岸田内閣が発足後 特に何の実績もないのに徐々に支持率を伸ばしてきたのは、前任者たちが悪すぎたからでした。ところが6月の内閣支持率は、
共同通信(13日)56.9% 1ヶ月前から4.6ポイント下落
時事通信(13日)48.7% 1ヶ月前から2.1ポイント下落
毎日新聞(18日)48% 1ヶ月前から4ポイント下落
NHK (20日)55% 1週間前から4ポイント下落
日経新聞(20日)60% 1ヶ月前から6ポイント下落
という具合で、まだ完全に落ち込んだとは言えませんが、軒並み下落していてNHKに至っては僅か1週間で4ポイントも下落しました。参院選公示を22日に控えた時点で自民党幹部らが焦り出したのは当然です。岸田首相は選挙期間中に外遊なんてしている状況じゃないという空気です。
日刊ゲンダイは、世論の関心がウクライナ戦争から身近な物価高に移ったとして、この先も物価高は加速する一方なのに何の対策も打てず、世界の常識である消費税の引下げを繰り返し拒絶するということでは、自らがインフレ不満票に火を点けたとしています。
国民がどんなに円安・インフレに苦しもうとも放置する一方で、軍事費だけはトータルで5兆円余の増額に邁進するというのですから当然です。
自民党の茂木幹事長は23年度予算で防衛費6兆円台半ば以上を確保し、参院選後のできるだけ早いタイミングで憲法改正の原案を国会提出して発議を目指すと公言しています。自民が勝利すれば何の抵抗もなくそれに向かうことでしょう。
1998年の参院選では、選挙期間中の橋本龍太郎首相の「恒久減税」発言が迷走したことで自民は失速し惨敗しました。いまから思えば世論は信じられないほど厳しく首相の一挙手一投足を監視していたのでした。
その12年後の2010年には、菅直人首相が公示7日前に「消費税増税」に言及して惨敗し、民主党政権の終わりの始まりとなりました。財務省の言うがままを選挙カーの上で叫び続けるのは首相にあるまじき浅はかさでした。
その12年後が今度の参院選です。熱に浮かされたように暗黒の軍事国家に突き進もうとしている岸田首相に、国民が「ノー」を突きつけて日本の安全を守れるかが問われています。
日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岸田首相が火を付けた“インフレ不満票” ショボい対策と消費税減税スルーで自ら逆風煽る
日刊ゲンダイ 2022/06/22
7月10日投開票の参院選が22日、公示された。最大の争点は物価高。岸田首相にとって、21日の政府の物価対策本部や党首討論はインフレ対策をアピールする好機だったが、あまりにもお粗末だった。有権者の失望を招き、怒りの火に油を注いでいる。
◇ ◇ ◇
21日午前、初めて開かれた物価対策本部で岸田首相は「生活に直結する物価動向を注視し、きめ細かく切れ目なく対応していく」と意気込んだ。しかし、示された対策はどれも、有権者ウケしなさそうなショボいものだ。
輸入小麦の価格抑制検討は「10月以降」と間が空き、15日の会見でも触れていた。グリーン農業推進と肥料高騰への対応を組み合わせた制度や、節電した事業者や家庭へのポイント付与は複雑で遠回り感は否めない。猛暑の中、「ポイント目当てに節電しろ」なんて酷な話だ。
野党7党が掲げる消費税減税の方が、よっぽどシンプルで分かりやすいが、午後の党首討論で岸田首相は「消費税減税は考えません」と一蹴。聞き捨てならないデタラメ発言が飛び出した。
「消費税は法律上、社会保障目的税として位置づけられています」
ネット上では〈目的税ではなくて何でも使える普通税〉〈一般財源でごちゃまぜになってるだろ〉〈ウソを垂れ流すのはダメですよ〉と批判が吹き荒れている。
国民をミスリードする問題発言
「岸田首相が消費税を社会保障目的税と断言したのは、国民をミスリードする問題発言です。確かに消費税法上、使途は社会保障や少子化対策と規定されており、目的税のように錯覚しがちですが、法人税や所得税と同じく一般財源です。実際には、消費税は国の借金返済や社会保障以外の歳出に充てられています。この規定自体、国民を欺くために設けられたと考えられます」(税理士で立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏=税法)
2019年1月の衆参本会議で安倍首相(当時)は「(消費税の)増税分の5分の4を借金返しに充てていた消費税の使い道を見直し」と漏らしていた。
