2016年2月9日火曜日

北の人工衛星ロケットを脅威だとする政府とマスコミ

 2月7日9時半に、北朝鮮は地球観測衛星を載せたロケットを打ち上げ、観測衛星と最終段のロケットは宇宙軌道に乗ったということです。
 日本政府は事前にNHKなどに繰り返し報道させながら、ロケットの軌道下に最も近い沖縄に迎撃ミサイルPAC3を、また軌道下の海上には観測用のイージス艦を配置しました。それはあたかも沖縄に向けて飛ばされたミサイルを撃ち落とすためという雰囲気でしたが、PAC3にそんな性能があるとはとても思えません。ピストルの弾で機関銃の弾丸を撃ち落とすようなものともいわれています。
 
 そしてロケットが打ち上げられると各TVは一斉に画像つきでその様子を報じ、NHKなどはあらかじめ準備していたコメンテータに解説をさせていました。そして〝人工衛星の打ち上げロケット” ではなくて、「事実上の弾道ミサイルの発射」という言葉で完全に統一されていました。
 政府筋の表現をそのまま忠実に踏襲するというマスメディアの驚くべき足並みの良さでした。
 
 確かに国連安保理は北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験を禁止する決議をしていましたが、それは果たして正当なことだったのでしょうか。まして人工衛星ロケットの発射を禁じるいわれはあるのでしょうか。
 そのことは北朝鮮が恐るべき独裁者によって暴政が行われている国であり、かつては日本人を大量に拉致した犯罪国家であることとはまた別の問題です。
 
 事実を見れば、予め公表された軌道に沿って人工衛星ロケットが発射されたということなのに、あたかも日本に向かって発射された弾道ミサイルでもあるかの如くに、政府を先頭に、国中のマスメディアが大騒ぎするのはどこかおかしくはないでしょうか。
 安倍政権が北朝鮮のこの「行為」を「好餌」とばかりに危機を煽り、メディアが一斉にそれに『付き従う』という構図が余りにも明瞭で空恐ろしいほどです。
 これではいつの日にか、もしも南シナ海で日本と中国の間で衝突があった場合、一も二もなく政府の口車に乗って(=メディアの煽りに乗って)国中が一気に「重大事態」に突入してしまいそうです。
 
 この度の安倍首相の突出した北朝鮮非難を見るにつけても、この人物には果たして拉致問題を解決しようという気持ちがあるのか疑われます。もしも人並みにあるというのであれば分裂気質を疑ってしまいます。
 
 北朝鮮による日本攻撃の危険を叫びたいというのであれば、北には10年以上も前から日本を射程範囲に入れたミサイルが数百基も保有されているといわれています。しかし実際には何も起きませんでした。それが現実です。
 
 今回の日本の反応の異常さを的確に批判した櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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放射性物質を放出し続ける原発の残骸より
衛星を軌道に乗せた「ミサイル」を脅威だというマスコミ    
櫻井ジャーナル 2016年2月9日
 2月7日に朝鮮の国家宇宙開発局は地球観測衛星「光明星-4」号を軌道に乗せることに成功したと発表した。衛星を軌道まで運んだのは、外務省の発表によると、『「人工衛星と称する弾道ミサイル』。マスコミはこの表現をそのまま使ったり、「事実上の弾道ミサイル」と表現している。
 
 ロケットとミサイルは基本的に同じものだが、違いもある。ロケットは衛星を周回軌道に乗せるために一定以上のスピードを出す必要があるが、兵器としてのミサイルは爆弾を目的地へ落とすことが目的なのでロケットのような加速は必要なく、通常の衛星が周回する低地球軌道よりはるかに遠い高度を飛行する。もし朝鮮が衛星を軌道に乗せたとするならば、ロケットと呼ぶべきである。『「人工衛星と称する弾道ミサイル』、あるいは「事実上の弾道ミサイル」といった表現は正しくない。
 
 こんなものが脅威だと言って大騒ぎするなら、放射性物質を垂れ流して太平洋を汚染、廃炉まで数百年は必要だと言われる東電福島第一原発のことをもっと騒ぐべきであり、原発再稼働のような無謀なことも危険だと叫ぶべきである。福島にある原発の残骸の方が日本人にとってはるかに脅威だ。
 
 また、巨大企業の利益を守るため、国が健康、労働、環境など人びとの健康や生活を守れなくするという次元のとどまらず、日本の法体系を破壊するTPP(環太平洋連携協定)に対する反対キャンペーンも展開しなければならない。
 
 TPPは巨大企業という「私的権力」に国より強い力を持たせる仕組みで、1938年4月29日にフランクリン・ルーズベルト米大統領が語ったファシズムの定義に合致する。つまり、TPPは環太平洋をファシズム化する協定だ。
 
 勿論、腐敗した西側メディアがそうしたことをするはずはない。支配層の意に沿うプロパガンダを展開するだけだが、最近は腐敗の度合いが進み、「言論機関」や「ジャーナリスト」を装うこともなくなった。これは日本だけの問題ではない。
 
 もし今回の打ち上げに使ったロケットを弾道ミサイルだと言いたいなら、日本が開発を進めていたLUNAR-Aもそう表現しなければならない。M-Vを使って探査機を打ち上げ、月を周回する軌道に入った段階で母船から観測器を搭載した2機の「ペネトレーター」を発射することになっていたが、これは「MARV(機動式弾頭)」の技術そのものだ。
 
 1991年にソ連が消滅した直後、日本は秘密裏にSS-20の設計図とミサイルの第3段目の部品を入手し、ミサイルに搭載された複数の弾頭を別々の位置に誘導する技術、つまりMARVを学んだと言われているが、これを使っているのだろう。
 
 LUNAR-Aの計画では、地震計と熱流量計が搭載されたペネトレーターを地面に突き刺し、2メートル前後の深さまで潜り込ませることになっていた。その際にかかる大きな圧力に耐えられる機器を作るために必要な技術があれば、小型のバンカー・バスターを製造できる。
 
 実際、この計画は弾道ミサイルの開発が目的だと国外では見られていた。日本がアメリカの一部勢力と手を組んで核兵器を開発していることは情報機関の常識だ。