2022年1月27日木曜日

岸田首相が日米首脳会談で見せたタカ派の素顔 日本が米中戦争の当事者に

 いまや岸田氏は「宏池会」らしい穏健さを装う必要はなくて、逆に安倍晋三流の軍事優先策に徹することが「政権の維持」のために有効であると判断したようです。そのさりげない変身? ぶりは、それが岸田氏の素顔なのだと思わせます。
 しかし米国に強制されるがままに、軍事費を倍増させ、際限なく米国製の不要な武器を買い込むのは余りにも愚かなことです。取り分け米国の口車に乗って「台湾有事」に踊らされることの危険性の自覚がないのなら、国を亡ぼす政治家というしかありません。
 そもそも「台湾有事」は、GDPで米国に急迫している中国が数年後には米国を追い抜く勢いであるとが許せない米国が、その前に何とか中国を叩きたいという発想から生み出したものです。ところが中国と戦争した場合勝てるのかどうかについて「机上演習」をしたところ、20個近くのケースにおいていずれも米国が勝てなかったということです。そのため「台湾有事」では、米中開戦の切っ掛けは米軍が作るとして、その後は「自衛隊に戦わせる」というのが米国の狙いと言われています。
 それを知ってか知らずにか、ホイホイと「優等生」を気取って米軍の尖兵に名乗りを上げることほど愚かなことはありません。
 米国の顔色をうかがってその歓心を得ることに専念したのが安倍政権でしたが、最低限の愛国心があるのならその愚かさからはいい加減卒業すべきです。
 東洋経済オンラインに「対中政策で『安倍晋三路線』を走る岸田文雄内閣   」とする記事が載りましたので紹介します。
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対中政策で「安倍晋三路線」を走る岸田文雄内閣 
         日米首脳会談で見せたタカ派の素顔
                   岡田 充 東洋経済オンライン 2022/01/26
 岸田文雄首相とアメリカのバイデン大統領は2022年1月21日、オンライン首脳会談を行った。日米両国は2022年1月7日の外務・防衛担当閣僚協議「2プラス2」で、台湾有事の初期段階にアメリカ海兵隊が自衛隊とともに南西諸島を「機動基地」に、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」の推進にゴーサインを出したばかり。閣僚人事などをめぐって安倍晋三元首相との「溝」がささやかれる岸田氏だが、日米同盟を「対中同盟」に変質させ、中国を軍事抑止しようとする安倍路線を継承・加速する姿勢を鮮明にした。「核廃絶」をうたってハト派色を見せようとするイメージ作戦の陰から対中タカ派の素顔がちらつく。

半分は中国情勢に費やす
 日米首脳会談は、岸田氏が第2次政権スタート以来、訪米による実現を強く希望していた。しかしバイデン大統領が、コロナ予算をめぐる民主党議員の離反など内政問題に忙殺されて実現せずオンライン会談となった。
 外務省の記者発表によると、1時間20分の会談では①「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米豪印(クアッド)首脳会合を今年(2022年)に開きバイデン氏も出席、②経済安全保障について緊密な連携を確認し、閣僚レベルの日米経済政策協議委員会(経済版「2プラス2」)の立ち上げで合意した。
 首相側近によると、会談の半分は中国政策に費やされたという。そこで、対中政策で何が合意されたのかを整理する。外務省によると、両首脳は ①東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対、 ②台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す、 ③香港情勢や新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有、で一致した。
 この3点は、2021年4月の菅義偉前首相とバイデン大統領の首脳会談の内容を「上書き」する内容であり、新味はないが、岸田氏が対中政策で安倍路線を「継承」した根拠でもある。一方、安倍路線の「加速」の根拠を挙げる。
 ①日米「2プラス2」の共同発表を支持。日米同盟の抑止力・対処力の一層強化一致。岸田首相から、新たに国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を策定し、日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明し、バイデン氏も支持。
②日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用を含む、揺るぎない対日防衛コミットメントおよび拡大抑止について力強い発言。
 ここで「日米共同作戦計画」の内容を紹介する。「2プラス2」の日米共同発表は、計画に直接触れていないが、「同盟の役割・任務・能力の進化及び緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」という記述があり、日米専門家は「共同計画作業」の具体案が共同作戦計画だとみている。
 国際政治学者でアメリカのジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授は2021年春、国際政治学者と軍事専門家が参加した台湾有事に関する「机上演習」(ウォーゲーム)の結果を筆者に紹介してくれた。モチヅキ氏は、台湾有事では、米軍による在日米軍の自由アクセスと後方支援がなければ「米軍は中国軍に勝てない」との結果が出たとし、この2条件を盛り込んだ対日要求シナリオの一つとして、「南西諸島での中国艦船の通過阻止とミサイル配備台湾島嶼(しょ)部の防衛と情報収集・警戒監視・偵察活動など自衛隊の防衛力強化」を挙げた。
 2021年3月に東京で開かれた「2プラス2」の際、岸信夫防衛相がオースチン国防長官に「有事で日米の緊密連携」を確認するとともに、「台湾支援のアメリカ軍に自衛隊がどう協力するか検討」を約束した。モチヅキ証言と併せて考えれば、共同作戦計画は2021年4月以降、日本とアメリカの制服間で具体的策定が開始されたとみていいだろう。

