2022年6月18日土曜日

構造不況に入るアメリカ経済ー長く続いた神話の終焉と常識の転換(世に倦む日々)

 米国のバイデンは、米国の超インフレ(インフレ率8・6%)はロシアのウクライナ侵攻に拠るものと盛んに宣伝していますが、それは国民を欺くものでロシア侵攻前の1月の段階(侵攻は2月24日)で既にインフレ率は7・5%に達していました。

 世に倦む日々氏によればこの猛烈なインフレを引き起こした原因は2つあり、1つは、トランプが始めた中国への制裁関税で、それにより多岐にわたる輸入品が値上がりした(中国に対する制裁効果はあまりなかった)ことで、もう一つはやはりトランプが始めた移民流入阻止低賃金労働力の抑制 にバイデンの賃上げ政策が加わって引き起こされたコストアップであるとしています
  (6月16日)バブル崩壊と複合インフレ アメリカのインフレを導いた三つの要因
 そもそも米国は穀物、天然ガス、重油などの輸出国なので、ロシアへの経済制裁の影響は基本的にない筈でバイデンの説明はゴマカシです。
 そうであればインフレ抑制の常道である利上げを重ねてもインフレは解消しないし、利上げとQT(量的緩和の逆の量的縮小)によって市場は冷え、不動産株を先頭に株価の下落が長く続き、長期の景気後退に入ります。
 世に倦む日々氏が、「構造不況に入るアメリカ経済 ー 長く続いた神話の終焉と常識の転換」という記事を出しました。前記の「バブル崩壊と複合インフレ アメリカのインフレを導いた三つの要因」に続く「第2段」です。
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構造不況に入るアメリカ経済 ー 長く続いた神話の終焉と常識の転換
                         世に倦む日々 2022-06-17
ダウ平均が1年5か月ぶりに3万ドルを割った。FOMC(⇒米金融政策決定会合)での0.75%の利上げ決定(6/16)に影響された市場の反応である。1994年以来27年ぶりの大幅利上げを受けて、市場の弱気がいちだんと加速する趨勢となった。NASDAQは4.08%も下落し、昨年秋の最高値から35%も価値を失った。7月にダウが3万ドル台に戻す状況は難しいだろう。トレンドを単純に延長して占えば、8月には2万ドル割れを迎えている。パウエルはFOMC後の会見で、7月も0.75%の利上げがあると予告しており、夏の市場は悲観論一色となるのは確実だ。

パウエルの発言を要約した記事によれば、FRBは2022-24年の各年末の政策金利を3.4%→3.8%→3.4%と設定している。つまり、今年よりも来年の政策金利が高くなっていて、インフレ収束が年内に終わらず、来年以降も課題と格闘が続くという厳しい見通しが立てられている。アメリカのインフレは厄介で、簡単に退治できるものではないのだ。6月のCPI(消費者物価指数)も未だ上昇中という計測があり、何人かの専門家の予測では、インフレ率はさらに悪化して9%に達するという見方も示されている。7月の利上げは0.75%では生ぬるいという声も出ている。

FRBが精力的に利上げを重ね、QT(Quantitative Tightening:量的縮小)を推進すれば、当然、市場は冷えて株価は下がる。金融引き締めはマーケットの動きを止める。マネーの増殖の活力を奪う。それは景気抑制の方向に作用する政策である。ここ数十年、こうした政策がアメリカや先進国で発動される場面はなく、景気を冷やす方向に当局が舵取りし注力する姿を見ることはなかった。量的緩和が常態であり、ゼロ金利が常識であり、先進国の成熟経済はデフレ体質が基調で、当局(政府・中央銀行)はデフレ対策が日常業務だと現代人は観念していた。

