植草一秀氏が、31日に「野党退潮 ゆ党伸長がもたらす危機」とする記事を出しました。
同氏によれば、与野党の衆院選での比例区絶対得票率の推移を見ると、14年は与党24%に対して野党は28%、17年は与党24・6%に対して野党は25・2%で、両年とも与野党得票率が伯仲、正確に言えば野党得票率が与党を上回っていたのに、21年選挙では絶対得票率で与党対野党が26・3%に対し野党は21・8%と差を広げられるという極めて深刻な状況に陥りました。
09年に主権者の圧倒的な支持を受けて鳩山内閣が樹立されて以来12年が経過して、天地が逆転する変化が生じたと述べています。
それは09年の危機を打開するために、日本支配勢力が死に物狂いで「改革勢力」を破壊する工作を展開したことと、とりわけ注力した「ゆ党勢力」=「えせ改革勢力」の増強が成功した結果だと見ています。立民党のだらしなさと的外れぶりは言うまでもありません。
このまま参院選に突入して「ゆ党勢力」=「えせ改革勢力」が勢力を拡大すれば、与党と一体となり憲法を改変してしまう可能性が高い。極めて危険な状況が目前に差し迫っていると結んでいます。
植草氏は、30日には「最悪の成果残したアベノミクス」を出していますので併せて紹介します。
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野党退潮ゆ党伸長がもたらす危機
植草一秀の「知られざる真実」 2021年12月31日
2021年の日本政治を回顧する。
衆議院総選挙は10月31日に実施された。
2012年に始動した安倍・菅内閣に対する審判の意味を持つ選挙だったが自民党は党首を交代させて大勝を収めた。
菅義偉氏が辞任し、岸田文雄氏が新党首に就任したことが自民党大勝の第一の要因。
為政者に求められる第一の資質は人間性。
前任の安倍氏、菅氏と比較されたことが岸田氏にとって大きな幸運だった。
菅義偉氏の唯一にして最大の功績は衆院総選挙直前にバトンを引き継いだこと。
自民党大勝第二の要因は野党第一党立憲民主党の失態。
実質上の任期満了選挙であったにもかかわらず、準備体制がまったく整えられていなかった。
自公政治刷新を目指すのか、第二自公政治を目指すのか。
路線が不明確な野党を支持する国民は少数。「野党共闘」を推進するのか「野党共闘」を否定するのか、方針が不明確なまま選挙に突入した。
枝野立憲民主党の惨敗は当初から明白だった。
総選挙は日本政治刷新を求める主権者にとっては最悪の結果に終った。
しかし、絶望は敗北である。希望の灯を2022年につながねばならぬ。
与野党の比例代表選挙絶対得票率の推移は以下の通り。
2014年 与党24.0% 野党28.0%
2017年 与党24.6% 野党25.2%
2021年 与党26.3% 野党21.8%
(2014年は野党に維新を含む。2017年、2021年は与野党ともに維新を含まない。維新得票率は2017年が3.3%、2021年が7.8%)
2014年、2017年選挙では与野党得票率が伯仲していた。正確に言えば野党絶対得票率が与党を上回っていた。
選挙制度が小選挙区を軸としているため、獲得議席数では与党対野党がおよそ2対1だったが得票率では野党が与党を上回っていた。
ところが、2021年選挙では絶対得票率で与党対野党が26.3%対21.8%になった。
維新が得票率を3.3%から7.8%に引き上げ、与党系陣営が得票率を大幅に上昇させたから、野党は国民支持を大幅に引き下げたことが分かる。
野党の退潮が極めて深刻な状況に陥っている。
どのような変化が生じてきたのか、冷静な考察が必要だ。
2009年には主権者の圧倒的な支持を受けて鳩山内閣が樹立されている。
12年の時間が経過して天地が逆転する変化が生じた。
政治勢力を三つに区分して考察すると分かりやすい。
与党と野党とゆ党。
2009年には野党が圧勝して政権交代を実現した。
鳩山内閣は本当の意味での日本「改革」を目指した。
日本支配勢力にとっての最大危機だった。
この危機を打開するために日本支配勢力が死に物狂いの反撃を展開した。
その結果が今日の状況を生み出した。
政治勢力が「守旧勢力」と「改革勢力」に二分されると「守旧勢力」は打倒される。
この危機を打破するために「改革勢力」を破壊する工作が展開されてきた。
彼らが力を注いだのが「ゆ党勢力」=「えせ改革勢力」の増強だった。
