「大阪維新の会」による新自由主義に沿った大阪府政には「公的医療施設の大削減」や「大阪都構想」など数々の問題がありました。これからやろうとしている「公的な賭博施設・カジノ」の誘致にも様々の極めて重大な問題があります。
大阪府・市は「カジノ大阪」の誘致のための「区域整備計画」案を公表し、府民の意見を募った上で2月開会の大阪府・市議会に整備計画を諮り、そこで議決を得た後に国に提出するとしています。
これについて、大阪府・市がこれまで行っている住民説明会は、府民の質問にまともに答えず、府・市が一方的な言い分を言い募るだけに終わっていて、府民に十分な判断材料を提供するものにはなっていません。
共産党の大阪府委員会は、カジノ推進の立場の自民党府連、公明党府本部、大阪維新の会に対して21日、公開質問状を出しました。
しんぶん赤旗の記事「カジノ大阪誘致ノー 党府委 自・公・維に公開質問状」と、大阪維新の会に提出した「カジノ大阪誘致に関する公開質問状」を紹介します。
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カジノ大阪誘致ノー 党府委 自・公・維に公開質問状
しんぶん赤旗 2022年1月23日
日本共産党大阪府委員会は22日、大阪市天王寺区の府委員会事務所で記者会見し、「『カジノ大阪誘致はノー!』―いまこそ府民的なたたかいと共同を大きく」と呼びかける府常任委員会アピールを発表しました。また、カジノ推進の立場の自民党府連、公明党府本部、大阪維新の会に21日、公開質問状を出したことを明らかにしました。
会見には、党副委員長の、たつみコータロー前参院議員・大阪選挙区予定候補、中村正男、渡部結の3氏が出席しました。
吉村洋文知事、松井一郎大阪市長は大阪にカジノを誘致するための「区域整備計画案」を公表し、2月府議会・大阪市議会で「議決」のうえ、4月28日までに国に提出するとしています。
アピールは、人の不幸を食い物にし、刑法が禁じる賭博そのもののカジノの問題点とともに、インフラ整備をはじめ莫大(ばくだい)な公費負担がのしかかることや、誘致されれば35年間、事実上「廃止・撤退」はできないなどの問題点を指摘。世論調査では大阪でも「カジノ反対」の声は多数で、カジノ推進勢力の中からも住民投票を実施すべきだとの声が出されるなど「大きな矛盾とほころびが生じつつある」としています。
「いまのやりかたでカジノ誘致につきすすむことは大阪の街にとって『100年の大計』を誤らせる」と批判し、「カジノよりコロナ対策を」など切実な要求を掲げ、カジノ推進派を少数に追い詰め、誘致をストップさせようと呼びかけています。
大阪維新の会 御中
カジノ大阪誘致に関する公開質問状
2022年1月21日 日本共産党大阪府委員会
日頃の活動に敬意を表します。
さて、大阪府・市はカジノを誘致するための「区域整備計画」案を公表し、意見を募った上で、2月開会の大阪府・市議会で整備計画の議決を得た後、4月28日までに国に提出するとしています。
大阪と日本の将来に大きな影響を与えるカジノ誘致だけに、府民に十分な判断材料を提供することが重要です。ところが、大阪府・市が行っている住民説明会は、府民の質問にまともに答えず、府・市が一方的な言い分を言い募るだけに終わっています。
そこで、府民にカジノ誘致計画について広く議論してもらう一助になればと考え、これまでカジノを推進されてこられた貴党に公開での質問をさせてもらうこととしました。
大阪府議会が始まる前、2月初旬までに回答いただければ幸いです。
1、ギャンブルビジネス頼みの経済戦略は、キッパリやめるべきではないですか
自公政権は、経済成長、雇用創出など、IRの効用を盛んに宣伝しています。
しかし、カジノは賭博です。付加価値は何も生みません。カジノ事業者と顧客との間でお金が移動するだけです。識者からは「大負けした人から得たお金でIR施設内などの雇用を生んでも、成長戦略と呼べない」と指摘されています。
また、賭博は人の弱みに付け込んで人をギャンブル依存に陥れ、人の不幸によって利益を上げるものです。最高裁の判例では、賭博は、国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらあるとされています。その賭博を経済成長の目玉にすることはすべきでないと考えます。見解をお聞かせ下さい。
さらに、コロナ禍で世界のカジノ市場では大きな構造変化が起きています。カジノ業界は、地上型カジノからオンラインカジノ(インターネット上で仮想的に開帳する賭博)への転換を加速させています。IRの収益エンジンとなる巨大な地上型カジノに客を詰め込み、24時間365日、「3密」の空間で賭博漬けにするというビジネスモデルは、完全に時代遅れとなっています。世界のカジノは今後も成長し続けるという想定は崩壊しています。ただちに中止すべきと考えます。
また、府・市は、国の認可の有効期間(最初は10年、二回目以降5年)後、府・市の事情で再申請をしない場合は、税金でカジノ事業者に損害賠償する、つまり、IR開業後、ギャンブル依存症などの問題で府民がカジノはやめるという選択をすることに大きな制約をかけています。府民をカジノに縛り付けるもので、到底認められません。
カジノ推進の理由にしている「観光振興」も、これまで海外からの観光が好調だったのは、日本の文化や伝統、自然環境の魅力、買い物に人気があったためです。この強みを生かし、振興することこそやるべきです。カジノではありません。
日本共産党は、カジノ誘致はやめ、大型公共事業優先から、安心の社会保障づくり優先に切り替え、幅広い需要と雇用を生み出し大阪の成長を促す提案をしています。この方向に転換すべきと考えます。
2、最大のギャンブル依存症対策は、カジノをやめることではないですか
