2022年1月31日月曜日

佐渡金山の世界文化遺産申請 政府は戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべき 

 23年の世界文化遺産登録を目指す国内候補として、新潟県が「佐渡島の金山」を申請した際に政府ははじめ消極的な姿勢を示していましたが、28日、一転して岸田首相「本年申請をおこなうという結論に至った」と公表しました。

 「佐渡島の金山」は、1603年に徳川幕府直轄の天領として佐渡奉行所が置かれ、小判の製造も行われ、江戸幕府の財政を支えたもので世界文化遺産に値するものです。同時に太平洋戦争の末期に、当時日本の植民地支配下にあった朝鮮人の強制労働が行われたという歴史的事実があり、それは新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』佐渡の旧相川町が編さんした『相川の歴史 通史編 近・現代』にも、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策にはじまって、敗戦でようやく終るのである」等と明記されています。
 政府が「佐渡島の金山」を世界文化遺産の候補として推薦する方針を決めたことについて、共産党の志位和夫委員長は29日、佐渡の金山が世界文化遺産として推薦に値するものだと認めると一方で、「日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべきである」とする談話を発表しました。
 ユネスコの世界文化遺産登録の原則は、「より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」とされていて、歴史的価値を強調する一方で、朝鮮人強制労働という負の側面を除外することは許されていません。当然、関係国の合意も必要です。
 これに関しては日本には前科があり、15年に当時の安倍首相の肝いりによって世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」には韓国が反発したため、日本側は朝鮮人徴用工意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた事実を認め、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じると約束していたのですが、17年、19年の「保全状況報告書」で、それらが履行されていないことが明らかになりました。
 また日本政府は15年に中国が世界記憶遺産に申請した「南京大虐殺の文書」が登録されたことや16年に日中韓などの民間団体が旧日本軍「従軍慰安婦」に関する資料を申請したことに対して猛反発し、ユネスコに審査方法の見直しを要求し、それによって17年には慰安婦関係資料の登録判断が延期され、登録申請の受付も中断されました。
 またを受けてユネスコの執行委員会は21年4月、加盟国による異議申し立てを認め、関係国が無期限で対話するなど「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」という制度改革案を承認したでした
 この度韓国の反対を押し切って佐渡金山を推薦するのは、そうした日本の過去の猛抗議とも相容れないものです。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認めるべきである
   佐渡金山の世界遺産推薦について 志位和夫委員長が談話
                       しんぶん赤旗 2022年1月30日
 政府が「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)を世界文化遺産の候補として推薦する方針を決めたことについて、日本共産党の志位和夫委員長は29日、次の談話を発表しました。

 一、岸田文雄首相は28日、「佐渡島の金山」(佐渡金山)を世界文化遺産の候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦すると表明した。わが党は、佐渡金山は世界文化遺産として推薦に値するものだと考えるが、日本政府が、登録推薦を行うならば、戦時中の朝鮮人強制労働の歴史を認める必要がある

 一、世界遺産とは「人類の知的・精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくる」というユネスコの理念に基づくもので、登録推薦物について調査・勧告を行う国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は「より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するICOMOS憲章」)との原則を示している。
 佐渡金山についても、戦国時代末から江戸時代にかけてだけでなく、明治以降、戦時の朝鮮人強制労働などを含む歴史全体が示されることが必要である。戦時中の歴史を「時代が違う。まったく別物」とする政府・自民党の中にある主張は、世界遺産の趣旨に反する。ユネスコやICOMOSが掲げる原則をふまえるならば、世界文化遺産の登録推薦にあたっては、負の歴史を含めて、歴史全体が示されなければならない。

 一、アジア・太平洋戦争の末期に、佐渡金山で当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われたことは、否定することのできない歴史的事実である。新潟県が編さんした『新潟県史 通史編8 近代3』は「朝鮮人を強制的に連行した事実」を指摘し、佐渡の旧相川町が編さんした『相川の歴史 通史編 近・現代』は、金山での朝鮮人労働者らの状況を詳述したうえで、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策にはじまって、敗戦でようやく終るのである」と書いている。この歴史を否定することも、無視することも許されない。

 一、日本政府自身、長崎の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録(2015年)の際、戦時の朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と、ユネスコ世界遺産委員会で表明している。にもかかわらず、日本政府は今もその国際約束の実行を怠っており、昨年の世界遺産委員会では、日本に対し「強い遺憾の意」を示し、犠牲者を記憶する適切な措置などを重ねて求める決定が採択されている

 日本政府は、佐渡金山の世界文化遺産への登録推薦をするならば、これまでの態度をあらため、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認め、自らの国際約束を果たすべきである。