2016年2月3日水曜日

03- 甘利氏の「あっせん利得」疑惑をメディアは追及したくない

 マスメディアは甘利氏が大臣を辞任したことを良しとして、何故かそれ以上の追及をしようとしません。
 テレビなどでは、検事上がりの弁護士や法学部教授など政権寄りのコメンテーターを登場させて、「法的責任は問えない」、「あっせん利得処罰法では立件できない」、「同法違反に問うにはハードルが高い」などと、あたかも法的責任がないかのような説明を国民に向かって繰り返しています。
 
 政治資金規正法やあっせん利得処罰法に詳しい元東京高等検察庁検事の郷原信郎弁護士は、事案が発覚した段階で、「絵に描いたようなあっせん利得」(https://www.bengo4.com/c_1009/n_4194/ 2016.1.21)だと述べました。
 そしてテレビや新聞に政府寄りの弁護士などが登場して、「立件無理論」を唱えていることを見かねて、その代表格ともいえる高井康行弁護士の論拠を批判し、「高井弁護士の見解は、法律の条文自体を読み違えている。職務権限との関連が問題となる贈収賄罪と混同しているのではないか」と述べました。(「甘利問題、検察が捜査着手を躊躇する理由はない」 http://blogos.com/article/157932/ 
2016.1.30
 
 朝日新聞も、建設会社の告発者である一色武氏から、折角「2015年に現金15万円を53回渡したメモを持っている」という重要な証言を得ていながら、社会面に載せるなど不可解な報道の仕方をしました。
 
 日本のメディアはこの問題でも完全に政権に膝を屈していて、報道機関としての告発を避けています。そもそもが国有地を借りていた会社に2億3500万円という法外な国税が支払われたという事案です。一体どこまで腐っているのでしょうか。
 
 田中龍作ジャーナルと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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甘利疑惑「口利き」という打ち出の小づち、財源は血税
田中龍作ジャーナル 2016年2月2日     
 借地にプレハブを建てていただけなのに、移転費用として1,500万円、損傷修復費として2億2千万円を頂戴する・・・子供が満足に食事を摂れなくなっている国で、現実に起きている補償話だ。
 
 計2億3,500万円はUR(都市再生機構)発注の道路工事建設をめぐるトラブルで、URがS社に対して支払ったとされる金額である(1日正午現在でURが民主、維新両党の聴取に対して認めた数字だ)。
 URは国が100%出資する独立行政法人だ。1日、両党が行った国交省とURへの聴取で弁護士出身の階猛議員は2億2千万円という補償金額に触れ次のように追及した。
 「不法占拠の建物が対象、正当な使用権限がないところに(金額が)多過ぎはしないか…(中略)やり得、ゴネ得ではないか、公金をそんな使い方していいのか?」
 URの間下滋審議役は「私どもの算定基準に基づいた」としたうえで「心情的には理解できるが区分けはされていない」と涼しい顔で答えた。
 
 借地に建ったプレハブの損傷修復費として2億2千万円も払うのは、正気の沙汰ではない。
 口利きという「打ち出の小づち」あればこそ、小判がザクザクと出てきたのだった。S社にとって甘利大臣は打ち出の小づちだった。
 打ち出の小づちの財源は国庫。血税である。
 URは自らが明らかにしているだけでも、これまでに甘利前大臣側と12回も面談している。
 内訳は甘利氏の地元事務所で6回、議員会館で4回、UR本社で1回だ。横浜市内の居酒屋も1回ある。
 飲み食いしたのは甘利事務所の秘書2人とURの総務部長、国会連絡班の職員ら3人、計5人だ。
 2万6,592円の領収書は、宛先がURとなっている。なぜURは我々の血税で甘利事務所の秘書さんたちを もてなした のだろうか?
 
 法外な補償金に加えて、居酒屋の代金まで出費させられる納税者はたまったものではない。
 「S社は甘利大臣側にワイロを贈る」→「甘利大臣側はURを動かす」→「URはS社に法外で巨額な補償金を払う」→「補償金の一部は甘利大臣側のワイロとなる」・・・
 悪人と悪代官と小役人の間でカネが回るシステムだ。繰り返し言うが財源は血税である。
 国民の老後を株につぎ込むGPIF(年金積立金管理運用・独立行政法人)とて同じシステムだ。
 
 URによれば、S社はさらなる補償を要求しているという。建設現場に埋まっている産業廃棄物の処理ではないかと見られている。補償金額は途方もなく膨らむこともありうる。
 この日の聴取でURは東京地検が「職員から事情を聞きたい」と要請してきたことを認めた。
~終わり~
 
資料は“黒塗り”だらけ 甘利事務所かばうURの苦しい弁明
日刊ゲンダイ 2016年2月2日
 甘利前大臣の金銭授受問題で、都市再生機構(UR)が1日、職員と甘利事務所秘書の計12回にわたるやりとりの一部を公表した。
 
