2016年2月5日金曜日

子どもの貧困対策 抜本的な政策転換が急務

 徳島新聞としんぶん赤旗が社説で子どもの貧困対策の貧弱さを取り上げました。
 
 徳島新聞は、貧困家庭で暮らす子どもの生活支援政府が取り組みを強化するとはいうものの、ひとり親世帯の半数以上が子どもは1人なのに、支援策では子どもが1人の場合を対象外としているのはおかしいとし、扶養手当の増額に充てる予算は僅かに83億円で、低所得の年金受給者に給付する費用3,600億円の1/40下に過ぎないと批判しています。
 
 しんぶん赤旗は、子どもの貧困率06年14・2%、約7人に1人であったのに、昨年発表された最新数値(12年)では16・2%、約6人に1人に悪化(拡大していると指摘し、13年に「子どもの貧困対策法」成立しているのにもかかわらず、安倍政権は同法の具体化にすら真剣に取り組んでいないと批判しています。
 
 現状のまま放置すれば、現在15歳の子どもの1学年だけでも国に及ぼす経済的損失は2兆9千億円に達すると推計されています。
 国は一刻も早く改善に努めるべきです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説子どもの貧困対策  もっと手厚い支援がいる  
徳島新聞 2016年2月4日 
 貧困家庭で暮らす子どもの生活支援へ、政府が取り組みを強化する。
 
 ひとり親世帯に支給する児童扶養手当の増額や、子どもが多い世帯の保育料負担の軽減などが柱だ。
 だが、今回の支援策は、子どもが1人のひとり親世帯には恩恵がほとんどないなど、対象が限られている。貧困解消に向けた取り組みとしては不十分と言わざるを得ない。
 
 親の貧困が子どもに受け継がれる「貧困の連鎖」は断ち切らなければならない。政府は、もっと手厚い支援を行うべきである。
 扶養手当の増額は、ひとり親で子どもが2人以上いる世帯への支給を現行の2倍にするものだ。第2子は月額5千円を最大1万円に、第3子以降は3千円から最大6千円に引き上げる。
 第2子への加算引き上げは36年ぶり、第3子以降は22年ぶりだ。長く放置されてきた経済的支援の拡充がようやく実現する。
 ただ、もともとの支給額は1人分の食費にも足りない水準である。倍増とはいえ、十分でないことは明らかだ。
 
 こうした生活費だけでなく、就労支援に至るまで切れ目なく貧困世帯を後押しする施策を政府は打ち出した。
 ひとり親世帯の親が安定した収入を得られるよう、看護師などの資格を取るための支援を手厚くする。専門学校などに通う場合は、月額最大10万円の支給期間を延長する。
 保育料負担の軽減は、低所得の多子世帯が対象である。1人目の年齢など現行制度にある条件を外し、3人目以降の子どもは幼稚園などの保育料を全て無料とするものだ。
 だが、支援策の実効性には疑問符が付く。ひとり親世帯の半数以上が子どもは1人なのに、支援策の多くは2人以上の子どもを持つ世帯向けだからだ。
 
 予算の規模も小さ過ぎる。今回の扶養手当の増額に充てる新年度予算は83億円だ。一方、低所得の年金受給者に1人3万円を給付する費用は、1年限りとはいえ40倍以上の3600億円にも上る。
 子どもと高齢者の支援で、なぜこうも力の入れ具合が違うのか。
 
 子どもの貧困は深刻さを増している。平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の割合(子どもの貧困率)は、2012年時点で16・3%に達した。ひとり親世帯では50%を超える。賃金の安い非正規で働く親が多いためだ。
 民間の推計では、これを放置すると、現在15歳の子どもの1学年だけでも経済的損失は2兆9千億円に達する。国の支援で高校、大学への進学率を上げた場合と、上げなかった場合の生涯賃金の差だ。ほかの学年も加えると、損失はどれだけ膨らむのだろうか。看過できる額ではない。
 子どもへの投資は国の未来への投資でもある。政府は本腰を入れて貧困解消に取り組まなければならない。
 
 
(主張子どもの貧困対策 抜本的な政策転換が急務だ
しんぶん赤旗 2016年2月3日
 貧困と格差がいっそう拡大しているなかで、貧困打開に真剣に向き合わない安倍晋三政権の姿勢が浮き彫りになっています。社会問題になっている子どもの貧困についても、安倍政権の対策は一人親世帯への経済的支援の一部強化などにとどまり、根本的な打開策を打ち出していません。3年前の国会では、生まれ育った環境で子どもの将来を左右させてはならないと「子どもの貧困対策法」が全会一致で成立しています。子どもの貧困解決へ国の責務などをうたった同法にてらしても、安倍政権の姿勢はきわめて問題です。
 
悪化の一途の「貧困率」
 親の失業や低収入、病気、離婚、死別など家庭の経済状況の悪化でもたらされる子どもの貧困は、日本では年々深刻になっています。
 
 国の貧困の実態を示す国際的な指標に「相対的貧困率」があります。可処分所得などをもとに、生活が支えられるぎりぎりの「貧困ライン」を計算し、それ以下の所得しかない人の割合を示す数値です。日本政府は2009年に初めて公式に相対的貧困率を発表しましたが、「子どもの貧困率」(06年)は14・2%、約7人に1人でした。当時、経済協力開発機構(OECD)諸国のなかでも最悪水準に位置しているとして大問題となりました。その後も悪化傾向を続け、昨年発表された最新数値(12年)では子どもの貧困率は、16・3%、約6人に1人へ拡大しています。事態をここまで深刻化させた歴代政権の責任が、改めて問われます。
 
 国民全体の貧困率そのものが悪化しており、貧困解決は社会全体の課題であることは当然ですが、貧困を次世代に連鎖させないという点で、子どもの貧困打開は待ったなしの課題として政治に迫られていることは明らかです。
 
 貧困問題解決に取り組む市民らの運動を背景に、13年に成立した「子どもの貧困対策法」は、事態打開の第一歩となる法律です。貧困の基本概念の定義をしていないなど不十分さはありますが、「貧困の状況にある子どもが健やかに育成される」環境整備や「教育の機会均等を図る」ことを目的に掲げ、子どもの貧困対策の総合的な策定、実施にたいする国・地方自治体の責務などを明記しています。
 ところが安倍政権は、同法の具体化にすら真剣に取り組んでいません。法律が政府に作成を義務付けた「対策大綱」の閣議決定(14年)は大幅に遅れたうえ、その中身も実効性が乏しい従来型です。
 
 関係者が強く求めた貧困率削減の「数値目標」の設定はされず、世界の多くの国が採用している返済不要の「給付制奨学金」導入も見送られました。こんな後ろ向きの姿勢では、事態を打開することはできません。「1億総活躍社会」対策のなかで一人親世帯支援を盛り込みましたが、不十分な中身です。実効性ある「子どもの貧困対策」をつくるためにも「大綱」の見直し、再検討も必要です。
 
暮らし破壊加速をやめよ
 安倍政権は発足以来、子どもの多い世帯ほど打撃となる生活保護費削減などを強行してきました。労働者派遣法改悪などの雇用破壊は、親の低賃金・不安定雇用を加速させ、子どもの貧困を拡大させる逆行です。貧困と格差を広げる安倍政治の大本をただし、国民の暮らしを最優先にした経済政策への転換が急がれます。