フランス憲法でいま出されている「非常事態宣言」の根拠は憲法ではなく、1955年に制定された「緊急状態法」という法律です。
これによる非常事態宣言の効果は12日間のため、それを超える場合には議会の承認を得て法律を制定する必要があります。宣言は昨年11月25日に3ヶ月延長されましたが、それが切れる2月25日にさらに3ヶ月延長されるということです。このように予め期間が限定されていても、実施する期間はどうしても延長されがちになります。
一方自民党の考えている非常事態条項は最初から憲法に盛り込むもので、きわめて強力であり期間の限定もありません。
「非常事態宣言」は閣議決定だけでいつでも出せて、その間は内閣に全権が委任され、その状態は内閣が自ら終了させるまで無期限に持続されます。その間は基本的人権などは戦時下と同じようにいくらでも無視されます。要するにいつでも内閣による独裁政治が可能になるわけで、考えただけでも恐ろしいことです。
田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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国家非常事態宣言 延長 仏オランド政権よりはるかに怖いアベ政権
田中龍作ジャーナル 2016年2月10日
日本にとって対岸の火事ではない。フランスの国家非常事態宣言がさらに3ヵ月延長される見通しだ。
国会で承認されれば「裁判所による令状なしでの家宅捜索」「デモ集会の禁止」が6月まで続くことになる。政権や警察はテロの取締りを口実に好き放題ができるのである。
昨年末、テロ攻撃を受けたフランスに、田中は「自民党改憲草案」を携えて飛んだ。アベ官邸がオランド政権の非常事態宣言をどのように利用するのかを、この目で見るためだった。
「通信傍受法の強化」「ネット報道の検閲」そして「憲法改正」を目指すオランド政権。フランスはアベ官邸が真似たいことの宝庫だった。
令状なしの家宅捜索は「思想」「態度」だけで可能だ。日本がこれにならえば「田中龍作は危険思想の持ち主」というだけで、拙宅に警察官が土足で踏み込むことになる。
フランスは地中海に空母を派遣したが、日本は集団的自衛権を初発動させて南シナ海に自衛艦を出すのだろうか。
自民党改憲草案98・99条の緊急事態条項は、フランスよりもはるかに怖い。
フランスの国家非常事態宣言は国会の承認が必要だが、日本(自民党改憲草案)の場合、首相が閣議にかけさえすれば「緊急事態」を宣言できるのだ。
緊急事態宣言下では、内閣は法律と同じ効力を持つ政令を発することができる。何人もこの政令に従わなければならない。ナチスの全権委任法と同様である。
念の入ったことに自民党改憲草案は、現行憲法の最高法規である基本的人権(97条)を削除してある。完璧といってよいまでの独裁体制を敷けるのである。
非常事態宣言下では衆議院の解散はない。議会でひっくり返すこともできなくなるのだ。
「テロとの戦争は永遠に終わらない」。こんな口実でアベ首相は緊急事態宣言を無期限に続けることになるだろう。 ~終わり~