安倍首相は4日の衆院予算委で、安全保障関連法の3月施行に伴い、南スーダンに派遣している陸上自衛隊のPKOについて、「法律が通ったのだから・・・『駆け付け警護』などの任務拡大を検討している」と明言しました。
しかし共産党の志位委員長が、南スーダンには「殺し、殺される」現実の危険が切迫していることを、具体的な例を挙げて、「そうなれば憲法が禁止する武力行使そのものだ」と追及すると、拡大されたPKO任務が憲法の制約下に留まることができるのか、まともに答えられませんでした。
安全保障関連法がきわめて危険なものであることが、ここでも明らかにされました。
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南スーダンでPKO任務拡大検討 駆け付け警護、首相明言
東京新聞 2016年2月4日
安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会で、安全保障関連法の3月施行に伴い、南スーダンに派遣している陸上自衛隊のPKOについて「駆け付け警護」などの任務拡大を検討していると明言した。「法律が通ったのだから任務の付与を検討している。しっかりとした準備や訓練が必要になる」と述べた。新任務の適用時期には触れなかった。
駆け付け警護は、武装集団に襲われた国連要員らを、武器を使って救出する行為。安保関連法成立で武器使用基準が緩和され可能となった。
首相は「いかなる業務を付与するかは慎重に検討を進める必要がある。現時点では要否も含めて方針は決まっていない」とも述べた。(共同)
南スーダンPKO 対IS軍事作戦 戦争法 一刻も放置できない
衆院予算委 志位委員長が追及
しんぶん赤旗 2016年2月5日
「殺し、殺される」現実の危険が切迫している―。日本共産党の志位和夫委員長は4日の衆院予算委員会で、戦争法強行で直面する二つの大問題を取り上げ、安倍晋三首相の姿勢を厳しくただしました。首相はまともに答えられず、戦争法の危険な実態と、廃止に一刻も猶予がないことが浮き彫りになりました。(詳 報)
志位氏が指摘した問題の第一は、アフリカ・南スーダンPKO(国連平和維持活動=UNMISS)に派兵されている自衛隊の任務拡大の危険です。
志位氏は、国連PKOの主要任務が、中立の立場での停戦監視から、武力を行使しての「住民保護」へと大きく変化し、国連自体が国際法上の「交戦主体」となっている実態を指摘。国連PKOを統括して武装解除に携わった伊勢崎賢治・東京外語大教授の体験も交えて、“好戦化”し、停戦が破れても撤退しない、現在のPKOの姿を生々しく示し、「今日の国連PKOは、憲法9条を持つ日本が、とうてい参加できないものに変化している」とただしました。
首相はPKOの質的変化を認めつつ、自衛隊の派兵については「主体的に(停戦合意の成立など)PKO5原則にのっとって判断していく」などと弁明しました。
志位氏は「そういう建前は通用しない」と批判し、武力を行使しての「住民保護」が主要任務に掲げられるUNMISSの実態を具体的に提示しました。
南スーダンでは、政府軍と反政府軍との武力衝突で240万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が起きています。
志位氏は、直近の国連報告書を示しながら、南スーダン政府軍によるUNMISSへの攻撃も繰り返されていることを強調し、「改定PKO法によって任務拡大となれば、自衛隊が武器を使用して政府軍とたたかうことになる」「憲法が禁止する武力行使そのものだ」と迫りました。
しかし、首相は政府軍による攻撃の実態を示されてもなお「国家または国家に準じる組織が敵対するものとして登場しない」などと主張。中谷元・防衛相は「(衝突は)現場レベルの偶発的なもの」と実態をゆがめて言い逃れるだけで、「武力行使」とならない根拠は何一つ示せませんでした。
問題の第二は、過激組織ISに対する軍事作戦への自衛隊参加の危険です。
志位氏は、派兵恒久法では
(1)国連決議
(2)国際社会の共同した対処活動
(3)日本が寄与する必要性
―の3要件を満たせば、自衛隊の「後方支援」=兵站(へいたん)支援が可能になることを指摘。中谷防衛相の答弁などから、対IS軍事作戦は (1) (2)を満たしうることを明らかにしたうえで、要は(3)についての政府の「政策判断」次第だと指摘しました。
志位氏は、政府が「政策判断として『軍事支援』はやらない」としていることについて、「そういう『政策判断』をしている理由は何か」と繰り返し追及。首相は「主体的に判断する」などと述べるだけで「理由」は最後まで示せませんでした。志位氏が「米国から支援要請があったとき拒否できるか」とただしたのに対しても、首相は「要請があっても断る」といいながら、その理由は示せませんでした。
志位氏は「日本の平和と国民の命を危険にさらし、立憲主義を破壊する法律は一刻たりとも放置できない」と述べ、戦争法の廃止、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」撤回を強く要求しました。
甘利氏疑惑 証人喚問を要求
志位委員長は、衆院予算委員会で、甘利明前経済再生相の口利き疑惑に対する安倍首相の認識をただし、「首相自らが真相解明に主導的な役割を果たすべきだ」と迫りました。
志位氏は「問題は口利きをしたかどうかにある」と指摘。告発者は、建設会社と都市再生機構(UR)とのトラブルにかかわって口利きを依頼したと証言し、甘利氏は否定していないとして、「たとえ政治資金として届け出をしても潔白にはならない」と首相の認識をただしました。
首相は「政治資金規正法にのっとって処理されるべきだ」と述べるだけで、疑惑の深刻さについての認識は一切、示しませんでした。
さらに志位氏は、多額のカネをよく知らない相手から受け取り、趣旨もたしかめない甘利氏の姿勢は「世間の常識からかけ離れた異常な金銭感覚」と指摘し、首相の認識をただしました。しかし、首相は「異常」とは答えませんでした。
志位氏は、甘利氏、秘書、建設会社総務担当者の証人喚問を要求。パーティー券を含めた企業・団体献金の全面禁止に踏み込んで議論を行うよう主張しました。