「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人である植草一秀氏が、22日に行われたTPP違憲訴訟の第3回口頭弁論の様子を伝えました。
第3回口頭弁論では3人の意見陳述によって、TPPが日本人の基本的人権を侵害し、日本の国家主権を侵害するものであることが明確にされました。
孫崎享氏は、ISDS(投資家対国家紛争解決)条項について、憲法が「全ての司法権は最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」としていることに違反しているとして、世界銀行の傘下に設けられる仲裁裁判所(米人3人の弁護士判事による一審制)を問題にしました。
赤城智子氏は、食物中のアレルゲンが呼吸困難や意識障害を引き起こすことを述べて、「日本は2000年にアレルギー疾患の原因物質を10ppm単位で表示することを義務付けたが、TPPに加盟したらそれ自体が貿易の障壁にされかねない」と「生存権が脅かされる」と警告しました。
野々山理恵子氏は、わが国で認められている食品添加物が800品目強なのに対し、米国では3000品目に及ぶことを指摘し、BSE(狂牛病)牛肉の輸入やホルモン剤投与に対する規制がなくなり、遺伝子組み換え表示などが撤廃される危険性を訴え、「TPPの交渉過程は秘密主義で協定文書も仮訳のまま国会審議されるのは不安で、知る権利を侵害している」と憲法21条違反を提起しました。
いずれも極めて重要な指摘です。
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TPPの重大欠陥を主権者に拡散しなければならない
植草一秀の「知られざる真実」 2016年2月23日
昨日、2月22日、TPP違憲訴訟の第3回口頭弁論が開かれた。
東京地方裁判所前で開かれた門前集会には、200名もの主権者が参集し、TPP批准阻止に向けての決意が確認された。
傍聴券を取得できなかった主権者を対象に衆議院議員会館大会議室で開かれた勉強会には350人を超える主権者が参集し、その後の公判報告会も実施された。
法廷では、原告が要求した原告自身による意見陳述が認められ、TPPによって主権者の基本的人権が侵害されること、TPPが日本の国家主権を侵害するものであることなどが、具体的に指摘された。
口頭弁論の詳細については、ジャーナリストの高橋清隆氏が早速ブログに記事を掲載された。
「批准阻止へ向け3人が陳述=TPP訴訟第3回口頭弁論」
ご高覧賜りたい。
高橋氏の記事から、原告の意見陳述の概要部分を紹介させていただく。
孫崎享氏は、ISDS(投資家対国家紛争解決)条項について、憲法第41条と同76条を根拠に批判。「国会は国権の最高機関であり、全ての司法権は最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。しかし、ISDSは憲法の定めるこれら統治機構を根本から破壊する」と指摘した。
また、孫崎氏は自由貿易協定で企業に訴えられた国が数百万ドルの損害賠償を請求された例を挙げ、世銀傘下に設けられる仲裁裁判所を問題視した。
「国益を害されることは、日本にも明らか。国の裁判所の頭越しに賠償を命じることは、司法をないがしろにし、許されるものではない」と主張した。
NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長である赤城智子氏は、アレルギー疾患についての電話相談を3年間担当した経験を明かし、食物中のアレルゲンが呼吸困難や意識障害を引き起こすと訴えた。
「日本は2000年に原因物質を表示することが義務付けられた。これは世界初で、10ppm(100万分の1)の単位の優れたもの。それがTPPに加盟したら、貿易の障壁にされかねない。
基準の科学的根拠が証明できなければならないから。表示がなければ、私たち患者は食べ物を選ぶこと、健康を守る行為ができなくなり、生存権が脅かされる」
と憲法25条違反であると指摘した。
また、生活協同組合パルシステム東京の野々山理恵子氏は、生協運動や地域活動に関わってきた立場から、子供たちの将来を危惧した。
わが国で認められている食品添加物が800品目強なのに対し、米国では3000品目に及ぶことを指摘。企業に不利益」との理由で、BSE(狂牛病)の輸入や成長促進のためのホルモン剤投与に対する規制がなくなり、遺伝子組み換え表示などが撤廃される危険性を訴えた。
その上で、「TPPの交渉過程は秘密が貫かれ、私たちはリスクを知ることができない。協定文書も仮訳のまま国会審議されるのは不安。私たちの知る権利を侵害している」と憲法21条違反を提起した。
いずれの意見陳述も、TPPの本質、核心を衝いた的確な指摘である。
孫崎氏が指摘した日本国憲法第41条および第76条の条文は次のものだ。
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
TPPのISDS条項は、日本の外にある仲裁裁判所を国家権力の上位に位置づけるもので、国家主権を侵害するものであることは明らかである。
孫崎氏が訴えたことが直接的に影響を与えるのは裁判所自身である。
ISDS条項は日本の裁判所の否定であり、このことをもっとも深刻に受け止めなければならないのは日本の裁判所の裁判官である。
孫崎氏が重要な事実を指摘しているときに裁判長は手元の資料を確認して、孫崎氏の言葉に注意を払っているようには見えなかったが、ISDS条項が日本の司法権侵害であることを裁判所裁判官自身が真剣に受け止めるべきである。
ISDS条項を否定したのは、安倍晋三自民党自身である。
「国の主権を損なうようなISD条項に合意しない」 ことを明確に公約として掲げたのである。
そのISDS条項が盛り込まれているTPPに日本は参加する意向を示している。
このような暴挙を許すわけにはいかない。
(後 略)
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