2022年1月1日土曜日

コロナ感染者自宅療養を批判した町山智浩氏に、橋下徹氏はどんな論点ずらしを行ったか(LITERA)

 LITERAは、31日付の5編を含め、12月下旬に入ってからシリーズ【2021年、彼らのやったことを忘れるな!】を合計19編出しました。⇒ LITERA/リテラ(lite-ra.com) 興味をお持ちの方はどうぞアクセスしてください。
 このうち「橋下徹が菅に先駆け『コロナ自宅療養』主張で批判殺到! 論点ずらしと『勉強しろ』でごまかすも町山智浩に手口を見抜かれコテンパン」を紹介します。
 これを読むと先ずは橋下氏の恫喝含みの口汚さに驚かされますが、多分いつものスタイルなのでしょう。
 21年8月、菅政権が唐突に「コロナ中等症以下は自宅療養」の方針を打ち出すと、当然大きな反発が巻き起りました。
 そんななか橋下徹・元大阪市長が「反対の声が湧き上がるようなことをあえて方針決めたことは大英断だと思っている」と絶賛したことに、映画評論家の町山智浩氏が、
〈「日本では、自宅療養を基本とする」という法律作るんですか〉
〈いや、他の国みたいに体育館などを接収して、軽度中度の患者を隔離して、家族への感染を防ぎ、重症化に対応できる態勢にすればいいだけじゃないですか?〉
と「大規模収容施設」方式を採るべきだとツイートしたところ、橋下氏が的外れでうんざりする猛反発を展開したのでした。
 そのなかで橋下氏は、「自宅療養をやらざるを得ない。そこに医師会の皆さんの協力を得て、開業医の皆さんにしっかり対応してもらう(法制度化する)」とも述べました。
 そんなことができるなら問題は起きなかったのですが、実情は大阪では人口比当たり世界有数の膨大な自宅待機者が医療に接することが出来ないままで命を落としたのでした。
 医師が100戸の感染者宅を訪ねて診療するのと、1個所に100人の感染者を収容しそこで診療するのとでは、どちらが効率的であり合理的であるかはいうまでもないことです。
 橋下氏が、町山氏の指摘(=自論の誤り)を認めたくないばかりに、どんな風に「論点ずらし」をやったかをLITERAが詳述しています。
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【2021年、彼らのやったことを忘れるな!】
橋下徹が菅に先駆け「コロナ自宅療養」主張で批判殺到! 論点ずらしと「勉強しろ」でごまかすも町山智浩に手口を見抜かれコテンパン
                             LITERA 2021.12.31
2021年も、残すところあとわずか。本サイトで今年報じた記事のなかで、反響の多かった記事をあらためてお届けしたい。(編集部)
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【初出 2021.08.10】
 菅政権が唐突に打ち出した「中等症以下は自宅療養」の方針。当然ながらこの方針には大きな反発が巻き起っているが、そんななかこれを「菅首相の大英断」と褒め称えた人物がいる。橋下徹・元大阪市長だ。
 橋下氏は8日放送の『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)に出演し、この「自宅療養」の方針を「僕は菅首相の今回の方針は大英断だと思っている。福島の処理水を海洋放出することを決めたことにも並ぶくらいだ。とにかく反対の声が湧き上がるようなことをあえて方針決めたことは大英断だ」と絶賛したのだ。
 都内では自宅療養中だった50代女性が容態の急変によって亡くなっていたことが7日に判明したように、「自宅療養」とは「自宅放置」にほかならず、「基本、自宅療養」の方針には医師や専門家たちからも「自宅で中等症患者が重症化すれば命の危険もある」「訪問診療体制は十分ではない」という声が相次いでいる。にもかかわらず、橋下氏はそれを「大英断」などと言うのである。
 だが、それも当然だろう。菅義偉首相が「重症患者や重症化リスクのとくに高い人以外は基本、自宅療養」と言い出したのは今月2日のことだったが、この前日、1日放送の同番組では、橋下氏がこう発言していたのだ。
「自宅療養を基本とする、制度化するっていうのは、これは本来は国がやらなければいけないと思うんですよ」
「今まではある意味病院の負担でやっていた。病床を増やせって話だったんですけど、今このフェーズで病床が追い付かないわけですから、それであればいろいろ批判はあるけれど、自宅療養をやらざると得ない。そこに医師会の皆さんの協力を得て、開業医の皆さんにしっかり対応してもらい、これを法制度化すべきだと思う」
 橋下氏がこのように主張した翌日に、菅首相が同じ方針を打ち出す──。まるで示し合わせたかのような流れだが、もしそうであっても驚きはないだろう。実際、菅首相は官房長官時代から橋下氏や松井一郎・現大阪市長と面談を重ねるなど近い関係にあり、さらに最近では総選挙で劣勢が予想されるなか、菅首相が日本維新の会との連立によって政権維持を狙っているという声も出ている。なかには「菅首相が維新の連立政権入りを公明党の山口那津男代表に打診したものの物別れになり、その結果、公明党議員の事務所への東京地検特捜部によるガサ入れにGOサインを出した」という報道もあったほどだ。
 橋下氏が菅首相の方針を先駆けて発信したのか、あるいは橋下氏の主張を菅首相が取り入れたのか、はたまた偶然の一致だったのかは不明だが、しかし、いずれにせよ「自宅療養が基本」という政府方針および橋下氏の主張が危険なものであることには変わりはなく、橋下氏の発言にも批判が起こっている。
 そして、その批判の急先鋒となったのが、映画評論家の町山智浩氏だ。橋下氏の「自宅療養を基本」という発言が報じられると、〈「日本では、自宅療養を基本とする」という法律作るんですか〉とツイート。さらにこのような主張を展開した。
〈いや、他の国みたいに体育館などを接収して、軽度中度の患者を隔離して、家族への感染を防ぎ、重症化に対応できる態勢にすればいいだけじゃないですか?〉
〈自宅では家族に感染を広げるし、急激な重症化に対応できません。軽度、中度の感染者は、大規模収容施設に隔離し、ごく少数のワクチン接種済の医療従事者が完全防備で管理する、というのが多くの国で行われている方法です。〉

