2022年6月7日火曜日

安倍元首相の軽挙妄動に批判が 始まった岸田首相との暗闘

 安倍政権下ではアベノミクスと称して異次元の金融緩和を8年間も続けたにもかかわらずデフレから脱却できず、ここにきて円安は半世紀前のレベルにまで落ち込みました。この間に政府による株の買い支えによって大儲けをした投資家や円安で大儲けをした輸出企業を除けば、アベノミクスを評価する人などは何処にもいません。そもそもアベノミクスは2~3年間という期間限定のカンフル剤であって持続可能性は皆無のものでした。

 アベノミクスの欠陥が現実化した中で、心ある人たちはこれをどのように収束させれば被害をいくらかでも少なく抑えられるのかと苦しんでいるというのに、安倍晋三氏は、自民党の「財政健全化推進本部」5月26日にまとめた提言が気に入らないとしてトップの額賀福志郎議員を自室に呼んで、「アベノミクスを否定するのか」と恫喝したということです。あまりにもズレていて二の句が継げません。
 まあズレているのは今に始まったことではないのですが、このところ安倍氏は岸田首相へのさや当ての動きを見せていて、首相周辺は「もっとどっしり構えているべきなのに、何か焦りを感じる」と不審がり、麻生氏も安倍氏に対して「政府への注文が露骨すぎる」と思っていると言われています(読売)。
 今年の参院選で自民党がそれなりの議席を獲得すれば岸田氏は安倍外しをさらに明確にするので、それに安倍氏が焦っていると見られていますが、だからと言って軽挙妄動するのは子供じみています。安倍氏が最大派閥のトップでありながら孤立して疎外感を味わっているのにはそれなりの経緯があるからです。
 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
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安倍元首相の軽挙妄動に“応援メディア”も異例の批判論調…
    そして始まった岸田首相との暗闘
                         日刊ゲンダイ 2022/06/06
「私と麻生さんがやってきたことを否定するんですか」
 5月23日、元首相の安倍晋三(67)は議員会館の自室に呼んだ元財務相の額賀福志郎(78)に険しい表情でこう迫った>
 5日の読売新聞にこんな政局記事が載っていた。額賀氏がトップを務める自民党の「財政健全化推進本部」がまとめた提言を、アベノミクスの否定と受け止めた安倍元首相がヒステリックに騒いだというのだ。
首相の岸田文雄(64)周辺は「もっとどっしり構えているべきなのに、何か焦りを感じる」と不審がる。麻生も安倍に「政府への注文が露骨すぎる」との思いを抱くとされる>

 3日の朝日新聞も、安倍元首相が推進本部で事務局長を務める自派閥議員に電話をして「君はアベノミクスを批判するのか?」と“ドーカツ”した一幕を書いていた。電話を切った安倍元首相は、周囲に「誰があんなバカな提言を書いたんだ」と言い捨てたという。

 政府の方針に文句をつけてばかりの安倍元首相と岸田サイドのさや当ては多くのメディアが報じているが、安倍応援団だった読売新聞までもが安倍元首相の妄動を「焦り」「不審」などと書くのは異様だ。
「母校である開成高校への思い入れが強い読売の渡辺恒雄主筆は、同窓の岸田さんを応援している。政権運営に横やりを入れる安倍さんのことは快く思わないでしょう」(開成OBの金融関係者)

参院選で圧勝した岸田総理が独り立ちし“安倍はずし”
 3日夜は読売本社のビューラウンジで渡辺氏と岸田首相、井上信治前万博担当相、城内実衆院議員が会食。参加した国会議員は全員、自民党の開成高校OBだ。渡辺氏と開成OBの会は今年に入って2回目。前回の1月も同じ場所で、岸田首相、城内氏、小林鷹之経済安保担当相というメンバーだった。
「大メディアが安倍さんに批判的な見方を報じるようになったのは、参院選で圧勝した岸田総理が独り立ちし、“安倍はずし”に動くと見ていることも大きい。岸田さんも安倍はずしのタイミングを見計らっている。それに安倍さんは気づいているから、何かと岸田政権
に注文をつけて、プレッシャーを与えている。存在感を誇示するのに必死なんでしょう。こんなこと言うと、また『誰の発言なんだ!』と怒られそうですが……」(自民党関係者)

 安倍元首相本人に加えて、暴言連発の細田衆院議長や、自身のHPに「世界美人図鑑」と題して女性の写真を掲載していた西村前コロナ担当相など、このところ安倍派は問題を起こしてばかりで、政権のリスクになっている。これでは、安倍元首相がいくら大立ち回りを演じたところで、党内からも世論からも白眼視される一方だ。


安倍元首相が画策する「岸田包囲網」 菅前首相、二階氏と相次ぎ会食で政権に揺さぶり
                          日刊ゲンダイ 2022/06/03
 安倍元首相が活発に動き回っている。
 5月31日は菅前首相と都内のフランス料理店で会食。それぞれの夫人を同伴していたことが注目を集めた。直前の27日に麻生元首相が菅前首相を自宅に招き、双方の夫人を交えて会食したことがニュースになったばかりだったからだ。
 安倍元首相は菅前首相に対し、「派閥・グループ化に踏み切ればすぐに人が集まる」「自身の派閥をつくるべきだ」とけしかけたという。菅前首相は「私は派閥の弊害を批判してきましたから」と言って慎重姿勢を崩さなかったというが、安倍元首相が「〇〇すべきだ」と言う時は、責任転嫁か私利私欲のためと相場が決まっている
 そして翌1日には二階元幹事長と都内のホテルで会食。安倍側は安倍派の西村康稔事務総長、稲田朋美衆院議員が同席し、二階側からは二階派の武田良太事務総長と林幹雄会長代行が出席した。
 昨年の総裁選で立候補者に「二階幹事長切り」を迫ったのは安倍元首相だとされる。因縁の2人の会食は、それぞれの派閥の事務総長と最側近を従えていたこともあり、「さながらヤクザ映画」と政界で話題になった。

党内で孤立化し焦り
「いずれの会合も、安倍さんの方から誘ったそうです。麻生さんと菅さんが夫人同伴で会食するなど距離を縮めているのを見て、置いてけぼりをくらったように感じたのではないですか。さっそく同じことをして、自分も菅さんとは親密な関係だとアピールしてみせたのでしょう。実際、安倍さんは党内で孤立化しつつあるように見える。最大派閥のトップだから主流派に見えますが、組閣で安倍さんの人事の希望は通らなかったし、岸田政権で干されているという意味では非主流派なのです。安倍さんと岸田総理の関係は決して良好ではない。二階さんとの会食は、いざとなれば反主流派が手を組んで、岸田降ろしを仕掛けるという牽制です。菅さんとの会食もそうですが、参院選後の内閣改造で影響力を行使するためにも、岸田包囲網を敷こうとしているのです。ただ、安倍さんについていく議員が、派閥内にどれだけいるかは疑問です」(安倍派関係者)
 2日の派閥会合でも、安倍元首相は岸田政権の方針にケチをつけていた。防衛費増額について、「GDP比2%目標を『骨太の方針』に明記すべき」と主張したのだ。

 勇ましい発言を繰り返すのは、政権中枢から外されつつあることへの焦りからなのかもしれないが、政権に注文をつける元気があるのなら、「桜を見る会」前夜祭でサントリーから酒類を無償提供されていた問題などについて、きっちり説明して欲しいものだ。