カジノは、他のギャンブルと比べ依存症に誘導する危険が非常に高い、略奪的ギャンブルと呼ばれる賭博です。
ギャンブル依存症、多重債務、利権をめぐる汚職・腐敗、青少年への悪影響などを引き起こします。府・市の区域整備計画案も、ギャンブル等依存症や治安・地域風俗環境の悪化を懸念事項に挙げています。
ところが、府・市は、「最小化」するための「対策」を言うのみです。住民説明会では「ギャンブル依存症対策をやれば完全に防げますか」の質問に、府・市は答えられませんでした。
吉村洋文知事は「依存症対策も徹底する。保健所や大学と連携していく」と言っています。コロナ禍で大阪では、保健所が逼迫し、救える命が救えない事態を招きました。ギャンブル依存症を新たに生み、保健所の負担を増やすカジノはつくるべきではありません。
2019年5月に開かれた「大阪カジノ産業展」で、井上幸紀大阪市立大学大学院教授は、精神科医の立場からとして「ギャンブル依存症のことを考えればカジノなどない方がいいという意見もあると思う」と発言していました。
カジノをキッパリ断念することこそ、最大の依存症対策と考えます。見解をお示し下さい。
また、カジノ利権をめぐり、業者と政治家、政府の癒着が実際に起きています。
安倍政権でIR担当の内閣府副大臣だった秋元司議員が、中国企業の元顧問から賄賂を受領し、東京地裁で懲役4年の実刑判決が言い渡されています。公判では、贈賄側は他の自民党衆院議員4人、日本維新の会所属だった衆院議員1人に、それぞれ100万円を提供したことを明らかにしています。
自民党、維新の会が、今やるべきはカジノ誘致ではなく、カジノ事業参入をめぐって、どの事業者がどの政治家にどう働きかけたのかを府民に説明することではないでしょうか。見解をお聞かせ下さい。
3、カジノ事業者のための際限ない公金投入はやめるべきではないですか
大阪市は、昨年12月にカジノ用地の土壌対策費(土壌汚染対策、液状化対策、地中障害物撤去)790億円を市が負担すると発表しました。
松井市長や吉村知事らが、住民説明会や市議会で〝カジノに税金は一切使いません〟と言ってきたことを覆してのものです。これまで大阪市が、大阪湾の埋め立て用地の販売で、こうした対策費を負担したケースはなく異例の負担です。
市が負担するという土壌対策は、IRの施設建設と一体のもので、本来カジノ事業者が負担すべきものです。異常な優遇措置です。計画案では、事業者への貸付期間・35年の賃料は、約880億円です。土壌対策費790億円を市が負担すれば、事業者は50万㎡を35年間で賃料90億円を払えば良い=44円/㎡・月額という安値貸付です。
工事費790億円の積算根拠もあいまいで、さらに膨れ上がり、市の負担が際限なく膨れていく可能性も指摘されています。
この他にも、夢洲へのアクセス改善のための阪神高速「淀川左岸線」2期工事費の700億円増、カジノのためのメトロ延伸の夢洲駅周辺整備費33億円の新規負担など129億円の工事費増、万博会場建設費の当初計画の1.5倍の1850億円への上振れなど、市の負担増が続出しています。
問題の根本には、夢洲への万博とセットにしたカジノ誘致の無謀さがあります。
これまで、府民からは、「埋立地は地震で液状化することが阪神淡路で明らかになっている」「大きな建物は不適」「誘致の中止を求める」「大型集客設備の誘致は大きな禍根を残すころになり断念すべき」などの陳情や要望書、パブリック・コメント意見が多数出されてきました。府・市はこうした意見を「夢洲は、液状化しにくい地盤となっている」と切り捨て、強行してきたのです。
府・市のこれまでの説明の破綻が鮮明になった今、〝これ以上の公金投入はやめよ〟の府民の声にこたえ、カジノ誘致は断念すべきと考えます。見解をお聞かせ下さい。
また、カジノとセットですすめられている万博に、自然との共生が達成できるのかとの危惧が相次いでいます。
昨年11月26日には日本自然保護協会が、「本国際博の環境影響評価手続きによる準備書に記載されている予測評価と環境保全は、特に陸域・海域とも野生生物を十分に考慮されたものではないため、より詳細の調査を行い、事業を見直すべきです。…未来に向けて、夢洲の貴重な自然と共存する道を探っていただくようお願いいたします」との意見書を府・市などに出しています。これを無視した万博は許されません。抜本的な見直しをすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
4、可否判断の情報を隠したまま強行することはやめるべきではないですか
府・市は、経済波及効果額1兆1400億円と宣伝しています。ところが、その算出元データは、情報公開請求をされても非公開にしています。
府・市は、ギャンブル依存症は必ず発生するとしています。韓国では犯罪、勤労意欲の減退、家族離散など地域社会の崩壊が問題となり、カジノによる経済的損失は経済効果の4・7倍の年間7兆7千億円にのぼるという試算も出されています。桜田照雄阪南大学教授は「大阪のIRを訪れる日本人客1400万人の8割が賭博客」「カジノ推進派のみなさんも認めていることですが、カジノが開業すれば100人の内1人か2人 依存症に陥る人が現れるといいます。1100万人の1~2%といえば10万人、20万人という規模のカジノ中毒者が出る。ひどい話」と指摘しています。
府・市は、ギャンブル依存症等の発生予測数、その社会的・経済的影響などを聞かれても「示せない」と答えています。住民説明会で「観光需要が回復していくとして計画しているがその根拠は」と問われても一切、説明していません。
大阪の未来を左右する大問題なのに、可否を判断する情報を府民に開示しないままのカジノ誘致は、やめるべきと考えます。貴党の見解をお示し下さい。