自民党は「ウクライナ戦争」を絶好の機会として、安部元首相の時から米国に強要されている防衛費の倍増と大軍拡に踏み切ろうとしています。それは防衛費を、年々大幅に増額し5年後には11兆円以上にするというもので、もしもそうなれば日本の軍事費は米・中に次いで世界で第3位となります。
当然社会保障費は削られ民生が圧迫されるので、国民はまずまず貧しくなる一方で、超高額の米国製の武器の爆買いが常態化することになります。競争的な軍備拡張は本質的に留まるところを知らないので、やがてGDPが世界一になる中国を相手に果てしない競争を(日本が破綻するまで)続けることになります。
これこそはかつて経験した「いつか来た道」なのに他の野党からは反対の声が上がりません。また国民の間にも軍備拡張はやむを得ないことという思い込みがあります。実に不思議なことです。
メディアも上層部から抑制されているでしょうが、一向に軍拡反対の声を上げません。せいぜい各党の態度・姿勢を紹介する程度ですが、それでも共産党のみが軍備拡張に反対していることが評価されています。
しんぶん赤旗が「メディアでも注目“大軍拡反対なら共産党しかない”」、「軍事費増額 各党は」、「軍事費10兆円規模も 防衛研究所 『抑止破綻』で国民脅す」とする3つの記事を出しました。
併せて高野孟氏の記事「ウクライナ侵攻に刺激され、挙国一致で中国との戦争に突き進みかねない危うさ」(日刊ゲンダイ)を紹介します。
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メディアでも注目 “大軍拡反対なら共産党しかない”
しんぶん赤旗 2022年6月2日
大軍拡は国民の暮らしを押しつぶす―。ウクライナ危機に乗じた「敵基地攻撃能力」の保有と軍事費増に厳しく対峙(たいじ)する日本共産党の姿勢に期待と注目が集まっています。
小池晃書記局長は5月31日の参院予算委員会で、岸田文雄首相が日米首脳会談で「防衛費の相当な増額」を表明した問題を追及し、「日本を『軍事対軍事』の危険な悪循環に引き込むだけでなく暮らしを押しつぶすものだ」と厳しく批判しました。
「朝日」は1日付で小池氏の質問を報道。「『相当な増額』と言うなら、財源は社会保障などの削減か、増税か、国債発行で賄うのか。この三つの選択肢しかない」と岸田首相をただした場面を取り上げました。
5月30日放送のTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!」では、軍事費の増額をめぐる各党の姿勢が話題になりました。コメンテーターの山田惠資氏(時事通信)は、GDP(国内総生産)比2%への大軍拡を公約にする自民党はもちろん、立憲民主党などの野党も軍事費の増額を「参院選の争点にはしない」と主張しているとして、「反対している人は選挙で誰に入れればいいのかという話になる」と指摘。森本氏が「これはもう共産党しかないんじゃないか」と発言すると、山田氏も「いま本当に明確に共産党しかない形になっている」と応じました。
さらに山田氏は、NHK「日曜討論」(5月29日)での各党の議論にも触れながら、軍事費増額反対の立場を示したのは「(日本共産党の)小池晃書記局長が唯一と言っていい」と強調しました。つづけて、「相当な増額」の財源を追及した小池氏の主張を紹介し、「当然こういう疑問は国民の中からでてきてもおかしくない。予算は限られている」と指摘。“軍事力強化さえすれば平和になる”とする流れがあると述べ、「もし参院選で自民党が勝利すればこのまま突き進むことになる」と危機感を示しました。
軍事費増額 各党は
しんぶん赤旗 2022年6月2日
日米首脳会談で岸田文雄首相が「防衛費の相当な増額」を表明し、自民党が「GDP(国内総生産)比2%以上」への増額を提言するなど、大軍拡を進める危険な動きが強まっています。この問題で5月29日放送のNHK「日曜討論」での各党の発言を紹介します。軍事費増額の問題をめぐり、それぞれの主張が鮮明にあらわれました。
増額は重要だ
自民党の小野寺五典・安全保障調査会長(元防衛相)は「防衛予算の増額という今回の総理の発言は重要だ」と歓迎し、大軍拡を主張。増額の規模・金額については「まず積み上げてみないと分からない」などと無責任な発言に終始しました。
避けられない
公明党の北側一雄副代表は「防衛費の増額は避けて通れないと思っている。しっかり議論したい」と述べました。
議論はすべき
立憲民主党の渡辺周・外交・安全保障・主権調査会会長代行は、積算根拠や財源を示す必要性や不平等なFMS(有償援助)の見直しなどを指摘し、条件付きで「防衛費の増額の議論はすべきだ」と述べました。
1%枠見直せ
日本維新の会の青柳仁士・外務・安全保障部会長は「日本の防衛費はGDP比1%という枠にとらわれている」として、「現実を踏まえた見直しをしていくべきだ」と強調。「他国がたくさんの装備を持っていたらこちらも持たないと安全にならない。日本の比較優位を保つことが必要だ」などと述べました。
やむを得ない
国民民主党の大塚耕平代表代行は、「必要な防衛装備は準備する必要がある。増額もやむを得ない」と発言。れいわ新選組の山本太郎代表は「必要な防衛装備ならば増額が必要というのは分かる」としつつ、「一方でこれまで装備が適正価格で購入されてきたかというチェックは必要だ」と述べました。
