2022年1月14日金曜日

生活保護申請却下に疑問(東京新聞 投書欄)

 日本国憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳われています。国には「国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことを保証する」義務があり、それを具体化したのが生活保護制度です。

 ところが小泉・竹中政権時代に、厚労省の主導で生活保護申請を受け付ける役所の窓口で様々に難癖をつけて申請の受取り自体を拒否する、いわゆる「生活保護の水際作戦」が行われるようになりました。それによって餓死者が出る事態になり、2006年には弁護士らが「水際作戦」の実態を調査しました。
 その後登場した1次安倍政権は一応「セーフティネットの構築」を掲げましたが、実際には何もせず何の改善もないまま現在に至っています。それどころか在野の時期を経て12年に第2次安倍政権として再登場すると、片山さつき議員や世耕弘成議員らが生活保護者バッシングを展開し、3年間で生活保護支給額を最大10%も減らしました。

 コロナ禍の現在、収入の途を絶たれて困窮している人たちは無数にいます。12月15日のNHK「クローズアップ現代+」私には帰る家がない』に、家賃を払えず、一家離散になってホームレス状態に陥った40代の女性が登場しました。
 彼女は役所に生活保護申請したのですがなんと却下されたということです。酷寒のこの時期に満足に食事もできず野宿の生活をしていたのでは、健康で文化的な生活は愚か生命の維持自体が出来ません。それ程困窮している国民が申請した「生活保護を断る」というのは一体どんな発想で、どんな権利に基づいているのでしょうか。
 記事集約サイト「阿修羅」にその番組を見た松戸市在住の読者からの東京新聞への投書が載りました。
 そこには「私は、疑問と怒りでやるせなくなった。番組の女性のような状況で、生活保護申請が却下されるなら、一体どんな状況の人を救う制度なのか」と書かれています。
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生活保護申請却下に疑問
                      東京新聞 投書欄 2022年1月12日
 1215 NHK「クローズアップ現代+」を見た。「私には帰る家がない」というテーマで、コロナ禍で家賃を払えず、家を失った女性たちの話だった。一家離散になって住居をなくし、貯金も底をついて、ホームレス状態に陥った四十代の女性が出てきた。就職活動をしても働く先は見つからず、役所に生活保護の申請に行ったが、却下されたと番組内で伝えられていた。
 私は、疑問と怒りでやるせなくなった。番組の女性のような状況で、生活保護申請が却下されるなら、一体どんな状況の人を救う制度なのか。憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されており、国は、国民の生活を守る義務があるはずだ。そして、生活保護はその権利を行使するための最後のセーフティーネットだ。そもそも困窮している人が申請をする制度でありながら、審査が厳しすぎる。
 食べる物、住む家もなく、頼る人もいない、そんな時に助けてもらうために、私たちは高い税金を納めているのだ。
 日本では、女性は男性より賃金が安く貧困に陥りやすい。国は女性支援の政策をもっと考えなければならない。こんな状況では少子化はますます進むだろう。
 他の先進国と比べて、住宅補助は非常に低く設定されており、生活保護申請者も少ない。これは、受給するべき人が受給できていないからだろう。つくづく冷たい国だ。厳冬の中、ホームレス状態になった女性の安否が気になる。