金融緩和と財政出動。アベノミクスの政策をトランプもバイデンも採用して模倣している。リーマンショック後の西側諸国の経済政策は、基本的にアベノミクスと同質同類で、当局(中央銀行と政府)がマネー(通貨と国債)を市場に撒きまくり、株価を押し上げ、成長とトリクルダウンを導くというものだった。安倍晋三、トランプ、バイデン、3人の経済政策に差はない。そして、それが当然で普通になっていたのが現代経済の構図だった。今、その情景が一変している。当局は必死で市場のマネーを圧縮する方策で臨み、過剰流動性を抑止する挙に出ている。本当に久しぶりの出来事で、懐かしさを感じる。

若い人たちは初めての経験で戸惑いを覚えているだろう。ある種の価値観の転換に繋がる事態が起きているのではないか。何しろ、これまでの政府は、個人と企業に対して、とにかく株式投資で儲けろ、金融市場の主体になってマネーを動かせ、当局はそれを支援するからという指導のメッセージを発していた。実際、株価は上り続けていて、若い人たちが為政者(安倍晋三、トランプ、バイデン)を信用するのも無理のないことだった。日銀が株(ETF)を買い、政府が年金資金(GPIF)を市場にぶち込み、郵貯と簡保まで流し込んで株価を支えていたのだ。若者たちが麻生太郎の話を信じたのも無理はない

だが、それが転換した。アメリカがチェンジした。無論、日本市場の株も下がる。東証の売買の7割は外国人投資家のマネーであり、東証はNYSEのサブセットであり、夜間営業を受け持つ小さな支店に過ぎないから。私は今回、8月にはダウは2万ドル割れするだろうと書いたが、この予測に同意しない者が何人いるだろうか。おそらく9割は同じ認識のはずだ。保有株は価値が下がる。しかも、それはFRBの分析では長期に続く。アメリカの悪性インフレは簡単に収まらないと専門家は診断していて、株価が下がっても、失業率が上がっても、暫くは利上げとQTを継続せざるを得ない。

アメリカ経済がリセッション⇒景気後退入りするのは確実で、今回はそのタイムスパン⇒間隔が長期に及ぶだろう。活況に湧いていた不動産市況がインフレのため一部の相場で値下がりという情報が出ている。金利が上がり、住宅ローンの返済負担が重くなり、買い手が渋り始めたようだ。ローン返済中の者も、変動金利が上がって大変になるだろう。アメリカはクレジットカード社会であり、リボ払いが一般的だから、この物価高と金利高は消費者に打撃を与えるに違いない。カードローン破産が増える。さらに株価下落は、配当額や年金基金(401K)に影響を与え、アメリカ人の所得を減らすだろう。アメリカ人は株に生活を依存している面が大きい

これまで順風満帆で泰然自若だったアメリカの個人消費が落ち込む。インフレ退治に長期を要するという診断を前提とすれば、景気回復まで数年を要する。今度のリセッションは、少なくともリーマンショック時と同じ谷の深さになり、トンネルの長さも同程度になると思われる。NY株価の推移を見ると、リーマン時の不況は3年で元に戻っている。あのときは金融システムの破損が不況の原因で、オバマが金融機関に公的資金で資本注入し、GMなど企業を倒産から救い、短期で危機を収束させたが、インフレという病患は発生していない。今回のインフレの要因の一つである「金融じゃぶじゃぶ」になるのはリーマン後のQE(Quantitative Easing⇒量的緩和)からで、そこからアメリカ経済は依存症体質になった。

体力回復のために炭水化物をとりすぎて糖尿病になった。特にトランプノミクスの弊害が大きかったと私は思う。トランプはFRB議長の采配に横槍を入れ、権力で恫喝し、株価吊り上げのため無理やり金融緩和を強制した。アメリカをインフレ病にした真犯人を一人挙げよと問われれば、トランプに指をさすべきだろう。前回のリーマン危機は、喩えて言えば外傷で、走って転んでの骨折とか肉離れの重傷である。典型的な金融バブルの破裂であり、オランダのチューリップ・バブルと同じだ。入院手術で回復できた。今回のインフレは内科の病気で、外科的な方法では治療できない。時間がかかり、忍耐を伴う治癒過程が必要となる。