「自宅療養より大規模施設への収容」を指摘した町山智浩に、橋下徹が「医療従事者への指揮命令権」に論点スリカエ
 軽症・中等症の患者は他国のように体育館などの大規模施設で診たほうがいい──。これは町山氏のみならず多くの人が訴えており、当然の意見だが、しかし、これに橋下氏が噛み付いた。
〈箱を作るのはいいけど医療従事者はどうやって集めるの? こんなアイデアは医療キャパの強制拡大を誰も言い出せなかった昨年から俺は言ってたわ。政治が医療従事者を指揮命令できる法律を作るべきと。でも感染症法の改正では勧告止まり。〉
〈一部病院や行政だけでなく開業医も含めてどう負担を平準化するか。この箱作りは賛成だが、貴殿は政治の医療従事者への指揮命令権を認めるのか? 認めるならまずそれを声高に叫べ。俺のように批判を浴びながらな。次にそのような法律が作れないならどうするか?〉
〈入院必要患者と不要患者に対する役割分担の原則を明確化すること。俺も政治行政の完全な素人やないんやから貴殿のような理想論は十分踏まえた上で悩みながら考えとんのや。貴殿が思い付くことくらい俺も考えとるわ。そんなアホちゃうで。その先を考えなあかんのや。〉
〈貴殿のそのアイデアの前提に政治による医療従事者への指揮命令権が必要なことは分かってるか? 分かってるならまずそれを叫べ。火だるまになる覚悟でな。まあ貴殿はそこまで考えずに思い付きで言っているか、加えて火だるまになる覚悟もないやろうけどな。〉
 いつもの威嚇でマウントを取ろうとする橋下氏の顔が容易に思い浮かんでくるが、客観的にみて、橋下氏の言い分はこれまたいつもどおり、ゴマカシに満ちたものだ。
 町山氏は自宅療養を打ち出したことに対して批判しているのに、橋下氏はいつのまにか町山氏の体育館などに収容するアイデアを、「俺も言ってた」として、今度は「医療従事者への指揮命令権が必要」などという問題にすり替えるのである。
 そもそも「医療従事者への指揮命令権」などなくとも医療従事者を集めることはできるはずだ。実際、東京五輪では法的な拘束もないのに7000人もの医療従事者を動員した。だいたい、指揮命令権などと言い出す前に実行すべきは、コロナによってさらに悪化している医療従事者の処遇改善ならびに特別手当などの慰労金の拡充だ。
 橋下氏といえば、今年4月に出演した『報道1930』(BS-TBS)でも、検査で実態を掴むという仕事こそ首長の仕事ではないのかという指摘に対し、“知事に権限がない。法律がない。野党が悪い”と話をすり替え、日本城タクシーの坂本篤紀社長に「アホな議論(笑)」と一刀両断されていたが(詳しくは既報参照→ https://lite-ra.com/2021/04/post-5854.html)、「権限がない」と言えば相手の主張をシャットアウトできるとでも考えているのだろう。
 しかも、医療関係者を動員できないというなら、それは自宅療養の場合だって同様だ。というか、自宅療養の場合は、訪問診療や往診などでもっと多くの医療関係者が必要になる。、100軒の家を訪問するのと、1箇所に集められた100人を診るのと、どちらが人数や負担がかかるか、少し考えればわかるだろう。それとも、橋下氏は自宅に文字通り放置するつもりなのか
 ところが、こうした医療カットの発想が批判を浴びているというのに、橋下氏は「俺のように批判を浴びながらな」「火だるまになる覚悟もないやろうけどな」と、まるで自分だけが覚悟のある人間のふりをして自己正当化を図るである。

