2020年12月13日日曜日

断念したはずの陸上イージスが5000億円で洋上に復活

  陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は、発射時のブースターが市街地に落下するという問題があるため配備計画はキャンセルされたのですが、その代替案の最有力候補が「イージス艦型として復活」する模様だということです。

 その初期費用は5千億円を超えると見られ、イージス・アショア2割以上も高くなります。このほか実射試験の費用や人材育成経費、維持整備費などが必要で、総経費はさらに膨らみます政府は12月中代替案閣議決定と報じられています。
 そもそもイージス・アショアの導入は防衛省の意向ではなく、安倍前首相がトランプに言われて決めたものでした。本来であればキャンセルすればいいのですが、既に1700億円以上が契約済みで、違約金として全額請求される可能性もあるため踏み切れなかったのでした。
 しんぶん赤旗日曜版が取り上げました。
 代替のイージス艦建造費が膨らむ原因の一つは、未完成で開発途上レーダーSPY7(米ロッキード・マーチン社製の導入に防衛省が固執したためで「ロッキード社側から防衛省側や自民党国防族側に激しい営業(⇒札束攻撃)があった」という背景があります。
「第二のロッキード事件」です。
 安倍前首相が国に与えた損害は計り知れませんが、最大の欠点は肝心のミサイル迎撃能力が殆どないことで、機関銃の弾丸をピストルで撃ち落とそうとするに等しいと評されています。
 米国に追随していればこの先も、不要・無能の高額兵器を際限なく買わされることになります。
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断念したはずの陸上イージス 5000億円で洋上に復活 防衛省検討
                   しんぶん赤旗日曜版 2020年12月13日号 
 断念したはずの兵器が、さらに巨額になって復活  。菅政権のもとで驚くような事態が起きています。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の断念を決めたのに、代替案を検討しているのです。浮上している最有力案の経費が5千億円を超えるのは必至です。  田中一郎記者

経費2割増し
 防衛省が代替の4案(表)と経費を示したのは、11月25日の自民党の会合です。最有力とされるのが最新イージス艦「まや」をべスに新型艦を建造する案。陸上イージスで導入を決めていたレーダーなどを転用して搭載します。必要とされる2隻分の建造費は4800億~5000億円以上。断念した陸上イージス2基より2割以上高くなります
 このほか実射試験の費用や人材育成経費、維持整備費などが必要で、総経費はさらに膨らみます。右あがりの軍事費を層押し上げる危険があります。
 陸上イージスは、弾道ミサイルを迎撃する「ミサイル防衛」システムの一つ。イージス艦に搭載されているレーダーや迎撃ミサイル発射機などを地上に配備する計画でした。
 トランプ米政権の圧力を受け政府は2017年に導入を決定。しかし配備先とされた秋田と山口の住民は強く反対しました。そこで政府は配備を断念したものの代替兵器の検討を開始。9月には辞任直前の安倍晋三首相が、代替策として敵基地攻撃能力保有の検討を菅政権に促す談話を発表していました。
 政府は代替案について12月中の閣議決定を目指していると報じられています。

   (表) 防衛雀か示している4つの代替案(金額は1隻・基あたり)
                        導入コスト     維持整備費(30年)
 イージス艦型(多任務)         2400億~2500億円以上   未定
 民間船舶型(弾道ミサイル防衛専用)   1900億~2000億円以上   未定
 海洋掘削装置型(多任務)         2300億~2800億円以上   未定
 海洋掘削装置型(弾道ミサイル防衛専用) 2100億~2600億円以上   未定
 (参考)イージス・アシヨア       約2000億円       約1000億円
                    ※防衛省が自民党に提出した資料に基づき作成