ここで考えるべきは、リーマン時の不況からアメリカ経済と世界経済が立ち直れた契機は何だったかという問題である。通常、それは中国の4兆元(約65兆円)に上る巨大な内需拡大の公共投資だったと言われている。道路・鉄道・空港などの大規模なインフラ投資。それが世界の危機を救ったと言われ、世界経済の成長を牽引したと総括されている。中国の評価は上り、G2時代などという言葉も生まれ、アメリカはG20会合を創設する。米中が協力協調して世界経済を運営し、相互にサプライチェーンを深化させ、共存共栄を図る時代が到来したかに見えた。トランプが方針転換するまでは、G2時代はリアルな21世紀のコンセプトだった

今、中国はアメリカにとって打倒すべき「競争」の敵であり、5年後には台湾有事で戦争する相手として措定されている。「民主主義」西側陣営の敵であり、消滅させるべき邪悪な悪魔の存在だ。現実に、アメリカは中国とのサプライチェーンを切断し、デカップリングして経済を物理的に分ける措置に出、着々とその成果を上げている。したがって、このインフレが世界経済全体の不況に繋がり、世界恐慌となったとしても、そこから脱出するためのパートナーには中国はならない。リーマンショック後の回復過程のような米中関係の蜜月図は描けない。ということは、アメリカ経済の今度の病患には有効な処方箋がないということを意味する。

あのとき、中国の65兆円のインフラ投資がなければ、アメリカ経済の不況は長く続き、ドルへの信認も揺らいでいた可能性が高い。われわれは、あまりにもアメリカ経済の繁栄を所与のものとして捉えすぎ、永遠に固定した条件だと信じすぎている。実際には、半導体の技術開発で台湾や韓国の後塵を排しているのがアメリカで、製造業のイニシアティブでは中国に地位を奪われているのが実態だ。アメリカのインフレと株バブルの崩壊、そして構造不況は、中国との関係にどういう影響を与えるのか、そこが焦点である。現在の路線を修正して協調に向かうのか、そのまま戦争(台湾有事)に突っ込むのか。できれば、前者の方に針路を変えることを願いたい。

それにしても、この金融経済の問題でネットをサーベイして気づくのは、関心を持って情報を発信したり分析したりしているのは、自分自身が投機をやり、株の売り買いやFXやビットコインに手を染め、その方面の知識を持ち、チャートをよく解析し、専門用語を使い回すことのできるトレーダーだけだ。つまり、彼らは資本家たる自分個人の利害欲得の動機でツィートしている。相場師としてツイッターを情報交換の道具に使っている。すでにアベノミクスからの10年間で儲けを出し、かなりの資産を築いた者たちだ。私のようにマクロ経済への客観的関心から観察している外野席の人間はほとんどいない。世の中が変わったことを痛感し、荒涼とした気分になる。

純粋なエコノミストの議論がなく、株屋が株を売るための議論だったり、アメリカと新自由主義の神を崇め、その確信を読者に刷り込むための業界仕込みの情報発信でしかない。学者と名の付く者の意見もそうだし、ほとんど体制批判派の意見がない。金子勝とか浜矩子とかは批判派として期待されている論者だが、正直なところ、まともな批判の言論を出せておらず、対象を鋭意をもって研究していない。世論を動かす力がない。目立つのは森永卓郎程度だが、右翼も左翼も「陰謀論者」扱いにして貶下するだけで、本人も達観して諦めているのか、態度に説得力となる熱意と執念がなく浮薄だ。

経済の議論も政治の議論と同じくこの国では難しくなり、まともな問題意識を言えば言うほど(しばき隊などから)侮辱と罵倒と暴力をプレゼントされるようになった。しばき隊左翼はジェンダーとマイノリティとLGBT方面にしか興味がなく、経済の議論はノイズであり、根源的な視角からの批判や洞察は「陰謀論」に聞こえるようだ。残念ながら、この問題に詳しく熱心なのは小金を持った個人投資家ばかりである。自民党支持の。