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各党が軍事費の増額を推進・容認する中で、日本共産党の小池晃書記局長は、「相当な増額」の財源を全く答えようとしない岸田首相の姿勢を批判。軍事費増額による大軍拡は日本を「軍事対軍事」の危険な道に引き込むだけでなく、暮らしも押しつぶすものだと訴えました。
軍事費10兆円規模も 防衛研究所 「抑止破綻」で国民脅す
しんぶん赤旗 2022年6月2日
防衛研究所は5月31日に公表した「東アジア戦略概観2022」で、22年度当初予算で約5・4兆円の軍事費について、「10兆円規模になるという考えもあり得る」と述べ、大軍拡を迫りました。岸田文雄首相は23日の日米首脳会談で軍事費の「相当の増額」を公約しましたが、防衛省シンクタンクの年次報告で具体的な金額に言及したことで、波紋が広がっています。
概観は東アジアにおける「防衛支出のシェア」が、2000年は日本が38%でトップだったのに対し、20年では中国が65%と圧倒し、日本は17%まで低下していると述べています。さらに、韓国の軍事費増にも言及し、「このまま行けば数年以内に日本を上回る」としています。
その上で、「日本も防衛費を増やさないできたわけではない」と指摘。2000年度~19年度の主要費目の増加率を比較した場合、軍事費は123・9%で、社会保障費の195%の次に多く、しかも「社会保障費の伸びが大きいのは高齢化が進む日本において必然」であり、「(予算)全体の中では防衛費が相対的に重視されている」と認めています。
それにもかかわらず、「中国が日本を上回るペースで国防費を増加させている」として、さらなる軍事費増は避けられないと主張。攻撃側は防御側に対して3倍の兵力が必要になる「攻者3倍の法則」を当てはめ、中国の今後の軍拡を考慮し、その3分の1を目安にした場合、「防衛費の水準は10兆円規模になるという考えもあり得る」と述べています。
概観は、「日本の財政事情が厳しいことは周知の事実」だとしながら、「仮に中国との関係で抑止が破綻した場合のコストは(軍事費増額分の)4兆円にはとどまらないだろう」と述べ、(1)財政破たんのリスクを負って軍事費を増やす(2)財政を重視し、抑止破たんリスクを負う―という、「どう喝」とも言える二者択一を迫りました。
こうした論理にたてば、中国の軍拡が続く限り、日本も国民生活を犠牲にしてでも果てしなく軍拡を続ける必要があり、それこそ、戦前の「欲しがりません、勝つまでは」の再来となります。
概観に欠如しているのは、「第3」の選択肢―外交による緊張緩和、軍縮の促進です。これがもっとも確実かつ安価で、東アジア全体の平和と成長をもたらす最善の道です。
永田町の裏を読む 高野猛
ウクライナ侵攻に刺激され、挙国一致で中国との戦争に突き進みかねない危うさ
高野猛 日刊ゲンダイ 2022/06/02
日本経済新聞とテレビ東京が行った世論調査で、内閣支持率が前月から2ポイント上がって66%、昨年10月に発足して以来の最高を記録した。目の前の日程を可もなく不可もなくこなしているだけに見えるのに、一体どうしたことなのか。自民党のベテラン秘書に尋ねると、「そりゃ、やっぱり、ウクライナ効果でしょう」と彼は言い、こう分析した。
まず第1に、ウクライナの街が焼かれ市民が殺傷される画像を毎日のように突きつけられて、全国民が涙し、地方の小学生が千羽鶴を折って届けるとか、女子高生が駅前で募金をするとかの支援活動が広がった。ミャンマーやアフガニスタンやイラクやシリアで似たようなことが起きても、日本人がこれほどまでに遠い国の人々の生き死にを気遣ったことはなかっただろう。米国発の「プーチンは悪魔、ゼレンスキーは善人」という情動操作キャンペーンが成功した。
第2に、その上に立って、バイデン米大統領と岸田文雄首相が協力して、「ロシアは〔旧共産国だから〕怖いぞ」という感覚をアジアに横滑りさせて「中国も〔現共産国だからなおさら〕怖いぞ」と思わせることにも成功しつつある。
第3に、その結果、日本はますます米国の言いなりになって、台湾有事の際に自衛隊を繰り出して中国軍と戦うことを避けられなくなった、と彼は言う。
確かに、調査結果では「防衛費のGDP比増加」に賛成56%、「反撃能力の保有」に賛成60%と、自民党の軍拡路線はおおむね支持されている。「台湾有事に備え法改正で対応強化」には、さすがに賛成が41%止まりで、「今の法律の範囲で備える」の50%を下回ったが、「備える必要はない」は4%しかない。つまり、台湾をめぐっては軍事的手段で中国に立ち向かうしかないと考える人が9割以上に達しているということである。
立憲民主党も共産党も、中国の尖閣問題への態度や南シナ海での演習など現状変更の試み、国内でのウイグル族らへの人権抑圧を非難するのはいいとして、戦争を回避して交渉で解決するための具体的な提案はない。
このままではこの両党を含め挙国一致で中国との戦争に突き進みかねないのが今の日本である。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。