「もともと、消費税は直間比率の見直しから導入されたものです。つまり、お金持ちに不利な法人税や所得税など直接税を減税し、その穴埋めに低所得者ほど負担が重い間接税の消費税を充てたのです。物価高騰の中、有権者は消費税について改めて見つめ直しています。社会保障の安定財源との説明に疑問を抱く有権者が増えれば、与党には逆風になるでしょう」(浦野広明氏)
物価が1%上がれば、年間の消費税負担は約2000億円増えるとの試算がある。公示前日に浮き彫りになった岸田首相のセコいインフレ対応と消費減税スルー。値上げラッシュに苦しむ有権者の怒りは収まらない。
翼賛国会になったら万事休す 「戦争する国」に突き進むのかも重大な争点
日刊ゲンダイ 2022/6/22
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
庶民の暮らしをむしばむ「黒田円安」「岸田インフレ」を退治するのか。大企業をはじめとする資本家だけが潤う新自由主義の跋扈を甘受し続けるのか。国民生活の行方を左右する参院選が22日、公示。18日間の選挙戦の火蓋が切られた。投開票日は来月10日だ。
これに先立ち、日本記者クラブが主催した21日の討論会に与野党9党首が出席。野党第1党の立憲民主党の泉代表は物価高対策として「円安が深刻になると金利に直接触れなければいけない。ゼロ金利の見直しを真剣に検討する段階だ」と岸田首相に迫ったが、相変わらず暖簾に腕押し。「ロシアによる価格高騰、有事による価格高騰」と言い張る岸田は「エネルギー、食料品の価格高騰が中心で、そこに政策を集中している」と強弁し、「中小企業の金利、住宅ローンなど景気に大きな影響を与える」として金融緩和の見直しを否定した。確かに、ある意味ではその通りだ。10年近く続くアベノミクスの異次元緩和と巨額の財政出動で政府も日銀も自縄自縛となり、身動きが取れない。低金利を前提に借り入れを増やした中小企業や、カツカツの住宅ローンを組んだ家計にしても、金利引き上げで次々に破綻しかねない。
2021年末の普通国債残高は1000兆円に迫る水準だ。財務省の試算では金利が想定より1%上昇すると、25年度の元利払いの負担は3.7兆円増える。2%で7.5兆円の増加だ。日銀が保有する国債は500兆円を超え、黒田総裁の就任直前と比べて4倍以上に膨らんでいる。利上げに動けば日銀は債務超過に陥り、もともと厳しい政府の財政状況は一層悪化する。事実上の「財政ファイナンス」のツケが一気に噴き出してしまう。信念も覚悟もない岸田にできることは何もない。だから、金看板に掲げる「新しい資本主義」は全く中身がないのだ。
投開票までに140円台へ
そうこうしているうちに、ドル円相場は1ドル=136円台に突入。1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準だ。理由は言うまでもなく、日米の金利差拡大。節目の135円を突破したことで重しが外れ、投開票日を待たずに一気に140円台に向かう可能性がある。それでも、岸田政権も黒田日銀も傍観を決め込んでいるから、円安物価高に歯止めはかからない。米ゴールドマン・サックスによると、顧客のヘッジファンドは日本株をほぼ売り切った。ネットベースの取引残高に占める日本株比率は2%強まで縮小し、過去10年で最低水準だという。
日本経済をここまでダメにした自民党政治を続けさせたら、日本は売られていくだけだが、恐ろしいのはそれだけではない。「戦争する国」に突き進むのかも、この参院選の重大な争点だ。すでに軍拡は刻一刻と進められている。翼賛国会が固定化してしまったら、万事休すである。
海上自衛隊は今月6日、NATO(北大西洋条約機構)の艦艇と地中海で共同訓練を実施。海上幕僚監部の発表によると、約4年ぶりの共同演習の目的は「海上自衛隊の戦術技量の向上及びNATO常設海上部隊との連携の強化」。海自の練習艦「かしま」「しまかぜ」、イタリア海軍のフリゲート艦「カルロ・マルゴッティーニ」とトルコ海軍の同「サーリヒレイス」が参加したという。その翌日に表敬訪問したNATO軍事部門トップに対し、「欧州とアジアにおける安全保障は不可分なものだ」と垂れた岸防衛相は、その4日後にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)の講演で「日本はルールに基づく国際秩序を守るための最前線にいる」と発言。ウクライナ侵攻を続けるロシア、協力関係を深める中国、2大国を頼みに核・ミサイル開発を強行する北朝鮮を刺激する意図はアリアリだ。自衛隊がNATOとの軍事演習を再開し、自ら西側の最前線に近づき、挑発する愚行の狙いは一体何なのか。
