26日付「マスコミに載らない海外記事」に載った「ヨーロッパにおけるアメリカのプレゼンスに対するロシア要求で決定的瞬間に直面するヨーロッパ」とする記事は
「最近ドイツ政府は、兵器を積載した飛行機をウクライナに送るイギリス空軍の領空通過権を拒否した。最終的にフランス政府も領空通過権を拒否し、目的地に到達するのにイギリス飛行機に長い迂回を強いた。この状況で注目すべき更なる進展は、イタリア政府もフランスとドイツの同僚たちに習って、アメリカが鼓舞する対ロシア制裁の一部になるのを拒否することに加わったのだ。~」
と書き出されています。
米国が煽っているウクライナ危機は、14年に米国が引き起こした血塗られたクーデターに起因するものであり、これについてはロシアが米国に対して文書で要求した
・NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、
・モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと
・ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと
・ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないこと
などを米国が保証すれば、それで解決することです。
米国はそれを全面的に拒否したようなので問題は何も解決していませんが、冒頭に紹介した記事のように、もはやNATOの主要国は対米従属の一枚岩の組織ではなくなっています。他方、米国が黒幕と思われるカザフスタンでのクーデターも失敗しました。
史上空前の戦争国家である米国の横暴に世界は同調すべきではありません。
櫻井ジャーナルが「軍事的な緊張を高めてきた米国が欧州で孤立し始めた」とする記事を出しました。
もう一つ、櫻井ジャーナルは「ウクライナに火をつけ損なったアメリカが台湾にターゲットを変更する可能性」とする記事を出しましたので、併せて紹介します。
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軍事的な緊張を高めてきた米国が欧州で孤立し始めた
櫻井ジャーナル 2022.01.29
今にもロシアがウクライナへ軍事侵攻するかのような話をアメリカの政府や有力メディアは流し、軍事物資を運び込み、軍事訓練も行なっているが、ヨーロッパでは事態の沈静化を図る動きが進んでいる。
1月26日にはパリでロシア、ウクライナ、フランス、ドイツが軍事的な緊張が高まっている問題について協議、事態を平和的に解決することで合意した。ウクライナの現体制は2014年のクーデターで誕生したのだが、その際に結ばれた停戦合意を尊重するということだ。
ロシア軍の軍事侵攻が迫っているという話をウクライナの国防省は否定していたが、ドミトロ・クレバ外相も軍事侵攻するために十分な兵力は集結していないと語っている。ウクライナのNATO加盟問題にロシアは口を出すなとしていたEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表でさえ、対話を継続するべきだと語っていた。反ロシア感情が強いはずのクロアチア大統領も全面戦争へ向かって動き出したならNATO軍へ派遣している自国軍を撤退させるとしている。
パリで会議が開かれる4日前、ドイツ海軍の海軍総監だったケイ-アヒム・シェーンバッハ中将が辞任を申し出た。ロシア軍がウクライナへ軍事侵攻しようとしているとする話は「ナンセンス」であり、ウクライナがクリミアを取り戻すことなど不可能だと21日にニューデリーのシンクタンクで語ったことが問題にされたのだが、問題にしたのはアメリカ政府だろう。
ウクライナで軍事的な緊張を高めてきたのはアメリカ/NATOにほかならない。そこでロシアはアメリカの軍事的支配地の拡大をこれ以上容認できないとしている。そこで、NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと、ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと、NATOの艦船や航空機をロシアへ近づけないこと、定期的に軍同士の話し合いを実施すること、ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないことなどを文書で保証することを求めている。アメリカ政府はロシア政府へ「回答文書」を渡したが、肝心の問題には触れていないと言われている。
ウクライナでの問題に限らず、軍事的な緊張を高める上で西側の有力メディアが果たしてきた役割は小さくない。2003年3月にイラクを先制攻撃する前、アメリカの政府や有力メディアはイラクが「大量破壊兵器」を保有し、すぐにでも使うかのように宣伝していた。
そうした宣伝に熱心だったひとりがウォールストリート・ジャーナル紙のマイケル・ゴードン。2002年に彼はニューヨーク・タイムズ紙でジュディス・ミラーと一緒に偽情報を広めていた。
2020年に入ってから世界はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で麻痺している。その感染症の実態はいまだに明確でないが、その病気を引き起こしているとされているSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は武漢病毒研究所から漏れ出たとする話をゴードンは盛んに伝えていた。
