天木直人氏が、「年金制度は、年金積立開始時期と年金受給開始時期の間に、何十年もの大きな年月の差があるので、積立金はどんなふうに使っても問題になることはない」と、年金制度をつくった厚生官僚のリーダーがうそぶいたと言う話を伝えました。
この話は以前に武田邦彦氏も、同じように厚生省のトップが「年金積立開始時期と受給開始の時期とでは貨幣価値が変わっているから、無駄遣いしても構わない」と述べたと語っていましたので真実なのでしょう。これは犯罪です。
それはそれとして、「将来世代が受け取る年金水準を確保するため、高齢者への給付を抑える仕組みを2018年度から強化する」という言い分は、全く理屈に合わないものであることはよく認識すべきです。
いま政府がするべきことはそんな理不尽な口実で年金支払い額を下げることではなくて、巨額の損失を出した責任を取ることでしょう。
いま政府がするべきことはそんな理不尽な口実で年金支払い額を下げることではなくて、巨額の損失を出した責任を取ることでしょう。
天木氏のブログ:「もはや腹も立たない安倍政権のTPP批准の強行」も併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この年金制度改革法案は噴飯物だ
天木直人 2016年2月26日
きょう2月26日の東京新聞が書いた。政府が今国会に提出する年金制度改革関連法案の全容が25日わかったと。
私がその記事で注目したのは次のくだりだ。
すなわち、「将来世代が受け取る年金水準を確保するため、高齢者への給付を抑える仕組みを2018年度から強化する」となっている。
とんでもない年金制度改悪だ。自分が高齢者になるから怒るのではない。これはいかさまだから指摘するのである。
将来世代と高齢者たちの間の年金格差をなくせ、というのは、一見もっともに聞こえる。
しかし、年金制度の決定的なからくりは、年金支払い開始時期と年金受給開始時期の間に、何十年もの大きな年月の差があることにある。
年金制度をつくった厚生官僚がこううそぶいたと言う話は、年金積立基金が厚生官僚の無駄遣いに食い物にされている事が話題になった時に、暴露されたことだ。
はたして何人の国民がそれを知っているかだ。つまり年金を支払う時はずっと先の事だから、今使える金は余るほどある、だから何に使ってもかまわない、どんどん使えと。
そうなのだ。
年金積立金は、当面の年金支払いには何の支障もないほど巨額であり、いまでも余っている。
だからこそ株の運用などという無駄遣いが許されるのだ。そして大損をしても当面の年金支払いには何の支障もない。だから、実は高齢者の年金支払いなどは減らす緊急必要性はどこにもないのだ。
その一方で、若い世代に年金支払いを開始するのは数十年先だ。しかも年金は容赦なく若者から取り立てている。
そして、年金支払いはここ10年がピークだ。一番人口の多い団塊の世代はやがて消滅し、あとは年金支払い額は減る一方だ。
予算はゆとりがでてくる。
年金積立の運用、管理さえまともに行えば、高齢者の年金抑制など行わなくても、そして世代間格差なしに、十分可能なのである。
若者が将来年金を受け取れなくなるという話は、いまの高齢者の年金支払い負担とは、何の関係もない話なのだ。
年金制度改革という国家的詐欺が再び2018年度から大手を振って行われようとしている。
年金制度の抜本的改革がいつまでたっても行われないのは、政治の怠慢であり、官僚の作為的な国民への裏切りである。国民の暮らしは、政治家と官僚のために苦しくさせられている(了)
もはや腹も立たない安倍政権のTPP批准の強行
天木直人 2016年2月26日
安倍政権はTPP批准の為の関連法案を一括して提出して審議を急ぐらしい。
安保法の時と同じだ。まとめて押し切れば、野党の追及がかわせるといわんばかりだ。
本来なら、とんでもない暴挙だと怒るところだ。
しかし米国大統領選挙がその怒りを笑いに変えてくれた。
躍進を続ける共和党候補のトランプ氏がTPPでも吼えているらしい。
「いま提案されているTPPはゴミ箱に放り込む事を皆さんに誓約する」と。
トランプ氏が共和党候補になるとは限らない。たとえなっても民主党候補に勝って米国大統領になるとは限らない。
しかし、民主党の最有力候補で、米国大統領になる可能性が最も高いとされているクリントン候補も、ついに言い出した。
中国や日本は通貨の価値を下げて輸出の価格を人為的に高くしていると。
TPPは賃金引き上げや安全保障の強化につながらないから反対だと。
共和党も民主党も、いや他の候補ですら、皆TPPに反対だ。
これでどうやって米国でTPPが批准されるというのか。
米国で出来ないものを日本が批准してどうする。もはや国会のTPP審議は、その事だけを追及すればいい。
そう思えば、安倍政権がTPP関連法案を一括して審議したところで腹も立たない。
かってにやってろ、と一笑すればいい(了)