自民党は5月23日の日米首脳会談に先駆け、5年以内に「軍事費GDP比2%以上」を達成することを提言(維新も「GDP比2%」を公約)しました。実際に首脳会談で岸田首相はバイデンに対し「防衛費の相当な増額の確保」と敵基地攻撃能力=「反撃能力」の保有を検討すると約束しました。
軍事費GDP比2%以上とは「軍事費11兆円以上/年」ということです。なぜ「憲法9条(戦争の放棄)」を持つ国が、米中に次ぐ世界第3位の軍事大国になる必要があるのか、とても通用する話ではありません。このところの自民党政権は大いに狂っているとしか言いようがありません。
軍事費増額と並行して「敵基地攻撃能力」=「反撃能力」の保有もまた「憲法9条」に反するもので、共産党の小池書記局長が岸防衛相から、「集団的自衛権の行使でも『敵基地攻撃』を行う」との回答を引き出しました。これは日本が攻撃を受けていなくても、自衛隊が米軍の海外の戦争に参戦し、「反撃」と称して敵地を含めて武力行使をすることを示しています。そもそも集団的自衛権の行使自体が違憲なのですが、公然と敵地を攻撃することを想定しているとは、9条からの逸脱も極まれりです。
敵基地攻撃能力は、20年12月に公表された対日要求報告書=「第5次ナイ・アーミテージ報告」で初めて言及されたもので、日本には「安保で喰う人々」が昔から存在していて、ジャパンハンドラーであるアーミテージ報告書をバイブル視して、その実行を日本政府に強要してきたのはご存知の通りです。
こんな風に憲法9条が蹂躙されようとしているのに、かつては「公器」と呼ばれ「社会の木鐸」とも称されたマスコミも不思議なことに沈黙しています。
しんぶん赤旗が、「大軍拡の裏に米要求 GDP2%『同盟国の下限』」とする記事を出しました。軍事費増額は米国の要求によるものですが、軍事費を11兆円以上/年に上げなければならない理由などはなく、単にNATO加盟国が軍事費GDP比2%以上を目標にしているからというだけです。しかしそれもNATO 加盟国30か国中、それに合致しているのは米国を除けば7か国だけだということです。
そもそも日本が米国に同調して、最大貿易国である中国を仮想敵国にする必要性は皆無です。もしも米中戦争が勃発し米軍の尖兵として日本が対中戦争に巻き込まれるならば、日本が壊滅するのは明瞭です。またそれによって中国が大いに疲労し日本が壊滅したとしても、米国はGDPのベストスリーのうちの2か国を脱落させるという二つの目的を達成する訳で何の痛痒も感じない筈です。日本は、そんな米国に追随して破滅への道を歩むべきではありません、
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大軍拡の裏に米要求 GDP2%「同盟国の下限」
しんぶん赤旗 2022年6月5日
5月23日の日米首脳会談で、岸田文雄首相は日米同盟の「抑止力・対処力の強化」と称して、①大軍拡=「防衛費の相当な増額の確保」 ②敵基地攻撃能力=「反撃能力」の保有検討を公約しました。その背景を探ると、いずれも、日本を「力対力」の道に引き込もうとする米国の要求が浮かび上がってきます。根源にある日米軍事同盟の存在が正面から問われています。
首脳会談に先駆け、自民党は5年以内の「軍事費GDP(国内諾生産)比2%以上」達成を提言し、維新も「GDP比2%」を公約。暮らし破壊の大軍拡を競っています。これを実現すれば、軍事費は現在の約5・4兆円から11兆円規模まで膨れ上がります。
「軍事費GDP比2%」の発端はNATO(北大西洋条約機構)です。2006年、米国の要求で「GDP比2%」の指針を設定。14年のロシアによるクリミア侵略を受け、同年9月のNATO首脳会議で、「24年までの2%達成」を目標に掲げました。
17年に発足したトランプ米政権は、NATO以外の同盟国にも「2%」を要求。当時のエスパー国防長官は20年10月20日、ワシントン市内の講演で、「われわれはNATOを超えて、すべての同盟国が防衛にもっと投資することを期待している。少なくともGDP2%を下限として」と発言。オブライエン大統領補佐官も21日、GDP比2%は「NATO以外でもゴールドスタンダード(黄金律)だ」(米軍事専門誌ディフェンス・二ュース)と述べ、絶対的な数値だと強調しました。
21年に発足したバイデン政権は、中国に対抗していくため、日本の大幅な軍事を要求します。菅義偉前首相は同年4月16日のバイデン大統領との共同声明で「自らの防衛力を強化する」と誓約。自民党は10月の総選挙で、初めて車事費の「GDP比2%以上」を公約しました。エマニュエル次期駐日米大使(現大使)は10月20日、上院外交員会の公聴会で自民党の公約に触れ、日本の軍拡は「同盟に不可欠だ」と発言しました。(竹下岳)
軍事費GDP2% 根拠も財源も示さず
敵基地攻撃能力 次つぎに具体的要求
米側はこれまで、日本の軍事費の目安である「GDP1%以内」は「少なすぎる」と批判してきました。中国の大軍拡やロシアのウクライナ侵略を利用して、一気に「2%」達成を狙っているのは明らかです。
ただ、なぜ2%なのか。具体的な根拠は示されていません。NATO加盟国でも、今年3月時点で「2%」を達成しているのは30カ国中、米以外では7カ国だけです。それにもかかわらず、政府と自民・維新は財源も示さず、「2%」ありきで米への忠誠を競い合っているのです。
米のアイデア?
「専守防衛」を根本から覆す敵基地攻撃能力の保有について、岸田首相は日米首脳会談後の記者会見で、「いわゆる『反撃能力』も含めて、あらゆる選択肢を排除しない」と表明しました。
「敵基地攻撃能力」=「反撃能力」と言う言葉を最初に用いたのは、20年12月に公表された米戦略国原問題研究所(CSIS)の対日要求報告書=「第5次ナイ・アーミテージ報告」とみられます。報告書は集団的自衛権の行使容認などを高く評価した上で、「今後の課題は日本がどのように反撃能力とミサイル防衛を向上させるか」だとして、「反撃能力」=敵基地攻撃能力を次の目標に設定しています。
対中戦争に参戦
「反撃能力」と言いますが、攻撃を受けて「反撃」するわけではありません。岸信夫防衛相は5月31日の参院予算委員会で、日本共産党の小池晃書記局長に対し、集団的自衛権の行使でも「敵基地攻撃」を行うとの考えを示しました。日本が攻撃を受けていなくても、自衛隊が米軍の海外の戦争に参戦し、「反撃」と称して武力行使するのです。
米側は、既に具体的な要求を出しています。米インド太平洋軍は、「対中国」を想定した「太平洋抑止イニシアチプ」(PDI)の20年版予算資料で九州沖から南シナ海にいたる「第1列島線」に、巡航ミサイルなどによる「精密打撃網」の構築に言及。そして、この打撃網は「増強された同盟国の地上配備兵器の参加」が前提とされています。
既に防衛省は、奄美、宮古、石垣に陸自ミサイル部隊配備を進め、沖縄本島への配備も検討。射程を大幅に延ばした12式地対艦誘導弾をはじめ、極超音速誘導弾や高速滑空弾など最新鋭の長距離ミサイル開発に乗り出しています。これらが米軍の対中軍事戦略に組み込まれ、「反撃能力」として活用されようとしているのです。