また、ミラーは2005年にニューヨーク・タイムズ紙を離れ、07年にウィリアム・ケーシーの政策研究マンハッタン研究所へ入り、08年にはFOXニュースへ移動、2010年にはニューズマックスへ移った。ここはケイシーやCIAと関係の深い富豪、リチャード・メロン・スケイフから支援を受けていた。またCFR(外交問題評議会)のメンバーにもなっている。
アメリカに抑え込まれていたヨーロッパが独自の動きを見せ始めたように見えるが、そのタイミングでCOVID-19騒動も沈静化の動きがヨーロッパでは出てきた。その時期にCOVID-19騒動を煽っている日本は軍事的にも前のめりになっている。この国の「親米派」は自分たちのボスに忠誠を誓うことしかできないようだ。
ウクライナに火をつけ損なったアメリカが台湾にターゲットを変更する可能性
櫻井ジャーナル 2022.01.30
ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツは1月26日にパリでウクライナ情勢について討議、事態を平和的に解決することで合意した。軍事的な緊張を高めているアメリカは参加していない。アメリカの好戦派が得意とする「偽旗作戦」も実行しにくいだろう。生物戦争も見え見えだ。
アメリカ軍はシリアやイラクを含む中東に軍隊を送り込み、軍事作戦を展開しているものの、影響力は低下している。おそらくアメリカが黒幕だったであろうカザフスタンでのクーデターも失敗した。そこで注目されているのが台湾だ。独立を望む勢力を焚き付け、軍事的な緊張を高めている。ロシアより中国の方が組みやすいと考えているのかもしれないが、現在、ロシアと中国は戦略的な同盟関係にある。
日本は明治維新以来、基本的にアメリカやイギリスの巨大金融資本の影響下にある。日本に支配されていた時代の台湾は間接的にアングロ・サクソンの影響下にあったと言えるが、一時期、中国との関係を優先していた。それが変化したのは蔡英文が総統に就任にした2016年以降。アメリカに従属したのだが、アメリカはフィリピンにも強い圧力を加えている。橋頭堡と位置づけられているであろう韓国でもアメリカの圧力は強いようだ。
ハルフォード・マッキンダーがまとめた長期戦略では、ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にロシアを制圧して世界の覇権の握ることになっていた。この長期戦略はその後も放棄されていない。その戦略にとって日本列島から琉球、台湾、フィリピンへ連なる島々は重要な意味を持つ。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」につながった。
明治政府がアメリカやイギリスの外交官に煽られて台湾へ派兵したのは1874年。その翌年に李氏朝鮮の首都を守る要衝、江華島へ軍艦を派遣して挑発し、大陸侵略が始まる。その日本をアヘン戦争で大儲けしたアメリカやイギリスが支援した理由は言うまでもないだろう。
ハワイの真珠湾を攻撃して日本はアメリカやイギリスと戦争を始めたが、大戦後に主従関係は復活する。ウォール街に天皇制官僚システムが従属するという関係だ。
GHQ/SCAPに保護された旧日本軍の将校は少なくないが、そのひとり、岡村寧次大将の下へ蒋介石のグループは接近する。1949年4月に岡村の下へ曹士徴を密使として派遣する。当時、岡村はGHQ/SCAPの保護下に入っていた。岡本たちの行動の背後にアメリカがいたのだろう。
曹は岡村や富田直亮少将と東京の高輪で会談して台湾義勇軍を編成することで合意、富田少将が「白鴻亮」の名前で義勇軍を指揮することになった。そこで義勇軍は「白(パイ)団」と呼ばれている。
白団は1950年の正月頃に台湾へ渡り、日本軍の戦術や軍事情報を台湾軍に教育して国家総動員体制を伝授しはじめたが、その工作には陸軍士官学校34期の服部卓四郎、西浦進、堀場一雄、あるいは海軍の及川古四郎、大前敏一らが協力していた。翌年の夏までに83名の旧日本軍参謀が台湾へ渡り、1969年のころまで顧問団として活動を続けたが、途中で工作の主導権はアメリカが握る。
その一方、CIAの顧問団に率いられた約2000名の国民党軍は1951年4月に中国領内へ軍事侵攻、一時は片馬を占領したが、反撃にあって追い出された。翌年の8月にも国民党軍は中国へ侵攻しているが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わっている。
1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まるが、ダニエル・エルズバーグによると、その際、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。ジョー・バイデン政権では同じことが国防総省で議論されているという。現在、アメリカの特殊部隊と海兵隊の隊員約20名が昨年から台湾で兵士を訓練しているという。
アングロ・サクソンが19世紀から続く長期戦略を放棄せず、日本が現在もその戦略に従っている以上、似たことが起こるのは必然だろう。「戦争ごっこ」に興奮していると、取り返しのつかないことになる。