 国交省で「記者レク」を行ったURの中瀬弘実総務部長は、「甘利事務所の秘書から、補償金の上乗せを示すような発言はなかった」と調査結果を報告。ところが、やりとりを示したメモの多くは黒塗りされ、集まった記者からは「これじゃ分からない」「説明不足だ」と怒りの声が上がった。
 総勢50人ほどの記者の怒りを買った中瀬部長は「口利きがあったのではないか」と問われても、「ない」の一点張りだった。しかし、その根拠が分からない。しかも、怪しいにおいがプンプンだ。
 
 例えば、2015年10月9日のメモには、県道工事に絡む建設会社への移転補償について、UR職員3人と甘利事務所の秘書の会話が記されている。秘書は「少しイロを付けてでも地区外に出ていってもらう方がいいのではないか」と発言その後にワザとらしく、「圧力をかけて金が上がったなどあってはならない」と取り繕っていたが、こういうのを“圧力”というのである。いくら甘利氏の秘書でも記録が残る場面であからさまなことを言うわけがない。しかし、中瀬部長は「『口利き』が何を指すのかよく分からない」と苦しい言い訳に終始した。どうしても甘利事務所をかばいたいのがミエミエだった。
 
 記者レクの後に、国会内で開かれた「甘利大臣追及チーム」に出席した民主党の山井和則議員はこう言う。
「UR側の話は週刊誌報道とも少しずつ食い違いが出てきており、不可解です。そもそも、甘利事務所の秘書と12回も会っておきながら、『口利きがない』は通りません。黒塗りされているとはいえ、メモを見ると、UR職員が建設会社との補償金額を具体的に挙げ、第三者であるはずの甘利事務所と交渉していることがうかがえます。これで『あっせん利得処罰法』に抵触する可能性も出てきました」
 
 逃げ切れると思ったら大間違いだ。そもそも甘利事務所とURは共犯者。“口利きはない”なんてアホらしいったらありゃしない。 
 
 
東京地検がUR職員を聴取開始 甘利氏“口利き”疑惑の行方
日刊ゲンダイ 2016年2月2日
 汚いカネを受け取りながら、「政治家としての美学」――などと、美談仕立てで大臣を辞任した甘利明前経済再生相。本人は、大臣を辞めたことで、このまま捜査の手から逃げ切るつもりだ。しかし、特捜部は捜査に着手するという。この先、事件解明はどう進むのか。
 
■12回の面談と2億2000万円の補償金
「東京地検 UR職員から事情聴取へ 甘利氏献金疑惑」――。東京地検特捜部は、近く「都市再生機構」(UR)から事情聴取し、違法性の有無を見極めるという。URを事件解明の突破口にするつもりのようだ。1月31日の読売新聞がスクープした。
 疑惑の構図は、単純だ。URとトラブルになっていた千葉県の建設業者が、交渉が有利になるように甘利事務所に“口利き”を依頼し、建設業者は甘利事務所に500万円、甘利氏本人に計100万円の現金を渡したというもの。
 2013年5月に“口利き”を依頼した後、交渉は急展開し、3カ月後の8月、URから業者に2億2000万円の補償金が支払われている。建設業者は“見返り”として8月20日、甘利事務所に500万円、甘利氏には11月14日と翌年2月1日、それぞれ50万円を渡している。
 
 焦点は、甘利氏サイドがURに対して、実際に“口利き”したのかどうかだ。URは「補償金額の要請はなかった」と“口利き”を否定しているが、2億2000万円という巨額な補償額について会計検査院が問題視し、検査に入っている状況だ。
 
 事件に詳しいジャーナリスト・横田一氏がこう言う。
「URが捜査のカギを握っているのは、間違いないでしょう。甘利事務所はURの職員と12回も“面談”している。恐らくUR職員は、甘利事務所から何を言われたか、詳細なメモを上司に上げているはずです。検察が職員を聴取し、家宅捜索すれば、真相解明に近づくはずです。見逃せないのは、2億2000万円の補償金が入った後も、甘利事務所はUR職員と頻繁に“面談”していることです。12回の面談のうち、11回が補償金が入金された後です。週刊文春によると、建設業者は2億2000万円とは別に、URと30億円規模の補償交渉がトラブルになっていて、UR職員は甘利事務所に『これ以上、甘利先生のところが深入りするのは、良くないと思います』とアドバイスしたといいます。2億2000万円の補償金に甘利事務所はどう関与したのか、30億円の補償交渉で圧力をかけたのか、URはすべて分かっているはずです」
 
 この先、捜査はどう進むのか。元検事の郷原信郎弁護士はこう言う。
「気になるのは、この時期に読売新聞が〈東京地検 UR職員から事情聴取へ〉と報じたことです。国民向けに“捜査しています”というアリバイ作りの可能性もある。本気だったら、水面下で進めるものです。でも、ここで本気で捜査し、真相を解明しないと、特捜部は国民からの信頼を回復できない。丹念に捜査すれば、立件は不可能ではないはずです」
 
 URが12回も甘利事務所との“面談”に応じたのは、民営化されることを恐れたからだとみられている。東京地検は、甘利氏と“裏取引”したという解説も流れているが、国民の期待に応えて徹底捜査しないとダメだ。