橋下徹が大阪府の重症者センターの例を持ち出し「勉強しろ」と威嚇も、町山智浩が一蹴
 当然ながら、この橋下氏のツイートに対して町山氏は〈医師も看護師も「仕事」です。命令なんかしなくても、ちゃんと仕事として報酬と安全を保障されれば大規模隔離所で働きますよ。しかも、橋本さんの主張する自宅療養の家庭訪問よりもはるかに楽で安全で効率的ですから〉(原文ママ)と応答。
 しかし、橋下氏は、町山氏が挙げた報酬や自宅訪問より安全で効率的という反論は無視して〈で、何床のベッドを用意するのに、何人のドクター、看護師、その他の医療従事者、事務職員を集めるのですか?〉〈何よりも、誰が指揮命令をするのですか? その根拠は?〉と、相変わらず指揮命令権を持ち出す始末。さらにこうもツイートした。
〈大阪府の吉村知事が重症者センターを作ったときに医療従事者を集めるのにどれだけ苦労したか、その点を勉強してください。コロナ専用病院を作れ! なんてことはとっくのとおに検討済みなんですよ〉
 橋下氏は大阪のコロナ重症センターの例を持ち出し、町山氏に向かって、「勉強しろ」などと言っているが、重症患者専用の病院と軽症・中等症の患者を診る大規模施設ではかかる労力も違うし、繰り返しになるが患者の自宅に訪問するマンパワーを考えればそれをはるかに抑えられる案だ。
 いや、それ以前に町山氏が〈橋下徹さんと維新が大阪の医療を縮小してきたからでしょう? 災害時に備えて余裕をもった医療体制の規模、医療従事者の数をふだんから確保しておかないと、こういうことになるんですよ〉とツッコミを入れていたが、まったくそのとおりというほかない。

論点ずらしの手口を暴き「こうして間違いを認めずに生きてきたんですね」と指摘した町山智浩に、橋下徹は…
 つまり、橋下氏は「自宅療養を基本に」という自身の主張に寄せられた「大規模施設で診たほうが安全性でも効率性でも現実的」という至極真っ当な意見に対し、何の反論もできず、まったく論点でない「医療従事者集めの困難」「医療従事者への指揮命令権」を持ち出したのだ。
しかし、この論点ずらしを町山氏は見逃さず、こんな鋭いツイートを放った。
〈もともと橋下徹さんが自宅療養を主張していたので、「他の国ではナイチンゲール方式だ」と指摘したら、橋下さんは医師に対する強制法へと論点をズラしました。で、橋下さんは元の「自宅療養がいい」という主張の間違いを有耶無耶にしちゃうわけ。彼はこうして間違いを認めずに生きてきたんですね。〉
 すると、この町山氏のツイートがよほど痛かったのか、橋下氏はまたもまくし立てるように反論ツイートを連投した。
 