「えせ改革勢力」に「改革」を叫ばせ、この勢力の伸長を図ってきた。
この戦術によって「改革勢力」が分断され、真の「野党勢力」が弱体化されてきた。
いま求められるのは、真の改革勢力の再構築。
日本支配勢力は「ゆ党勢力」拡張に全力を注ぐ。
「えせ改革勢力」に「えせの改革」を叫ばせ、マスメディアに全面支援させる。
このまま参院選に突入して「ゆ党勢力」=「えせ改革勢力」が勢力を拡大すれば、与党と一体となり憲法を改変してしまう可能性が高い。
極めて危険な状況が目前に差し迫っている。
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(以下は有料ブログのため非公開)
最悪の成果残したアベノミクス
植草一秀の「知られざる真実」 2021年12月30日
2021年の経済を回顧する。
日本経済の停滞はいまに始まったことではない。日本経済の実質GDP成長率は、バブルが崩壊した1990年以降30年以上にわたって停滞し続けている。
実質GDP成長率の推移は以下の通り。
1960年代:10.5%
1970年代: 5.2%
1980年代: 4.9%
1990年代: 1.5%
2000年代: 0.6%
民主党政権時代の2009年10-12月期から2012年10-12月期の成長率平均値が1.7%。
第2次安倍内閣発足後の2013年1-3月期から2021年7-9月期案での成長率平均値が0.6%。
1990年代以降、ゼロに近い状況が30年以上も継続している。
2012年に発足した第2次安倍内閣は「アベノミクス」を掲げて日本経済を浮上させることを公約に掲げたが失敗した。
戦後最低の経済成長率を記録したのが第2次安倍内閣発足後の日本である。
1990年以降は消費税導入と消費税大増税の30年間だった。
日本経済の停滞は世界のなかでも突出している。
2012年12月に発足した安倍内閣は「アベノミクス」を提唱した。
内容は財政政策、金融政策、構造政策を発動するというもの。
経済政策の主要な三手法を並べたもので目新しさはまったくなかった。
1.財政政策を発動したのは2013年だけ。
2014年には消費税増税を強行。「アベコベノミクス」に転落した。
2.金融政策は量的金融緩和でインフレ率を2%に引き上げるというものだったがインフレ率引き上げに失敗した。
そもそもインフレ率の引き上げは生活者のための施策でない。企業がインフレ分だけ実質賃金を引き下げることができるからインフレ率上昇が求められたという経緯がある。
インフレ率引き上げに失敗したことは国民にとって不幸中の幸いだった。
3.「アベノミクス」の核心は「構造政策」=「成長戦略」にあった。
「成長戦略」の言葉は響きが良いが「誰の」「何の」成長であるのかが重要。
「成長戦略」の「成長」は「大資本の利益の成長」を目指すものだった。
「成長戦略」の中身は「農業自由化」、「医療自由化」、「労働規制撤廃」、「法人税減税」、「公的事業払い下げ」だった。
「働き方改革」という名の「働かせ方改悪」が強行されて企業収益は2012年から1017年までの5年間に2.3倍に激増した。
経済が低迷するなかで大企業利益が激増したことは労働者の賃金が減少したことを意味する。
一人当たり実質賃金は2012年から2020年の8年間に6%も減少した。
日本は世界最悪の賃金減少国になった。
最悪の経済成長率のなかで大企業利益だけが激増して労働者の賃金が激減するのは当然のこと。
同時に、「改革」の名の下に一次産業と公的事業の権益がグローバル巨大資本に供与された。
そのために跋扈したのが現代版の「政商」。えせ経済学者勢力だ。
2021年の自民党党首選で岸田文雄氏が勝利したことの意味は小さくない。
ハゲタカ勢力は新自由主義経済政策を推進する河野太郎氏の当選を期待したはずだ。
岸田文雄氏は曲がりなりにも「新しい資本主義」を掲げて「新自由主義経済政策」を批判する主張を展開した。
日本の経済政策を「弱肉強食推進」から「共生社会確立」に転換できるのかどうか。
2022年以降の経済政策論議が重要性を帯びる。
自民党内部では「新自由主義経済政策推進勢力」と「反自由主義経済政策勢力」との間の抗争が激化することになる。
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