背景には「太平洋版NATO」再浮上
被爆地の広島県選出の岸田は「軽武装、経済重視」という宏池会のイメージを最大限利用し、ハト派イメージを振りまきながら、その実ハイペースで軍拡を推し進めている。選挙戦の最中の来週も外交日程がビッシリ。ドイツへ飛んでG7サミットに出席後、スペインで開催されるNATO首脳会議にも足を延ばす。日本の首相のNATO会議出席は初めて。先月来日した米国のバイデン大統領に「防衛費の相当な増額を確保する決意」や「反撃能力を含めたあらゆる選択肢を排除しない決意」と口約束した対米公約を繰り返し、国際公約に仕立て上げるのだろう。自民党の参院選公約にはまどろっこしく書かれているが、要するに防衛費の「5年以内にGDP比2%以上」の実現だ。
軍事評論家の前田哲男氏はこう言う。
「中国を最大の戦略的競争相手、つまり敵とみなすバイデン政権の意に従い、日本は中国包囲網の第一線に立ち、南西諸島の自衛隊基地を増強しています。もっとも、安倍政権下で2回改定された防衛計画の大綱に沿った既定路線で、防衛費を倍増する要因にはならない。政府・自民党が〈5年以内にGDP比2%以上〉にこだわる理由は、従来の日米同盟を超える枠組みを視野に入れているからではないか。サンフランシスコ講和条約を立案したダレス国務省顧問は当初、太平洋版NATOを構想していました。集団安全保障のフレームとして西側にNATO、東側にPATOを創設しようと動いた。しかし、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどの反日感情を抑えきれずに断念。オーストラリアとニュージーランドとはアンザスを締結し、日本を含む他国とは2国間同盟を結ぶ『ハブ・アンド・スポーク』で太平洋地域に関与してきた。その一方、米国防総省でダレス案は脈々と受け継がれ、中国が現実の敵となった今、PATO実現が再浮上している可能性がある。その中核を担う日本がNATO主要国に比肩する軍事力を持つという流れかもしれません」
平和と戦争の関ケ原
21日の党首討論で防衛費増額を突っ込まれた岸田は「政府としては、数字ありきとは一度も申し上げていない」「NATOにおける防衛費のGDP比2%を念頭に、5年かけて防衛力を強化するとした提案を行っている」とトボケていたが、景気対策として7野党が求める消費税引き下げは「社会保障の安定財源だ。減税は考えない」と断固反対。そりゃそうだろう。5兆円もの巨額財源は消費税引き上げ、あるいは社会保障費を削減しなければ恒久的に捻出できない。着々と進む自衛隊の米国傭兵化の先にあるものを考えると、空恐ろしくなる。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「憲法9条を守るこの国は75年間、一度も戦争をせず、海外で一人の命も奪うことはなかった。世界に誇るべきことです。にもかかわらず、27年に中国と衝突することを見据えた米国に連動し、岸田政権は米国と一緒に戦争できる体制づくりを急いでいる。自民党の茂木幹事長は23年度予算で防衛費6兆円台半ば以上を確保、参院選後のできるだけ早いタイミングで憲法改正の原案を国会提出して発議を目指すと公言しています。自民党改憲案4項目のひとつである緊急事態条項が創設されれば、政府は憲法を超越した措置を取れるようになる。徴兵も国家総動員も可能です。この選挙は平和国家として歩み続けるのか、戦争国家へと変貌するかの関ケ原なのです。改憲には衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成による発議、国民投票で過半数の賛成というプロセスがあり、改憲勢力が3分の2以上を占め続けても国民投票で切り崩すことはできる。しかし、戦争に向かおうとする体制は維持され、何度でも改憲をたくらむでしょう。平和か戦争か。非常に重要な選択を迫られているのです」
参院の総定数は今回から3増し、248。このうち改選となる124議席(選挙区74、比例代表50)と、非改選の神奈川選挙区の欠員1を補う「合併選挙」を合わせた計125議席を争う。自公与党に、日本維新の会と国民民主党を加えた改憲勢力4党の非改選議席は計83。改憲発議に必要な「3分の2」(166議席)のちょうど半分で、1議席でも減らせば勢いはそがれる。
この国にいま必要なのは何か。答えは分かり切っている。