〈ナイチンゲール方式と抽象的に言うのがコメンテーター。中身をしっかり定義しないとダメ。貴殿の言うナイチンゲール方式が軽症者対応の施設なら、日本でもすでにホテル療養施設としてやっている。もし重症・中等症対応の施設のことなら貴殿の言うナイチンゲール方式など世界各国のどこもやっていやい。〉(原文ママ)
〈やったのは感染初期の中国武漢だけ。あれは中国だからできた。貴殿の写真をよく見なさい。そんな施設では重症者対応などできない。福井の体育館利用施設も。軽症者対応は体育館よりもホテル利用の方がいいのは分かるでしょ?〉
〈問題は重症・中等症対応。これをナイチンゲール方式でやるには政治が医療従事者に対して指揮命令権を持たなければスタッフが集まらない。ここ数日来、日本の新聞で皆が議論しているから読んでおくように。そして今後軽症者をどうするか? 首長は自分の責任でやるというが限界が来る。〉
〈僕が誤りを認めないとかしょうもないこと言う前に、貴殿はもっと実務上の最低限の知識を勉強すること。自宅療養方針を批判する人たちってこのレベルなんだよな。もっと考えさせられる批判が欲しい。〉
 町山氏は最初から「軽度中度の患者を隔離」と書いていたのに、この期に及んで「抽象的」「そんな施設では重症者対応などできない」などとお門違いの反論を繰り出すって……。しかも、「軽症者対応の施設なら、日本でもすでにホテル療養施設としてやっている」と言うが、「自宅療養が基本」と主張していたのは橋下氏ではないか。その上、見当違いの難癖をつけておきながら、またも「勉強すること」と言い出し、挙げ句「もっと考えさせられる批判が欲しい」とは……。
 橋下氏といえばテレビではいつも相手に反論の余地を与えないようマシンガントークでまくし立て、司会者もツッコミを入れることなくその主張を垂れ流しにしているが、Twitterではそうもいかず、町山氏に詭弁を見破られてしまった。
 橋下氏は大阪府知事、大阪市長時代から、都合が悪くなると「勉強しろ」「もっと考えて批判しろ」という得意文句で批判を封じてきたが、今回は誰の目にもたんなるゴマカシ、負け惜しみというのは明らかになってしまった。

今回は大衆も騙されずSNSでも橋下徹に非難が殺到!「反論する隙を与えず捲し立てる手法はテレビでしか通用しません」
 実際、橋下氏の手法にこれまでは騙される人も多かったが、今回の「自宅療養が基本」という主張や町山氏との対決では、Twitterはもちろん、支持者が多く集っているはずのYahoo!のコメント欄でも橋下氏への批判コメントが目立っている。
〈橋下徹が長文ツイート連投してるけど、相手に反論する隙を与えず捲し立てる手法はテレビでしか通用しませんよね〉
〈既に医療崩壊してるんだからこれからは如何に効率化するかを考えるべきなのに橋下は法律を盾にできない理由を探しているだけ。目的が法律を変えて政治の支配力を強め自分がその中枢に収まることだから国民の命を救うという一番大切な部分にまるで興味がない。〉
町山氏に論破され、「政治が民間の医療機関に介入して強制的に人材を徴用すべきだ」と主張する橋下徹 もう滅茶苦茶 こいつが菅ちゃんと仲良しで色々吹き込んでるんだけど、菅ちゃん本人は自分で物事を考える能力のないアホだから、どんな妄言でも鵜呑みにしそうなんだよな 怖い怖い〉
〈でた!まけそうになるとでる「べんきょうしなさい」!こわい!〉
〈仮に橋下が言うところの仕組みが良いのだとして、じゃぁなぜその準備と整備をしてこなかったのか? コロナ禍になって1年半だよ。何やってたんだよって話。橋下にしたところで、以前からこの主張をしていたのかね? お得意の「俺は前から言っていた」じゃないのか?〉
 すっかり化けの皮が剥がれ、負け惜しみの決め台詞まで見透かされてしまった橋下氏。本サイトでは繰り返し指摘してきたが、そもそも橋下氏は報道番組やワイドショーに連日のように出演する際、政治からは距離を置いたかのように振る舞いながら、維新・菅政権擁護を連発。裏で特定の政治勢力とつながりながら、表ではあたかも「是々非々」のポーズで世論を騙しながら誘導してきた人物だ。今回の「自宅療養が基本」という主張も完全に菅首相と一致しているが、このあからさまな今回の誘導に、さすがに多くの人が橋下氏の詐術に気付いたということなのかもしれない。(編集部)