高市総務相が、2月8日の衆院予算委で「放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性」に言及したことに対して、公共放送であるNHKはその事実を報道することすらしませんでしたが、民放はキチンと高市発言を取り上げて批判を展開してきました。
そうしたなかで10日、民放労連は「高市総務相の停波発言に抗議し、その撤回を求める」とする声明を出しました。
その中で、「番組の内容を理由にして放送の業務停止などの行政処分を行うことは、表現の自由を保障する憲法上許されない」もので、「こうした見解はBPOの意見書や国会の参考人招致などで繰り返し表明されている」のに、いまだにその指摘を受け入れずに「まともな法解釈ができないのであるなら大臣を務める資格はなく、高市大臣が自ら進退を明らかに」するべきであると述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
民放労連声明
高市総務相の「停波発言」に抗議し、その撤回を求める
2016年2月10日
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員長 赤塚オホロ
高市早苗総務相は2月8日の衆院予算委員会で、政治的公平が疑われる放送が行われたと判断した場合、その放送局に対して「放送法の規定を順守しない場合は行政指導を行う場合もある」としたうえで「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と述べ、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。昨日の同委員会でも「法律に規定された罰則規定を一切適用しないとは担保できない」と、再び電波停止の可能性を答弁したと伝えられる。
昨年来、安倍首相をはじめ閣僚や自民党首脳などから、「政治的に公平であること」などをうたう放送法4条の「番組編集準則」を根拠に、放送局に対して行政指導を行うことを正当化する発言が相次いでいる。しかし、大多数の研究者・専門家は「番組内容に関する規律は放送事業者の自律に基づくべきで、番組編集準則違反に対して電波法の無線局の運用停止や放送法の業務停止などの行政処分を行うことは表現の自由を保障する憲法上許されない」との意見であり、こうした見解はBPOの意見書や国会の参考人招致などで繰り返し表明されている。現に、番組内容を理由に政府・総務省が放送局に対して不利益となる処分を行ったことはこれまで一件もない。
それを、電波法の停波規定まで持ち出して放送番組の内容に介入しようとするのは、放送局に対する威嚇・恫喝以外の何ものでもない。憲法が保障する表現の自由、放送法が保障する番組編集の自由に照らして、今回の高市総務相の発言は明らかな法解釈の誤りであり、速やかな撤回を求める。高市総務相は昨年11月の衆院予算委員会(閉会中審査)でも放送法174条の業務停止条項に言及しているが、この条文は地上波放送局(特定地上基幹放送事業者)には適用されないことが同法に明記されており、法解釈の意図的な曲解と言わざるを得ない。民主主義のもっとも重要な基盤と言うべき表現の自由に係って、まともな法解釈ができない政治家であるなら大臣を務める資格はなく、私たちは高市大臣が自ら進退を明らかにされることを求める。
今回のような言動が政権担当者から繰り返されるのは、マスメディア、とくに当事者である放送局から正当な反論・批判が行われていないことにも一因がある。放送局は毅然とした態度でこうした発言の誤りを正すべきだ。また、このような放送局への威嚇が機能してしまうのは、先進諸国では例外的な直接免許制による放送行政が続いていることが背景となっている。この機会に、放送制度の抜本的な見直しも求めたい。 以上