統領がミンスク合意を誠実に履行していれば戦乱を招くことはなかった。
ロシアが紛争の解決のために武力を行使したことは批難されねばならない。しかし、問題発生の根本原因にゼレンスキー大統領の行動があったことを見落とすことはできない
ウクライナ戦乱が勃発した直接の原因は、ウクライナのゼレンスキー大統領が2021年に入って「ミンスク2を履行しない」方針を明示したことにある

2021年は米国のバイデン政権発足の年。バイデン政権発足と同時にウクライナの対ロシア軍事対決路線が鮮明になった。
ゼレンスキー大統領は2021年3月25日に「軍事安全保障戦略」を承認する大統領令を発出した。「軍事安全保障戦略」には、「ロシア連邦との地政学的対決において、国際社会がウクライナを政治的、経済的、軍事的に支援することを求める」ことが明記された
同時に、優先順位の高い項目として「ウクライナのNATOへの完全加盟」も明記された。
さらに、ゼレンスキー大統領は2021年9月に、クリミアの「脱占領と再統合」のための戦略を実施するための行動計画を承認した。
行動計画は軍事的手段も含めてクリミアを奪還する方針を明示するものだった。
ミンスク合意を履行してロシアとの和平を確立するのではなく、ミンスク合意を粉砕して、軍事力によってロシアと対抗する路線を明確に示したのである。

このなかで、ゼレンスキー大統領はドンバス地方奪還に向けて、2021年4月にトルコから購入した軍事用ドローンをドンバス地方での偵察飛行に利用。
さらに、2021年10月末にこのドローンを用いてドネツク州都市近郊で分離独立派組織の榴弾砲を爆破した。

ミンスク合意履行による和平実現という国際法の規定を踏みにじり、対ロシア軍事行動を強めてきたのがゼレンスキー大統領である。
このウクライナの姿勢を主導したと見られるのが2021年1月に発足した米国のバイデン政権。ロシアを挑発し、ロシアが軍事行動に踏み切れば、ロシアを悪の帝国として宣伝することができる。
その上で、ウクライナ戦乱を長期化させ、ミンスク合意を破棄してウクライナ全土をロシアから奪取することも目論まれている可能性がある。

ゼレンスキー大統領の最大支援者はウクライナのオリガルヒであるコロモイスキー氏。
コロモイスキー氏が所有するテレビ局が2015年10月にゼレンスキー氏主役の政治ドラマ「国民のしもべ」の放送を開始した。
コロモイスキー氏は前大統領のポロシェンコ氏と緊密で、ウクライナのドニエプロペトロフスク州知事に任命されたが、エネルギー企業不祥事を契機にポロシェンコ大統領と決裂した。
これを契機に「国民のしもべ」放送が始動された。
コロモイスキー氏によるゼレンスキー氏大統領選出計画が始動したと見られる。

同時に、コロモイスキー氏がウクライナのネオナチ勢力の主要支援者である点も見落とせない。
コロモイスキー氏が支援する極右組織のアゾフ大隊がウクライナ正規軍に組み入れられ、極右組織ライト・セクターのドミトリー・ヤロシ氏がゼレンスキー大統領の下でウクライナ軍総司令官顧問に任命されたことをヤロシ氏が明らかにしている。
東部地区でウクライナ政府軍が停戦協定を無視して軍事行動を実施した主力部隊が、ゼレンスキー氏が指揮する極右勢力であることも見落とせない。
ロシアのプーチン大統領が悪魔でウクライナのゼレンスキー大統領が正義のヒーローというのは、西側メディアが流布するプロパガンダであることに注意が必要だ。

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