防衛省何故固執 ロッキード社レーダー
 代替のイージス艦建造費が膨らむ原因の一つは、米ロッキード・マーチン社製レーダーSPY7の導入に防衛省が固執したためです。
 既存のイージス艦のレーダーより大きく、搭載には船体を数メートル大型化する必要があります。このため最新イージス艦「まや」より700億~800億円ほど高くなります。
 SPY7は未完成で開発途上なのに防衛省は2018年、イージス・アショア配備計画の際に購入を決定。元自衛隊幹部は「ロッキード社側から防衛省側や自民党国防族側に激しい営業があった」と明かします。

「不透明」と 元海自幹部
 元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「好意的に見ても不透明とせざるを得ないレーダー選定」と断じます(『世界の艦船』9月号)。前出の元自衛隊幹部は「第二のロッキード事件だ」と語ります。

日本防衛でなく「爆買い」目的
米ミサイル防衛システム フル装備は日本だけ
                       防衛ジャーナリスト 半田滋さん
            はんだ・しげる=1955年栃木県生まれ。防衛ジャーナリスト。
            元東京新聞論説兼編集委員。『安保法制下で進む!先制攻撃でき
            る自衛隊』(あけび書房)など著書多数o
 イージス・アショアは、防衛省がもともと考えていた構想ではなく、安倍音三首相(当時)が政治判断で決めたものです。
 防衛省は2003年の閣議決定に基づき、イージス艦と地上配備型迎撃ミサイルパトリオット(PAC3)で対処するミサイル防衛構想を決めていました。敵の弾道ミサイルを、大気圏外ではイージス艦から発射する迎撃ミサイルで破壊し、撃ちもらした分はPAC3からの迎撃ミサイルで破壊する仕組みです。
 ところが17年に安倍首相はトランプ大統領から米国製兵器の購入を迫られました。その 「爆買い」の1つとして導入を決めたのがイージス・アショアです。初めから、日本防衛を真剣に考えて導入防衛を決めたものではありません。
 今年6月に政府はイージス・アショアの配備断念を決めました。素直にやめればいいのですが、実は米国などと1700億円以上契約済みでした。購入をやめた違約金として仮に全額請求されると、イージス艦1隻分にあたるお金が消えてしまう。就任したばかりの岸信夫防衛相の責任問題に発展しかねません。
 一方、官邸にしてみれば、米国に「買う」と約束したものを取り下げてしまうのは好ましくない。官邸の対米追従と防衛省の責任回避が呼応し、「断念したのは陸上配備のイージス・アショアであって、洋上イージスなら問題ない」というへ理屈をひねりだしたのです。
 実はアメリカの同盟国で米ミサイル防衛システムをフル装備で導入しているのは日本だけです。ポーランドとルーマニアにもイージス・アショアはありますが、米軍が配備しているものです。イーージス艦は韓国やスペインも持っていますが、ミサイル防衛用ではありません。
 なぜか。相手のミサイルを撃ち落とすのは困難な上に、経費が高すぎて割にあわないからです。それなのに、日本は既にミサイル防衛に累計で2兆円も税金を投じています。
 批判を浴びたイージス・アショアは洋上配備の形で継続した上で、さらに敵基地攻撃能力の保有も検討する。まさに「焼け太り」です。
 すでに政府は護衛艦「いずも」を空母化し、搭載するF35B戦闘機の42機導入を決めました。スタンドオフ・ミサイルと呼ばれる長距離巡航ミサイルの取得・開発も始めています。実は敵基地攻撃用装備はそろいつつあります。
 安保法制で日本は集団的自衛権の行使容認に踏み込みました。それに続き敵基地攻撃能力を公然と持てば、周辺国はさらに軍事力を強めようとするでしょう。「日本を守る」が看板の政策で、かえって東アジア全体が不安定化してしまいます
 来年1月からの通常国会で最初に焦点となるのは、第3次補正予算案であり新型コロナ対策です。イージス・アショア代替や敵基地攻撃能力の保有に予算を振り向ける余裕などないはずです。もっと国民のために税金を使うことをまじめに考えるべきです。