2022年6月23日木曜日

23- 最高裁に告ぐ 裁判所の信頼を失墜させているのはあなたたち(澤藤統一郎氏)

 護憲弁護士の澤藤統一郎氏が、「最高裁に告ぐ! こんなんじゃ、現場はやってられませんよ。~ 」という記事を出しました。

 これは17福島原発事故における国の責任を否定し自判の判決を出した最高裁第三小法廷を痛烈に批判した岡口基一判事のブログを、高く評価して紹介したものです。
 現役の判事が最高裁の判決を批判するのは大変に勇気のいることです。澤藤氏は、「最高裁に対する批判の発言を躊躇しないその信念には脱帽するしかない」としたうえで、「けっして岡口判事を罷免してはならない。日本が民主主義を標榜する社会である限り」と訴えています。要するにそういう可能性さえもあるということです。
 文中、紫色着色部分は太字強調部分を含めて原文に拠っています。
 これは「脱原発の会」のブログで紹介すべき記事かも知れませんが、原発問題に限らず最高裁の姿勢を批判したものなので、敢えて「9条の会」のブログで紹介します。
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最高裁に告ぐ! 「こんなんじゃ、現場はやってられませんよ。裁判所の信頼を失墜させているのは、あなたたちでしょ」
                    澤藤統一郎の憲法日記 2022年6月21日
 昨夜、ネットを検索して、たまたま岡口基一判事のブログに遭遇し、本日のタイトルの書き込みに衝撃を受けた。
 「岡口基一の『ボ2ネタ』」という連続ブログ。「2003年から続いている老舗「司法情報」ブログです。過去の司法記事の検索やリンクバーでの最新情報のチェックが便利です」との惹句がある。
 その全文が下記のとおり。これを見て、私は岡口基一判事に対するこれまでの見方を変えた。
  2022-06-20 最高裁に告ぐ!!(怒)
  東京高裁時代は白井部長が、
  仙台高裁に来てからは上田部長が、
  それこそ、夏休みも土日もなく、毎晩遅くまで残って、原発訴訟の起案をされ、
  それこそ魂のこもった判決を仕上げられました。
  どちらも、国の責任を認めるものでした。
  それを、あんな、いい加減な理由で、いとも簡単に破棄し、差し戻すこともなく、自
  判してしまう。
  こんなんじゃ、現場は、やってられませんよ。
  裁判所の信頼を失墜させているのは、あなたたちでしょ。最高裁に告ぐ!

 蛇足かも知れないが、少し解説しておきたい。岡口判事の現在の任地は仙台高裁、前任地が東京高裁である。「白井部長」とは、白井幸夫裁判官(36期)のこと。2021年2月19日、東京高裁第22民事部の裁判長として、国の責任を否定した千葉地裁判決を逆転し、東電への規制権限を行使しなかった国にも賠償責任があるとして、国と東電に計約2億7800万円を支払うよう命じる判決を言い渡している
 また、「上田部長」とは、上田哲裁判官(40期)。2020年9月30日、仙台高裁第3民事部の裁判長として、「生業訴訟」に、国と東電の責任を認める判決を言い渡している
 そして、「あんな、いい加減な理由で、いとも簡単に破棄し、差し戻すこともなく、自判」とは、先週金曜日(6月17日)の、国の責任を否定した最高裁第三小法廷判決を指していることは言うまでもない。
 これまで私は、岡口判事を、司法行政にまつろわぬ姿勢の裁判官として、貴重な存在と見ていた。このブログは、はるかにその域を超えている。この苦境の中で、最高裁に対する批判の発言を躊躇しないその信念には脱帽するしかない。
 民主主義社会では、誰もが批判の対象とならざるをえない。もちろん、最高裁も批判されねばならない。いや、最高裁にこそ的確な言論による批判が必要である。三権の一つの頂点にありながら、ややもすれば独善に陥りがちな最高裁である。まことに批判が不十分なのだ。本来憲法や人権を擁護すべき最高裁である。権力や資本や社会的強者の走狗となってはならない。その最も的確で有効な批判をなし得るのは、現場の裁判官ではないか。岡口判事は、その貴重な役割を意識的に果たしている。
 おそらくは、「こんなんじゃ、現場は、やってられませんよ」という岡口コメントに、多くの現場裁判官が内心は同じ思いをしていることであろう。だが、これに賛同の声を期待することは現実には困難である。そのような発言はすべきではないという倫理をもつ裁判官も少なくなかろう。しかし、最高裁への批判の声が上がらないのは、消極的な同意とみなされることになる。声を上げずしては、最高裁の姿勢は変わらない。岡口判事は、現場裁判官のホンネを代弁する貴重な役割をも果たしている。
 言論による権力批判は、民主主義社会の土台をなすものとしてその自由が保障されなければならない。最高裁には、この上なく不愉快な内部からの批判のコメントであろうが、だからこそ貴重なコメントと認識しなければならない。
 けっして岡口判事を罷免してはならない。日本が民主主義を標榜する社会である限り。