サントリーが、安倍元首相の「桜を見る会」前夜祭にビールや焼酎、ワインなど大量の酒を無償提供していた問題で、「しんぶん赤旗 日曜版」6月6日号が新たな疑惑を報じました。
2010年代中ごろから政府・自民党は発泡酒と「第三のビール」を増税するビール類の税額一本化を検討していましたが、安倍政権は16年12月に、税額一本化を26年まで先送りすることを決めました。
酒類の税制が一本化されると、発泡酒や「第三のビール」の比率がアサヒやサッポロなどの競合他社と比べて高かったサントリーは大打撃を受けたのですが、サントリーの新浪会長は安倍首相や麻生財務相(いずれも当時)に接待攻勢を掛けて、10年先送りを勝ち取ったものと思われます。
これについて16年12月1日付の日本経済新聞は、〈ビール比率が他社より小さいサントリーにとって先送りは有利。政府の経済財政諮問会議の民間議員も務める新浪剛史社長が動いたとの噂が、まことしやかに広がった〉と報じました。
ここにきて、サントリーが「桜を見る会」の前夜祭にまで酒を無償提供していたことが判明し、こうした酒の無償提供は、新浪社長から安倍首相への“一本化見送りのお礼”だった可能性が出てきました。
共産党の山添拓参院議員がしんぶん赤旗のスクープに基づいて、3日の参院予算委の集中審議において、「(サントリーによる酒類の無償提供は)酒税変更先送りのお礼ではないかという疑念が持たれている。たんなる違法献金にとどまらない、政治を歪めた疑惑でもある。調査すべきではないか」と岸田首相に迫ったのは当然のことでしたが、岸田首相は調査を事実上拒否しました。
前夜祭にサントリーが酒を無償提供していた問題については、赤旗日曜版のスクープ後、東京新聞や朝日新聞、毎日新聞、共同通信が報道し、TVも、TBSやテレビ朝日、日本テレビが報道しましたが、そのほとんどは無償提供の事実とサントリーのコメントを伝える程度のものでした。これはサントリーが大口のスポンサーであることが関係しているものと思われます。
それ自体残念なことですが、こうしたメディアの報道姿勢のなかでもっとも露骨だったのがNHKでした。NHKはスポンサーのしがらみがないにもかかわらず、前夜祭へのサントリーによる酒の無償提供問題をずっと無視し、3日放送の『ニュース7』および『ニュースウオッチ9』で、ようやく国会での山添議員が追及した場面と岸田首相の答弁をわずか40秒間報じただけでした。
LITERAが取り上げました。
LITERAは「メディアがこの体たらくでは、またも安倍氏の疑惑は有耶無耶となり、責任もとらないまま増長を許すことになるだろう。安倍氏が首相を辞めても、問題となったメディアの忖度は何も変わってはいないのだ」と結んでいます。
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安倍元首相「桜前夜祭」へのサントリー酒無償提供は酒税見直し先延ばしの見返りだった! しかしNHKはじめメディアは疑惑を追及せず
LITERA 2022.06.04
「桜を見る会」前夜祭問題をめぐって、サントリーが安倍晋三氏側に対してビールや焼酎、ワインなど大量の酒を無償提供し、前夜祭において地元有権者らに振る舞われていた問題で、新たな疑惑が浮上している。
というのも、サントリー問題をスクープした「しんぶん赤旗 日曜版」が6月6日号で続報を掲載。サントリーが前夜祭に酒の無償提供をはじめた時期に、政府・自民党がビール類の酒税法改正を先送りしていた問題を取り上げたのだ。
まず、本サイトの既報で指摘したように、サントリーホールディングスの社長を務める新浪剛史氏は、ローソン社長時代だった第一次安倍政権のときから「安倍首相に近い経済人」として名を取り沙汰されてきた人物で、2013年に安倍政権の成長戦略づくりを担う「産業競争力会議」の民間議員に抜擢。2014年からは経済財政諮問会議のメンバーに起用された。また、2018年の「桜を見る会」前夜祭は4月20日に開催されたが、その約1週間前である4月12日に安倍首相と新浪社長は面談をおこない、さらに2019年の前夜祭が開催される1週間前である4月5日にも安倍首相と新浪社長は会食をおこなっていた。
そして、いま注目を集めているのは、2016年に政府・自民党が酒税見直しの10年先延ばしを決定した件だ。
当時、政府・自民党は税制改正の議論を進めるなかで、発泡酒と「第三のビール」を増税し、ビール類の税額一本化を検討していた。この発泡酒と「第三のビール」を増税するとなると、当時はアサヒやサッポロといった競合他社と比べて発泡酒や「第三のビール」の比率が高かったサントリーがとくに大打撃を受けることになるといわれていた。
だが、2015年10月13日に都内のホテルの宴会場で新浪会長と安倍首相、麻生太郎財務相が会合を開き、その後になって税額一本化を目指す酒税法の見直しは見送られることが決定。さらに、2016年10月1日には新浪社長夫妻と安倍首相がサントリーホールでコンサートを鑑賞し、同月24日にも新浪社長・安倍首相と麻生財務相らが懇談。そして同年12月、政府・自民党は税額一本化を2026年10月まで先送りにしたのだ。
サントリーが打撃を受けることを回避した背景に見え隠れする、新浪社長と安倍首相の蜜月─ 。実際、2016年12月1日付の日本経済新聞はこう伝えていた。
〈ビール比率が他社より小さいサントリーにとって先送りは有利。政府の経済財政諮問会議の民間議員も務める新浪剛史社長が動いたとの噂が、まことしやかに広がった。〉
安倍元首相「桜前夜祭」へのサントリー無償提供は酒税見直し先延ばしの見返りと裏工作だった?