南西諸島40島が軍事拠点に
 一方、共同通信は2021年12月23日の記事計画原案をスクープした、その概要を紹介すると、
(1) 台湾有事の緊迫度が高まった初動段階で、アメリカ海兵隊は自衛隊の支援を受けながら鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置く
(2) 拠点を置くのは、中国軍と台湾軍の間で戦闘が発生し、日本政府が放置すれば日本の平和と安全に影響が出る「重要影響事態」と認定した場合
(3) 軍事拠点候補は、陸自ミサイル部隊がある奄美大島、宮古島や配備予定の石垣島を含む約40の有人島。
(4) 対艦攻撃ができる海兵隊の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を拠点に配備。自衛隊に輸送や弾薬の提供、燃料補給など後方支援を担わせ、空母が展開できるよう中国艦艇の排除に当たる。事実上の海上封鎖になる
 シナリオどおりに作戦が展開されれば、これら移動拠点が中国側のミサイル攻撃のターゲットになり、住民が戦闘に巻き込まれるのは避けられない。計画は純然たる「戦争シナリオ」なのだ。
 制服組が「最悪のシナリオを想定して作戦を練るのは当然」という見方もある。一理あるにせよ、戦闘状態を前提にした戦争シナリオの「起動」は、「外交敗北」を意味する。勝者なき戦争に発展する前に、対話と相互理解を重ね戦争を回避するのが、外交の役割だからである。
 中国は台湾統一を「歴史的任務」に設定しているが、統一を急いでいない。少子高齢化の加速で成長に陰りが見える現在、プライオリティは「体制維持」にあり、台湾武力統一はそれを危険に曝す恐れがある。日米制服組が有事切迫を煽る目的は、 ①台湾問題で「脇役」だった日本を米軍と一体化させ「主役」にする 南西諸島のミサイル要塞化を加速し、米軍の中距離ミサイル配備の地ならし ③中国が容認できない一線を意味する「レッドライン」を引き出すこと、にあるとみてきた。

勝敗の決着つかない迷路に
 「聞く耳を持つ」を信条にする岸田氏は、「ハト派」らしい温厚な印象を周りに与える。しかし日米首脳会談と「2プラス2」の結論を見ると、台湾有事を最優先課題に、日米同盟を中国包囲装置にしようとする安倍路線への「前のめり」姿勢が鮮明だ。
 台頭する中国を叩くためアメリカが仕掛けた米中戦略対立は、バイデン氏が「民主vs専制」の競争と位置付けたことによって、「勝敗」の決着がつかない迷路にはまった。今年に入り、台湾情勢が比較的落ち着きを取り戻しているように見えるのは、バイデン政権がウクライナ情勢に手足を取られ、台湾での「挑発」が減ったのが一因だ。
 フランスを代表する歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、バイデン政権が「オーストラリアとの原子力潜水艦の契約や北京冬季五輪の外交ボイコットを通して、中国との経済的な対立を軍事や外交の領域まで広げている。現在の世界に不確実性を作り出しているのは中国ではなく、アメリカのほうだ」(日本経済新聞2022年1月24日付け)とみる。

 そのうえで、米中対立構造から「世界が再構成されること自体が脅威」として「新たな冷戦という幻想に巻き込まれてはいけない」と主張する。岸田氏もまたアメリカの「優等生」として、米中対立構造から「世界を再構成」する迷路に差し掛かっている。