2016年2月25日木曜日

25- 安倍政権が目論むミサイル防衛拡充計画

 北朝鮮のミサイルが日本を標的にしたものでないことは国際的な常識ですが、それをあれほどに大騒ぎした安倍官邸には当然それなりの理由があり、政権は弾道ミサイル防衛(BMD)の構想を加速させようとしているということです
 日刊ゲンダイと東京新聞が、安倍政権によるミサイル防衛計画に対する莫大な血税の投入ぶりを取り上げました。 
 
 弾道ミサイル防衛(BMD)準備を始めた2004年度以降、すでに想定した2倍規模の予算が投入されて、当初は「8000億円から1兆円程度」としていたものが、16年度予算案を含めると累計で1兆5800億円にも上り、今後もさらに膨らんでいくということです
 
 日本は3種類の迎撃ミサイルを装備するというのですが、それぞれの装備が具体的にどのようなものなのかは普通の人たちにはさっぱり分かりません。分かるのは1基、1基が莫大な買値(全て米国から)であって、その数量にも結局限度がなさそうなこと、さらに「スパイラル開発」と呼ばれ、順次能力向上を図る手法で開発が進むため、数が増えなくても費用が上乗せされ、それだけで毎年度数百億~千億円超の予算がかかるというような「珍妙な方式」になっているということ、などです。
 売る側の米国にとってはこれほど旨い話はありません。しかも安倍官邸は、当面は止めどなく買い増しをする勢いです。
 
 そしてその挙句が、プロに言わせれば「費用対効果は大いに疑問」だということです。つまりそれらのミサイルで本当に迎撃できるのかは分からないということです。
 迎撃ミサイルの構想に対しては、昔から「機関銃の弾丸をそれよりもずっと遅いピストルの弾で防げるのか?(命中させられるのか?)」という基本的な疑問が呈されていますが、いまだに納得できる説明は得られていません。
 そんなことを何も考えずに、血税を湯水のごとく使って買え揃えようとすることは、一刻も早く止めさせなければなりません。
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北の暴走を口実に 安倍政権が目論むミサイル防衛4兆円計画
日刊ゲンダイ 2016年2月24日
 北朝鮮の暴走を口実に、安倍官邸が弾道ミサイル防衛(BMD)を加速させている。政府が準備を始めた2004年度以降、すでに想定の2倍規模の予算を投入。08年4月の国会答弁で「8000億円から1兆円程度」としていたBMD整備費が、16年度予算案を含めると累計で1兆5800億円にも上り、さらに膨らむ公算大なのだ。
 
 現状のBMDは海上自衛隊のイージス艦4隻に搭載したSM3ミサイルと、全国に34基展開する地上配備型のPAC3ミサイルの2段構え。再登板した安倍首相はBMD強化に前のめりで、SM3搭載のイージス艦を8隻体制に増やすことを決めた。拍車を掛けているのが北朝鮮の事実上のミサイル発射で、米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」の導入まで検討しているのだ。
 
 軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう言う。
 THAADはSM3とPAC3の中間的な位置付けですが、導入によって防衛力が何%アップするというのか。費用対効果は大いに疑問です。08年に3基購入したUAEは70億ドル(約7800億円)を支払ったとされています。国土や海岸線、中核都市の数からいって、日本に配備するなら少なくとも5基。それだけでザッと120億ドル(約1兆3400億円)になります。THAADの運用には1基18億ドル(約2000億円)といわれるXバンド・レーダーが必須。現在は空自の車力基地(青森)と経ケ岬基地(京都)にしかないので新たに3基が必要になり、6000億円ほどになります」
 
 実現すれば、BMD関連費は当初予算の4倍強。消費増税を強いておきながら、防衛費には大盤振る舞いなのだから考えられない。当事者の自衛隊からも嫌がられているというからタチが悪い。
 「THAADの引き受けをめぐって陸自と海自のさや当てになりそうです。どこも人手が足りず、任務が増えるのを嫌がっている。SM3はイージス艦と一体なので海自扱いになり、PAC3は前身のPAC2が基地防衛を目的としていたので空自に回された経緯があるのです」(防衛関係者)
 
 相次ぐ閣僚らの失言などで国会審議はモタついているが、3月1日の衆院本会議で16年度予算案の採決が決まった。ドサクサに紛れて通したら、血税がまたムダになる。
 
 
ミサイル防衛費15倍超 政府想定超え 累計1兆5800億円 
東京新聞 2016年2月23日
 北朝鮮の脅威に備えた弾道ミサイル防衛(BMD)に関し、政府が整備を始めた二〇〇四年度以降、想定を上回る規模の予算を投じていることが防衛省への取材で分かった。
 一六年度予算案を含めると、十三年間のBMD関連費用は累計で約一兆五千八百億円。北朝鮮が人工衛星と主張する事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、安倍政権は新たなミサイル迎撃システムの配備検討を表明したが、導入すればさらに費用が膨らむことになる。 (横山大輔)
 
 政府は〇八年四月の国会答弁で、BMD整備費を全体で「八千億円から一兆円程度を要する」と説明していた。約一兆五千八百億円という累計額は既に一・五~二倍に達する。
 現在のBMDは、海上自衛隊のイージス艦四隻に搭載したSM3ミサイルと、全国に三十四基を展開する地上配備型のPAC3ミサイルの二段構えで弾道ミサイルを迎撃する。
 BMDは「スパイラル開発」と呼ばれ、順次能力向上を図る手法で開発が進むため、数が増えなくても費用が上乗せされる。実際、高性能レーダーなどの関連装備費や日米共同の開発費も加わり、毎年度数百億~一千億円超の予算がかかっている
 特に安倍政権ではBMDの強化を打ち出し、SM3搭載イージス艦を八隻体制に増強することを決定。一五、一六年度のBMD関連費は単年度でそれぞれ二千億円を超えた
 
 北朝鮮の事実上のミサイル発射を受け、さらに配備を検討するのは、米軍の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」。迎撃高度がSM3とPAC3の間で、導入すれば三段構えの体制になる。
 費用は米政府との協議次第だが、少なくとも数千億円との指摘がある。製造元の米ロッキード・マーチン社によると、アラブ首長国連邦に二基売却する概算契約は約二十億ドル(二千三百億円)だった。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は、北朝鮮による弾道ミサイル発射前は「国民の安心・安全のための対応策はしっかりと整えた」と強調したが、発射後は「国民を守るため検討を加速する」と新システム導入に意欲を示した。
 
際限なく競争続く
 元航空自衛隊空将補でNPO法人「国際地政学研究所」の林吉永事務局長の話
 弾道ミサイル防衛能力を向上させれば、相手はさらにかいくぐるミサイルを開発する。巨費を投じ新システムを導入しても「穴」は出る。際限ない競争が果てしなく続き、歯止めが利かない「安全保障のジレンマ」に陥る
 安倍政権は安全保障関連法の議論で米国との「同盟強化」をあれほど強調しながら、日本を狙う弾道ミサイルに米軍とどう迎撃体制を組むか全く説明していない。
 国民に知らせず、巨額の予算を投じることは許されない。
 
<高高度防衛ミサイル(THAAD)> 
米軍がミサイル防衛(MD)の一環として運用する地上配備型迎撃ミサイル。
弾道ミサイルが大気圏外を飛んでいる間に迎撃し損なった場合に備え、大気圏内に再突入してくる高度150キロほどとされる段階で撃ち落とすとしている。
PAC3も地上配備型だが、着弾直前の高度十数キロで使われる。