しかし、ここにきて、たんに新浪社長が安倍首相と懇談の場などを持ってきただけではなく、安倍後援会が主催するパーティにまで酒を無償提供していたことが判明。つまり、酒の無償提供は、新浪社長から安倍首相への“一本化見送りのお礼”“10年先延ばしのための裏工作”だった可能性が出てきたのだ。
言っておくが、サントリーによる酒の無償提供は「違法な企業献金」にあたる可能性があるものだ。また、安倍側はその酒を地元有権者に振る舞っていたのだから、完全な利益供与だ。だが、酒の無償提供が“サントリーに便宜を図ったことのお礼”という背景があったとすれば、あきらかに政治の私物化ではないか。安倍氏に説明が求められるのは言うまでもない。
しかも、この新たな問題を、昨日3日の参院予算委員会の集中審議において、日本共産党の山添拓参院議員が追及。「(サントリーによる酒類の無償提供は)酒税変更先送りのお礼ではないかという疑念が持たれている。たんなる違法献金にとどまらない、政治を歪めた疑惑でもある。調査すべきではないか」と岸田文雄首相に迫った。
ところが、岸田首相は「タイミングが一致しているということで、推測に基づいて申し上げることはあってはならない」などと答弁。調査を事実上拒否したのだ。
問題が次々に浮上しているのに、闇に葬ろうとする岸田政権。いや、問題は岸田政権や説明責任をまったく果たそうとしない安倍元首相の無責任な態度だけではない。メディアの報道姿勢だ。
前夜祭にサントリーが酒を無償提供していた問題については、赤旗日曜版のスクープ後、東京新聞や朝日新聞、毎日新聞、共同通信が報道。テレビも、TBSやテレビ朝日、日本テレビが報道した。だが、そのほとんどの報道内容は無償提供の事実とサントリーのコメントを伝える程度のものだった。
さらに言えば、税額一本化先延ばし問題についても、じつは赤旗日曜版の最初のスクープが出たときからネット上ではその関連を指摘する声が上がり、「日刊ゲンダイ」が5月27日付で取り上げていた。しかし、ほとんどの大手メディアは新浪社長と安倍首相の関係を検証することもなく、ストレートニュースでお茶を濁してきた。そこには、サントリーが大口の広告主、スポンサーであることも関係しているだろう。
サントリーによる酒無償提供も、違法献金の可能性も、報じなかったNHK
そして、こうしたメディアの報道姿勢のなかでもっとも露骨だったのが、NHKだ。NHKはスポンサーのしがらみがないにもかかわらず、前夜祭へのサントリーによる酒の無償提供問題を無視。昨日3日放送の『ニュース7』および『ニュースウオッチ9』でようやく国会での山添議員が追及した場面と岸田首相の答弁を取り上げたが、その時間はわずか40秒。しかも、あくまで参院予算委員会集中審議での各党の質問のひとつとして扱っただけで、中身はこのようなものだった。
ナレーション「共産党は「桜を見る会」の前日夜に開催された懇親会をめぐって─ 」
山添議員「サントリーは『この前夜祭の開催は安倍事務所から教えていただきました。弊社製品を知っていただくいい機会だと考え、この会に協賛させていただきました』(と回答している)。安倍元総理大臣に説明し直してもらう必要がある」
岸田首相「関係者がこれを説明する、これが基本だと思います。個別の案件について私の立場から申し上げることは控えます」「いずれにせよ、少なくとも私の内閣においては『桜を見る会』を開催することは考えておりません」
なんと、たったのこれだけ。つまり、サントリーが前夜祭に4年間にわたって数百本にものぼる酒を無償で提供していたという大前提の事実はもちろん、サントリーによる無償提供が違法な企業献金にあたる可能性があることも伝えなかったのだ。当然ながら、安倍首相の秘書が前夜祭で参加者の費用を補填することが公選法違反にあたる恐れがあることを認識した上で酒をホテルに持ち込むことにより補填額を抑えようとしていた事実も、酒の寄附が政治資金収支報告書に記載がないことも伝えてはいない。
ともかく、問題点が何ひとつ視聴者に伝わるものではなく、これで前夜祭問題を取り上げたとは言えるわけがない。ようするに、いまだにNHKはこの問題をスルーしているというわけだ。
いや、それは他のメディアも同じだ。そもそも、赤旗日曜版による最初のスクープは、他社も手に入れているはずの刑事確定記録からサントリーの関与を突き止めた調査報道だった。そうしたスクープを見逃してきただけではなく、ストレートニュースでお茶を濁し、挙げ句、この問題が発覚して以降も安倍氏の説明を求めることもなく、安倍派の会合で安倍氏が防衛費増額を政府に注文したことなどを何事もなかったように取り上げてきたのだ。
メディアがこの体たらくでは、またも安倍氏の疑惑は有耶無耶となり、責任もとらないまま増長を許すことになるだろう。安倍氏が首相を辞めても、問題となったメディアの忖度は何も変わってはいないのだ。(編集部)